著者
猪野 郁子 田結庄 順子 入江 和夫
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.10, 2003

<研究目的> 研究目的は第1報と同様である。 中学・高校生の実態を明らかに,得られたデータと全国データを比較し,地域の課題に対応した家庭科カリキュラム開発の基礎資料としたい。 <br><研究方法> 第1報と同様。調査実施期日,実施校,配布数,有効回収数等,入力・集計等は第1報のとおりである。 <br><研究結果> 中・高校生の特徴があったものを記す。<br>1.基本的な生活技能の実態と意欲・関心について<br>1)食衣住生活技能の実態と意欲・関心---食生活 4項目全てにおいて学年進行に伴って実践率は低下していた。全てで女子が実践率が高かった。「家族の夕食を作る」は、中・高ともに実践率が食生活の中で最も低いが、中国中2の実践率は全国中2と比較して高かった。衣生活3項目において学年進行に伴って高まる結果が表れ,中・高ともに4項目全てにおいて女子の方が実践率が高かった。パソコン利用の項目では,中2女子を除いて、全国と比べて利用状況が低い。中学生では女子の方が男子より利用状況が高く、高校生では男子の方が女子より利用状況が高くなっていた。住生活では中・高ともに,4項目全てにおいて女子の方が男子より実践率が高く,男女差も学年進行に伴って拡大していた。<br>2)対人関係について---3項目全てにおいて,学年進行に件ってほぼ同じ実践率であるか,低い。「近所の人へのあいさつ」は,全国と比較して,中・高ともに高い実践率であった。<br>3)もっとすすんでするようにしたいと思うこととその理由 理由は「気持ちが良くなるから」が中・高とも多かった。<br>2.生活についての自己管理 <br>1)金銭についての自己管理---外出時の所持金額においては、中2では2千円位、高2では5千円位と学年進行に伴って金額が高い。男女別に見ると、中・高ともに女子の方が男子より金額が高かった。<br>2)コンビニへ行く目的---コンビニヘ行く目的は,「食べ物を買う」「飲み物を買う」が圧倒的に多い。中・高生は,全国の中・高生より「コンビニヘは行かない」割合が高いことから,全国の中・高生と比べて利用することが少ない。<br>3.幼児との関わり <br>1)幼児の遊び相手を頼まれたときの対応---中・高ともに「遊んであげる」が最も多く,学年進行に伴って増加していた。中・高の男女ともに,遊び相手をひきうけようという意識は高い。<br> 2)遊んであげる理由---中・高ともに「子どもが好きだから」が最も多い。「子どもが好きだから」は学年進行に伴って増加している。「子どもが好きではない」という理由をあげた者は学年進行に伴って減少しており,全国の結果と逆の結果となっていた。<br>4.家庭の働きと家族についての意識<br> 1)家庭の働きについての意識---物質的なものが存在する場として捉えるのではなく、精神的な豊かさを育む場として捉えていた.女子は,家族や近所の人など人と人のつながりを重視していた。<br>5.家庭科の学習経験とその効果 最も高かったものは,中「できるようになった」,高「わかるようになった」であった。高の「考えるようになったこと」の「ある」割合が「ない」割合を下回っていることは、今後の課題である。まとめ 1~3 報の結果より,「生活価値観の育成」と「人と人とのかかわりを重視した」カリキュラム開発の必要が指摘できた
著者
猪野 郁子
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
no.21, pp.p87-92, 1987-12

