著者
西條 辰義 下村 研一 蒲島 郁夫 大和 毅彦 竹村 和久 亀田 達也 山岸 俊男 巌佐 庸 船木 由紀彦 清水 和巳
出版者
高知工科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007-07-25

特定領域「実験社会科学」の研究者のほとんどがその研究成果を英文の学術雑誌に掲載するというスタイルを取っていることに鑑み, 社会科学の各分野を超えた領域形成が日本で始まり, 広がっていることを他の日本人研究者, 院生などに伝えるため, 和書のシリーズを企画し, 勁草書房の編集者と多くの会合をもち『フロンティア実験社会科学』の準備を実施した. 特定領域におけるステアリングコミッティーのメンバーと会合を開催し, 各班の内部のみならず, 各班の連携という新たな共同作業をすすめた. 方針として, (1)英文論文をそのまま日本語訳するというスタイルは取らない. (2)日本人研究者を含めて, 高校生, 大学初年級の読者が興味を持ち, この分野に参入したいと思うことを目標とする. (3)第一巻はすべての巻を展望する入門書とし, 継続巻は各班を中心とするやや専門性の高いものにする. この方針のもと, 第一巻『実験が切り開く21世紀の社会科学』の作成に注力した. 第一巻では, 社会科学の各分野が実験を通じてどのようにつながるのか, 実験を通じて新たな社会科学がどのように形成されようとしているのかに加えて, 数多くの異分野を繋ぐタイプの実験研究を紹介した. この巻はすでに2014年春に出版されている. 継続の巻も巻ごとで差はあるものの, 多くの巻で近年中に出版の見込みがついた. さらには, 特定領域成果報告書とりまとめを業務委託し, こちらも順調にとりまとめが進んだ. 以上のように本研究は当初の目標を達成した.
著者
田中 愛治 河野 勝 清水 和巳 山田 真裕 渡部 幹 西澤 由隆 栗山 浩一 久米 郁男 西澤 由隆 長谷川 真理子 船木 由喜彦 品田 裕 栗山 浩一 福元 健太郎 今井 亮佑 日野 愛郎 飯田 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全国の有権者から無作為抽出した対象者(サンプル)に対し、ノート・パソコンを用いた世論調査(CASI方式)を日本で初めて実施した。さらに、ノート・パソコンによるCASI調査に、認知心理学的視点を加えた政治経済学実験の要素を組み込み、実験を導入した世界初のCASI方式全国世論調査に成功した。これにより、政治変動をもたらす日本人の意志決定のメカニズムの解明を可能にし得る新たな研究を踏み出した。
著者
田中 愛治 川出 良枝 古城 佳子 西澤 由隆 齋藤 純一 吉川 徹 小西 秀樹 船木 由喜彦 今井 亮佑 品田 裕 飯田 健 井柳 美紀 遠藤 晶久 清水 和巳 Jou Willy 千葉 涼 日野 愛郎 三村 憲弘 村上 剛 山崎 新 横山 智哉 加藤 言人 小川 寛貴 坂井 亮太 中西 俊夫 劉 凌
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2013-05-31

熟慮を経てから市民のニーズを測定するCASI調査と、熟議を通して市民のニーズを探るミニ・パブリックスを比較分析すると、熟議に基づくミニ・パブリックスよりも、熟慮に基づくCASI調査の方がサンプルの代表性は高く、実施のコストが低い点では好ましい。しかし、本プロジェクトの実験・調査を通して、熟慮だけでは難しいが、熟議を通してこそ達成できる効果もあることが分かった。例えば、事実に対する思い込みの是正においては、熟慮ではなく、熟議の効果が確認できた。したがって、CASI調査(熟慮)とミニ・パブリックス(熟議)のどちらにも利点があることが明らかになり、一概に両者の優劣をつけることはできないといえる。
著者
清水 和巳 上條 良夫 大薗 博記
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、1)構成員の匿名性の維持、2)利害関係を大幅に変化させるような外部装置を用いない、という二つの基準を満足させ、かつ、協力関係を形成・維持すると考えられる三つの仕組み(①協力・協調の難易度の段階的変化、②変化の内生性、③目標値の調整)について考察を行なった。その結果、上記三つの仕組みが鹿狩りゲームの調整問題を解決するのに有効であり、かつ、多値選択型の囚人のジレンマにおける協力の失敗の解決にも有効であることがわかった。囚人のジレンマは環境問題などと構造的に同型であり、鹿狩りゲームは年金未納問題と構造的に同型と考えられるので、この研究成果は現実の様々な問題解決の糸口となることが期待できる。
著者
清水 和巳 大和 毅彦 瀋 俊毅 芹澤 成弘 大和 毅彦 渡部 幹 清水 和巳 渡部 幹
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

