著者
北原 麻理奈 児玉 千絵 羽藤 英二
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.88, no.806, pp.1271-1282, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

This study aims to clarify the dynamics of sawmill location in the mid-mountainous area in relation to infrastructure and factory power, using Tsukechi as a case study. As a result of the analysis, in the past, proximity to water for turning water mills was important for the location of sawmills, but with the spread of electricity and trucks, proximity to the old highway and the surrounding environment became more important for location. Distribution of locations was established, with factories clustered along the highway and scattered at the foot of the mountains.
著者
小関 玲奈 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.745-752, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
35

本研究の対象である松江には,城下町の街路構造や城濠などの歴史的な都市構造が残存しているが,近代化以降,交通インフラの変化や近世から繰り返し経験している大火や洪水といった外的圧抑を受容してきた.そこで本研究は,(1)社会基盤,(2)社会構造(人口・地価),(3)地割,の3つの視点により近代以降の松江の都市形成過程を分析し,近代化と災害を受けてどのように都市構造を変化させ,あるいは松江の歴史的基盤を継承してきたのか,その過程と要因を明らかにすることを目的とする.都市計画・基盤整備の歴史と地区ごとの人口・地価動態の分析により,大火と洪水という災害が中心市街地内部の地区改良と大橋近傍の拠点性と城濠の温存,中心部からフリンジ部,郊外部へという人口の流動に影響を与えたことが明らかとなった.こうした近代化と災害を契機としたマクロな都市構造の変化はミクロな地割形態の変容過程にも影響を与え,現在の地区ごとの特徴や歴史的資源の残存の程度に違いをもたらしていることを,字図を用いた地割分析により示した.
著者
小関 玲奈 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.674-681, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
21

巨大災害や紛争後の避難は長期に及ぶプロセスとなるため,住宅再建支援政策を時空間制御する枠組みが必要である.そこで本研究は,発災後の長期避難プロセスを不確実性下における再帰的経路選択問題としてモデル化し,動学的ネットワークデザインにより補助政策の時空間配分を最適化することで,復興政策の修正に向けた枠組みを構築することを目的とする.また,復興期の居住地選択における地域コミュニティの相互作用を次時点の期待人数としてモデル化(外部性項)し,構造推定により内生的に推定することで,推定バイアスを軽減することを試みる.実データによる東日本大震災のケーススタディでは,外部性項は正に有意な値として推定され,集団移転等の正の外部性を促進する政策の有用性と人口転出地域ではさらに転出が加速する可能性が示唆された.動的居住地選択モデルをもとに人口移動配分を行い,家賃補助を時空間ネットワーク上で最適化するネットワークデザイン問題を定式化した.ケーススタディでは発災直後のデータのみで最適化した計画と,5年後に新たなデータをもとに計画修正を行うケースとを比較し,補助政策の時空間制御の可能性と計画修正の有用性を示した.
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.524-531, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
16

本論文は,土地所有者による土地の売買と来訪者による逐次的滞在場所選択を離散的選択モデルで定義したサブモデルからなる地区スケールを対象とした土地-交通モデルを提案した.特に土地売買行動は,売手地主と買手地主それぞれの推定購入額と推定売却額を効用関数に導入することで,相互推論によるマッチング行動を仮定し,従前の土地市場モデルで扱われてきた均衡価格を明示しない取引構造の記述を試みた.構築したモデルは,2時点の実データを用いた実証分析及び構造推定を用いた推定により,計算可能であることを確認した.提案モデルは,都市開発や都市政策が歩行者の行動や土地所有者の土地取引行動に与える影響の測定やシミュレーションに応用可能性を持つと考える.
著者
飯塚 卓哉 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.682-689, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

防災計画において,避難行動を正確に予測する手法が必要とされている.本研究では災害が発生してから避難を完了するまでの一連の動的意思決定をモデリングする.避難行動データはパラメータ推定において課題となる点が2つある.1つ目は過去の災害での行動データは犠牲者の回答を含まない点,2つ目は仮想の災害を想定した避難行動調査データは正常性バイアスを含む点である.本研究では,活動経路選択モデルを用いて避難行動をモデル化し,避難データに含まれるバイアスを除去してパラメータ推定を行う手法を提案する.この手法により,避難開始地点や避難経路上の中継地での避難以外の活動による滞在時間,および避難遅れを合理的に評価可能となる.本手法の有効性は数値実験とケーススタディにより示された.
著者
大山 雄己 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.810-817, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
19

