著者
松井 康 今井 智子 永井 智 小林 直行 渡邊 昌宏 近藤 宏 宮川 俊平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.389-393, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
28
被引用文献数
1

〔目的〕運動前のタウリン摂取が,運動によって生じる筋疲労に与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕大学男子サッカー選手10名とした.〔方法〕無作為化二重盲検クロスオーバー試験にて,タウリン水,プラセボ水の2種類を摂取し,75%VO2maxでのエルゴメータによる運動と,最大努力での等速性膝伸展運動を100回行った.測定項目は,血液成分,膝伸展運動中のピークトルク,および大腿直筋の平均周波数(MPF)とした.〔結果〕タウリン水摂取群は血中MB濃度の上昇と,MPFの低下が抑制される傾向を示した.〔結語〕タウリン水摂取が運動によって生じる筋損傷を抑制する可能性があることが示唆される.
著者
高安 肇 田中 潔 武田 憲子 渡辺 栄一郎 渡邊 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.66-70, 2014

女児鼠径ヘルニアにおいて卵管滑脱,卵巣脱出に加えて子宮も脱出しているヘルニア(本症)はまれである.本症3 例を経験したので報告する.症例1:日齢40 に左鼠径部に還納不可能な大小二つの腫瘤を触れた.超音波検査より本症が考えられ,手術所見で確認された.Woolley 法にて手術した.症例2:新生児期に左鼠径部に小腫瘤を二つ触れた.子宮がヘルニア囊後壁を構成していたため,高位結紮できず筋層と横筋筋膜を用いて内鼠径輪を閉鎖した.症例3:7 か月の女児.超音波検査にて左の卵巣と卵管の脱出が疑われた.手術時に子宮も滑脱していることが確認されWoolley 法にて手術した.文献報告17 例と併せて検討したところ本症は生後3 か月以内に発症した例,左側ヘルニア例が多かった.特に3 か月未満の女児において左鼠径部に複数の腫瘤を触れた場合,本症が疑われる.超音波検査にて診断を得,嵌頓の兆候がなければ待機的に手術をすることが可能である場合が多い.
著者
村嶋 恵 菊池 有利子 野見山 哲生 熊谷 奈美 大前 和幸 渡邊 昌 赤倉スタディグループ
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.31-37, 2004-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

