著者
頼経 かをる 永山 くに子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.120-128, 2011-04

<目的>生後3ヵ月間における乳児の泣きをめぐる母親の体験を記述すること。<方法>初産婦1名の語りからナラティブ・アプローチを活用し質的記述的に分析を行った。データ収集は生後2週間,1ヵ月半,3ヵ月前後に半構成面接と参加観察を行った。<結果・考察>【泣きへの戸惑い】【乳児の欲求・感情の汲み取り】【泣きへの対処】【泣きの特徴をつかむ】【泣きやまないことへの自分なりの解釈】【泣きに対する余裕の自覚】【乳児の成長・発達への気づき】【自分の欲求や否定的感情との葛藤】の8つのカテゴリーを抽出した。そして,3ヵ月間の乳児の泣きをめぐる母親の体験を1つの物語として記すことを試みた。そのなかでは,母親は乳児の泣きに対し混乱や葛藤を抱えつつも,乳児の要求に応えようとさまざまな対応を試みながら母子相互に成長していく過程がみられた。
著者
齊藤 佳余子 長谷川 ともみ 永山 くに子
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.83-92, 2013-12

本研究は帝王切開を受けた母親が手術直後に体験したカンガルーケアをどのように受けとめたのかを明らかにすることを目的とした.反復帝王切開直後にカンガルーケアを体験した母親5名を対象とし,質的帰納的分析を行った.分析の結果,手術前は【元気な子どもを得る期待感】,帝王切開直後のカンガルーケア体験後には【自分の子どもを得たことの実感の深まり】【子どもへの愛しさの高まり】のカテゴリが抽出された.また3事例ではあるが手術前に<前回の出産に対するひきずり>があった母親はカンガルーケアを体験することにより<前回の出産体験のひきずりの埋め合わせ>が行われ,<出産に対する満足感>へとつながった.このことから帝王切開直後のカンガルーケアを母親は自分の子どもを得たことを実感できる体験と受けとめていた.また前回の出産体験にひきずりをもつ母親にとっては,喪失からの立て直しに関与する可能性が示唆された.Kangaroo care after childbirth is a technique that is widely practiced in many advanced nations. In this research, we aim to clarify the subjective experiences of women practicing kangaroo care after cesarean sections. The subjects in this study comprise five women who underwent repeated cesarean sections. The analysis was conducted using qualitative induction. We found that prior to a cesarean section, the mother hopes to obtain a fine child. It is only after the operation that the mother starts to feel increased love and affection for the child. Three of the five women had previously given birth to children with psychological damage; for these women, the need to participate in kangaroo care could be seen as a kind of compensation for the previous births. Further, these three women all underwent satisfactory deliveries. As mentioned above, it was thought as experience which can realize that the mother got her child for the kangaroo care just behind a cesarean section. Moreover, this study revealed that mothers who experienced psychological damage in previous childbirths participated in kangaroo care as form of recovery therapy brought on by the sense of loss they experienced previously.
著者
西村 香織 永山 くに子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.229-238, 2014 (Released:2015-05-30)
参考文献数
25

目 的 産褥早期に母乳育児をしている初産婦への母乳外来での参加観察と初産婦と実母のインタビューを通した語りから,産褥2週間以内の初産婦の母乳育児をめぐる実母の関わりの特徴を明らかにすることを目的とした。対象と方法 研究参加者はN病院で出産し母乳外来を受診した初産婦と母乳外来受診時に同行した実母の10組。データ収集期間と方法は2010年2月~7月。初産婦と実母の母乳外来における参加観察,および初産婦と実母との同席によるインタビューで,内容は「退院されてからの日々の育児はどうですか」「授乳に関してはどうですか」「お母様からみて娘さんの様子はどうですか」などであった。参加観察と録音したインタビュー内容の逐語録をデータとした。これらを短文化,解釈し初産婦に対する実母の関わりの特徴と考えたサブパターンを抽出,さらに集約化してパターン名を付けた。結 果 母乳育児中の初産婦に対する実母の関わりには[受容的][支持的][教育的]のサブパターンからなる【個人的関わりパターン】と,[食に関する言い伝え][育児観に関する言い伝え]のサブパターンからなる【世代間伝承的関わりパターン】の2つの特徴的な関わりパターンが抽出された。実母の【個人的関わりパターン】は感じ方,考え方,価値観などを含む実母自身の個人的パターンであり,【世代間伝承的関わりパターン】は実母個人にとどまらない世代を繋ぐ慣習の伝播,母から子への言い伝えであると考えられた。母乳育児をめぐる実母の関わりには個々の関わりに加え,世代間の伝承的な関わりがあると考えられた。また,産褥早期の母乳育児を通して,現代の娘に対して実母が初産婦にどう考え関わっているかには受容,支持など肯定的側面がみられる一方で先行研究の教育的姿勢を呈する関わりも存在していると考えられた。しかし,その教育的背景には,本研究結果の肯定的側面と同様に,かつて自分の時代にはできなかった母乳育児を娘にはさせてあげたいという実母の思いが関与していると考えられた。結 論 母乳育児中の初産婦と実母をめぐる関わりの特徴としては【個人的関わりパターン】と【世代間伝承的関わりパターン】であることが示唆された。
著者
我部山 キヨ子 永山 くに子 坪田 明子
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

