著者
西村 幸満 酒井 正 野口 晴子 泉田 信行
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「団塊の世代」という日本のベビー・ブーマー(以下、BB)は、人口規模の大きさから戦後一貫して文化的・思想的異質性を強調されてきた。欧米(主に米)が消費の担い手としたのと対照的である。世代の特殊性・異質性を過度な強調は、引退過程にも見られた。本研究は、BB世代の引退過程に注目し、就業分布、健康・介護要因が前後の世代と比較して異なるかを検証した。結果から判断すると、BB世代が特殊な傾向をもつとはいえないが、人口規模の大きさによる社会的な対応は避けられない。法改正による就業延長が規模の効果を吸収したようにみえるが、そもそも引退パターンも前世代と変わらないため、法改正の効果と認めることはできなかった。
著者
泉田 信行 中西 悟志 漆 博雄
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.59-70, 1999-05-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

医師誘発需要仮説によれば,医師は患者よりも医療内容に詳しいこと(情報の非対称性)を利用して,患者に対してより密度の高い医療を受けるように影響力を行使できる。通常の財・サービス市場において供給者の増加は,競争を激化させ,価格を低下させるはずである。しかし医師誘発需要仮説が妥当すると,人口当たりの医師数の増加は,医師の裁量的行動による医療サービス需要の増加を誘発し,医療支出を不必要に増大させるかもしれない。しかし医師による誘発が存在しない場合であっても,医療サービスへのアクセス費用が低下することにより患者の直面する実質的な価格が低下し,それにより患者の自発的需要が増大することはあり得る。このような患者主導的需要を考慮しなければ医師誘発需要の効果を過大に推定してしまう可能性がある。そこで本研究では,支出関数を推定することで,医師誘発需要モデルを検証している。支出関数は一定の健康水準を生産するための医療サービスの投入量を測定できるため,受療率の上昇による健康水準の改善は分析モデル内で調整され,医師の誘発する有効的でない医療サービス投入量が分離されて測定可能となる。ここでの推定によれば,人口当たり医師数が1%増加すると,入院サービス使用量は0.8%,外来サービス使用量は0.4%それぞれ不必要に増大する。
著者
田宮 菜奈子 森山 葉子 山岡 祐衣 本澤 巳代子 高橋 秀人 阿部 智一 泉田 信行 Moody Sandra Y. 宮田 澄子 鈴木 敦子 Mayers Thomas Sandoval Felipe 伊藤 智子 関根 龍一 Medeiros Kate de 金 雪瑩 柏木 聖代 大河内 二郎 川村 顕 植嶋 大晃 野口 晴子 永田 功 内田 雅俊 Gallagher Joshua 小竹 理奈 谷口 雄大
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18

誰もが満足できる人生の幕引きができるシステム作りのための、介護医療における実証研究およびそれに基づく提言を目的とした。まず、内外のガイドライン等レビューを行い、次に、我が国における医療・介護における実態・分析として、①看取り医療の実態と予後の検証(医療の視点)を救急病院での実態やレセプト分析により、②老人保健施設における看取りの実態(介護の視点)を、介護老人保健施設における調査から実施した。実態把握から根拠を蓄積し、本人の納得のいく決定を家族を含めて支援し、その後は、適切な医療は追求しつつも生活の質を一義としたケアのあり方を議論し、工夫実行していくことが重要であると考える。
著者
泉田 信行
出版者
医療と社会
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.83-94, 1995

この論文において,今までに行われてきた医療過誤問題に関する研究に関する議論を行う。主にSimon(1981)とSimon(1982)の紹介をする。Simon(1981)は過失責任体系と無過失責任体系の比較分析を行っている。過失責任体系は被告を過失があるときに罰し,無過失責任体系は過失の有無に関わらず彼を罰する。彼女の結果は過失責任体系は無過失責任体系よりもパレートの意味において優越するということであった。<BR>一方,Simon(1982)は裁判システムが原告側に費用をかけるときに被告の製造物の品質がどうなるかを検討した。彼女の結論は非常に自然なものであって,比較的低い所得の個人からなる市場においては製品の品質が比較的低下するというものであった。この結果として裁判システムは誘因体系としては限界があり,それゆえ政府による直接的介入の効果を検討する必要があると思われる。<BR>最後の節において,これらの結果に関するコメントと将来の研究の方向性について論じている。