著者
鈴木 圭 玉井 康将 浦出 伸治 伊野 和子 菅原 由美子 片山 直之 星野 有
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.792-798, 2010-09-15 (Released:2010-11-09)
参考文献数
16

一般にアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis: AKA)はアルコール依存のため食事摂取が不十分な患者が,何らかの理由でアルコール摂取すらしなくなることで細胞内飢餓が生じ,遊離脂肪酸からβ酸化を経てケトン体が産生された結果発症し,消化器症状を主体として医療機関を受診することが多い。我々は,高脂肪食摂取翌朝に意識障害と脱力を来し脳卒中疑いで搬入された,発症様式,症状とも非典型的なAKAの症例を経験したため報告する。症例は61歳の男性。ビジネスホテルに単身滞在中,焼き肉とビールを摂食し就寝した翌朝に四肢脱力を自覚し当院に救急搬入された。来院時意識障害があり,詳細な病歴は不明であったが,原因不明の低血糖とアニオンギャップの開大した著しい代謝性アシドーシス,脂肪肝がみられ,他に代謝性アシドーシスを来す疾患を同定できなかったことからAKAを強く疑い,チアミンと糖質を含む急速輸液を行ったところ,意識障害,代謝性アシドーシスとも速やかに軽快した。後にアルコール依存の病歴と血中βヒドロキシ酪酸の著明高値が判明し,AKAと確定診断した。本例では慢性的な糖質不足状態にあるアルコール依存患者が,短期間に高脂肪食を摂食したことにより多量の遊離脂肪酸が血中に流入し,β酸化を経て産生されたアセチルCoAが過剰となり一気にケトン体が産生され発症したと推察される。即ち,本例からは高脂肪食はAKAのリスクとなることが示唆される。本来,AKAの初期診断は病歴に依存する部分が多いが,意識障害を有する患者では詳細な病歴を聴取できないことも多く,非典型的な発症様式,症状の場合にAKAを疑うことは容易ではない。しかし,本例のごとく原因不明の低血糖にアニオンギャップの開大した代謝性アシドーシス,脂肪肝の合併がみられた際にAKAを鑑別診断に加えることは,救急医にとってきわめて重要と考えられる。
著者
和田 英夫 南川 光三 大岩 道明 兼児 敏浩 森 美貴 玉木 茂久 高木 幹郎 影山 慎一 片山 直之 南 信行 出口 克巳 白川 茂
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.773-776, 1991 (Released:2009-03-12)
参考文献数
7

特発性血小板減少性紫斑病(ITP), SLE, 慢性関節リュウマチ,再生不良性貧血患者の血中Interleukin-6 (IL-6)値を測定し,ITP例やSLE例では血中IL-6値の増加が認められた。またITPの治療にともない血中IL-6値は減少し,ITP発症時に血中IL-6値と血小板数は弱い負の相関を示した。この血中IL-6値の増加は,ITPの発症に免疫系の活性化が関与していることを示唆すると考えられた。