著者
福原 宏幸
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.10, pp.62-75, 2011-06-30

2009年、連合と連合総研は、深刻化するワーキングプア問題の解決をめざしてワーキングプア調査チームを組織し、実態調査を行った。それにより、以下の結論を得た。ワーキングプアの15歳のころの生活状況を調べると、貧困と不安定な家庭環境のもとで、家族とのつながりの希薄化、学校社会への中途半端な接合、低学歴に追いやられ、「社会化」が十分に達成できていない者が多くいた。また、労働世界におけるワーキングプアの仕事の周縁性や雇用の不安定さは、職場への接合の不確かさをもたらしている。その結果、職場組織だけでなく、家族、友人・知人、地域社会などとのつながりの希薄化がみられ、場合によっては精神疾患を患う者もいた。さらに、継続雇用と一時的失業を前提に設計された雇用保険などの社会保障制度から多くのワーキングプアが排除されている。同時に、これらの排除状況に対して、自らの思いや要求を発言する機会や場そのものが奪われていることもわかった。これらのことから、ワーキングプア問題は、子ども期の貧困と社会からの排除と深く結び付いていることが導き出された。また、この問題は、日本社会のメインストリームを形成している企業社会の論理やそれを前提とした社会保障制度からの排除と深く結び付いていることもわかった。すなわち、ワーキングプア問題は、日本の社会のあり方、とりわけ労働における差別と排除の最も深刻な問題であるといえよう。
著者
水内 俊雄 福原 宏幸 花野 孝史 若松 司 原口 剛
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.7, pp.17-37, 2002
被引用文献数
1

1. 差別と偏見の心象地理 : 1996年3月, 大阪市西成区の中学生たちが, 愛読していた少女向け漫画雑誌「別冊フレンド」の大阪を舞台設定とした連載で, あるコマ外に西成に対してコメントがあり, これは問題であると教師に訴える出来事があった。そのコメントは, 兄が高校を中退して家を出てからずっと西成に住んでいるという弟の台詞に対して, 「西成*大阪の地名, 気の弱い人は近づかないほうが無難なトコロ」と, 副編集長はわざわざこの西成のことを補足するために, 枠外にこのような注をつけたのである。その中学生の先生への相談は, 同和地区でもあり, こうした生徒への対応が敏速におこなわれ, 結局は西成区民全体が見逃すことのできない問題として, 雑誌社への謝罪などを訴える大きな動きへとつながっていった。……