著者
海津 亜希子 玉木 宗久 榎本 容子 伊藤 由美 廣島 慎一 井上 秀和
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.58-74, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
11

発達障害を対象とした通級での自立活動において教科の内容を取り扱いながらの指導の実態を調査した。通級担当者に任意の1名について回答を求め小学校952名,中学校613名,高等学校173名の児童生徒の回答を得た。教科の内容を取り扱いながらの自立活動の指導の実施について「有り」と回答した割合は,小学校70.3%,中学校76.3%,高等学校25.4%であった。指導の内容は小・中学校のLD,ADHD,ASDいずれの障害種でも「基礎的な学習スキル」,次に「授業への参加の不安を取り除き参加意欲を促すための振り返りや先取り」が高かった。一方「特定の代替手段の使い方」「定期試験,テスト等を受ける際に必要なスキル」は40.0%に満たなかった。自立活動の区分において,50.0%を超えたのはいずれの障害種においても「心理的な安定」であった。また自由記述で求めた課題では「通常の学級との連携」に関するものが24.5%みられた。
著者
海津 亜希子 玉木 宗久
出版者
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究においてはいくつかの下位研究を設定したが中でも本研究の根幹でもある地域協働支援の実現に関しては多大なる成果があげられた。具体的には地域として多層指導モデルMIMの理解・啓発を図りたいとの応募のあった地域を対象にMIM理解・実践セミナーを研究期間中,北海道,宮城,栃木,東京(計2回),山口(計2回),福岡(計3回)で実施することができ,計2,000名以上の参加があり,90%以上の最も高い評価(「有益であった」)が得られた。あわせて教育行政担当者を対象としたMIMサミットは,3年間毎年度実施し,のべ97地域からの参加があり,参加者の95%以上が最も高い評価(「有益であった」)をした。
著者
海津 亜希子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.241-255, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
55
被引用文献数
8

早期の段階での算数に焦点を当て通常の学級で実施するアセスメントを開発した。本研究では多層指導モデルMIM(海津, 2010; 海津・田沼・平木・伊藤・Vaughn, 2008)のプログレス・モニタリング(PM)としての機能を有するかについて検証した。対象は小学校1年生400名。MIM-PM算数版を年間通じて定期的に実施した。妥当性の検証では反復測定による分散分析の結果, 実施回における主効果が認められ, 回を経るごとに得点が高くなる傾向が示された。標準化された学力検査算数とも比較的高い相関があった。また, 既存のMIM-PM読み版とテスト・バッテリーを組み, 双方の得点傾向から3群(算数困難群, 高学力群, 低学力群)に分類し, 比較分析を行った。3群の学力検査算数の得点でも差異がみられた。算数困難群は全体の5.15%であった。実施回×学力特性群の2要因混合計画の分散分析を行った結果, 有意な交互作用, 2要因とも主効果が認められた。MIM-PM算数版の実施により把握できた算数困難群や低学力群は, 高学力群のような有意な得点上昇が一貫してみられなかったが, 当該学習に関する直接的な指導が実施されている期間では有意な伸びが確認された。MIM-PM算数版の活用でつまずきの早期把握の可能性が示唆された。
著者
海津 亜希子 田沼 実畝 平木 こゆみ 伊藤 由美 SHARON VAUGHN
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.534-547, 2008-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
65
被引用文献数
2 10

Response to Intervention/Instruction (RTI) を基にした, 通常の学級における多層指導モデル (Multilayer Instruction Model: MIM〔ミム〕) の開発を行った。MIMを用いて小学1年生7クラス計208名に行った特殊音節の指導の効果が, 学習につまずく危険性のある子どもをはじめ, その他の異なる学力層の子どもにおいてもみられるかを統制群小学1年生31クラス計790名との比較により行った。まず, 参加群, 統制群を教研式標準学力検査CRT-IIの算数の得点でマッチングし, 25, 50, 75パーセンタイルで区切った4つの群に分けた。次に, パーセンタイルで分けた群内で, 教研式全国標準読書力診断検査A形式, MIM-Progress Monitoring (MIM-PM), 特殊音節の聴写課題の得点について, 参加群と統制群との間で比較した。t検定の結果, 4つ全てのパーセンタイルの群で, 読み書きに関する諸検査では, 参加群が高く, 有意差がみられた。参加群の担任教員が行った授業の変容を複数観察者により評価・分析した結果, MIM導入後では, 指導形態の柔軟化や指導内容, 教材の多様化がみられ, クラス内で約90% の子どもが取り組んでいると評定された割合が2倍近くにまで上昇していた。
著者
海津 亜希子 田沼 実畝 平木 こゆみ
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-12, 2009-05-30

