著者
沖野 哲也 後川 潤 的場 久美子 大山 文男
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.71-78, 2004-09-01
参考文献数
26

中国から輸入された食用ドジョウに寄生する蠕虫類の調査を行った。その結果,線虫類の幼虫3種(Spiroxys japonica, Gnathostoma hispidum, Contracaecum sp.)と成虫1種(Pseudocapillaria tomentosa),吸虫類のメタセルカリア6種(Massaliatrema misgurni, Exorchis oviformis, Metacercaria hasegawai a, Metorchis orientalis, Encyclometra japonica, Echinostomatidae gen. sp.)と成虫1種(Allocreadium gotoi),条虫類の成虫1種(Paracaryophyllaeus gotoi),鉤頭虫類の成虫1種(Pallisentis sp.)の計13種を検出した。これらのうち,M. misgurniは国内に定着するおそれがあり注意を要する。
著者
白水 博 初鹿 了 沖野 哲也
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-60, 1999-03

和歌山県太地町立くじらの博物館自然プールで飼育中のシャチOrcinus orca(1985年10月に紀伊半島沖で捕獲)と, バンドウイルカTursiops truncatus(1982年8月に同博物館の自然プール内で出生)がそれぞれ自然排出した裂頭条虫のストロビラについて, その形態を観察した。上記の2宿主から得た虫体は, いずれも頭節を欠くが, 片節の主要部位および虫卵の特徴から同じ種類の条虫で, バンドウイルカ寄生の虫体はやや未熟型と思われた。この条虫は, 1)片節が最大幅16.0mmと大型で, 多くは縦径<幅径であるが, 後方片節では縦径>幅径を呈する。2)各片節には1組の生殖器が認められ, 生殖孔の周囲に著明な乳頭が存在する。3)子宮ループの数は片側13〜18である。4)精巣は髄層内に一層に配列する。5)陰茎嚢は洋梨形で大きく(833×290μm)斜位を呈する。6)貯精嚢はほぼ球形(540×460μm)で壁が厚く(平均108.9μm), 陰茎嚢の背後壁に接続する。7)虫卵は楕円形で, 長径平均65.0μm, 短径平均47.7μm, 卵殻の厚さ平均3.2μmで, 卵殻表面には微小な点刻(pits)が散在する等の形態的特徴から, Hsu(1935)あるは矢崎ら(1982)によるフールマン裂頭条虫(Diphyllobothrium fuhrmanni Hsu, 1935)と同定された。シャチとバンドウイルカは, D.fuhrmanniの新しい自然終宿主である。また, バンドウイルカ寄生の条虫は, 出生後に自然プール内で感染したと考えられるため, このイルカ飼育中に〓料として与えた魚介類(感染源)についても言及した。
著者
小司 久志 平井 隆仁 白倉 哲郎 詫間 隆博 沖野 哲也 若月 保志 沖野 光彦 二木 芳人
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.608-612, 2013-09-20 (Released:2015-02-18)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5

A 37-year-old Nepalese man was admitted to Showa University Hospital because of a loss of consciousness and seizures. He had lived in Nepal, Qatar, Singapore, and India before the age of 34 years.He had no history of having eaten raw pork. His physical findings were normal excluding an abnormal visual field, and a positive serum antibody test result for Taenia solium, CT and MRI examinations showed multiple nodular lesions in his brain and thigh. We resected a cyst from his left thigh and diagnosed him as having cysticercosis based on the presence of characteristic hooklets and suckers on a pathological examination. Later, the Asian type of Cysticercus cellulosa was identified using a mitochondrial DNA test. Albendazole (800mg/day) and prednisolone (60mg/day) were administered for 14 days. All cysticercus were smaller on Day7 andhad almost disappeared on Day14. No adverse effects from the treatment occurred. Cysticercosis is rare in Japan, and cases requiring treatment for a large number of cysticercus in the brain and thigh are rare. We report a case of neurocysticercosis that had a good clinical course.
著者
沖野 哲也 蔵元 一崇 木村 有 田上 弘文 稲吉 厚 八木 泰志
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.13-19, 2008
被引用文献数
1

1996年から2006年に当院で行った早期胃癌に対する噴門側胃切除後の食道残胃吻合法22例(EG群)と,空腸嚢間置法14例(JPI群)を対象とし比較検討した.手術時間はEG群が有意に短く(EG群:JPI群=133分:161分),出血量,術後在院日数は両群で有意差はなかった.縫合不全,狭窄,膵炎,腸閉塞,肺炎等の術後合併症や,胸やけ,つかえ感,嘔吐,下痢,ダンピング症状等の術後愁訴,また食事摂取量,術後体重減少,術後栄養指標変動においても両群間に有意差はなかった.術後1年目の内視鏡検査では食道炎,残胃炎,狭窄,胆汁逆流において両群に有意差はなかったが,食物残渣の残存はEG群が有意に少なく(EG群:JPI群=14.3%:80.0%),JPI群の食物残渣は大部分が間置空腸嚢内に認められた.今回の検討ではEG群と比べJPI群に良好な成績は得られず,手術時間,食物残渣量の点でEG群の成績が良好であり,噴門側胃切除後の再建には簡便で従来の食道残胃吻合法が望ましいと考えられる.