2 0 0 0 OA 筋力の測定

著者
片山 訓博 山﨑 裕司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.761-763, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
10
被引用文献数
4 4

固定用ベルトを併用したhand-held dynamometerは,比較的安価で,簡便性・汎用性・信頼性に優れ,多くの臨床データが蓄積されている.院内連続歩行,階段昇降,椅子からの立ち上がりに必要な膝伸展筋力体重比の自立閾値は,それぞれ0.4 kgf/kg,0.5 kgf/kg,0.35 kgf/kgである.下限閾値は,それぞれ0.25 kgf/kg,0.25 kgf/kg,0.2 kgf/kgである.また,本邦高齢者の膝伸展筋力体重比は,移動動作の自立閾値に近似しており,予備力が乏しい状態にある.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山崎 裕司 重島 晃史 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1236, 2012

【はじめに】 標高1000~3000mに居住する高地住民には,冠心疾患や高血圧症などの発生率が低く,長寿者が多いことが知られている.また,高地トレーニングが脂質糖質代謝の改善に有効なことが指摘されている.しかし,高地トレーニングや低圧低酸素環境下でのトレーニングを実現することは物理的,経済的に極めて困難である.また,低酸素環境における高強度のトレーニングは,重度の低酸素血症を誘発する可能性が高い.心疾患や肺疾患を合併することが少なくない中高年者の生活習慣病予防を目的とした運動としてはリスクが高い.近年,比較的簡易な装置を用いて常圧環境下で低酸素環境を作り出すことが可能となっている.もし,常圧の低酸素環境によって運動時のエネルギー代謝に好影響が与えられるとすれば,効果的なトレーニング環境が容易に実現できる可能性がある.本研究では,常圧低酸素環境における低強度運動時のエネルギー代謝応答を測定し,運動療法施行時の環境としての有用性について検討した.【方法】 対象は健常成人男性13名で平均年齢21.2(20―22歳),平均身長168.8±4.7cm,平均体重62.6±5.1kg,平均体表面積1.72±0.08m2であった.被験者は前日の夕食以降絶食として翌日の午前中に測定を実施した.研究の条件は,研究の条件は,常圧下での低酸素濃度環境(以下,低酸素)(酸素濃度14.5%,0.7atm,高度3,000m相当)および通常酸素濃度環境(以下,通常酸素)(酸素濃度20.9%,1.0atm)とした.低酸素は,藤原らの特許を用いた塩化ビニール製テント(容積4.0m3)と膜分離方式の高・低酸素空気発生装置(分離膜:宇部興産製UBEN2セパレーター,コンプレッサー:アネスト岩田製SLP-22C)を用いて設定した.各条件での測定は,先ず通常酸素条件で行い,その後1週間の間隔を設けて低酸素条件で実施した.両条件とも30分間の安静椅子座位後,嫌気性代謝閾値(以下,ATポイン)の70%定量負荷による自転車エルゴメータ運動(回転数は55回/分)を30分実施した.呼気ガス分析は,エアロモニター(AE-300Sミナト医科学製)を用いた.各データは安静開始から終了まで1分間隔で測定し,5分間毎の平均値で比較検討した.NU(尿中窒素排出量/分)は0.008g/分で一定とした.LOR(mg)=1.689×(VO2-VCO2)-1.943×NU,GOR(mg)=4.571×VCO2-3.231×VO2-2.826×NUで得られたLOR,GORは体表面積で補正した.統計学的手法は,Willcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,研究の主旨・内容および注意事項について説明し,同意を得たのちに実験を開始した.【結果】 被検者のATポイント70%における自転車エルゴメータの負荷量は,47.5±5.3wattであった.LORは,すべてのstageにおいて低酸素条件より通常酸素条件が有意に高値を示した(p<0.05).GORは,運動時全てのstageにおいて低酸素条件が通常酸素条件より高値を示した(p<0.05).低酸素条件における運動時GORは通常酸素条件よりも平均で191.1mg/min/m2大きく,逆に運動時LORは,低酸素条件で平均37.5mg/min/m2小さかった.【考察】 低常圧低酸素環境への暴露後の運動が呼吸循環代謝応答に与える影響について分析した.GORは,stageにおいて低酸素条件が通常酸素条件より高値を示した.高地環境における低酸素血症では,ミトコンドリア内では有機的解糖が阻害されるため,ミトコンドリア脱共役タンパク質の減少で代償が図られる.それとともに,嫌気的解糖によるATP合成効率を増やしてATP不足を補う結果,グルコース利用が増加し,血糖値が低下する.結果として,インスリン分泌も低下し,インスリン感受性の改善がもたらされることが報告されている.今回の常圧低酸素環でも同様の効果によりグルコースが多く利用されたと考えられる.低酸素条件におけるGORは30分間の運動中平均は191.1mg/min/m2通常酸素条件よりも大きく,これは通常酸素条件のGORの27.5%に相当した.このことは今回の常圧低酸素設備でも,糖質利用が促進されることを示している.よって,常圧低酸素環は糖質代謝を促進する必要のある対象者にとって有益なトレーニング環境となる可能性がある.【理学療法学研究としての意義】 低圧低酸素環境では,安静時代謝の亢進および脂質代謝が改善され,より効果的な減量が可能であると報告されている.常圧低酸素環境においても同様の効果が生じる可能性が示唆され,生活習慣病や減量を目的とした理学療法を施行する時の環境として利用できると考える.
著者
平賀 康嗣 栗山 裕司 宮﨑 登美子 柏 智之 片山 訓博 重島 晃史 稲岡 忠勝 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39-41, 2019-03-30 (Released:2019-09-19)
参考文献数
6

