著者
下條 信輔 シャイア クリスチャン ニジャワン ロミ シャムズ ラダン 神谷 之康 渡辺 克巳 岡田 美苗 柏野 牧夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.219-225, 2001-03-01
参考文献数
24
被引用文献数
9

聴覚刺激による視知覚の変容に関する三つの新しい発見を概説する。第1に, 視覚的な時間分解能は, 音が付随すると, 視聴覚刺激の時間系列及び遅延に依存して, 向上もしくは低下する。第2に, 単一の視覚フラッシュは, 複数の音と共に提示されると, 複数のフラッシュとして知覚されることがある。第3に, 互いに近づくように動く二つの物体からなる多義的な運動パタンは, それと同期していない音が鳴っても, あるいは音がなくても, 二つの物体が交差してまっすぐ動いていくように知覚されるが, 二つの物体が重なった時点に同期して音が鳴ると, それらの物体が衝突して反発するように知覚される。これらの発見に基づいた著者らの主張は, 従来信じられてきた視覚優位性に反して, 聴覚が強力な過渡的信号を与える場合には特に, 聴覚が視覚を変化させるというものである。
著者
神谷 之康
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.341, pp.51-56, 2005-10-10

脳情報復号化とは, 脳信号から未知の刺激や課題を推定することを指し, 刺激や課題が与えられたときの脳活動をマッピングする従来の脳機能研究とは対照的なアプローチをとる.本稿では, 復号化の概念と手法を概説した後, われわれのグループが最近発表した非侵襲的脳信号復号化の結果を紹介する.そして, 復号化アプローチの工学的応用や認知神経科学における重要性を議論する.
著者
神谷 之康
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.61-65, 2013 (Released:2017-04-12)

脳の信号は心の状態や行動をコード化している「暗号」と見なすことができる。そして、その暗号を解読(「デコード」)することで、脳から心の状態を推定することが可能になると考えられる。しかし、脳の信号は非常に複雑なパターンをもっていて、人が目で見ただけでその意味を理解するのは一般に困難である。そこでわれわれは、機械学習と呼ばれるコンピュータ・サイエンスの手法を取り入れ、コンピュータに脳活動信号の「パターン認識」を行わせて脳の信号をデコードするアプローチを提唱した。本稿では、人が見ているものを脳活動パターンからデコードする方法を中心に紹介しながら、ブレイン-マシン・インターフェースや情報通信への応用など、この技術の可能性について議論する。
著者
神谷 之康
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.845, pp.88-90, 2013-10-17

まず寝ている被験者の脳の活動状況を「機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)」と呼ぶ医療機器でスキャンします。得られた脳の活動部位やその状態のデータを解析することで夢の内容を推定します。 ただし初見の人の夢を当てることはできず、事前に被験者ごとに「…
著者
平田 雅之 佐藤 雅昭 依藤 史郎 加藤 天美 神谷 之康
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

(1)MEG、皮質脳波(ECoG)を用いた脳律動計測ECoGとMEGとで同一課題施行し、解析ソフトBESAを用いて時間周波数解析、coherence解析を行った。詳細な脳内処理過程が明らかになるとともに、言語領野に共通の律動帯域と特有の律動帯域があることが明らかなり、現在論文投稿準備中である。(2)脳磁図(MEG)での言語優位半球の評価、言語機能局在の評価単語黙読課題を用いた場合、アミタールテストとの比較で85%一致、電気刺激によるマッピング法との位置の差は6.3±7.1mmであり、非侵襲的検査法として優れた方法であると証明された。アミタールテスト、脳表電気刺激の結果と比較し、成果を論文に投稿した。(3)脳信号解読まず、言語機能解読の基礎となる運動機能についてもsupport vector machineを用いて運動内容解読を試みた。運動内容推定については3種の運動内容弁別が80-90%の正答率でリアルタイムに弁別できることが明らかとなり、英文誌Neuroimageに発表した。言語に関しても時の皮質脳波を計測し、support vector machineを用いた脳信号複号化により発語内容推定を行った。カテゴリー別語想起課題にたいするカテゴリー識別は有意差のある結果が得られなかった。ピ、ポ、ギ、ゴなど単純な発語課題の識別率は運動内容解読には及ばないものの、本方法で言語内容解読がリアルタイムに可能なことが明らかになった。今後さらに性能向上のために計測・解析方法に工夫が必要であると考えられた。
著者
内田 肇 宮脇 陽一 山下 宙人 佐藤 雅昭 田邊 宏樹 定藤 規弘 神谷 之康
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.588, pp.79-84, 2007-03-07
参考文献数
13

近年,機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)と機械学習アルゴリズムを用いることで,視覚刺激の傾きや動き方向などヒト視知覚の一部を復号化できることが示されている.本研究では,ヒト視知覚の復号化を目的とし,被験者に提示した任意の画像をfMRI信号から再構成する.まず,fMRI信号から提示画像の局所平均コントラストを推定する局所画像復号器を解像度ごとに学習させた.次にそれら局所画像復号器の統合を,1)ピクセル基底表現,2)多重解像度基底表現, 3)fMRI信号の生成モデルに基づいたベイズ推定,の3種類で行った.その結果,任意の画像を高い精度で再構成できることがわかった.本手法を用いることで視覚野の詳細な情報表現・情報処理過程の解明が期待される.
著者
平田 雅之 柳澤 琢史 松下 光次郎 Shayne Morris 神谷 之康 鈴木 隆文 吉田 毅 佐藤 文博 齋藤 洋一 貴島 晴彦 後藤 哲 影山 悠 川人 光男 吉峰 俊樹
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.541-549, 2012-07-20

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は脳信号から運動意図・内容を読み取って外部機器を制御する技術である.われわれは脳表電極を用いたBMIにより,筋萎縮性側索硬化症等の重症身体障害者に対する機能再建を目指して研究開発を行っている.これまでにγ帯域活動を用いた連続的な解読制御手法により,ロボットアームのリアルタイム制御システムを開発し,脳表電極留置患者による物体の把握・把握解除に成功した.感染リスク回避のためにはワイヤレス体内埋込化が必須であり,ワイヤレス埋込装置のプロトタイプを開発した.今後は,重症の筋萎縮性側索硬化症を対象として,有線・ワイヤレス埋込の2段階での臨床試験を経て実用化を目指す.