著者
渡部 周子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

前年度に引き続き、近代日本の「「かわいい」の生成」について、人文社会科学(またこれに影響を与えた自然科学)や芸術の動向と、総合的に捉えることを試みた。文献資料や図像資料の調査や情報収集、整理、解釈という方法に基づく。本年度は、「かわいい」ということを明確に把握するために、これと対比される「かわいくない」ことについても分析を進めた。具体的には、少女雑誌での投稿文化の発展、少女雑誌における編集者と読者の関係性、少女雑誌読者の芸術志向(文学志向)、女子教育の動向と少女雑誌に与えた影響、これらの観点から調査を試みた。加えて、アクチュアルな意義を問うために、コンテンポラリー文化の動向についても目を配った。成果発表としては、次の実績を上げることができる。女子学研究会(2017年9月16日、於甲南女子大学)にて、「自著紹介 渡部周子『つくられた「少女」―「懲罰」としての病と死』(日本評論社、2017年)」と題して、口頭報告を行った。この発表は、本研究計画に先立つ、科学研究費による研究課題「明治期女子教育の制度化に際する西洋科学思想の影響に関する研究」の成果としてまとめた、自著の紹介を軸としている。ただし、発表の中で、この研究成果と、進行中の研究課題である「かわいい」の生成が、どのように結びついているのか、現在はどのような問題に取り組んでいるのか、「かわいい」と「少女」との関連から考察することで示してもいる。コンテンポラリー文化の動向(現代日本のアニメが描く「少女」観等)との比較、相対化、またアクチュアルな意義を、この発表で問うこともできた。