Objective: Absorption of cadmium is increased by deficiency of iron in animals, but it is uncertain that the same phenomenon occurs in humans. The purpose of this study is to investigate the relationship between cadmium and iron in the body and to evaluate the influence of dietary habits.Methods: Twenty-five healthy women, aged 20-23 years, were selected by excluding those with renal disease and habitual constipation. They participated in the dietary intervention study to estimate tolerable weekly intake of Cd for 3 weeks in the same dormitory. At 3 months before, at 0 Day, at the 12th Day of the study and 9 months after the study, health check-ups were performed, and Cd in the blood and urine, hemoglobin (Hb), serum iron (iron) and serum ferritin (ferritin) were measured.Results: Cd concentration in the blood (B-Cd) showed a significant correlation with Cd concentration in the urine (U-Cd), and inverse correlation with the body iron storage, such as Hb, iron and ferritin. A food frequency questionnaire showed that no subject showed insufficient dietary intake of iron. Subjects who had eaten grain, millet and brown rice showed higher levels of B-Cd and U-Cd and low levels of Hb, iron and ferritin.Conclusion: Absorption of Cd tended to increase according to a low level of body iron storage among healthy young women.
著者
大坪 拓朗 金子 亮太 渡邊 昌宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1310, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,投球障害に体幹の機能が重要であることは多く報告されている。しかし,投球動作時の体幹回旋運動の筋活動については報告されておらず,体幹筋活動が肩関節に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究の目的は,投球動作時の体幹筋と肩甲骨周囲筋の筋活動の関連性を明らかにすることである。【方法】対象は,中学及び高校時代に野球部に所属しており,肩関節に疼痛既往の無い男子大学生10名(年齢20.4±1.36歳,投球側右腕)とした。筋活動は表面筋電図にて,右僧帽筋上部,右僧帽筋中部,右僧帽筋下部,右前鋸筋,右棘下筋,右外腹斜筋,左内腹斜筋/腹横筋の筋活動を計測した。投球は,右脚より18.44m先に設置されたネットを目標とした。ボールは硬球を使用し球種は直球として20秒間隔でノーワインドアップ投法にて全力投球を7回計測した。測定処理は,各電極から得られた電気信号をサンプリング周波数1000Hzでデジタル変換し,パーソナルコンピュータへ記録した。筋活動量を正規化するため各筋の最大随意収縮(MVC)の測定を行い,root mean square(RMS)を算出し最大筋活動量とした。各投球動作において,光刺激の時点を0msと定め,早期コッキング期(early cocking;EC),後期コッキング期(late cocking;LC),加速期(acceleration;ACC),フォロースルー期(follow through;FT)のRMSを算出し,%MVCを用いて筋活動量の比較を行った。解析には1回目と7回目を除いた5回分の投球動作平均値を用い,各フェイズでの筋活動,および各筋のフェイズ間での比較をおこなうため多重比較検定をおこなった。有意水準は5%とした。【結果】各フェイズでの筋活動比較において,LCでは腹直筋に比べ,外腹斜筋,内腹斜筋/腹横筋が,ACCでは腹直筋に比べ,外腹斜筋,前鋸筋が有意に高かった。FTでは腹直筋に比べ棘下筋が有意に高かった。各筋のフェイズ間での比較では,外腹斜筋はECよりもLCの方が有意に高く,僧帽筋中部はECよりもACC,僧帽筋下部ではACよりもLCの方が有意に高かった。さらに棘下筋ではECに比べACC,FTで有意に高かった。【考察】コッキング期での体幹回旋角度の減少が,肩関節外転時に必要な肩甲骨運動の制限及び運動エネルギー伝達の低下を及ぼし,肩関節への負荷が増大すると報告されている。本研究での対象者は,野球経験者であるが肩関節の疼痛既往がない。本研究の結果から,LCでの外腹斜筋,内腹斜筋/腹横筋の筋活動により体幹回旋運動と体幹の安定が得られ,その後ACCにて僧帽筋,前鋸筋の筋活動により肩甲骨の運動を促すことで,肩関節への負荷が軽減されると推察された。今回の研究では,肩関節に加わる力学的ストレスに関して不明な点が多い。今後は,被験筋を増やし,動作解析装置を用いて肩関節に加わるストレスを詳細にしていく必要がある。
著者
渡邊 昌
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.63-74, 2019-03-25 (Released:2019-05-09)
参考文献数
36

食生活が健康にかかわっていることは古今東西,共通であり,否定する人はいないであろう.筆者は食事を多方面から研究し,玄米,菜食,腹八分目が腸を整え,健康長寿に最もよいと確信を持つようになった.玄米と具の多い味噌汁で必要な栄養素はすべて賄え,さらに抗酸化作用をもつ多くの機能性物質も摂れる.人間は肉体的には老化していくが,精神的には成熟し続けることが可能である.正食(マクロビオティック)は玄米主体の日本食であり,菜食主義者に近い食事である.人間の腸内細菌叢の組成は食事によって変化する.玄米食は多くの酪酸産生菌の増殖を促すものであり,健康な腸内環境の維持に役立っている.長寿者の研究から,望ましい菌は大便菌(フェカリバクテリウム)やビフィズス菌などであり,酢酸や酪酸産生菌であるとされる.これら菌を養うには食物繊維を摂ることが重要で,肉を減らし野菜を多く摂る,玄米を食べるということで達成できる.筆者はコメの機能性に着目してMedical Riceのコンセプトを広めている.低たんぱく玄米は玄米の機能成分は残しつつ腎不全の進行を抑える食材としてほぼ理想的といえる.
著者
望月 沙紀 渡邊 昌宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-231_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】臨床において、下肢の神経徴候のない急性・慢性の腰痛症患者に対して大腿筋膜張筋とハムストリングスにストレッチを実施することで、疼痛の軽減だけではなく、姿勢や歩容の改善が即時的に得られると言われている。また、ストレッチにより筋を含めた組織柔軟性の維持・向上、筋運動疲労回復の促進、疼痛緩和、精神的リラクセーションが期待されると言われている。しかし、腰痛症患者の筋の柔軟性が腰痛に関わるかどうか明確になっていない。そこで、本研究の目的は筋の柔軟性と腰痛の関係を明らかにすることとした。【方法】対象者は、腰痛あり13名と腰痛なし11名の合計24名(20±2歳)の成人女性とした。医師の診断や主観的判断で神経症状、内科的疾患を示す場合は除外した。アンケートにて腰痛あり群となし群に分けた。その後、柔軟性テストにて伏臥位上体そらし(顎床間距離)、トーマステスト(床膝間距離)、体幹捻転(膝床間距離)、SLR(股関節屈曲角度)、エリーテスト(臀踵間距離)、立位体前屈(指床間距離)の順に測定を行った。次に柔軟性テストの順で対応する筋にスタティック・ストレッチを実施し、その直後に再度測定を行った。ストレッチは、各筋に対して30秒間保持、休憩10秒を挟み片側に対し計2回行い、反対も同様に実施した。解析には、実施後測定値から実施前測定値の差を計算し、柔軟性による変化を算出した。統計学的検討は、腰痛のあり群・なし群と各柔軟性テストの差に対応のないT検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】床膝間距離は腰痛のあり群がなし群に比べ、右はストレッチ介入後の測定差に有意差が認められ(2.56±1.72cm、P=0.066)、左には有意な傾向が認められた(2.70±1.98cm、P=0.022)。その他の筋の柔軟性に関しては腰痛のあり群となし群には有意差は認められなかった。【結論(考察も含む)】大腰筋は筋力低下により伸張されると骨盤後傾、腰椎後弯が生じ、短縮が生じると骨盤前傾、腰椎前弯姿勢が生じると報告されており、腰椎の過前弯・過後弯によって腰痛が生じることが明らかとされている。今回、腰痛がある場合には腸腰筋は伸張されやすかったことから、腸腰筋の短縮が認められていたと推察された。また、筋連結の観点から腰痛は腸腰筋と直接関連すると報告されている。これらのことから神経症状がない腰痛者は腸腰筋の柔軟性が低下しており、ストレッチ介入によって伸張されやすいと考えられた。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には、本研究の目的・意義および本研究で得られた情報は個人が特定できないように処理し、データと結果は研究目的以外に用いることが無いことを書面にて説明し、同意を得た。また、本本研究への協力は個人の自由とし、実験の途中でも不利益を受けることなくいつでも撤回できることを説明し実施した。
著者
中村 浩規 横山 晴子 矢口 武廣 鈴木 優司 徳岡 健太郎 渡邊 昌之 北川 泰久 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.445-452, 2011-03-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

