著者
竹内 望
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
no.70, pp.165-172, 2012-03-31

クリオコナイトとは, 氷河の雪氷中に含まれる暗色の物質である. 主に大気由来の鉱物粒子と雪氷上で繁殖する微生物, その他の有機物で構成され, これらは糸状のシアノバクテリアが絡まりあってクリオコナイト粒という粒状の構造体を形成している. クリオコナイトは氷河表面のアルベドを低下させ, 氷河の融解を促進する効果をもつ. クリオコナイトは世界各地の氷河にみられる物質である一方, その量や特性, 構成する微生物は氷河によって異なる. 近年グリーンランドや一部の山岳氷河で, 裸氷域のアルベドが低下していることが報告され, その原因としてクリオコナイトの量の増加があげられている. このような変化は, 現在の地球規模の気候変動が, 氷河生態系にも大きな影響を与えていることを示唆している.
著者
ONUMA Yukihiko(大沼友貴彦) TAKEUCHI Nozomu(竹内望) TAKEUCHI Yukari(竹内由香里)
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
Bulletin of Glaciological Research (ISSN:13453807)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.21-31, 2016 (Released:2016-09-08)
参考文献数
30
被引用文献数
11

Snow algae are cold-tolerant photosynthetic microbes growing on snow and ice. In order to investigate the factors affecting snow algal growth, the temporal changes in algal abundance on surface snow were studied over four winters in an experimental station in Niigata Prefecture, Japan, where seasonal snow is usually present from late December to early April. Snow algae appeared on the snow surface in February, and the initial algae were likely to be deposited on the snow by winds. The timing of the algal appearance varied among years, from early-February in 2011 to late-February in 2015, and is likely to be determined by a period of no snowfall and air temperatures above the melting point. Algal abundance generally increased until the disappearance of snow. The maximum algal concentration was found in 2011, which corresponds to the year when the period from algal appearance to the disappearance of snow was the longest (80days) among the four winters. The results suggest that snow algae keep growing unless snowfall occurs and air temperature drops to freezing point, and that the algal abundance is likely to be correlated with the duration of algal growth. The algal growth curve in 2011 could be reproduced by a Malthusian model with a growth rate of 0.22 d−1.
著者
青木 輝夫 本山 秀明 竹内 望 的場 澄人 堀 雅裕 八久保 晶弘 山口 悟 田中 泰宙 岩田 幸良 杉浦 幸之助 兒玉 裕二 藤田 耕史 朽木 勝幸 庭野 匡思 保坂 征宏 橋本 明弘 谷川 朋範 田中 泰宙 植竹 淳 永塚 尚子 杉山 慎 本吉 弘岐 下田 星児 本谷 研
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

グリーンランド氷床上での現地観測から、涵養域ではアルベド低下に対するブラックカーボン(BC)等積雪不純物の寄与は小さく、積雪粒径増加効果の方が大きいことが分かった。また2012年7月の顕著な表面融解には下層雲からの長波放射が効いていた。消耗域では表面の不純物中に微生物が大量に含まれ、アルベド低下へ大きく寄与していた。衛星観測から2000年以降の氷床表面アルベドの低下原因を解析した結果、涵養域では積雪粒径の経年増加が主要因で、消耗域では裸氷域と微生物を含む暗色域の拡大が原因であった。内陸域で深さ223mの氷床コアを掘削し、その解析からBC濃度は1920-30年に現在の数倍程度高いことが分かった。
著者
竹内 望 角川 咲江 武藤 恭子
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.271-279, 2011 (Released:2022-09-03)
参考文献数
13

雪氷藻類とは,雪や氷の表面で繁殖する光合成微生物である.2005 年から2010年にかけて, 滋賀県の伊吹山の山頂(標高1377 m) 付近の残雪で,雪氷藻類の調査を行った.藻類の大繁殖を示す赤雪や緑雪のような肉眼で見える着色雪はみられなかったが, 残雪表面から採取した積雪の顕微鏡観察の結果, 形態の異なる主に2 つのタイプの雪氷藻類細胞を確認した. この藻類は, 日本をふくめ世界各地で報告されているChloromonas nivalis に形態がほぼ一致し, 二つのタイプはこの種のそれぞれ発達段階の異なる休眠胞子と考えられる. 観測を行った各年4 月下旬の残雪には, ほぼすべてにこの藻類細胞が含まれていたことから, 毎年この時期に残雪上に現れるものと考えられる. 藻類バイオマスおよびクロロフィル量の測定の結果, それぞれ他の地域で報告されている赤雪等の着色雪と比べ低い値を示した.2007 年4 月に二回の調査を行った結果, この藻類の繁殖時期は, 3 月中旬から5 月上旬までの1ヶ月半の融雪期間のうち, 消雪直前のわずか1-2週間であることがわかった.
著者
黒掘 利夫 竹内 望
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.35, no.391, pp.441-445, 1986-04-15
被引用文献数
1

An investigation of stable laser action at room temperature using the F_2 Centers of LiF : Mg crystals is presented. A remarkable reduction in fading of the output signal intensity has been achieved by adjusting the Mg impurity level to an appropriate quantity and by optimizing F_2 Center concentration. It is found that magnesium ions in LiF crystals play a role for suppressing the fading of laser action due to the two-step photoionization process. It is also found that the fading strongly depends on intracavity power and temperature.
著者
竹内 望
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

アジア内陸部天山山脈のウルムチNo.1 氷河の雪氷微生物の調査を行った.その結果,氷河表面には3種のシアノバクテリア,2種の緑藻の繁殖が明らかになった.上流部で採取したサンプル分析の結果,春から夏の融解期に緑藻が繁殖し,さらに融解が激しい年にはシアノバクテリアが繁殖することが明らかになった.この季節変化の要因は主に融解量で,大気降下物として供給される窒素も関与している可能性があることが示唆された.
著者
佐藤 和秀 亀田 貴雄 石井 吉之 的場 澄人 高橋 一義 石坂 雅昭 竹内 由香 横山 宏太郎 小南 靖弘 川田 邦夫 渡辺 幸 飯田 俊彰 五十嵐 誠 竹内 望
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

北海道から本州の山形県,新潟県,富山県にいたる冬期の降積雪試料を採取し,主に酸性雪に関する化学特性の解析を行い,その実態の調査研究を実施した。報告例が少ない降積雪の過酸化水素濃度に関する多くの知見が得られた。より明確な因果関係の把握にはさらなる観測調査が必要であるが,大気汚染物質あるいは積雪の主要イオン濃度,過酸化水素濃度,pH,黄砂,雪氷藻類などの間にはいくつかの相関関係が見られ,融雪水のイオンの選択的溶出も観測された。