1.助産学担当教員198人に卒業時までに必要とする臨床経験回数と経験させたい技術を郵送による質問紙調査を行った。健康診査、助産技術、保健指導などの49項目のうち、経験必要と考える臨床技術で多かったのは、分娩監視装置の装着と判読、分娩経過中の産婦診察で、いずれの項目も、大学教員は他の教育機関の教員に比べると、有意に低率であった。また、7割以上の教員が経験させたい技術項目として挙げたのは、分娩時の酸素吸入、妊娠期の超音波診断、妊娠反応テストであった。2.助産師学生700人(有効回収率90.8%)に対して、卒業時の臨床技術経験の到達度調査を行った。全34項目の平均到達度は2.44で、時期別到達度の平均は分娩期が最も高く(2.60)、以下産褥期(2.47)、新生時期(2.42)、妊娠期(2.38)となった。全項目の平均到達度は専門学校が最も高く(2.55)、次いで専攻科(2.46)、大学(2.29)であった。学生による臨床技術到達度は、実習期間が長いほど到達度が高くなっており、実習時間数が短い大学教育への移行が進む昨今、助産教育における臨床実習のあり方を検討する必要性が示唆された。3.京都府内の産科を要する35施設300人(回収率84.7%)の助産師に対して、卒後教育に関する調査(調査内容:対象の属性、新人助産師の教育システム、施設における助産師の卒後教育とその内容など)を行った。年齢層は20歳代35.8%、30歳代29.9%であった。新人助産師の教育システムはプリセプター制度が最も多く、実践能力の査定時期は就職1年目が多かった。卒後教育上の問題としては、「時間がない」「受講料が自己負担」「助産師独自の内容が少ない」がほぼ半数を占めた。卒後教育の時期で最も重要な時期は1年目と2〜3年目で、卒後教育内容で最も求められているのは「産科救急」「新生児蘇生」「乳房管理」「異常周産期管理」「分娩診断」「分娩技術」でいずれも高次の知識・技術を要する内容であった。卒後教育では新人教育の重要性が指摘されており、卒前教育と卒後教育の連携に重要性が示唆された。
著者
三輪 のり子 大橋 達子 岩城 直子 河相 てる美 滝原 香 吉澤 環 福井 則子 石川 今日子 寺嶋 順子 山本 美千代 梅田 加洋子 堅田 智香子 高木 妙子 細川 佳子 山田 真由美 楠 早苗 若林 理恵子 安田 智美 泉野 潔 永山 くに子 田中 三千雄
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.101-110, 2005-07
被引用文献数
1

本研究では,欧米における内視鏡看護研究の歩みと現状を明らかにすることを目的に文献的考察を行った. MEDLINE (1951〜2003年)とCINAHL(1982〜2003年)のOvidのWeb版(2004年5月7日現在)を使用し, Key wordを"Nursing and Endoscopy"とする全種類の文献のうち,看護系雑誌に掲載されていた109篇を対象に分析を行った.その結果, 1966〜1980年代までは解説が中心であったが, 1990年代に入ると研究報告や症例報告もみられるようになり,文献数は増加傾向を示していた.しかし約50年間において,解説に準ずるものが全体の86%を占め,研究報告8.3%,症例報告4.6%であり,未だに内視鏡看護に関する研究が乏しい現状が明らかとなった.文献は活用目的により,『患者の安全・安楽への援助(48.7%)』『医学知識の習得(22.9%)』『看護業務の質の向上や円滑化(28.4%)』の3カテゴリーに大別された. 1960年代後半は医学知識の習得のための報告が主であったが, 1980年代中頃から患者の安全・安楽への援助に関するものが急増していた.さらに1990年代になると,再び医学知識の習得のための報告があり,看護業務の質の向上や円滑化を図るための報告も次第に定着してみられるようになっていた.これらは報告内容によりさらに12サブカテゴリーに分類された.とくに患者の成長段階・理解力・疾患や病期・心理面など患者の特性に視点を置いた看護の報告や,スタッフの教育や健康管理,関連部門や他職種との連携などの実践に繋がる報告が少なく,この方面への研究の蓄積が今後の課題として考えられた.