著者
岡村 陽介 武岡 真司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.673-678, 2013-06-20 (Released:2013-08-28)
参考文献数
36

血小板は, 血液凝固系と連動した巧妙かつ複雑な止血機構を有しており, これらすべての機能を人工系で模倣することは非現実的といっても過言ではない. 感染の危険性がなく長期間保存可能な血小板代替物として, 生体投与可能なナノ粒子に活性化血小板を認識できる分子 (フィブリノーゲンγ鎖C末端ドデカペプチド, HHLGGAKQAGDV: H12) を担持させることで, それが血管損傷部位へ特異的に集積して血栓形成を誘導する起点となり, 集積したナノ粒子によって出血部位を充填し止血能を補助できるとの発想に基づいて, 極めて単純な血小板代替物を設計した. さらに, 血小板凝集を惹起するアデノシン5'-二リン酸 (ADP) をリポソームの内水相に封入することで止血能を増幅させることにも成功している.
著者
木下 学 萩沢 康介 石田 治 齋藤 大蔵 酒井 宏水 武岡 真司
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.35.4_05, (Released:2021-10-07)
参考文献数
36

私たちは止血能と酸素運搬能を有し, 血液型に関係なく投与できる人工血液を研究開発している. 人工血液は人工血小板と人工赤血球から成り, 室温静置で長期保存可能で, 備蓄や病院前治療に適していると考える. 人工血小板はリポソームに血小板活性化因子であるアデノシン二リン酸 (ADP) を内包し, 表面に人工的に合成したフィブリノーゲンの活性部位を付着させている. 出血部位に集積し, 血小板血栓形成を促進することで, 血小板減少性の易出血病態でも血小板と同様の止血能を発揮する. 人工赤血球は使用期限の切れた輸血用赤血球からヘモグロビンを精製し, 同様にリポソームに内包したもので, 優れた酸素運搬能を有している. 人工血液は血小板減少による凝固障害を呈した家兎の致死性出血モデルにおいて, 通常の血小板と赤血球の輸血に匹敵する顕著な止血救命効果が認められ, 外傷治療における有用性が期待される.