歩行者の活動を主眼に置いた外部空間デザインが都市政策上の関心を集めている.歩行者の回遊行動は高解像度な空間選択行動を基本とし,また時間配分的な性質を持つ.本研究では街路空間再配分政策を対象として取り上げ,歩行者活動への影響を明示的に考慮した政策決定問題,すなわち歩行者の活動ネットワークデザイン問題を提示する.需要サイドから回遊行動モデルの理論的展開は見られる一方,歩行者政策を扱う供給サイドの研究がこれまでに進んでいなかった.大山・羽藤(2016)の活動配分手法を需要モデルとして用いて,地区の総滞在時間あるいは期待効用を最大化させる歩道幅員拡幅街路の決定問題を考える.一方で投資額は可能な限り抑えたいという政策課題に対応するため,多目的最適化問題による定式化を行い,ネットワーク更新法を用いて求解する.これにより,投資額に応じた最適ネットワークのヴァリエーションを提示する.結果として,トレードオフの関係が明確に見てとれるパレート解の集合を得た.また,目的関数の選択に応じた街路の配置パタンが明らかとなり,商店街・百貨店・地区のエントリーポイント等の間の接続方策についての示唆を得た.
著者
増橋 佳菜 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1140-1147, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
14

回遊行動がまちに生み出す賑わいが重視されるとともに,位置観測技術及び歩行者行動モデルの発展に伴って,都市空間改変が歩行者行動にもたらす影響の評価に対する関心が高まっている.同時に,COVID-19の流行など歩行者行動規範を変容させうる様々な要因が同時並行で存在する.このように都市空間改変と行動変化の因果構造が複雑化する中,相関関係の提示に留まる従前の評価手法はもはや限界といえる.本研究では,大規模再開発が進行する渋谷を対象として,大規模空間改変の前後にあたる2時点の長期観測位置データをメッシュ単位に集約化した上で,サンプリングの工夫により因果推論の枠組みに従って分析した.因果推論のアプローチを空間行動分析の方法論に導入しただけでなく,渋谷という実際の都市に提案手法を適用することで,渋谷における再開発が回遊機会を激減させ,時間消費を減少させた上,多様な活動パターンを時間的にも空間的にも喪失させていることを明らかにした.
著者
小関 玲奈 山本 正太郎 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.47-58, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
34

災害常襲国である日本において,土地利用マネジメントを含めた事前復興計画の推進は急務であるが,土木史的な視座を踏まえて,危険地帯への市街地進出要因を考慮した制度設計がなされているとは言い難い.そこで本研究では,東日本大震災,西日本豪雨で被災した5都市の都市形成史と災害後の都市計画的対応を比較分析し,各都市で甚大な被害を生むに至った空間的要因とその経緯を解明することを目的とする.近代以降の交通基盤整備や土地区画整理事業等の都市基盤整備が実施された位置や規模を,分析の視点とする.次の災害への備えとしての災害防御インフラの整備と,土地の利便を逓増させる交通基盤・都市基盤整備とが連動して行われたかどうかが,災害後に減災型都市構造へ転換する分岐点となったことを明らかにした.
著者
月田 光 羽藤 英二
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.A_194-A_202, 2022-02-01 (Released:2022-02-18)
参考文献数
6

新たな交通モードの挿入により駅まち空間の改変が進むなか、近年では歩行者回遊が大きなテーマとなっている。歩行者の回遊行動は経路選択モデルで記述され、経路を列挙する必要が無い再帰的ロジットモデルが使われることも多いが、既存のモデルでは全ての交差点間で同じ所要時間が仮定されているなど、将来価値の低減が正しく評価されておらず、歩行者回遊の特徴である逐次的な意思決定を正しく評価できていない。そこで本研究では、リンク長が異なるネットワークにも適用可能な、リンク長に対して一般化された時間割引率を持つ再帰的回遊モデルの定式化を行った。8 つの駅まちネットワークでパラメータ推定とバリデーション比較を行うことでモデルの妥当性とパラメータの転移可能性を検証し、さらに従来型のモデルと尤度を比較することでモデルの優位性を示した。
著者
増田 慧樹 羽藤 英二 小関 玲奈 飯塚 卓哉
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.11-20, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)
参考文献数
25