本研究では,健常者のハムストリングスに対するストレッチを継続的に実施し,持続的なストレッチ効果が現れる治療期間について検討した.対象は,健常者14名(男性7名,女性7名)である.介入前右膝窩角は,137.7±12.1度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の右膝窩角は,それぞれ144.4±13.0度,152.7±10.5度,155.6±7.7度,162.0±6.2度であった.2 週目以降,開始時と比較し膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).介入前左膝窩角は,138.8±12.4度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の左膝窩角は,それぞれ143.9±12.4度,151.3±7.8度,154.3±8.2度,160.7±6.1度であった.2週目以降,膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).明確な膝窩角の改善は, 2 週目以降と説明することが妥当なものと考えられた.
著者
重島 晃史 山﨑 裕司 片山 訓博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1701, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】関節可動域の目測は理学療法士(PT)にとって必要なスキルの1つである。我々は,学生やPTの目測能力やトレーニング効果について検証してきたが,測定角度の違いが目測精度に与える影響については未だ検討の余地が残されている。目測の難易度が明らかになれば,トレーニングすべき目測角度やその目標が明確となる。本研究の目的はPTを対象に,角度の違いによって目測精度がどの程度異なるのかを検証することである。【方法】対象はPT17名(男性11名,女性6名)で,経験年数は1~14年目であった。目測能力の測定は我々が先行研究(2011年)で作成した測定ツールを使用した。Power Point画面上に直線角度を34パターン作図し,10度~170度までの角度を10度間隔で表示した。測定では1分間にできる限り速く正確に各スライドの角度を声に出して読むように指示し,角度は検査者が記録用紙に記入した。内容は5種類あり,ランダムに5回実施した。各測定終了時には正解角度のフィードバックを行わなかった。データの解析では,5回試行したすべてデータを対象として各角度における正答率および誤差角度を算出した。統計学的解析では,各角度間の正答率および誤差角度の差を検討するために反復測定分散分析および多重比較を用いた。また,経験年数と目測精度との関連性についてピアソンの相関係数を用いて検討した。【結果】正答率は直線角度10度から170度の順に,73.0±33.8%,69.3±27.6%,55.5±23.9%,49.6±22.3%,36.3±27.8%,51±31%,66.3±27.3%,82.1±20.9%,94.4±11.5%,88.2±20.8%,59.9±29.1%,51.6±37.5%,38.4±20.8%,17.1±19.0%,40.4±24.4%,48.4±26.0%,87.4±22.8%であった。誤差角度は直線角度10度から170度の順に2.7±3.4度,3.1±2.8度,4.4±2.4度,5.8±2.1度,6.9±3.4度,6.0±4.5度,4.2±4.3度,2.0±2.3度,0.6±1.1度,1.2±2.1度,4.1±3.0度,5.7±4.1度,7.4±2.9度,11.1±3.7度,6.7±4.2度,5.9±3.9度,1.6±2.8度であった。なお,経験年数と正答率との間には有意な関連はなかった(r=0.40,NS)。【結論】本研究の結果から,目測角度によって難易度に違いがあることが明らかとなった。目測の難易度の高い角度は50°,60°,130°,140°,150°であり,難易度の低い角度は80°,90°,100°,170°であった。人は「斜線効果」によって,斜めの線よりも垂直または水平に近い線の方が線の方向を正確に認識し判断できると言われている。本研究において,難易度の低い角度はどれも水平か垂直に近い角度を示していることから,生理的に安易で正確に捉えやすいと考えられた。動作分析や関節可動域測定で目測を活用する際は,正答率の低い角度について注意する必要がある。経験年数と目測精度の間には有意な関連は無く,経験年数に関わらず目測精度を維持するためにはトレーニングが必要なものと考えられた。
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山﨑 裕司 重島 晃史 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮﨑 登美子 柏 智之 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.357-361, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