「社会関係資本の機能と創出」に関して主要な成果を概略的に記す。1. 社会関係資本の尺度として従来、General Social Survey (GSS)のネットワークに関する項目が使用されていたが、この尺度が人々の信頼・協力行動を予測しうるとは言えない。われわれは、ある社会の社会関係資本の水準を測るには、上記のようなデモグラフィックデータだけではなく、実際の行動実験における信頼・協力行動のデータをとり、その二つの関係をしなくてはならないことを示した。例えば、中国の経済発展状況が異なる様々な都市で、公共財実験・信頼ゲーム実験などを行った結果、被験者の信頼・協調が性別や年齢だけではなく、協力行動の有無、リスクや公平に対する選好、他人への期待に影響されることがわかった。2. 信頼に基づく人間の協力行動の生化学的な基礎としてミクログリアが重要あることが示唆された。実験において被験者に脳内免疫細胞であるミクログリアの活性を抑えるミノサイクリンという抗生物質を投与し,他者への信頼が重要となる経済取引実験を行ってもらい,偽薬群と比較したところ,実薬投与群は他者の信頼性判断により敏感になることがわかった。特に、ミクログリアの活性は盲目的な信頼を抑制し、きちんとした判断に基づいた信頼。居力高校を促進する可能性があることが示唆された。3. 囚人のジレンマ・鹿狩りゲームはそれぞれ、協力・協調の失敗を引き起こす状況として広く知られている。われわれは、これらのゲームを繰り返し行う状況下で協力・協調を導くと期待できる三つの仕組み(device)、すなわち、(1)協力・協調の難易度の段階的変化、(2)変化の内生性、(3)目標値の調整、について理論・実験により考察した。その結果、この仕組みが一種の社会関係資本として機能し、人々の協調・協力を促すことが確認された。これらの仕組みは、匿名性の高い現代社会において解決が難しいジレンマ、また、権力の干渉の余地の小さい国家間の問題や個人裁量の範囲内の問題にも適用可能と考えられ、それゆえ外的妥当性が高く、応用範囲も広いと考えられる。
著者
渡部 幹 山本 洋紀 清水 和巳 番 浩志 山本 洋紀 清水 和巳
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

制度の維持と変容を司る心理変数について、それらがどのような役割を果たしているか、そしてそれが制度とどのように関係しているかについて、3つの実験シリーズを行った。それぞれ、公共財における懲罰行動の分類とその行動に対する評価、他者の信頼性を判断する際の脳の賦活動、公正分配の規定要因、についての研究を行った。その結果、交換ネットワークの流動性や懲罰についての共有理解がそれらに影響を及ぼし、制度の生成基盤になる可能性が示された。
著者
須賀 晃一 吉原 直毅 薮下 史郎 若田部 昌澄 若松 良樹 船木 由喜彦 須賀 晃一 藪下 史郎 飯島 昇藏 船木 由喜彦 若松 良樹 梅森 直之 川岸 令和 清水 和巳 若田部 昌澄 谷澤 正嗣
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

社会的正義の基本概念は、今日の社会的問題、公共的問題に解決策を示唆しうるもの、また社会の歴史的・民主的発展に適合的な内実を備えたものであるべき点が明らかにされた。さらに、社会的正義の諸要素間の論理的整合性を追及する一方で、政策理論の基礎を与える組合せを、対象となる財・サービスごとに検討すべきことで合意が得られ、公共財・準公共財・価値財などに関していくつかの試みがなされた。公開性、公正性、接近可能性が重視される一方で、匿名性の処遇については意見が分かれた。