著者
岩木 真生 野口 雅久 中南 秀将 笹津 備規 伊藤 正俊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.11, pp.1653-1659, 2011-11-01 (Released:2011-11-01)
参考文献数
19
被引用文献数
7 9

Gentamicin is used in an ointment form for the treatment of skin infections. To investigate the effect of gentamicin used as an ointment, the antimicrobial susceptibilities against Staphylococcus aureus, coagulase-negative staphylococci, Streptococcus pyogenes, and Pseudomonas aeruginosa isolated from community and medical settings were studied and compared with other antibacterial agents such as fradiomycin, chloramphenicol, and bacitracin used as active ingredient for each ointment. Gentamicin showed antibacterial activities for all standard bacteria tested, but fradiomycin and chloramphenicol showed no such activities for St. pyogenes and P. aeruginosa, respectively. Bacitracin showed activity for St. pyogenes only. The strains of staphylococci isolated from healthy people were highly susceptible to gentamicin, while 49.3% of the isolates from the patients with skin infections were resistant to gentamicin and 96.4% of the gentamicin-resistant staphylococci carried the aminoglycoside-resistance gene aacA-aphD. The growths of all strains tested, except for two strains of P. aeruginosa, were inhibited by close below 128 μg/ml of gentamicin. Furthermore, the frequencies of spontaneous mutants resistant to gentamicin, fradiomycin, and chloramphenicol were each investigated using S. aureus, S. epidermidis, St. pyogenes, and P. aeruginosa. At doses of more than 32 μg/ml of gentamicin, no resistant mutants in any of bacteria strains tested were obtained. The concentration of gentamicin on the skin was calculated at approximately 895 μg/ml at least when the commercially used 0.1% gentamicin ointment was applied to the skin. Therefore, our study strongly indicates that the gentamicin ointment used has a potency of sufficiently inhibiting the growth of bacteria, including gentamicin-resistant strains, which cause skin infections in the community.
著者
新井 武利 濱島 肇 笹津 備規
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.786-791, 1996-10-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
16

黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus FDA 209Pに対するリノール酸, オレイン酸, 局方ツバキ油, 精製ツバキ油, オリーブ油, 精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンの増殖抑制作用を検討した。これらの試料を培地に加え80μg/mlにしたものを標準液としてさらに培地を加え, 二段階希釈系列を作製した。一夜培養後の菌液を1.0×107cfu/mlになるようそれぞれに加えた。光学的に菌の増殖を測定し, 試料による増殖抑制作用を測定した。その結果, リノール酸, オレイン酸および局方ツバキ油には強い増殖抑制作用が認められた。精製ツバキ油とオリーブ油には比較的弱い増殖抑制作用があった。精製ツバキ油の50%阻止率 (ID 50) を脂肪酸および他の植物油脂のID50と比較した。ID50の比較により精製ツバキ油にはオリーブ油よりも強い増殖抑制作用があることが明らかになった。精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンは測定した濃度では増殖抑制は認められなかった。精製ツバキ油とオリーブ油はアトピー性皮膚炎の皮膚病変部のスキンケアに有用であろう。
著者
新井 武利 濱島 肇 笹津 備規
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.786-791, 1996
被引用文献数
9

黄色ブドウ球菌<I>Staphylococcus aureus</I> FDA 209Pに対するリノール酸, オレイン酸, 局方ツバキ油, 精製ツバキ油, オリーブ油, 精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンの増殖抑制作用を検討した。これらの試料を培地に加え80μg/mlにしたものを標準液としてさらに培地を加え, 二段階希釈系列を作製した。一夜培養後の菌液を1.0×10<SUP>7</SUP>cfu/mlになるようそれぞれに加えた。光学的に菌の増殖を測定し, 試料による増殖抑制作用を測定した。その結果, リノール酸, オレイン酸および局方ツバキ油には強い増殖抑制作用が認められた。精製ツバキ油とオリーブ油には比較的弱い増殖抑制作用があった。精製ツバキ油の50%阻止率 (ID 50) を脂肪酸および他の植物油脂のID50と比較した。ID50の比較により精製ツバキ油にはオリーブ油よりも強い増殖抑制作用があることが明らかになった。精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンは測定した濃度では増殖抑制は認められなかった。精製ツバキ油とオリーブ油はアトピー性皮膚炎の皮膚病変部のスキンケアに有用であろう。
著者
宮本 幹 山口 義夫 笹津 備規
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.127-132, 2000-05-18 (Released:2010-07-21)
参考文献数
17