In this study, we investigated the effect of histamin H2 receptor antagonist (H2RA) or proton pump inhibitor (PPI) for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. We carried out a retrospective study of 2811 patients who had been prescribed low-dose aspirin (Bayaspirin® 100 mg) for more than 30 days at Tokai University Hachioji Hospital from 2006 to 2008. We classified them into three groups: aspirin alone group (n=1103), aspirin with H2RA group (n=844) and aspirin with PPI group (n=864). Patients who developed upper gastrointestinal lesions were diagnosed with gastric ulcer, duodenal ulcer, gastritis or duodenitis by gastroscopy. We then compared the incidence of upper gastrointestinal lesions among the groups. The incidence in aspirin alone group, aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 2.54%, 1.54% and 1.04%, respectively; that of aspirin with PPI group being significantly lower (p<0.05). Additively, the odds ratio (OR) of aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 0.60 (95% confidence interval [95%CI]: 0.31-1.17) and 0.40 (95% CI: 0.19-0.86) as compared with aspirin alone group, respectively. The upper gastrointestinal lesions were developed within two years in all groups. Our results suggest that the combined administration of low-dose aspirin and PPI is effective for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. Also, the pharmacists should be especially careful for upper gastrointestinal lesions development within two years after administration of low-dose aspirin, regardless of combined whether H2RA or PPI.
著者
細谷 匠 渡邊 昌宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】跳躍力は陸上競技やバレーボール,バスケットボールなど多くの競技種目で必要とされる。近年,スポーツでは体幹筋トレーニングが数多く取り入れられているが,競技で必要とされる跳躍力にどのような影響を及ばしているかは明確になっていない。そこで本研究では,体幹筋トレーニングが跳躍力にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることとした。【方法】対象は健常男子大学生21名(年齢19.5±1.1歳,身長169.9±5.4cm,体重65.3±6.5kg)とした。介入方法として体幹筋トレーニング(TMT),跳躍に影響を与えるといわれている下腿三頭筋へのDynamic stretching(DS),腹部圧迫(COMP)の3種類を実施した。TMTとしてFront Bridge,Back Bridge,side Bridgeをそれぞれ1分30秒ずつ保持させた。DSでは最大努力で膝を曲げず真上に連続ジャンプを10回おこなわせた。COMPでは臍部直下から腸骨稜にかけて弾性包帯を使用しできるだけ強く巻いた。それぞれの介入は3日以上の間隔を空けランダムにすべて実施した。跳躍力の評価は垂直跳びとし介入前と介入後それぞれ2回の計測をおこなった。計測には上肢の影響を取り除く為,腰に手を当てた状態でおこない,ジャンプMD(竹井機器工業株式會社)を用いて計測した。介入前と介入後に計測された値はそれぞれ平均値を用いた。統計処理にはSPSS statistics Ver19を用い,各種目における介入前と介入後を対応のあるT検定で比較した。有意水準は5%とした。【結果】TMTでは,介入前(47.0±5.5cm)に比べ,介入後(48.4±6.1cm)に有意に高くなった(P=0.003)。COMPでは,介入前(47.3±5.2cm)に比べ介入後(48.0±5.7cm)において高くなる傾向が認められた(P=0.071)。DSでは介入前後で有意差は認められなかった。【結論】体幹部の安定性には体幹深部筋の活動が重要であると報告されている。また,体幹を安定させる能力が高い者ほど,下肢の生み出す力を無駄なく上方へ伝達できるといわれている。今回の結果から,体幹筋トレーニングによって深部筋の活動が増加し体幹部の安定性が得られたことで,跳躍力が増したと推察された。また,腹部圧迫によっても腹腔内圧が高まり体幹の安定性が得られることで,跳躍力に影響を及ぼす可能性があることが考えられた。これらのことから単に腹圧を高めるだけではなく,自発的に筋収縮を促し筋活動を高めることが,より体幹の安定性に影響を与えることが示唆された。体幹トレーニングによる上下肢の筋活動の影響も関与している可能性もあることから,今後は体幹筋トレーニングによる上肢・下肢への筋活動と跳躍力に及ぼす影響について明確にしていきたい。
著者
鈴木 優司 横山 晴子 添田 真司 徳岡 健太郎 渡邊 昌之 北川 泰久 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.13-00193, (Released:2014-01-18)
参考文献数
11

