著者
二宮 博義 猪股 智夫 白水 博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1491-1495, 2004-12-25
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

ツチクジラ(5頭,成獣)の肺の血管系を組織学的および血管樹脂鋳型標本を作製して走査型電子顕微鏡で観察した.肺胞は厚く,結合組織を挟むようにして両面の肺胞毛細血管網で構成されていた.この二重の肺胞毛細血管網は肺胞管および肺胞中隔に常時認められた.末端の肺胞では,しばしば毛細血管網が一層であった.肺胞毛細血管は肺胞の末端に近づくにつれ,互いに融合して,二重の毛細血管網が次第に失われ,末端の肺胞では一層になる傾向が見られた.細静脈では膠原繊維がリング状に血管内皮下を走っており,樹脂鋳型では30〜100μm間隔のリング状の溝として観察された.最初の静脈弁は肺胞毛細血管が集合する集合細静脈に見られた.この静脈弁はフラップ様,漏斗状,煙突状の構造で,きわめて特徴的であった.
著者
中嶋 紀覚 仲田 誠 杉尾 周平 佐野 大介 鈴鴨 知佳 伊藤 潤哉 猪股 智夫 柏崎 直巳
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第100回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.20099, 2007 (Released:2007-10-17)

【目的】げっ歯類において,ホノルル法を用いた体細胞核移植によってクローン個体を作製するためには,核注入後1時間以内に早期染色体凝集(PCC)を起こし,2つ以上の偽前核を形成することが必要である。我々はラットの生体から卵管遊離した時間を起点として, 75分以内に核移植完了し,かつ卵子を除核前までMG132で処理することで,2前核形成を効率的に誘起できることを報告した(第54回実験動物学会)。本研究ではさらなる胚発生率の向上を目的として,MG132で一定時間処理したラット排卵卵子について最適な活性化処理時期を検討した。【方法】過剰排卵処置をした3-5週齢のWistar系雌ラットから排卵卵子を採取し,0.1% hyaluronidase および7 µM MG132添加 R1ECM-Hepes中で卵丘細胞を除去した。その後,核移植完了までの時間(75分)および核注入後の培養時間(60分)を想定して卵子を7 µM MG132添加R1ECMで135分間培養した。培養後,R1ECMでさらに培養を行い,直後,0.5,1.0,1.5時間後に3 µM ionomycin + 2 mM 6-DMAPで活性化を誘起し,発生能を調べた。また,同時間MG132無添加R1ECMにて培養し,活性化処理したものを対照区とした。【結果】前核形成率および2細胞期率は,対照区に比べて全てのMG132添加区で高い値を示し,特にMG132添加培養後,無添加培地で1.5時間培養した区が最も高い値を示した。また,MG132添加培養し,直後および0.5 時間無添加培養した後に活性化処置を施した区では,胚盤胞形成が認められなかったのに対し,1.0 時間以上培養した区では胚盤胞の形成が認められた。以上のことから,排卵卵子をMG132で一定時間処理し,その後,無添加培地で1.0時間以上培養した卵子を活性化処理することにより,多くの卵子が高い発生能を有することが明らかとなった。今後は核移植を行い,ラット再構築胚の発生能を検討する予定である。
著者
森 裕子 遠藤 伸 伊藤 亨子 柏崎 直巳 二宮 博義 猪股 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.125-127, 2006

本研究は,ビオチン欠乏がラット海馬へ及ぼす影響について,Timm染色法を用いて海馬組織を組織計測するとともに,DNAマイクロアレイ法を用いて海馬組織における遺伝子発現を検証した。組織学的観察では,歯状回,CA1,CA3の各エリアにおいてBD群の方がBS群より神経細胞が小さい傾向を示し,ビオチン欠乏により海馬神経細胞の代謝活性が低下していることが示唆された。また,Hilus,Lucidum領域のシナプス密度は,背側海馬(頭側)では両群の間に差は認められなかったが,腹側海馬(尾側)ではBD群の方がBS群より有意に増加しており,ヒト側頭葉てんかんに見られる所見に類似することが示唆された。さらに海馬組織の遺伝子発現については,BD群では細胞間や細胞内情報伝達に関わる複数の遺伝子(アセチルコリン作動性受容体,AMPA型受容体,神経軸策伸張に関わる関連遺伝子)が抑制されており,ビオチンが遺伝子発現にも重要な働きを示すものと推察された。ビオチンは脳機能の維持,特に記憶・学習に関与している可能性がある。
著者
高橋 英雄 高橋 広志 高橋 容子 鎗田 響子 猪股 智夫 佐野 文子 西村 和子 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.152, 2005

