著者
上田 大貴 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_668-II_676, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
24

2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は,健康被害のみならず,感染症対策のための社会活動制限を通じて,経済にも大きな損失をもたらした.本研究では,2020年第2・第3四半期において,新型コロナウイルス感染症対策のための行動制限が各国のGDPに与えた影響を44ヵ国のデータを用いて検討し,行動制限がGDPを大きく低下させることを確認する.また,データの比較が可能なG7各国について,労働者の賃金に対する政府補償の充実度合いが行動制限及びその緩和に与える影響についての実証研究を行った.その結果,政府による補償の充実は感染拡大を抑止するための行動制限を促進する効果とともに,制限の解除時においては経済活性化の促進効果を持つことが示唆された.
著者
三角 耕太 田中 皓介 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_525-I_535, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
18

近年では「公共政策バッシング」と呼ぶべき報道がしばしば行われている.本研究では,公共事業に対するバッシング報道の一例として,豊洲市場移転問題に関する報道を取り上げる.当該事業に関する批判が高まった後,批判の根拠である「豊洲市場の危険性」が専門家により否定されたにも関わらず,批判は継続されたが,この際の論調の(部分的変更を伴う)選択過程の分析を行った.テレビの情報番組及び新聞の報道内容に関する定量的データの分析から,いずれのメディアにおいても「危険性から手続的瑕疵へと論点を移動させた上での批判の継続」という論調選択が一定程度行われていることが示された.またこの過程に関する認知的不協和理論に基づく検討の結果,この論調選択が認知的不協和の低減プロセスとして現出している可能性が示唆された.
著者
山田 慎太郎 藤井 聡 宮川 愛由
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.155-164, 2016 (Released:2017-01-06)

A referendum in a manner of direct democracy has been occasionally adopted in Japan for a political decision. However, it may not always maximize public interest, and it may thus lead failure. This referendum failure can easily emerge when those who insist a controversial policy, such as politicians who can benefit from the policy, use sophistry to justify the policy. This is because voters can not rationally judge the policy ouing to the sophistry. In this research we focus on politicians' remarks related to the referendum of "Osaka Metropolis Concept" of which voting day was 17th May, 2015 in Osaka City. We quantitatively analyzed remarks by 2 politicians, who are representative debaters in 2 major political parties in Twitter for a month (from 17th, April, 2015 to 17th, May, 2015), and remarks by them in a debate TV program casted in 12th, February, 2015. The result indicates that sophistry accounted for 33.9 % of the Twitter sentences and 48.0 % of the verbal sentences spoken by a politician who insisted the concept, whereas almost no sophistry (only 0.1 %) for the other politician. This result implies that there was risk that voters might not be able not rationally judge based on such frequent sophistry.
著者
藤井 聡 宮川 愛由
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_97-I_109, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
29
被引用文献数
2

自然災害に見舞われるリスクが高い我が国において,社会資本整備のみならず,防災及び経済発展の担い手として,土木建設業が非常に重要な役割を果たしてきた.一方で近年,公共工事の入札市場では,闇雲な低入札等の弊害により,建設業界全体が疲弊しており社会全体が甚大な不利益を被ることが危惧されている.そこで本研究では,我が国の公共調達制度適正化に資する知見を得ることを目的として,明治初期から今日に至るまでの我が国の公共調達の歴史変遷を整理した.その結果,我が国の公共調達は純粋な競争を避け,実質的に受発注者で調整を行うことで個々の受注価格と請負者を特定し,その中で,適切な工事品質を確保するという公益に資する目的で行われていた談合の存在と,それを正式に活用するための制度発展という歴史的経緯の存在が示唆された.
著者
兵藤 哲朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.110-112, 2021 (Released:2021-06-20)
被引用文献数
1

