著者
武末 裕子
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.225-232, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
42

五感の中で最も原始的とみなされてきた感覚は「触覚」である。近年,その触覚を切り口とした展覧会や研究が多くみられるようになった。そうした背景や要因には触覚をキーワードとしたバーチャルでインタラクティブなメディアやシステムの開発推進,障害理解やインクルーシブ教育が国の政策として進む現状がある。また一方では,近現代彫刻の作家達の多くは触覚にインスパイアされながら表現に取り組んでおり,形態に加えて質感や素材感は彫刻を鑑賞するうえでの重要な造形要素でもあった。本論ではその歴史や近現代の彫刻家(コンスタンティン・ブランクーシ,アルトゥーロ・マルティーニ,高村光太郎 等)の彫刻作品や言葉,そして「彫刻とは何か」を論じた美術評論家であるハーバート・リードの記述,国内外の鑑賞の事例と動向から,触覚と彫刻の関係性について明らかにしていきたい。