著者
許 晋碩 澁谷 啓
出版者
Japan Chapter of International Geosynthetics Society
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.165-172, 2012

近年,地盤内構造物の建設技術が飛躍的に進展し,我が国のような狭い国土においても立体的で効率的な土地利用が可能となってきた.例として,宅地,道路あるいは鉄道の既存盛土構造物中に,周辺環境や交通をそれ程阻害することなくコンクリートボックスを挿入する工法,比較的薄いプレキャストコンクリートアーチカルバートを補強盛土内に設置する低コストなトンネル工法,等が注目されてきており,施工実績も着実に増加している.このようなコンクリートカルバートの設計では,地盤工学だけでなく構造工学の知識が要求される.一方,盛土のような地盤構造物の設計においては,施工に伴う基礎地盤や盛土の変形を陽な形で取り入れた性能設計法の導入は未だ不十分な状況にある.本研究では,アーチカルバートの新設工事中に発生した亀裂・変形トラブルに対してその原因を究明し,工事再開のために採用した対策工について記述している.
著者
後藤 聰 龍岡 文夫 澁谷 啓 金 有性 佐藤 剛司
出版者
The Japanese Geotechnical Society
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.169-180, 1991-03-15 (Released:2008-02-29)
参考文献数
16
被引用文献数
187 302

A simple device named "local deformation transducer(LDT)" was developed to investigate stiffness of soils that can be measured in the laboratory for strain levels ranging from 10-6 to 10-2. The theoretical consideration into the non-linear, but uniquely determined, relationship between the gauge strain (i.e., output voltage) and the axial strain is first described. The accuracy of the strain measurement using LDT is then discussed based on the theory and the results of calibration tests. The stability of the output voltage was examined for a few days using a dummy. In isotropic consolidation tests performed on a fine clean sand in triaxial cells, the internal axial strains measured using LDT agreed well with those associated with the condition of no bedding error, which were extrapolated from the results of tests using the specimens with various heights. Besides, in plane strain compression, the internal axial strain measured using the LDT was close to that determined by means of a laser speckle method. The capability of the LDT has been demonstrated in triaxial tests in which the variations of Young's modulus of a gravel, a cement-treated sandy soil and a soft rock were successfully measured for the prescribed range of strains as the specimens were subjected to both monotonic and cyclic loadings.
著者
西岡 孝尚 澁谷 啓
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.397-415, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

特殊土に位置づけられる火山灰質粗粒土のうちスコリアは,これまで十分な報告がなく,その工学的性質に関して十分議論されていないため,地盤材料としての適否の判断が難しい。そこで本論文では,富士山の東部山麓地域に広く分布する「スコリア」と称される火山砕屑物を用いて,盛土や構造物の裏込め材など道路土工への利用を目的として,その土質性状の把握と工学的性質を原位置および室内試験により詳細に検討した。一連の調査・試験の結果から,当該地域に分布する「スコリア」は,透水性,圧縮性,せん断強度のいずれの側面からも砂礫材料と同等あるいはそれ以上の水理・力学特性を示すことが分かった。例えば,スコリアを所定の締固め度で盛土施工すれば,十分な安定性が得られるばかりでなく,飽和化による沈下等の変状は発生しないことが分かった。一方,単位体積質量が1.0Mg/m3前後と小さいこと,粒子の破砕性が顕著なため,施工時の粒子破砕による粒度分布の変化により結果的に所定の締固め度を満足せず,盛土の性能低下が生じる可能性がある。
著者
川口 貴之 三田地 利之 澁谷 啓 佐藤 信吾 野崎 寿信 佐野 佶房
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.575-576, 2003

各種地盤材料は0.001%程度以下の微小ひずみ域では弾性的な挙動を示し,この領域内でのヤング率は載荷速度によらないことが報告されている.そこで,5オーダーにわたる極めて広範囲な載荷速度での一連の三軸圧縮試験を実施した.この結果から,分速0.02~2.0%の載荷速度で実施したCU試験より得られる非排水ヤング率はほぼ共通な値が得られるものの,分速0.00006~0.002%で実施したCD試験より得られる応力~ひずみ関係は載荷速度に大きく依存し,クリープの影響を考慮しない限り,共通な排水ヤング率を得られないことを確認した.また,本文ではこれらの弾性ヤング率の増減を支配する因子についても議論している.
著者
澁谷 啓 加藤 正司 鳥居 宣之 河井 克之 川口 貴之 齋藤 雅彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

中越地震や能登半島地震で発生した地盤災害は, 地下水位の高い盛土に集中していた. 一方, 豪雨による盛土崩壊も後を絶たない. 兵庫県で発生した台風による補強土壁の崩壊事例では, 雨水の浸入により盛土本体が弱体化したことに加えて, 盛土背部で水位が急激に上昇し, 補強土壁盛土全体が押し流された. この種の地盤災害軽減のためには, 盛土内および周辺への雨水の浸入を決して許さないことが肝心である. 本論文では, 盛土を囲むようにジオシンセティックス排水材をL型に配置し, 鉛直に設置した排水材で受けた浸透水を盛土底部に水平に設置した排水材に流すことにより盛土外へ速やかに排水させる方法であるジオシンセティックスを用いたL型排水盛土防水工を新たに提案した.
著者
澁谷 啓 川口 貴之 鳥居 宣之 木幡 行宏 石川 達也 齋藤 雅彦 中村 努 加藤 正司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,ジオシンセティックスを用いたL型排水盛土防水工を,補強土(テールアルメ)壁工法に適用し優れた効果を確認した.谷埋め盛土など背面側からの浸透水が懸念される箇所で有効に機能するものと思われる.排水機能が健全な状態では震度 6 強~7 強震動観測地区であっても被災を免れると考えられる.また,スラグおよびスラグ混合土を用いた土層の変位量が一般土を用いた場合より小さいこと,また,スラグ補強土壁の盛土造成時の締固め度 80~85%程度でも安全率が Fs=1.6 以上確保できた事実よりスラグ補強土壁が施工性に安全であると判断される.