新型コロナウイルス感染症,いわゆるCOVID-19の感染拡大は,土木計画学分野の研究者が研究対象としてきた都市活動,交通行動,経済・産業活動に対して大きな影響をもたらした.ついては本特集は,土木計画学研究委員会が主催し2020年8月8日に開催した「COVID-19に関する土木計画学研究発表セミナー」での発表論文を中心として,COVID-19の感染拡大に伴うそれらの諸行動,諸活動,ならびに諸対策にまつわる各種の土木計画学研究を掲載するものである.
著者
藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木學會誌 (ISSN:0021468X)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.50-51, 2012-09-15
著者
藤井 聡 高野 裕久 宮沢 孝幸 川端 祐一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では新型コロナウイルス感染症等に関するデータを用いて、以下の3要素を含む被害・対策効果予測モデルを構築する。(1)社会経済活動の制限やマスク着用等の行動変容が、健康・経済被害に与える影響(2)医療資源や保健体制への財政投資による健康・経済被害の低下(3)東京一極集中を緩和し国土構造を分散化することによる健康・経済被害の低減これらを統合したモデルシステムを用いて、公衆免疫強靭化対策効果の定量予測を行うとともに、パンデミック発生下における最適な行動指針の策定手法を提案する。
著者
藤井 聡 竹村 和久 吉川 肇子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

いかなる社会システムにおいても,多様な価値観が共存している.こうした価値観の多様性は,共存共栄によって社会システムの潜在的な環境適用能力を確保し,より望ましい発展を遂げる重要な条件となる.しかし,一方で,深刻な対立を引き起こす"時限爆弾"でもある.例えば,現在深刻な問題を迎えている米国におけるテロ事件も,価値観の対立が生み出した悲劇と捉えることが出来よう.そして,平和と言われる我が国でも,局所的な価値の対立は近年の重要な社会問題を引き起こしている.本研究では以上の認識に基づき,人々の価値観,ならびに合意形成が問題となる社会行動についての調査を行い,社会行動における人々の価値観の演ずる役割を明らかにした.具体的には,原発事故や医療事故などの複数のリスク問題を例にとり,それぞれのリスク問題についてどのようにすれば「安心できるか」という質問を行った.その結果,そのリスクの規模が小さく,かつ,その確率が低い,といういわゆる客観的なリスクを最小化するような施策だけではなく,リスク管理者が「信頼できる」という条件がきわめて重要な役割を担っていることが明らかとなった.さらに,リスク管理者が関係する不祥事が発覚した場合,信頼は低下すること,ならびに,信頼が低下することで,リスク管理者を監視使用とする動機が増強されることも明らかになった.ただし,リスク管理者の対応が誠実であれば,信頼低下は抑制できることも示された.
著者
遠山 航輝 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_213-I_223, 2022 (Released:2022-05-18)
参考文献数
26

近年我が国では,政治的論争はいくつかあるものの大規模な「政治運動」は起きていないことが,他の先進諸国と比べた顕著な特徴であると言える.これは「政治的無関心」の問題であるだけでなく,日本人が政治に対して抱いている「忌避感」の問題だとも言われるが,この忌避感についてはこれまで学術的な解明は不十分な状況にある.本研究ではこの忌避感を日本人が政治に対して持っている「恐怖・軽蔑感」と捉え,これに「対立忌避傾向」「大衆性」「非ニヒリスト度」が影響を与えているという仮説を設定し,検証を行った.その結果,「対立忌避傾向」や「大衆性」の下位因子である「自己閉塞性」および「傲慢性」が高い人ほど「政治恐怖・軽蔑度」が高くなること,「非ニヒリスト度」が高い人ほど「政治恐怖・軽蔑度」が低くなることが示された.
著者
樋野 誠一 門間 俊幸 小池 淳司 中野 剛志 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_21-I_32, 2012 (Released:2013-03-12)
参考文献数
6
被引用文献数
6

本研究は,デフレ時に実施する公共投資の効果は,通常(インフレ)時の効果と比較してどの程度異なるのか,あるいは,現下のデフレ不況から脱却するために必要な財政出動の規模と期間はどの程度かについて,公共投資のクラウディングアウトの有無に着目して,ケインズモデルにより検証する.特に,東日本大震災復興投資,新東名高速道路投資などさまざまな政策シナリオに基づき,公共投資の投資効果を実証的に分析することに主眼を置く.結論は,デフレ時においてはクラウディングアウトが生じないため通常時よりも乗数効果が約0.2ポイント高いことが示された.さらに,デフレ脱却のための公共投資の投資規模は,今の経済状況が続くと仮定すると,90年代の公共投資の持続的実施が必要となることが明らかとなった.
著者
羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.87-97, 2008
被引用文献数
2