通常の学級において、特殊音節に関する多層指導モデル、Multilayer Instruction Model(MIM;海津・田沼・平木・伊藤・Vaughn,2008)を実施した。多層指導モデル(MIM)は、まずは通常の学級においてすべての子どもに対し、効果的な指導が実施される1stステージ、1stステージ指導のみでは伸びが十分でない子どもに対する通常の学級内での補足的な指導である2ndステージ、それでも依然、伸びが乏しい子どもに対し、より柔軟な形態で集中的な指導として実施される3rdステージで構成される。本稿では、3rdステージ指導に進んだ9名の子ども(平均年齢7.2歳、標準偏差0.24)への指導効果を評価した。3rdステージ指導は、1月以降に週1度、給食の準備時間や放課後に1回20分から40分、小集団(5名以下)にてMIM特殊音節指導パッケージを用いて行った。このパッケージでは、(a)視覚化や動作化を通じた特殊音節の音節構造の理解、(b)日ごろよく用いる語を逐字でなく、視覚的なかたまりとしてとらえることによる読みの速度の向上、(c)日常語彙の拡大と使用を焦点においた。指導前後の効果測定には、特殊音節の読みのアセスメント、MIM-Progress Monitoring(MIM-PM;海津・平木・田沼・伊藤・Vaughn,2008)を用いた。結果、指導後に得点の上昇が有意にみられ、さらに読みに対する子どものとらえ方も肯定的なものへ変化した。
著者
海津 亜希子 田沼 実畝 平木 こゆみ 伊藤 由美 VAUGHN SHARON
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.534-547, 2008-12-30

Response to Intervention/Instruction (RTI)を基にした,通常の学級における多層指導モデル(Multilayer Instruction Model:MIM 〔ミム〕)の開発を行った。MIMを用いて小学1年生7クラス計208名に行った特殊音節の指導の効果が,学習につまずく危険性のある子どもをはじめ,その他の異なる学力層の子どもにおいてもみられるかを統制群小学1年生31クラス計790名との比較により行った。まず,参加群,統制群を教研式標準学力検査CRT-IIの算数の得点でマッチングし,25,50,75パーセンタイルで区切った4つの群に分けた。次に,パーセンタイルで分けた群内で,教研式全国標準読書力診断検査A形式,MIM-Progress Monitoring (MIM-PM),特殊音節の聴写課題の得点について,参加群と統制群との間で比較した。t検定の結果,4つ全てのパーセンタイルの群で,読み書きに関する諸検査では,参加群が高く,有意差がみられた。参加群の担任教員が行った授業の変容を複数観察者により評価・分析した結果,MIM導入後では,指導形態の柔軟化や指導内容,教材の多様化がみられ,クラス内で約90%の子どもが取り組んでいると評定された割合が2倍近くにまで上昇していた。
著者
玉木 宗久 海津 亜希子 榎本 容子 伊藤 由美 廣島 慎一
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-33, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
27

本稿では発達障害のある児童生徒を対象とした通級(発達障害通級)における自立活動に相当する指導の主成分を検討することを目的とした。47都道府県の発達障害通級の担当教員に調査を行い,その中で児童生徒1名の実際の指導と自立活動の内容27項目との関連性を評定してもらった。最終的に小学校874名,中学校564名,高等学校147名の発達障害のある児童生徒のサンプルを得た。主成分分析の結果5成分が抽出され,各成分への負荷が高い項目からその意味を検討した。成分1–5はそれぞれ「指導全体」「社会的コミュニケーションの指導」「生活基盤の指導」「自己効力感の指導」「言語コミュニケーション・学習習慣の指導」と名付けた。各成分得点は,児童生徒の学校種と障害種の要因の影響を受けていることが示唆された。これらの結果は,発達障害通級での自立活動に相当する指導の内容や専門性をより良く理解するために役立つと考えられる。
著者
海津 亜希子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.241-255, 2016
被引用文献数
8

早期の段階での算数に焦点を当て通常の学級で実施するアセスメントを開発した。本研究では多層指導モデルMIM(海津, 2010; 海津・田沼・平木・伊藤・Vaughn, 2008)のプログレス・モニタリング(PM)としての機能を有するかについて検証した。対象は小学校1年生400名。MIM-PM算数版を年間通じて定期的に実施した。妥当性の検証では反復測定による分散分析の結果, 実施回における主効果が認められ, 回を経るごとに得点が高くなる傾向が示された。標準化された学力検査算数とも比較的高い相関があった。また, 既存のMIM-PM読み版とテスト・バッテリーを組み, 双方の得点傾向から3群(算数困難群, 高学力群, 低学力群)に分類し, 比較分析を行った。3群の学力検査算数の得点でも差異がみられた。算数困難群は全体の5.15%であった。実施回×学力特性群の2要因混合計画の分散分析を行った結果, 有意な交互作用, 2要因とも主効果が認められた。MIM-PM算数版の実施により把握できた算数困難群や低学力群は, 高学力群のような有意な得点上昇が一貫してみられなかったが, 当該学習に関する直接的な指導が実施されている期間では有意な伸びが確認された。MIM-PM算数版の活用でつまずきの早期把握の可能性が示唆された。