著者
徳永 弘子 湯浅 将英 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.241, pp.7-12, 2007-09-23
被引用文献数
8

ノンバーバル情報に基づく複数人会話の発話交替モデルを提案する.3人が会話をしている映像から会話参与者の視線行動,特に話者が発話中に,一人の聞き手がもう一人の聞き手を見る行動に着目し,分析をした.このときの聞き手の発話したい/したくないというマインドを評定し,その後の発話行動との関係を調べた.その結果,聞き手の視線には,次に発話したい/したくないというマインドが表出され,そのマインドを参与者が相互に理解して,円滑な発話交替がなされることが示唆された.これらの結果から,発話交替における意図理解の階層モデルを提案する.最後に擬人化エージェント,映像対話システムへの応用について述べる.
著者
武川 直樹 峰添 実千代 徳永 弘子 湯浅 将英 瀬下 卓弥 立山 和美 笠松 千夏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.187, pp.31-36, 2008-08-19
被引用文献数
7

食事は栄養をとるだけでなく,人と人のコミュニケーションにおいても重要な役割を果たしているが,食事中のコミュニケーションを分析した研究は少ない.ここでは,食事をしながら女性3人が会話をする映像を収録し,収録した映像データからコミュニケーションの行動を分析した.3分30秒の映像のスクリプトデータを作成し,そのデータを基に食事動作,視線・表情の表出,発話の統計量を調査してテーブルトークの構造を分析した.食事中,一つの口を時間の経過にあわせ,食べる行動,話す行動のどちらかのために選択する必要があるが,人は話しながら次に自分が話し続けるか,食べながら次に話すべきかを,他人の行動と自分の行動を照らし合わせて判断しているためであることが示唆された.また,人は会話への関与が小さくなるに従って,食事に対する積極的なアクセスが見られた.さらに,食事の会話では,次話者の選択は発話交替の瞬間に決まるのではなく,その前からすでになされていることが示唆された.
著者
徳永 弘子 湯浅 将英 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.268, pp.23-28, 2006-09-23
被引用文献数
8

人の自然な会話では,言葉だけではなく,言葉とともに表出される視線や顔向き,表情などのノンバーバル情報が重要な役割を果たす.複数人の会話が円滑に進むのも話の内容と顔から表出されるノンバーバル情報が話したい・聞きたいという意図や戦略をお互いに伝えあうからである.本研究は,複数人が参与する会話における発話交替の仕組みを明らかにするため,3人会話の発話交替・継続の視線行動分析を行う.映像データから発話交替時の話者の視線,次話者となる聞き手の視線,次話者とならない聞き手の視線を分析し,その結果を発話交替遷移モデルとして提案する,特に,ここでは,聞き手の立場に注目し,聞き手が,話者やもう一人の聞き手に向ける視線量,その配分と,次話者になる頻度との対応関係を明らかにし,聞き手の発話意図・戦略を解釈する.聞き手を「話者をより多く見る」タイプと「話者をより少なく見る」タイプに分けて分析した結果,次話者になりたい聞き手,次話者になりたくない聞き手の特異な視線行動パターンが抽出できた。
著者
湯浅 将英 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.124-137, 2011-01-01
被引用文献数
1

本研究では,人にとって分かりやすい,受け入れやすい擬人化エージェントを開発するため,表情,視線などの非言語表現と印象,行動履歴に基づいたエージェント行動モデルを提案する.新しいモデルでは,喜びや悲しみといった擬人化エージェントの表情やその利用履歴が,人の誠実性,友好性や有能性という印象を形成し,エージェントと協力行動をとるかとらないかの人の意思決定に影響を与えるとする.本研究では,現実のコミュニケーション場面の一部を切り出した交渉ゲームを設計し,擬人化エージェントの非言語情報を制御し,ゲーム中の人の行動を分析することでモデルを確かめる.実験の結果,非言語表現やその行動履歴が印象を形成し,意思決定に強く影響を与えることが分かり,提案するモデルが部分的に人の意思決定行動を説明することが分かった.本手法は擬人化エージェントにどのような状況でどの非言語表現をすべきかの設計することに役立つ.
著者
徳永 弘子 武川 直樹 木村 敦 湯浅 将英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.3-14, 2013-01-01

複数人が集って共にする食事(共食)は,人のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているが,共食の場の構造を定量的データに基づき分析した研究例は少ない.本研究では,3人が食事をしながら会話をする映像から,参与者の視線,発話の行動を定量的に調査し,共食会話の構造を分析した.特に,視線持続時間と参与の役割ごとの発話行為,会話の順番交替直前の視線先と順番交替の関係を詳細に調べた.その結果,共食会話は食事のない会話に比べ,人に向ける視線持続時間が短く,会話は話者発話-聞き手発話-話者発話の隣接で構造化されること,更に話者発話による会話の順番交替では,会話者同士が視線を合わすことなく発話が遷移するケースが多いことが明らかになった.これにより,共食中は会話への参加の義務が緩く,話し手の発話は場に投げられ,次の発話は誰が開始してもよい場として形成されていることが示唆された.
著者
大村 英史 片上 大輔 湯浅 将英 小林 一樹 田中 貴紘
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回全国大会(2015)
巻号頁・発行日
pp.2K4OS14a4, 2015 (Released:2018-07-30)

