著者
片山 善博
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.168-173, 2007

図書館本来の機能,つまりミッションは,民主主義社会の国民・住民の「自立支援」を「知的インフラ」という側面で支えることである。真の民主主義社会の実現には,政府と国民との間でできるだけ広範な情報共有が必要であると同時に,政府が発信する情報だけでなく,いわば「対抗軸」ともいうべき客観的資料や政府案への問題点を論じた資料など,バランスの取れた情報環境が必要である。また,重要な政策決定を審議する際,失敗事例,諸外国事情を含め,基礎となる資料や情報は不可欠である。それらの情報環境を担うのが図書館であり,図書館のミッションといえる。そして,それらの情報へのアクセスを的確に行うのが司書の役割である。
著者
片山 善博
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.142, pp.31-44, 2020-03-31

本稿は,社会福祉の価値を,人格と承認という観点から考察することで,その基礎づけを試みた.まず,岡村重夫が「人間の尊厳の哲学的基礎」とした「主体的人間性」を取り上げ,その意義と限界について考察した.主体的人間性は,社会福祉の主体的側面(個人)と客観的側面(社会)を結びつけるという積極的意義を持つが,その他者性の側面が十分考慮されてはいないという限界を持っている.そこで,個人と社会を結びつける概念としてドイツ観念論で論じられた「人格」概念を吟味することで,改めて社会福祉の人間理解を問い直す.カントの人格論は,社会福祉の人間理解に(例えば尊厳の根拠をめぐる議論等において)大きな影響を与える一方,人格概念を個人の理性的素質に狭めた点に課題がある.これに対して,ヘーゲルの人格論は,人格概念の二重性(他者に対する側面と自己に対する側面)に着目することで,「承認関係」を前提とした個人と社会の媒介構造を基礎づける人格論の構築を可能とした.これは,社会福祉の人間学を構想する上で重要な意味があると考える.
著者
片山 善博
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.140, pp.21-38, 2019-03-31

岡村は,自身の地域福祉の思想の根底に和辻の哲学(倫理学)があることを示唆している.そして和辻の哲学は,岡村理論の大枠を規定している.筆者は,岡村理論が和辻の哲学からどのように影響を受け,またそれをどのように批判的に継承しているのかを,和辻の哲学にさかのぼって,検討した.その上で,岡村が人間理解や共同体理解にとって重要とみなした「主体性」「生活者」「多元主義的社会」などの概念が,現代の社会福祉の人間理解や共同体理解にとっていかに重要な視点を持つのかを明らかにすると同時に,こうした概念に対する批判についても検討した.また岡村は,人間理解の方法として,和辻の書物を通して理解した「解釈学」の方法を採用するが,昨今,「現象学」の方法が見直される中,改めて「解釈学」の方法の意義を説明した.ただし,岡村の「主体性」や「共同体」論には,<他者性>の契機が弱い.承認論の視点を組み入れることで,岡村理論が現代的有効性を持ちうることを示した.
著者
片山 善博
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.168-173, 2007-04-01 (Released:2017-05-09)

図書館本来の機能,つまりミッションは,民主主義社会の国民・住民の「自立支援」を「知的インフラ」という側面で支えることである。真の民主主義社会の実現には,政府と国民との間でできるだけ広範な情報共有が必要であると同時に,政府が発信する情報だけでなく,いわば「対抗軸」ともいうべき客観的資料や政府案への問題点を論じた資料など,バランスの取れた情報環境が必要である。また,重要な政策決定を審議する際,失敗事例,諸外国事情を含め,基礎となる資料や情報は不可欠である。それらの情報環境を担うのが図書館であり,図書館のミッションといえる。そして,それらの情報へのアクセスを的確に行うのが司書の役割である。
著者
片山 善博
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
no.142, pp.63-78, 2021-03-31

これまで,さまざまに検討がなされてきた社会福祉の理念(人権,尊厳,社会正義など)を考える上で,「人格」あるいは「主体」概念は重要な役割を果たしてきた.しかし,この概念は,その曖昧性から,抽象的・形式的,あるいは人間の選別につながるなど,社会福祉の領域だけでなく,さまざまな領域から批判を受けてきた.本論の目的は,これらの批判を踏まえ,人格概念再構築を通じて,社会福祉の諸理念を具体的に考察することである.そのために,ヘーゲル法哲学で展開されている人格論を参照する.ヘーゲルは,人格を個人に内在する理性や意志に還元することなく,身体や,生命,倫理的なものと関連づけて捉えている.このような視点から社会福祉の諸理念を改めて検討し,社会福祉の理論に貢献できる論点を示していく.
著者
片山 善博 浅野 史郎
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1094, pp.4-6, 2001-06-04

「もう道路はいらない」などという十把一からげの構造改革論議は間違っている。大上段に道路はいらないではなく、地域ごとに道路が必要なところとそうでないところを仕分けして、必要な事業量を積み上げればいい。道路はもういいから都市需要に回そうという議論はあまりにも乱暴だ。 公共事業にムダがないか光を当てて見直すのはいい。
著者
片山 善博 Yoshihiro Katayama
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of culture in our time
巻号頁・発行日
vol.131, pp.1-16, 2015-03-31

遺族が故人とのつながりを維持することがグリーフケア(特に遺族のケア)にとって重要であるという研究が様々な課題を抱えながらも主流になりつつある.とはいえ,遺族の個人に対する関係は一方的なものである.近年の承認論の研究では,自己と他者との間の承認関係が自己の成り立ちやアイデンティティにとって極めて重要であることが指摘されている.従って,遺族が故人との承認関係を維持するためには,故人が他者の地位にあることが望ましいことになる.遺族ケアの課題として,できるだけ双方向的なつながりを維持できるための故人の他者化が必要である.しかし,故人はいわゆる実在する他者ではない.そこで本論では,どのような他者化が可能なのか,また双方向的なつながりの維持のために何が必要なのかを考察した.精神的な他者化を推進する個別的なケアと同時に,こうした関係を安定的に維持させる社会・文化的な価値の創造が必要であると結論づけた.
著者
片山 善博 Yoshihiro Katayama
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
no.131, pp.1-16, 2015-03

遺族が故人とのつながりを維持することがグリーフケア(特に遺族のケア)にとって重要であるという研究が様々な課題を抱えながらも主流になりつつある.とはいえ,遺族の個人に対する関係は一方的なものである.近年の承認論の研究では,自己と他者との間の承認関係が自己の成り立ちやアイデンティティにとって極めて重要であることが指摘されている.従って,遺族が故人との承認関係を維持するためには,故人が他者の地位にあることが望ましいことになる.遺族ケアの課題として,できるだけ双方向的なつながりを維持できるための故人の他者化が必要である.しかし,故人はいわゆる実在する他者ではない.そこで本論では,どのような他者化が可能なのか,また双方向的なつながりの維持のために何が必要なのかを考察した.精神的な他者化を推進する個別的なケアと同時に,こうした関係を安定的に維持させる社会・文化的な価値の創造が必要であると結論づけた.死別,遺族,悲嘆,ケア,承認
著者
片山 善博 高橋 秀典
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.484, pp.32-35, 2009-11-27

知事に当選する前に鳥取県政を勉強し、当選後は財政改革が重要だと考えていました。当選後に大型事業を精査し、大型の箱もの事業をいくつかやめました。 中止した中部ダムも、精査した事業の一つです。中部ダムの機能は大きくは利水と治水。このうち利水は、地域の状況を考えると要らないのではないかとすぐに判断できた。