2005 年 9 月 1 日より輸入動物の検疫体制が整う予定であるが,すでに輸入された動物が保菌している病原体は世代を超えて感染が広がっている.今回,国内の動物園で繁殖し飼育されている 5 ヶ月齢のカナダヤマアラシに <I>Arthroderma benhamiae</I> による脱毛が発症した.同居している母個体はカナダ,父個体はアメリカ合衆国から輸入されたもので,無症状であったが,同菌種を保菌していた.分離菌株は当該獣より 4 株,母獣より 5 株,父獣より 2 株分離され,いずれも形態,rRNA 遺伝子の ITS 領域の配列,<I>A. benhamiae</I> Americano-European race との交配成立から同種と同定した.11 株のうち 42℃ で生育可能であった株は母由来 1 株,ITS 領域の配列は母由来 2 種,他は 1 種で GenBank 登録配列とは一致せず,RAPD バンドパターンも複数種確認した.この家族内感染は国内未確認の遺伝子型をした <I>A. benhamiae</I> 複数株によるものであった.なお,同動物園ではふれあい動物園を併設していることから,飼育しているげっ歯目および食虫目動物 33 頭について皮毛を培養したが,本菌種は分離されなかった.<I>A. benhamiae</I> によるヒト感染は命に関わる疾患ではないが,この家族内保菌・感染はすでに輸入された個体が我が国に無い病原体を保持し,それを次世代に伝播している一例である.他の真菌,原虫,細菌,ウイルスによる感染症も同様な状況が推測されるため,人と動物の共通感染症の予防にはすでに輸入された動物にも細心の注意が必要である.
著者
押田 敏雄 猪股 智夫 英 俊征 佐藤 憲明 氷熊 謙二 矢山 和宏 小西 信一郎
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.58-62, 1992-06-20 (Released:2011-06-08)
参考文献数
13

豚血液の生化学成分の測定について血清を用いた場合と血漿を用いた場合の濃度差を比較し, あわせてそれぞれの溶血傾向について検討し, 以下の成績を得た。溶血程度を吸光度測定 (日豚会誌. 25. 1988) で比較し, 血清および血漿の溶血程度を区分した場合, 血清では-が53.3%, ±が33.3%, +が6.7%, ++が6.7%を占めたのに対し, 血漿では-が46.6%, ±が16.7%, +が20.0%, ++が16.7%を占めた。生化学成分の測定値について血清と血漿を比較した結果, 血清と血漿で差がないものとしてAlb, BUN, Na, K, Cl, ALP, CPK, GPT, LDH, Glu, T-chol および Tri-G があげられ, 差があるものとしてTP, T-bil, Cre, Ca, GGTおよびGOTがあげられた。血清と血漿の測定値で差があった項目について, 相関をみると, すべての項目について, 両者の間には有意な相関が成立した。さらに, 相関係数が0.7以上, 回帰係数が0.7~1.2の範囲のものとしては, TPおよびCaがあげられた。
著者
高橋 英雄 植田 啓一 宮原 弘和 渡辺 紗綾 内田 詮三 鎗田 響子 村田 佳輝 板野 栄子 高山 明子 西田 和紀 猪股 智夫 矢口 貴志 佐野 文子 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.34, 2007

水族館飼育下イルカのnon-<I>albicans Candida</I> spp.保菌が健康管理および観客への安全上問題となっているので、飼育されているイルカ20頭の呼気と飼育プール水の病原性酵母叢を昨年8月および本年2月に調査した。さらに飼育関係者24名の口腔内と観客席空中浮遊菌の病原性酵母叢の調査を本年2月に行った。保菌イルカは14頭 (70%)、分離株は<I>C. albicans</I>、<I>C. tropicalis</I>、<I>C. glabrata</I>で、1頭を除き2回の調査とも保有菌種は同一で、大多数の株はアゾール薬に耐性傾向を示した。また、4個体は1呼気あたり数十から数百の病原性酵母を噴出していた。飼育プール水の検査では8箇所中5ヵ所から<I>C. albicans</I>および<I>Candida</I> spp. など、飼育関係者の口腔からは24名中5名から<I>C. albicans</I>および<I>Candida</I> spp. などが分離され、一部にアゾール薬に耐性傾向を示す株も含まれていた。観客席空中からは<I>Candida</I> spp.など数株の酵母が分離された。しかし、病原性酵母を噴出しているイルカの呼気が観客に直接かかるような状況はなく、実際に観客席空中からイルカとの共通菌種が分離されなかったため、イルカショーで発生するエアロゾルによる観客への影響は少ないと思われる。一方、イルカ、飼育環境、飼育関係者との間では<I>C. albicans</I>が共通して分離されていたので、現在,遺伝子パターンの解析を進めている。また、イルカの真菌保有の有無は健康状態の指標となりうると思われた。