雰囲気は環境から知覚される情報の総体であり,知覚される情報を定量的にコントロールすることは,任意の雰囲気のコントロールと同義であると私たちは考える.この考えから,エントロピーに基づいた確率分布により,人が知覚する情報量を操作するシステムを実現した.このシステムを音楽,表情,図形といった異なるメディアに実装したところ,定量的に人が知覚する情報を操作でき,さらに雰囲気の制御が可能であることを確認した.
著者
瀬下 卓弥 武川 直樹 湯浅 将英 笠松 千夏 立山 和美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.233, 2008 (Released:2008-11-10)

目的近年,個食の増加が人の様々な面に影響する問題として指摘されている.解決策として共食を推奨するが,その根拠を検証する必要がある.人の食事行動を映像分析し,共食の効果を検証することを目的とする.方法会話分析,行動分析の手法を援用し,共食中の人の行動を撮影して映像分析する.分析材料として,二人が横並びになってラーメンを食べながら会話する設定を用いる.食事中のコミュニケーションを,視線の方向(だれが何を見ているか),食行動の状態(スタンバイ:手が食器から離れている/レディー:手に箸や容器をもっている,麺をつかんでいる/ゴー:口に入れた,咀嚼中)によって分類し分析する.分析は,食状態,発話を時間にそって記述し,定量的な分析をするとともに,人の食べたい,話したいなどの気持ちを読み取る.結果2名3組の共食シーンを収録し,約3分間の行動を書き起こし,発話,食行動,視線量の頻度などを測定した.その結果,実験協力者Aはスタンバイ状態の表出が90秒以上に対し,Bが10秒ほど,Aはレディー状態からゴー状態へ遷移するとき相手へ視線を送る回数が4回に対し,Bは1回以下であった.また,Aの発言量は73秒に対し,Bは26秒であった.これらの数値からこの3分間のコミュニケーションにおいて,Aは会話に対する意欲がBよりも高く,Bは食べる行動の意欲が高いといえる.このような分析は,食行動におけるルールや個性,癖など,人の食事中のコミュニケーションの仕組みを明らかにし,味の評価だけでなく,コミュニケーション満足度の評価指標の確立にも寄与すると考える.今後,分析対象データを増やし,視線配分量や食行動配分量などの行動と共食の満足度との関係を明らかにする.
著者
山名 健悟 滝沢 敏裕 湯浅 将英 大山 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.33, pp.39-46, 2006-03-22

本報告では,定期的に収集したblog記事から,購入したい商品に関する情報を検索し表示することによって,商品の選定を支援するシステムについて述べる.ユーザに本システムを試用してもらい,blogの評判の時系列表示とニュース記事の表示が有用であることが確かめられた.また,検索キーワードと関連するblog記事やニュース記事を適切に抽出する方法により,システムを改善することについて述べる.In this report, we describe a system that helps users select a product by showing information of the product based on blog retrieval. We confirmed that the system is useful for users to find reputations and information of products by evaluation of users. In addition, we propose a method to extract suitably blog and news articles that is related with user's query, in order to develop the system.
著者
徳永 弘子 武川 直樹 寺井 仁 湯浅 将英 大和 淳司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.889-900, 2013-11-15 (Released:2013-12-19)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本研究では,3人の会話において,話者が次々と交替する順番交替の仕組みを,参与者らが表出する態度とその解釈から明らかにする.これまでの順番交替の研究は,現話者と次話者との間に交わされる発話や視線の方向など直接観測可能な情報を対象に分析されてきた.それに対し本稿では,参与者の視線や表情,しぐさは自己の内部状態が表出された態度であると捉え,態度の表出と順番交替の関係を明らかにする.そのため,順番交替の直前に表出される「話したい」「聞きたい」などの態度を評定し,続いて,次に自分が「話し手になる」「聞き手になる」役割志向態度と順番交替の関係を定量的に分析する.さらに,役割志向態度による順番交替のプロセスを事例分析する.結果,聞き手の役割を志向した参与者が次話者になる場合があるなど,表出された態度が参与者相互に解釈理解されて,場に適した順番交替が選択されていることが示唆された.この分析の結果は,コミュニケーションの構造が視線や仕草など,観測される個々の行動だけからではなく,それらを統合して解釈される態度によって検討されることが必要であることを示唆するものである.
著者
北村 裕貴 湯浅 将英 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.457, pp.55-60, 2010-03-01