レジオネラ症や非結核性抗酸菌症の原因となるレジオネラ属菌および非結核性抗酸菌について, その感染源となりうる身近な生活環境中の分布状況を把握するために河川, 湖沼, 海水および土壌等の自然環境, 修景用水, 温泉水, 公衆浴場水, 一般家庭浴水および循環風呂浴水などの人工環境, また各種細菌が検出されないと思われる対照として水道水と飲料用水の調査を行った.その結果, レジオネラ属菌は河川水, 温泉水, 公衆浴場水, 一般家庭浴水および循環風呂浴水から分離された.非結核性抗酸菌はレジオネラ属菌と同様, 生活環境中に広く分布していることが確認された.また, 一部飲料用水からも非結核性抗酸菌が分離された.循環風呂浴水に関しては循環機本体の熱洗浄システム等を導入した物理浄化方式の装置を試験対象とした.その結果, 温泉水や公衆浴場水等と比較してもその菌数, 分布ともに低値であった.
著者
下江 文子 野口 雅久 中南 秀将 笹津 備規 黒川 晃夫 森脇 真一
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.520-527, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

伝染性膿痂疹は,乳幼児に好発し,主として黄色ブドウ球菌,時にレンサ球菌に起因する皮膚細菌感染症である。今回我々は,1%ナジフロキサシン軟膏の伝染性膿痂疹に対する効果および臨床材料より分離された細菌株に対する各種抗菌薬の薬剤感受性を調査した。同疾患に罹患した解析対象42例に対して,1日2回7日間1%ナジフロキサシン軟膏の外用および抗菌薬1剤の内服で加療し,治癒率および改善率を検討したところ,それぞれ57.1%,97.6%であった。全例から黄色ブドウ球菌が検出され,そのうち,MSSA は37例(80.4%),MRSA は9例(19.6%)から分離された。ナジフロキサシンは MSSA にも MRSA にもともに高い感受性を示した。以上より,伝染性膿痂疹の治療において,1%ナジフロキサシン軟膏はその起因菌が黄色ブドウ球菌の場合は MRSA であっても効果が期待できる有用な抗菌外用剤であると考えられた。(皮膚の科学,11: 520-527, 2012)
著者
笹津 備規
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.755-765, 1996-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

黄色ブドウ球菌の消毒剤耐性株はMRSAの出現とともに報告された。消毒剤耐性の機構はいづれも膜蛋白による細胞からの薬剤の排出であり, 化学構造の異なる各種消毒剤に対し多剤耐性を示すことが特徴である。現在, 消毒剤耐性遺伝子としてはqacA, qacB, qacC (ebr, smr), qacC', qacDがブドウ球菌から, qacFがバチラス属の細菌から, qacE, qacEΔ1, EBRがグラム陰性桿菌から分離されている。qacA/B遺伝子は非常に類似した12回膜貫通型の膜蛋白をコードしており, 高度耐性を示す。他の遺伝子がコードしている蛋白は, 4回膜貫通型の小さな膜蛋白で, 低度耐性を示す。また, これらの消毒剤耐性遺伝子をもった菌株とは異なる, トリクロサン耐性黄色ブドウ球菌株が出現してきている。MRSAに対する消毒剤の使用量が増加するのに伴い, 新たな耐性遺伝子の出現が予想される。
著者
松永 宣史 山田 陽子 山田 加奈子 内海 健太 中南 秀将 野口 雅久 笹津 備規
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.362-368, 2011 (Released:2012-02-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

接触感染は,院内感染の最も主要な感染経路である.接触感染の防止には,患者や医療従事者が頻繁に触れる場所(高頻度接触表面)の汚染状況を把握し,医療従事者の病院内環境に対する意識を向上させる必要がある.本研究では,院内感染の主要な原因菌であるPseudomonas aeruginosa,メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA),およびSerratia marcescensについて,高頻度接触表面の環境調査を行った.2005年から2008年の4年間,のべ1,513試料から,MRSA 13株(0.9%),P. aeruginosa 69株(4.6%),およびS. marcescens 24株(1.6%)が検出された.検出された細菌の特徴を調査するため,抗菌薬感受性試験およびパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を行った.その結果,環境分離MRSAの抗菌薬感受性と遺伝学的背景は,臨床分離株と類似していた.一方,環境分離P. aeruginosaおよびS. marcescensの80%以上が,調査した抗菌薬全てに感受性を示した.また,環境分離P. aeruginosaと臨床分離株の遺伝学的類似率は低いことが明らかとなった.したがって,高頻度接触表面に付着していたMRSAは患者や医療従事者由来株であり,P. aeruginosaおよびS. marcescensの大部分は,環境細菌であることが強く示唆された.さらに,細菌検出数の経時変化を調査したところ,初回調査時の18株/89試料(20.2%)が最も多く,調査2回目は7株/89試料(4.5%)と大きく減少した.これは,MRSAの検出数が著しく減少したことに起因していた.したがって,環境調査を行うことによって,職員の環境に対する意識が向上し,各部署における清掃および消毒が頻繁に行われるようになったと考えられる.