〔目的〕常圧低酸素環境における低強度運動時の呼吸循環代謝応答を測定し,エネルギー代謝に与える影響について検討した.〔対象〕健常成人男性13名.〔方法〕通常酸素濃度条件(1.0 atm,酸素濃度20.9%)と常圧低酸素条件(1.0 atm,酸素濃度14.5%)を設定した.両条件下でATポイントの70%負荷による自転車エルゴメータ運動を行った.実験中,酸素飽和度,心拍数,呼気ガスデータを測定した.〔結果〕低酸素条件では,通常酸素条件に比べ,運動時心拍数,分時換気量が有意に高値を示した.低酸素条件は,通常酸素条件に比べ,脂肪酸化率は有意に低かった.逆に,ブドウ糖酸化率は有意に高く,エネルギー代謝は亢進していた.〔結語〕常圧低酸素環境下の運動によって,糖質利用が促進される可能性が示唆された.
著者
西森 大地 山崎 裕司 中屋 久長 山本 双一 平賀 康嗣 片山 訓博 重島 晃史 高地 正音
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.59-61, 2011-03-31

下肢伸展運動を課題として,徒手による他動的誘導(以下,他動誘導)と徒手抵抗による誘導(以下,抵抗誘導)のいずれが運動再現性の点で優れているかを比較検討した.対象は,健常成人24名の右脚である.12名は靴ベラ式短下肢装具装着下(以下,装着群)で,残り12名は非装着下(以下,非装着群)で実験を行った.仰臥位,右膝関節最大屈曲位を開始肢位とし,他動誘導,抵抗誘導のいずれかのガイドによって開始肢位から再現させる屈曲角度(膝関節90°と60゜)まで誘導し,その運動を記憶するよう指示した.開始肢位に戻した後,自動運動によって運動を再現させ,誤差を求めた.膝関節60°の非装着群における誤差は,他動誘導,抵抗誘導の順に2.49cm,1.54cmであった。装着群では3.68cm,1.57cmであった.両群ともに抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).膝関節90°では非装着群において有意差を認めなかったが,装着群では抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).以上のことから,徒手抵抗を加えて運動を誘導する方法が正確に運動を指導することができるものと考えられた.
著者
坂上 昇 片山 訓博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0669, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】 ゴム素材のバンドやチューブは,スポーツや整形外科領域の理学療法におけるレジスタンス・トレーニングに,また近年では高齢者の転倒予防を目的としたトレーニングにも用いられている.バンドやチューブの抵抗力は販売メーカーから提示されており,対象者への適応に際しての指標としている.しかし,この値は実際の人体の関節運動に適用して算出されたものではない。 そこで本研究は,Thera-BandのExercise Bands(以下 Ex-Bands)を用いて,膝関節伸展運動時に発揮される抵抗力を定量化することを目的とした.【方法】 対象は,健常成人35名(男性19名,女性16名),平均年齢21.0±2.3歳とした.被験者には,研究の目的と方法を十分に説明し,参加に対する同意を得た. Ex-Bandsは,THIN(黄),MEDIUM(赤),HEAVY(緑),EXTRA HEAVY(青),SPECIAL HEAVY(黒),SUPER HEAVY(銀)の6種類とした.Ex-Bandsの抵抗力の測定には,アニマ社製徒手筋力測定器μTas MF-01を使用した.測定肢位は,治療用ベッドの端に腰掛けた端座位とした.筋力計のセンサーユニットを足関節の直上の下腿前面に取り付けた.Ex-Bandsの長さは折り返した状態の一辺が30cmとし,留め金にて固定した.環状となったEx-Bandsを治療用ベッドの支柱に通し,筋力計のセンサーユニット上を通した.測定は,下垂位より30°,45°膝関節伸展位の2条件とし,それぞれの関節角度を保持させた際の筋力計の値を読み取った.各条件の測定は2回実施し,平均値を測定値として採用した.【結果】 各Ex-Bandsの30°と45°の抵抗力は,黄が4.2±0.3kgfと4.7±0.3kgf,赤が4.6±0.3kgfと5.1±0.4kgf,緑が5.7±0.4kgfと6.3±0.4kgf,青が6.7±0.4kgfと7.4±0.5kgf,黒が7.6±0.5kgfと8.5±0.5kgf,銀が11.3±0.6kgfと12.8±0.7 kgfであった.