本研究は人同士のコミュニケーションにおいて視線によって伝わる意図や興味の理解と表出の仕組みを探り,意図や興味を表現できるロボットの視線動作をデザインすることを目的とする.人の意図や興味を理解すると同時に,人にわかりやすく意図や興味を伝える親密なコミュニケーションができるロボットの開発に寄与することを目指す.ここでは,特に人の興味や意図を表わす「いる」「いらない」を表す視線動作に注目し,人の視線によって意図を伝える場合とロボットの視線によって伝える場合とを比較する.コミュニケーションロボット(Phyno)を用いて評価実験を行った結果,ロボットの視線動作も人の場合と同様に人により理解可能であることを明らかにする.また,ロボットと人では凝視時間によって「いる」,「いらない」の解釈が変わることを示す.
著者
武川 直樹 木村 直樹 井上 智雄 湯浅 将英
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人が共に食事をする「共食」を例題に会話コミュニケーションを分析し,日常的コミュニケーションの相互行為の仕組みを明らかにし,共食支援システムを実現する研究を実施した.共食評価用会話コーパスを作成し,書き起こしたデータから共食中の会話の順番交替,食事動作の構造を解明した.たとえば,聞き手は会話への関与の度合いに応じて摂食タイミングを調整しコミュニケーションの構築に寄与していることを明らかにした.また,人と共食をするエージェントSurrogate Diner,ビデオメッセージを通じて疑似的に非同期な共食をするKIZUNAシステムを開発した.共食コミュニケーションに改善効果があることを明らかにした.
著者
湯浅 将英 斎藤 恵一 武川 直樹
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.127, no.11, pp.1865-1870, 2007-11-01 (Released:2007-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

In this paper, we describe that brain activities associated with emoticons by using fMRI. In communication over a computer network, we use abstract faces such as computer graphics (CG) avatars and emoticons. These faces convey users' emotions and enrich their communications. However, the manner in which these faces influence the mental process is as yet unknown. The human brain may perceive the abstract face in an entirely different manner, depending on its level of reality. We conducted an experiment using fMRI in order to investigate the effects of emoticons. The results show that right inferior frontal gyrus, which associated with nonverbal communication, is activated by emoticons. Since the emoticons were created to reflect the real human facial expressions as accurately as possible, we believed that they would activate the right fusiform gyrus. However, this region was not found to be activated during the experiment. This finding is useful in understanding how abstract faces affect our behaviors and decision-making in communication over a computer network.
著者
湯浅 将英
出版者
東京電機大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

人と擬人化エージェントとの円滑な発話交替の設計には,(1)人の観察からの発話志向態度である「話したい/聞きたい」ときの顔表情と仕草のモデル化,(2)エージェントの「話したい/聞きたい」の非言語表現の作成と主観的評価,(3)エージェントの「話したい/聞きたい」の非言語表現時の人の脳活動計測,(4)評価結果,脳計測結果からのモデルの再作成が必要である.本研究は,(2)主観的評価に加えて,(3)脳計測を用いることにより,非言語表現モデルを評価するものである.さらに(4)主観的評価と脳計測による評価を繰り返すことで,より詳細な表現モデルの構築する.22年度では,擬人化エージェントによる発話志向態度である「話したい/聞きたい」を示す顔表現を探った.複数のさまざまな「話したい/聞きたい」を示す顔表現を持つエージェントキャラクタを作成した.アンケートによる主観的評価により,複数の顔表現の特徴を考察し「発話志向態度」を示す顔の表現モデルを構築した.作成した抽象的な発話志向態度のモデルと表現は,今後,機械による人の発話志向態度の認識,およびロボットや擬人化エージェントの表現などに幅広く応用可能である.さらに発話志向態度モデルの明示性/非明示性に着目し,語用論の観点から考察を行った.考察に基づき,脳計測実験のための実験デザインを作成した.今後,擬人化エージェントによる「話したい/聞きたい」の表現について脳計測データを収集し考察する.
著者
武川 直樹 徳永 弘子 湯浅 将英 津田 優生 立山 和美 笠松 千夏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.7, pp.500-508, 2011-07-01

人と一緒に食事をすることは人のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているが,研究例は少ない.ここでは,3人が食事をしながら会話をする映像から食事動作,視線,発話の行動を定量的に調査して共食会話の構造を分析した.人は,共食会話中,一つの口を,食べる行動,話す行動のどちらかのために選択していると考えられたが,分析の結果,口に食べものが入っている状況でも他人の行動と自分の行動を照らし合わせて話すべきときには発話を行っていることが示された.食事によって会話に沈黙を生じないようにしていることが分かった.また,箸,食器をテーブルに置いて話す動作は食事の開始,終了以外では見られず,食事にも関与し続けることが分かった.以上の分析の結果,共食会話では会話を優先しつつ,食事をするという構造が明らかになった.