著者
笹川 智貴 岩崎 寛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.51-56, 2016-01-15 (Released:2016-02-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1

神経筋接合部には多数のニコチン性アセチルコリン受容体が存在し,神経終末から放出されたアセチルコリンが受容体に結合することにより脱分極され筋肉は収縮を起こす.アセチルコリンが受容体に結合すると受容体は回転運動によりダイナミックにチャネル開閉を調節する.通常終板に存在するアセチルコリン受容体は成熟型と呼ばれ,α2βεδの5つのサブユニットで構成される.また,シナプス前にはα3β2で構成される神経型アセチルコリン受容体が存在し正のフィードバックを介してシナプス小胞の再動員に寄与している.一方,胎生期の筋肉や除神経された筋肉上ではεサブユニットがγサブユニットに置換されたα2βγδのサブユニットで構成される未成熟型が発現し,特にスキサメトニウムへの反応性の違いから臨床上問題となることが多い.また近年では,従来中枢神経にしか存在しないと考えられてきたα7サブユニットのみで構成されるα7アセチルコリン受容体が特殊状態下の筋肉に存在する可能性が示唆されており,その生理的役割が注目されている.
著者
大友 重明 国沢 卓之 笹川 智貴
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.702-707, 2009-09-15 (Released:2009-10-30)
参考文献数
10

術中・術後における下肢の鎮痛に関しては, 従来硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔が主体であった. しかし近年, 整形外科領域では, 肺血栓塞栓症発生予防のために, 周術期に抗凝固療法が併用される症例が増えており, 硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔の代替手段として下肢末梢神経ブロックを利用する機会が増えている. また, 下肢末梢神経ブロックを利用することで, 持続硬膜外鎮痛法における硬膜外膿瘍の危険を避けることができ, 高齢者や心・血管系に合併症をもつハイリスク患者に対しても大きな循環変動をきたすことなく安全に鎮痛が可能である. 整形外科領域におけるロピバカインを使用した末梢神経ブロックについて臨床的に概説する.
著者
笹川 智貴 岩崎 寛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.655-669, 2008-06-15 (Released:2008-08-13)
参考文献数
18

筋弛緩薬投与を行う際, 特に麻酔科医の頭を悩ませるのは術中の維持投与法である. 術中の体動や咳嗽反射を起こさず, かつ手術終了とともに素早く回復する状態に保つことが目標となる. ロクロニウムはベクロニウムとほぼ同等の作用持続時間をもつため, 従来の間欠的投与法でも大差なく使用することはできる. しかしこのほかにも持続投与法, 目標制御注入法 (target controlled infusion: TCI) のような各種投与法が存在するため, 状況に応じて使用する必要がある. 共通する投与のポイントはこれらの投与法の利点・欠点をふまえ, 筋弛緩モニターを有効に使用するとともに薬物動態を意識して投与することである.