Low-dose aspirin-induced gastrointestinal lesions are becoming an important problem in clinical practice. In our investigation of such adverse effects, we obtained 4 important findings considered useful for physicians, as follows; 1) even when aspirin was given at a dose, the incidence rate of gastrointestinal lesions was higher than with other NSAIDs, 2) the odds ratios for gastrointestinal lesions induced by aspirin with a histamine H2 receptor antagonist and proton pump inhibitor were 0.6 and 0.4, respectively, as compared with aspirin alone, 3) it is difficult to administer aspirin, which exerts an antiplatelet effect, without inducing gastrointestinal lesions, and 4) these gastrointestinal lesions appears early, especially within 2 years after administration. We distributed a questionnaire to 41 physicians to confirm our findings, and compared high (n=20) and low (n=21) frequency aspirin prescription groups. The recognition rate of points 1 and 3 noted above in the high group was significantly elevated as compared to the low group, whereas there no significant difference in regard to the information in point 4 between the groups and the rate of recognition was low. Moreover, only 27% of the surveyed physicians were familiar with all 4 points. Prior to receiving this information, 17% of the physicians gave no related instructions their patients, which was reduced to 0% after receiving this information. Furthermore, 98% of those surveyed found the information to be useful. Our results suggest that these 4 points of information regarding potential adverse gastrointestinal effects of low-dose aspirin are useful for physicians.
著者
柿木 隆介 渡邊 昌子 金桶 吉起
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本研究に用いたMicro-SQUIDは特注で製作した世界唯一の機器であり、まさに萌芽的研究の主旨にかなった研究テーマであった。この3年間は実用化における諸問題の解決に力点を置いて研究を行なった。すなわち、SQUID自体の問題に加え、磁気シールドルーム(これも世界で最も小型のものを特注した)にも多くの問題が発生した。さらにソフトウェアの多くも新たに作成したが、初期マイナートラブルが多く発見され、それを1つずつ解決せねばならなかった。昨年夏にはようやく実用化が可能となり実験を開始する事ができた。先ず末梢神経の記録を行った。指を刺激して手首部を上行する活動電位の計測を行った。Micro-SQUIDの極めて高い空間分解能は、上行する刺激信号が4双極子であること、またその伝導時間が平均58.7m/secであることを明らかにした。信号が上行する状況をmsec単位で明確かつ詳細に記録したもので、世界で初めての報告であった。また同様の刺激条件時に頭皮上にMicro-SQUIDを置いて初期大脳皮質反応の記録に成功した。現在は、さらに聴覚、視覚などの刺激による反応記録も行っている。現在はヒトを対象とした研究が主体であるが、今後はさらにサルでの実験も考慮している。さらに交通事故による「引き抜き症候群」患者の検索を目的として、先ず健常人を対象として腕神経叢より頚部神経節に至る末梢神経近位部の検索を行なった。Micro-SQUIDの極めて高い空間分解能は、上行する刺激信号が4双極子であること、またその伝導時間が平均約60m/secであることを明らかにした。来年度は多数の臨床例を対象として検査を行なっていく予定である。
著者
中出 麻紀子 村上 晴香 宮地 元彦 饗場 直美 森田 明美 霜田 哲夫 渡邊 昌
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.44-53, 2017-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
27