次の災害に備えるにあたり,過去の復興都市計画の定量評価が重要である.その際,空間整備コストと避難完了人数のトレードオフを考慮する必要がある.本研究では,道路整備コストを最小化し避難完了人数を最大化するネットワークの容量構成パターンを求める,避難ネットワークデザイン問題を定式化する.また定式化において,避難スケジューリングの再現に適した再帰ロジットモデルを用いる.これを三陸沿岸に適用し,実際の人口分布と,チリ地震津波以降の高台移住施策が異なった場合の人口分布シナリオで結果を比較し,過去の復興都市計画をパレートフロンティア上で評価した.道路整備が避難に与える影響の人口分布による違いの考察や,パレート解における道路容量拡張パターンと実際の道路建設の比較により,本評価手法の有用性を示した.
著者
四戸 秀和 羽藤 英二 中出 舞
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1061-1068, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
13

本研究は、地方都市郊外の景観構造の変遷の特徴を明らかにすることを目的とした。愛媛県松山市郊外に位置する余土地区と久米地区を研究対象地とし、地形図や空中写真、その他歴史資料をもとに、近代から現代に至るまでの景観変容を記述し、その発展過程を分析した。結果として、旧農村由来の農地単位には、エリアが市街地化されていく過程で農地や空地を含むいくつかの過渡的な土地利用パターンが存在することがわかった。また、それらのパターンは段階的に、余土地区では同心円状に分布し、久米地区では南部の低地方向への分布傾向が確認され、すなわち地区の自然条件や公共施設及び土地基盤整備等のインフラ整備事業の履歴によって違いが見出されることが示唆された。
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.674-681, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

本研究の目的は,長期にわたる土地所有形態に対する地主の投機的な行動を考慮した非集計的フレームワークを提案することにある.本論文では,ランダム効用最大化理論に基づくロジットモデル型の動的離散選択モデルを適用することで,時間割引率の推定が可能な動学的土地所有形態選択モデルを定式化した.提案したモデルのパラメータは,道後温泉地区の土地台帳をデジタイズする事で得た家単位の地主毎の土地所有履歴という実データを用いて推定した.推定結果より,時間割引率から地主の近視眼的な土地所有選択,また,道後温泉地区における主要な建築物である外湯施設からの距離パラメータからは時代によって選好する土地の位置が異なる事が明らかになった.
著者
大山 雄己 福山 祥代 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.375-380, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

広場や街路といった,歩きを主眼においた公共空間整備に注目が集まっている.近年多くの都市において,1つの目的施設のみに滞在後すぐに帰るといった限定的なまちなかの使われ方が問題として多く見受けられることからも,小滞在を発生させて連鎖的な回遊行動を生み,まちなかの滞在時間を延ばすための空間計画の展開が求められている.本研究では回遊中の一連の活動間の相互依存性を考慮するため,「活動欲求」を導入した離散連続モデルによって活動の発生確率を定式化した.細かな滞在を把握し,正確な滞在時間の情報の得られるプローブパーソンデータを用いて回遊行動の分析を行なった.現状の課題として,来訪者の多くが「1つの目的施設のみに滞在後,すぐに帰る」行動をとっていること,小滞在の発生は流入地点と主目的地の1往復の間という限られた範囲であることを把握した.モデリングにおいて活動欲求を考慮したことで,推定結果からは連鎖的活動を発生させて滞在時間を向上させるための現実の施設配置,街路の接続方法など,都市空間の計画に対する有効な示唆を得た.
著者
青木 俊介 菅原 義治 森口 将之 羽藤 英二
出版者
公益財団法人 国際交通安全学会
雑誌
IATSS Review(国際交通安全学会誌) (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.6-14, 2018-06-30 (Released:2018-08-08)