山梨県棡原村は日本一の長寿村であったといわれている。この村の食生活がどのように変ったか調査を行った研究班は,現在の彼らの食卓で家族の箸が交叉しないことに気づいている。つまり,食卓の上には幾皿も並んでいるが,老人は若い者向きの皿には箸がいかず,子どもは自分たち向きの皿にしか箸がいかないということである。 かって,粗食でもって長寿を永らえていた棡原村でさえ,食生活が近代化され,家族の嗜好が重んじられる個食化傾向がすすんでいるように,日本のいたる所で(どの家庭においても)こうした傾向は見られる。 このように,家族の好みあるいは年令にあわせた料理を食卓に並べる努力がなされている一方で,以前は,幼児や子どもにはふさわしくないとされていた食品が,案外無造作に与えられている光景に出会うことも多い。 例えぱ,おとなと同じ様に清涼飲料水の缶を1缶だかえていたり,コーヒーが1人前に溶れられたり,成人対象に作られた料理を飲食していたりである。 勿論,以前には,おとなと同じ物を飲食していなかったかと言えばそういうことはない。飲食していたが,塩分,香辛料,あるいは材質,形においての配慮はされていたのである。 つまり,幼児や子どもに与えてよい物と与えてはいけない物,あるいは,成長にあわせて与えていくべき物という配慮がなされていたといえる。 ところが,どうも最近,この配慮が少しずつなくなりつつあるように思われる。 それとともに,飲食をはじめる年齢も早くなってきているように思われる。 そこで,幼児の飲食の機会が増え,飲食をはじめるのも早くなっていると思われるコーヒー,コーラ,紅茶の嗜好飲料,アメ・キャンデー,チョコレート,ガムの菓子,カレーライスとインスタントラーメンの8食品をとりあげ,これらの飲食の実態を把握しようとした。又,今後の食教育のあり方を考える一資料を得たいと考えた。
著者
入江 和夫 (田結庄 順子 猪野 郁子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.8, 2003

<研究目的および概要><br> 本研究は小学4年生の衣食住等に関する生活技能の参加や意欲・関心,消費生活の実態や生活管理,家庭科の学習経験,問題解決能力等からなる調査票を用いた中国地区三県の児童・生徒への調査で得られたデータと全国データを比較し,地域の課題に対応したカリキュラム開発の基礎資料としたい。[二次分析]に当たり,日本家庭科教育学会「家庭生活についての全国調査」(科学研究費基盤研究(A)(1)課題番号13308005)の個票デー夕の提供を受けました。<br><研究方法>全国調査と同様の調査方法を用いた児童・生徒に対する自記式アンケート調査で,実施期間は9月1日から9月3日である。 本研究に用いたデー夕は全国データに反映した調査票(1264名)に加えた中国地区で協力が得られた学校の全ての調査表を再集計・再分析した。調査地点は大都市部,中小都市部,町村部の人口比より学校数を抽出し,小学校:9校,中学校:6校,高校校の計21校。配布数,有効回収数等は表1である。データ入力は,日本リサーチセンターに依頼した。集計・解析はSPSSを用いて,広島大学学校教育学部生の板口元気さん,窪田笑さん,上ノ原玲奈さんの3名には,言葉に尽くせない多大な協力をしていただいた。記して深謝申し上げる。第1~3報の集計・分析は,性別で考察を行った。<br><研究結果>中国地区三県の小学4年生の主な特徴は次である。<br>1、基本的な生活技能の実態と意欲・関心について<br>1)衣食住生活技能の実態と意欲・関心---食生活およびパソコンに関する仕事への参加度は、「いつも+ときどき」の割合は一様に低く、日常生活の中でほとんど実践されていない。衣生活に関する仕事の参加度は、「季節や気候にあった服装を自分で決める」の実践率が全体で60.1%と高く、その他「洗濯物をたたむ」が若干高かった以外は、食生活・パソコンに関する仕事と同様に低い実践率であった。全国の結果と比較すると、中国地区の小学4年生の仕事の参加度は低く、生活技能はあまり身についていない。<br>2)住生活・環境および対人関係---実践度は全体的に低い。「ゴミを決められた方法で捨てる」に関しては例外で,全国に比べてよく実践していたが,その他の環境に関する項目において全国を下回ったため,環境問題に積極的に取り組んでいるとはいいがたい。特に,対人関係3項目について,実践度の低さが目立った。<br>2.待間,金銭,消費生活についての自己管理 <br>1)時間についての自己管理---「朝の起き方」では,全体的に自己管理ができていたが,「いつも一人で起きる」は男子に多い。<br>2)生活についての自己管理---外出時の所持金については,「お金は持たなくてもいい」「わからない」と答えた児童が多い。<br> 3)コンビニヘ行く目的---「食べ物を買う」,「飲み物を買う」は60%前後で圧倒的に高い。全国と比較すると,コンビニの普及率及び利用率が低いせいか,回答の選択率が全体的に低かった。<br>3.幼児とのかかわり---子どもの遊び相手を頼まれた時「よろこんで遊んであげる」で男女で顕著な差があった。「あげたくない」「わからない」は男子が多い。全国との比較では,中国地区の男子の「幼児とのかかわり」に対する意欲が全国に比べて低いことが判明した。