著者
脇中 洋
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.53-81, 2008-03

1995年7月に大阪市東住吉区の住宅密集地で発生した火災は、娘Mの死亡保険金目当ての詐欺未遂および放火殺人事件(いわゆる東住吉事件)として母親Aと内縁の夫Bが立件され、2人には2006年11月最高裁で無期懲役刑が確定している。本件は放火を裏付ける物的証拠がなく、AおよびBの自白のみを証拠としている。特にBには大量の供述があり、その大半で放火殺人を認めて克明に犯行様態を記しているが、その供述には数多くの疑問点が指摘されている。筆者は控訴審の段階から弁護団の鑑定依頼を受けて、B供述が「真犯人が体験を記した」ものか、「無実の者が犯人に扮して記した」ものかを明らかにするための供述分析を行なった。この鑑定書のうち、本稿では夫が自白に落ちた当日の供述を紹介して、自白の生成プロセスに関する評価を行なう。
著者
脇中 洋 中塚 圭子 GILCHRIST Alex 石橋 佳世子
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、NPO法人と連携しながら高次脳機能障害者ピアサポーターを養成し、概ね週1回以上の高次脳機能障害ピアサポート活動を継続して記録を収集し、社会的実装を果たした。また生活施設や就労支援施設の現場職員と当事者やその家族を交えた事例報告研究会を3か月おきに開催した。さらにこれまで連携してきたカナダのピアサポーター専門家との情報交換や共同の学会発表を行い、高次脳機能障害ピアサポートの有用性を実証した。
著者
脇中 洋
出版者
花園大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成18年度末にかけて実施したピアサポータートレニングプログラムを受けたメンバーを中心とする20〜30代の当事者7名を対象に、ピアサポータートレーニングプログラム作成委員会を結成して月に1回のペース計11回集まり、研究協力者と(中塚圭子)ともにフィシリテーターを努めて将来のピアサポートに向けての都トレーニングプログラム練成を図った。また当事者家族の要請を受けて、家族向けピアサポータートレニングプログラムを平成19年9月から20年3月まで計8回実施した。これらの活動を経て当事者らがどのように障害を持つ自分自身の意識を変容させたかを検討できるようにビデオに録画した。こうした活動の合間に、これまで調査したカナダや、京都、福知山、大阪、奈良、神戸の当事者団体と可能な限り連絡を取り合い、当事者のあり方めぐって意見を交わしながら連携を図り、平成20年2月から3月にかけてカナダの当事者団体スタッフを招いて福知山、神戸、奈良で相談を開くとともに、当事者団体やピアサポーターらの協力を得て、花園大学においてフォーラムを開催した。以上の活動経過は当事者団体会報や「福祉と人間科学」に記し、発達心理学会で発表した。研究3年目の終わりに到達した課題は、以下の3点である。まず高次脳機能障害がリハビリ求められる会社適応に専心するのみならず、自己適応をも要すること。また「会社に向けて発信するピア」というモデルを得ることが、自己変容を推進すること。家族もまた適応およびピアというモデルを要していること。これら3つの観点は、当事者とその家族が会社との接点を得ていく上で、不可欠のものと思われる。