著者
林 果林 端 こず恵 神前 裕子 土川 怜 浅海 敬子 齋木 厚人 龍野 一郎 白井 厚治 藤井 悠 黒木 宣夫 桂川 修一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.920-930, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
39

目的 : 肥満症患者において心理的側面は病態と大きく関与している. その重要性を明らかにするため, 肥満症患者群とコントロール群で, ロールシャッハテストの変数を比較分析した. またその結果から, 肥満症患者の心理的側面について, 7クラスターに分類し検討した.  方法 : 肥満症患者群103名 (男性52名, 31.8±6.7歳/女性51名, 32.1±5.9歳) およびコントロール群160名 (男性61名, 30.8±9.7歳/女性99名, 30.4±9.7歳) のロールシャッハ変数を比較検討した.  結果 : コントロール群と比較したロールシャッハ変数109のうち, EA, EB, Lambda, DQ+, DQv, DQo, DQv/+, Populars, X+%, X−%, M, a, WsumC, CF, SumT, SumV, SumY, Afr, All H Cont, COP, FDを含む47で変数に有意差が認められた.  結語 : 肥満症患者は, 社会生活上求められる資質不足から, 物事の意思決定や行動選択において対処困難を伴いやすく, 自身の感情を把握し調節・表出する力が未熟な傾向にある. そのため自己防衛として, ①刺激を単純化して受け取ることで心理的な距離をとり安定をはかる, ②感情コントロール不全を避けるため, 感情そのものを否認する, ③対人場面では可能な範囲で他者とのかかわりを回避するという3点に集約できる. このような特性を治療者が認識し, 心身の状況を踏まえたうえで集学的治療を行うことが重要である.
著者
大平 征宏 齋木 厚人 大城 崇司 鈴木 和枝 龍野 一郎 白井 厚治 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.272-277, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は減量手術後に体重増加を来した51歳女性。若年時より肥満があり,30歳の時に糖尿病を発症した。45歳時には糖尿病性ケトアシドーシスで入院した。48歳時に過食症の診断も受けており,食事・運動療法では減量困難であった。減量手術を受け,体重は減量手術後6ヵ月で11kg 減少した。しかし,術後7ヵ月頃からリバウンドした。この頃,精神状態も不安定であり,日中は常に何かを食べている状態であった。不安定な精神状態の治療を目的に,抑肝散エキス5g/日を投与した。抑肝散投与後,摂取エネルギーの減少に伴って体重は減少した。患者本人も精神状態の改善を自覚した。また,HbA1c(JDS)も抑肝散投与後に8.7%から7.1%に改善した。本症例では抑肝散が患者の精神的不安定を改善することによって過食を抑える事で,体重減少およびHbA1c の改善が得られた可能性が示唆された。
著者
日谷光 一郎 山本 禎子 竹内 忍 宮下 洋 白井 厚治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.447-451, 2004-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
13

症例は28歳, 女性. 2002年4月に高血糖を指摘されたが, 眼底写真では網膜症は認めず, 精査後通常インスリン療法が開始された. 4月に15.596であったHbA1c値は, 8月には7.996に減少した. 眼科所見は6月の時点で軽症非増殖網膜症であったが, 9月には中等度増殖網膜症に進行したため汎網膜光凝固を開始し, 強化インスリン療法を開始した. その後のHbA1c値は6~796で経過し, 網膜症は鎮静化した. 血糖是正に際しては, 今回のように急激に網膜症が進行する症例があるので, 血糖是正を開始する時には, 内科と眼科の密接な連携が必要であると思われた. また, 一時的に網膜症が増悪しても, 良好な血糖コントロールを継続し, 適切な時期および方法の眼科的治療を行うことによって網膜症の進行が阻止できると思われる.