車、バイク、さらに鉄道やバス、タクシーなどの公共交通も含めたモビリティとは、私たちの暮らしと深く関わるものであり、そこに施されたデザインもまた、生活環境や都市空間、街の風景の一部になるものとして、多大な影響力を持っている。社会状況や技術革新、開発者の思考性や思い、利用者のライフスタイルやニーズなどが複雑に絡み合う中から生まれるモビリティデザインは、時代を映す鏡であり、単に“乗り物”という枠を超えて、そこにはさまざまなものが見えてくる。それぞれの専門の立場からモビリティデザインの系譜を辿るとともに、日本におけるモビリティデザインがどのような方向に進もうとしているのか、その将来像と可能性をひもといていく。
著者
佐々木 葉 羽藤 英二 岡田 智秀 佐々木 邦明 平野 勝也 山田 圭二郎 星野 裕司 山口 敬太 出村 嘉史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では 景観計画およびまちづくりの理念を構築するための理論的研究として、①固定的視点からの景観把握モデルに代わる広域を捉える地域景観把握モデルの可能性を示し、②欧州風景条約から本研究の理念の位置づけを確認した。理念を実現する方法論として、③シーン景観、④移動景観、⑤生活景それぞれの視点で地域景観を記述する手法を考究した。理念実現化の運用方策として、⑥地域景観の保全から捉えた地域ガバナンス、⑦地域景観を活用した地域連携方策、⑧地域景観の価値の継承方策を調査した。以上を含めた本研究の成果は2014年1月23日に土木学会ワンデイセミナー「地域景観まちづくりの理論と実践を探る」において公表された。
著者
吉野 大介 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1229-I_1239, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
19
被引用文献数
2

デマンド交通の運行計画の検討にあたり,運行経路の解のバリエーションが得られることはサービス運営者にとって有効な情報となり得る.しかし,既往の列挙アルゴリズムでは経路列挙のような膨大な組み合わせが存在する際に現実的な計算時間での列挙が困難であった.本研究は,デマンド交通の運行経路をグラフ構造により表現し,与えられたグラフ構造の中からある制約条件を満たすような部分グラフ構造を全て列挙して,それらをZDD(ゼロサプレス型二分決定グラフ)により圧縮表現して索引化する技法について提案した.また,ZDDによって得られた列挙解を用いたネットワーク上での影響分析への適用可能性についても併せて検討を行った.
著者
小川 大智 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1678-1684, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
17

近年、都市部におけるウォーカビリティの重要性が見直され、様々な歩行者行動モデルが提案されている。しかし、その多くは、マルチモーダルな状況を扱っていない。通常、道路上の歩行者と車両は互いに認識しあっており、一方の行動が他方に影響を与える。この影響を再帰的ロジットモデルで定式化すると、推定に非常に高価な反復計算が必要となる。そこで、本研究では、敵対的逆強化学習に基づく新たな手法を提案した。このモデルでは、1回の学習で各モードのリンク価値関数を学習するため、計算コストが大幅に削減される。松山の事例では、RLと同レベルの推定をより少ない時間で行うことができた。
著者
奥田 勇 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1646-1653, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
10

下位問題に内生性を考慮した経路選択モデルを据えた,駐車場位置の最適化に関する二段階最適化問題を地方都市の中心市街地において検証した.軌跡データを用いたパラメータ推定と,多目的最適化問題の求解を行い,歩行経路と自動車の走行では歩行の負の効用が相対的に高く,目的地と駐車場を近くに配置することが最適戦略となりやすいこと,歩行者専用空間は正の効用を示すが,効果的に配置できなければ社会的厚生が悪化することがあることが明らかになった.大規模な歩行者空間化によって車から歩行へのモード転換が促進され,混雑が緩和し,車での来訪者の総効用が増加する可能性があることも示唆した.
著者
白井 帆香 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1638-1645, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
19

過疎化や高齢化が進む中山間地域においては,効率的な公共交通として需要応答型交通(DRT)に期待が集まっている.DRTは非定型的な活動に付随する低頻度な移動需要にマッチすることが求められるが,その予測や対応は困難である.そこで,本研究では日々の活動ニーズの変化を取り入れた再帰的スケジューリングモデルと,先着順ではなくモデルスコアに基づいて予約を調整するアルゴリズムを提案する.アルゴリズムは,予約調整に伴う繰り返しの計算コストに対応するため,ゼロサプレス型二分決定グラフによる経路列挙索引化手法を用いて実装した.実証分析を通して,本研究の提案は非定型的で低頻度な需要を予測し,予約調整システムを通して効率的にDRTにマッチングすることで,全体のサービスレベルを改善することを示した.
著者
平井 節生 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.96-114, 2022 (Released:2022-11-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本論文は,関東大震災の復興橋梁群のデザインのレベルの高さに鑑み,それを実現し得た背景として,明治・大正期の造船及び鉄道橋製作の技術の進化があったのではないかという仮定に基づき,産業史的・技術史的視点で各業界の歴史をレビューするとともに,造船,鉄道橋梁,道路橋の各日本人技術者の最初の交差点となったと思われる1887(明治20)年竣工の吾妻橋を取り上げ,官・民で担当した技術者達に焦点を当てる.