我々は,肥満者に対する行動科学的手法を用いた減量プログラム(佐久肥満克服プログラム)を開発し,無作為化比較対照試験および1年間の追跡により,その有効性を明らかにしてきた。本資料論文では,日本運動疫学会プロジェクト研究「介入研究によるエビデンスの『つくる・伝える・使う』の促進に向けた基盤整備」の一環として,減量プログラムのエビデンスを提供し,プログラムの一般化可能性についてRE-AIMの観点から検討を行った。本減量プログラムは,食事や身体活動の改善に関する目標を対象者自身が考え,日常生活において実践できるよう,医師,管理栄養士,健康運動指導士が連携し支援を行うものであった。対象は,人間ドック受診者における肥満者であり,プログラムの到達度は24.1%であった。介入群の対象者では,プログラムにより,体重等の減少やその維持が認められた。 本プログラムは特別な施設等を必要とせず比較的容易に実施することが可能であるが,今回総勢19名もの管理栄養士・健康運動指導士が指導に携わり,その多くが研究所のスタッフであったこと,介入に多くの時間を要したことを考えると,通常の保健指導の現場へそのまま適用するのは困難であると考えられる。したがって,今後,今回得られた成果から介入手法の中で効果的であったものを明確にし,それを現場の予算に応じて活用していくことが重要だと考えられる。
著者
添田 真司 高柳 理早 渡邊 昌之 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.5, pp.589-593, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

In this study, we established a methodology to calculate the rate of overlooking a dispensing error (inspecting error rate) as a new index for the purpose of determining dispensing error and malpractice rates. Using data obtained from analyses of these error rates at our and two other hospitals, an inspecting error rate was calculated for each institution. Our results showed that inspecting errors occurred at a frequency 3-5 times greater as compared to dispensing errors at each of the examined hospitals. We concluded that construction of a higher quality safety management system would be enabled by incorporation of an inspecting error rate as a new index to evaluate medical safety in regard to dispensing of medicines and managing inspection accuracy.
著者
田中 信治 樫田 博史 斎藤 豊 矢作 直久 山野 泰穂 斎藤 彰一 久部 高司 八尾 隆史 渡邊 昌彦 吉田 雅博 斉藤 裕輔 鶴田 修 五十嵐 正広 豊永 高史 味岡 洋一 杉原 建一 楠 正人 小池 和彦 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1321-1344, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
203
被引用文献数
2