また,各Ex-Bandsの30°と45°の抵抗力を男女別に検討した結果,両群の測定値間に統計学的有意差は認められなかった.【考察】 本研究は,Ex-Bandsの膝関節伸展運動時に発揮される抵抗力を筋力計を用いて定量化した.測定された抵抗力は,販売メーカーから提示される値とは当然ながら異なった.本研究によって得られた値は,レジスタンス・トレーニングにおける抵抗力の指標を提示でき,各々の対象者のために使用するEx-Bandsの適切な選択につながると考える。また,男女間の測定値に有意差が認められなかったことは,個人の最大筋力やレーバーアーム長の影響を受けることがないことを示唆していると考えられ,簡便な筋力測定の指標として活用できる可能性も考えられる.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 中屋 久長
雑誌
理学療法 = Journal of physical therapy (ISSN:09100059)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.87-92, 2005-01-15
参考文献数
18
著者
片山 訓博 甲藤 由美香 甲藤 史拡 大倉 三洋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0675, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】筋肥大を目的としたレジスタンストレーニング(以下,RT)の効果は,負荷量,頻度,期間に影響を受ける。RT効果をより短期間で得るために加圧トレーニングが用いられ,局所的な酸素不足を生じさせての筋負荷を増加が実施させている。本研究では,常圧低酸素環境を用い局所的な酸素不足ではなく,全身の酸素不足を生じさせた場合のRT効果を検討したので報告する。【方法】対象は,疾患健常で肘・肩関節に疾患を有さない男性12名,平均年齢20.3±0.5歳,平均身長171.4±6.5cm,平均体重66.5±6.8kgであった。RTの対象筋は上腕二頭筋とした。RT前に徒手筋力測定機器(アニマ社製 μ-TAS F-1)を用いて対象筋の最大筋力値(kgf)と肘関節屈曲位上腕最大周径をメジャーを用いて測定した。常圧低酸素環境は,酸素濃度14.5%(標高3,000m相当)に設定した。RTは,負荷量70%1RM,上肢自然下垂位から肘関節最大屈曲までの運動を10回,3日/週,3週間継続させた。尚,RTの前には低酸素環境順化を行った。各測定項目をトレーニング開始から1週間ごとに1週間後・2週間後・3週間後に再測定し,統計学的手法は,一元配置の分散分析法を用い有意基準は5%未満とし比較検討した。【結果】上腕二頭筋最大筋力の平均値は,開始時・1週間後・2週間後・3週間後の順にそれぞれ23.3±4.0kgf・27.8±6.1kgf・28.9±6.4kgf・30.0±6.2kgfであり,開始時に比べ3週間後は有意に高値を示した(P<0.05)。肘関節屈曲位上腕最大周径の平均値も同様にそれぞれ30.5±2.2cm・31.4±2cm・32.3±2.1cm・32.9±2.3cmであり,統計学的有意差は認めなかったが,開始時に比べRT後は大きくなっていた。【結論】常圧低酸素環境下で酸素濃度14.5%のRT結果は,3週間後の上腕二頭筋筋力において開始時より有意に筋力増強効果を認め,増加率は29%であった。Nishimuraらの常圧低酸素環境下で酸素濃度16.0%,70%1RM,2回/週のRT結果は,6週間後には上腕二頭筋筋力の61.6%の増加率を認め,通常酸素濃度下の38.9%に比べより有意であったことを報告している。本研究結果は,この先行研究の通常酸素下の結果と比べると3週間後ですでに6週間後の筋力増強率の74.6%を占めていた。これは,常圧低酸素環境では,筋内の低酸素ストレスは高く,活性酸素種の活性が上がり,一酸化窒素が有意に上昇した結果,一酸化窒素が筋の幹細胞である筋サテライト細胞の増殖・分化を促進したからと考える。また,本研究結果を先行研究の低酸素環境下の結果と比べると,3週間後ですでに6週間後の筋力増強率の48.7%を占めていた。Nishimuraらは3週目からより筋力増強を認めたとの報告する。酸素濃度の低い本条件は,すでに3週間で約半分の効果があり,酸素濃度がより低ければRT効果が高いことを示唆した。
著者
平賀 康嗣 栗山 裕司 宮﨑 登美子 柏 智之 片山 訓博 重島 晃史 稲岡 忠勝 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39-41, 2019

