著者
諸藤 美樹 梶山 渉 中島 孝哉 野口 晶教 林 純 柏木 征三郎 隅田 郁男 花田 基典
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1013-1018, 1990-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
21

九州地方は, HTLV-IのEndemicareaとされているが, その中でも佐賀県は, 比較的陽性率の低い地域と報告されていた.今回, 佐賀県北部の唐津, 東松浦地区における抗ATLA抗体陽性率を検討するため, 1985年9月から10月にかけ唐津赤十字病院を受診した患者757例を対象とし, 抗ATLA抗体をEIA法により測定した.1. 全患者の抗ATLA抗体陽性率は, 13.7%(757例中104例) で陽性率は加齢と共に上昇し, 60~69歳で最高の21.1%に達した.2. 性別の陽性率は, 男性9.6%, 女性17.8%と有意に女性が高率であった (p<0.001).3. 悪性腫瘍患者を除く患者の居住地別陽性率は, 玄海灘に面する鎮西町, 肥前町, 浜玉町が高く, 沿岸部と山間部の比較では, 有意に沿岸部が高かった (p<0.001).4. 疾患別では, 新生物が26.1%と最も高率で, ATLが100%, ATL以外の悪性腫瘍でも, 25.9%と高く, HTLV-I感染がATLのみならず, 他臓器癌とも関わっていることが示唆された.
著者
太田 喜郎 今村 孝 山岡 宏太郎 桑原 寛 花田 基典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1316-1323, 1967-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

臨床上,チアノーゼをきたす病的状態がいくつか知られているが,なかでも非常にまれなスルフヘモグロビン血症によるチアノーゼの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.患者は40才の女で,チアノーゼ,頭痛,便秘を主訴に入院した, 2才の時,脳膜炎にかかり水頭症をきたし,持続する頭痛のために5, 6年来「ノーシン」を連用するうちに,チアノーゼが出現した.家族歴に同様のチアノーゼを有するものはいない現症では,頭囲の拡大,顔および可視粘膜のチアノーゼを認めるが,心,肺に異常を認めない検査成績では,肝機能は正常で,脳室撮影,脳血管造影等により著明な脳室拡大(水頭症)を認めたが,髄液は,圧,その他,正常範囲にあつた.溶血液の分光学的検査で, 618~620mμに特有な吸収極大を有する病的hemoglobinを含んでいることがわかつた. CNを加えても変化せず, methemoglobinとは異なつている.その他の試薬に対する態度から,この病的誘導体がsulfhemoglobinであることがわかつた. Evelyn & Malloy法による定量で2.35g/dl(全Hbの16%)を含んでいた. Hbの電気泳動では異常Hb (Hb-M)は検出されなかつた.網赤血球,赤血球抵抗, Heinz body形成試験等は正常で,血清黄疸指数などからも溶血亢進を思わせる所見はない赤血球のDPNH diaphorase活性は正常であつたが, glutathione (reduced form)は14mg/dlと高値を示した.「ノーシン」の内服を中止し,便通を整えて経過を観察する間に, sulfbemoglobinは入院後2ヵ月目には0.5g/dlと減少し,次第にチアノーゼも消失した.