大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変としては,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を2014年に作成した.本ガイドラインでは,手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行(2017年5月に改訂)されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.大腸ESDは2012年4月に保険適用となったが,2018年4月には保険適用範囲と診療報酬点数が改訂された.「大腸ESD/EMRガイドライン」発刊後,SSA/Pの病態解明やESD症例のさらなる集積もなされており,ガイドライン初版発刊から5年目の2019年に最新情報を盛り込んだ改訂版を発刊するに至った.
著者
荒井 望 渡邊 昌宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0820, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】松葉杖は下肢機能障害者に対して汎用される補助具である。また,下肢への荷重量を自由に選択できるため幅広い疾患に適応となるとされている。しかし,松葉杖やロフストランド杖歩行は,上肢への負担が増加するため心血管系に及ぼすストレスが大きいとされている。そこで本研究は,松葉杖歩行の速度の違いで身体に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人14名(年齢20.4±0.5歳)とした。対象者の歩行速度を測定するため,50mの歩行路その前後3mずつに助歩行路を設置した。対象者はその歩行路を通常速度で歩き,その歩行時間から歩行速度を導きだした。歩行速度から,先行研究で報告されているトレッドミル上速度の変換式,y(km/h)=0.65x(km/h)+0.04(x:設置した歩行路での歩行速度,y:トレッドミル上歩行速度)に代入し,トレッドミル上での速度を決定した(通常歩行)。松葉杖は両松葉杖を使用し左足免荷で行った。松葉杖歩行では,通常歩行の50%の速度と松葉杖歩行が不慣れな通常歩行の25%の速度の2通りで行った(松葉杖25%,松葉杖50%)。3条件(通常歩行,松葉杖25%,松葉杖50%)は,3日間に分けランダムに行った。測定機器は呼気ガス分析装置(アニマ株式会社AT-1100)を用いた。各条件それぞれトレッドミル上で3分間安静座位後,4分間の歩行を実施し,体重当たりの酸素摂取量(VO2/W),METs,酸素摂取量(VO2)と,安静時と終了時の脈拍数を測定した。統計処理には,SPSS Statistics19を使用し,通常歩行と松葉杖25%と松葉杖50%のVO2/W,METs,VO2,脈拍数に関して,それぞれ1要因分散分析と多重比較を行った。有意水準は5%とした。【結果】VO2/W(ml/min/kg)とMETsと脈拍数(回/min)は,通常歩行(8.99±2.5,2.7±0.4,86±10.0)<松葉杖25%(12.14±2.0,3.5±0.6,103±19.9)<松葉杖50%(14.69±3.3,4.2±0.9,113±25.7)とすべて有意な増加が認められた(P<0.05)。一方,VO2は有意差を認めなかった。【結論】歩行補助具を用いた場合,通常歩行より酸素摂取量が高くなると報告されている。本研究では,通常歩行に比べ松葉杖歩行では低速度からVO2/W,METs,脈拍数が増加する傾向が明らかとなった。また菅原らは,心拍数が増加すれば酸素摂取量や消費カロリーも増加すると報告している。つまり,呼気ガス分析装置を用いらなくとも心拍数だけで身体負荷をある程度推察することが可能といえる。本研究から,松葉杖歩行では歩行速度に関わらず身体への負荷が増加することが明らかとなったため,臨床において脈拍数やMETsの変化を常に把握する必要があると考えられる。
著者
坪田(宇津木) 恵 笠岡(坪山) 宜代 渡邊 昌
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.1234-1241, 2008 (Released:2012-01-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1

2007 年9 月、アメリカワシントンDC で食事摂取基準ワークショップ「食事摂取基準の進展1994~2004 年:課題と新たな挑戦」が開催され、1994 年より策定されているアメリカ・カナダ版食事摂取基準の、基準値の設定方法から活用までのさまざまな段階における現状と、今後の課題について議論がなされた。 本論文では、ワークショップに先駆けて公表された事前報告書、ならびにワークショップでの議論をもとに、アメリカ・カナダにおける食事摂取基準活用の現状と課題について解説する。 特筆すべきは以下の3 点である。1.アメリカ・カナダにおいて、食事摂取基準はあくまでエネルギー・種々の栄養素の摂取基準値を示した科学的根拠である。2.食事摂取基準活用における重大な問題は、その概念の難しさから食事摂取基準に対する概念や解釈に混乱が見られること、各指標の誤用が認められることである。3.実際の栄養活動の場においては、食事摂取基準を直接・間接活用したダイエタリーガイドラインやマイピラミッドなどの「明確」で「実用的」、「簡単」な媒体の使用が求められる。
著者
横田 和子 中村 隆俊 佐藤 武郎 樋口 格 山下 継史 渡邊 昌彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.615-619, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
11

症例は48歳,男性.人間ドックの腹部超音波検査にて,右腎腹側に6cm大の腫瘤を認め,精査目的に当院紹介となった.腹部造影CTでは,右腹横筋に接して6cm大の境界明瞭で内部均一な腫瘤性病変を認め,腹部MRIでは,T1脂肪抑制画像で内部均一な低信号を認めた.注腸造影検査では,横行結腸肝弯曲中心に壁外性の圧排像を認めた.以上より腹横筋脂肪腫が疑われ,悪性腫瘍が否定できないため手術の方針となった.画像上,腫瘍は腹腔内に突出していたため腹腔鏡下手術の方針とした.右肋骨弓下に突出する腫瘍を認め,周囲臓器への浸潤はなく腹膜および腹膜前脂肪織・腹横筋の一部とともに合併切除した.病理組織学的所見は,被膜を有し異型に乏しい脂肪組織の増生を認め,辺縁に全周性に筋組織が付着するintermuscular lipomaと診断した.腹壁由来脂肪腫を腹腔鏡下に切除しえた症例は非常に稀であるため,文献的考察を加えて報告する.