本研究では,健常者のハムストリングスに対するストレッチを継続的に実施し,持続的なストレッチ効果が現れる治療期間について検討した.対象は,健常者14名(男性7名,女性7名)である.介入前右膝窩角は,137.7±12.1度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の右膝窩角は,それぞれ144.4±13.0度,152.7±10.5度,155.6±7.7度,162.0±6.2度であった.2 週目以降,開始時と比較し膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).介入前左膝窩角は,138.8±12.4度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の左膝窩角は,それぞれ143.9±12.4度,151.3±7.8度,154.3±8.2度,160.7±6.1度であった.2週目以降,膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).明確な膝窩角の改善は, 2 週目以降と説明することが妥当なものと考えられた.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山崎 裕司 重島 晃史 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.365-369, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2

〔目的〕常圧下における低酸素および高酸素条件への急性暴露が,運動時の呼吸循環応答へ与える影響を検討した.〔対象〕健常成人男性7名.〔方法〕膜分離方式により常圧環境下において低,通常,高の3つの酸素濃度条件を設定した.各条件下で自転車エルゴメータによる多段階漸増運動負荷を行い,安静時から運動最終時までの呼吸循環応答を測定した.低酸素濃度と通常酸素濃度,通常酸素濃度と高酸素濃度の呼吸循環反応を比較検討した.〔結果〕低酸素濃度では,通常酸素濃度に比べ呼吸循環器系への負荷が有意に増大した.特に,嫌気性代謝閾値以上の負荷において呼吸器系への負荷が大きくなる傾向にあった.高酸素濃度では,通常酸素濃度と大きな差を認めなかった.〔結語〕急性暴露における常圧低酸素環境においても,順化させた低圧低酸素環境での呼吸循環負荷と同様の効果が示された.
著者
熊谷 匡紘 片山 訓博 小松 弘典 森国 裕 島崎 翔 三谷 仁也 安藝 愛菜 柏 智之 重島 晃史 稲岡 忠勝
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-54, 2011-03-31

今回,我々は斜め方向ステップを考慮した動的バランス評価法(Modified Four Square Step Test以下,MFSST)を立案した.そして,地域在住の健常な60歳以上の女性29名を対象として,MFSSTの再現性・妥当性について他の静的・動的バランス評価と比較検討した.他のバランス評価としては,片脚立位時間,Functional reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG)を採用した.片脚立位時間,FRT,TUG,FSST,MFSSTの測定結果は順に32.2±40.4秒,26.8±6.1cm ,7.9±1.5秒,8.3±3.0秒,8.5±2.3秒であり,FSSTとMFSSTの時間には有意差を認めなかった.各バランステストのIntraclass Correlation Coefficient(以下,ICC)は同様の順に0.967,0.904,0.844,0.822,0.639であった.MFSSTと片脚立位,FRT,TUG,FSST間の相関係数は順に-0.25,-0.44,0.66,0.67であり,動的および複合バランス評価との間に有意な相関関係を認めた.MFSSTは,動的なバランス能力を評価した指標であることが示された.ICCが他のバランス指標と比較して低値を示したことから,測定値の再現性を向上させるための検討が必要なものと考えられた.