Regional subsistence can be improved if and only if at least one local resident exhibits altruistic and cooperative behavior. This is known as the volunteer's dilemma. This study aimed to examine the social conditions that encourage such pro-social behavior in a local community. For this purpose, a mechanism creating altruistic behavior is modeled that is based upon the idea of multilevel selection in evolutionary theory. We present a dynamic model including both group selection and individual selection. We derive analytical solutions from the model in order to investigate the conditions under which altruistic behavior can emerge. A numerical analysis of time-dependent solutions is conducted using the Runge-Kutta method. Stationary solutions of the dynamic model are then analytically derived. The result indicates that group selection could be an important force to encourage altruistic behavior. Finally, based on the analysis, measures that promote voluntary pro-social behavior are discussed.
著者
藤井 聡 柴山 桂太 中野 剛志
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.85-90, 2012 (Released:2013-01-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

In this paper, a theoretical hypothesis that public works would have deterrence effects of deflation under the situation that deflation-gap exists was tested empirically. For testing this hypothesis empirically, we used macro-economics data in Japan since 1991 when the huge deflation-gap was brought by the collapse of the babble economy. As a result, we found that 1,000 billions yen's public works increases the GDP deflator by 0.2-0.8 % and increases nominal GDP by about 2,430 billions yen - 4,550 billions yen. This results support the hypothesis that public works would have deterrence effects of deflation under the situation that deflation-gap exists. It was also found that the deflation deterrence effects by the public works was larger than that by the in-crease export.
著者
梶木 尚美 藤井 聡子 森田 浩司
出版者
大阪教育大学附属高等学校池田校舎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-17, 2010-12-22

新学習指導要領では、地歴科の各科目を他の二科目と関連付けながら教えるようにと指示している。本校地歴科では、日本史・世界史・地理の教員が大黒屋光太夫をテーマに共同研究をすすめ、教材作成と授業実践を行った。またデジタル化の進みにくい歴史の授業でデジタル教材の作成とプロジェクターを用いた授業展開の可能性を探った。
著者
竹村 和久 吉川 肇子 藤井 聡
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.12-20, 2004
被引用文献数
3 5

本論文では, 種々の社会的リスクについて議論するための意思決定論的枠組を提供する. 筆者らには, これまでの伝統的リスク解析研究者, リスク社会学者, 予防原則を擁護する人々の間では, 社会的リスクに関連する環境の不確実性をどのように把握して, 考察するかということに関して, 共通の認識枠組がないように思われる. 本論文では, 不確実性を, 意思決定主体の環境の構造によって分類して, これらの社会的リスクに関わる問題がどのようなものであるかを, 不確実性下の意思決定問題として検討する. また, 本論文で提案する理論枠組が, 今後の社会的安全のための技術の一過程としてのリスク評価にどのような応用的含意があり得るのか考察を行う.
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 中井 周作 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_697-67_I_703, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
20

本研究では人の社会的な生活に欠かせない活動の一つである「移動」に着目し,移動中に感じる気分や体感と,生活に対する個人の主観的な評価である「主観的幸福感」との関係について検証することを目的とした.また,移動時の風景等の属性と幸福感についても相互の関係を検証し,幸福感という観点からの「良い移動」について検討した.結果,移動時の肯定的な感情や感覚を下位尺度とする「移動時の幸福感」尺度と,生活における種々の主観的幸福感との間に正の相関関係がみられた.これは,移動が目的地へ達するための単なる手段ではなく,人の生活の質を向上させうる重要な活動の一つであることを示唆している.さらに,移動先での目的によって移動が幸福感に及ぼす影響が異なることや,移動時の風景が幸福感に有意に影響している可能性が示唆された.
著者
藤井 聡
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.27-41, 2005 (Released:2006-04-29)
参考文献数
40
被引用文献数
8 6

本研究では,公共事業の合意形成問題における公共受容の問題を考えるために,受容意識に関わる因果関係と信頼の醸成に関する仮説を措定し,それを検証するための実験を行った。すなわち,受容意識は自由侵害感と公正感に,公正感は手続き的公正感と分配的公正感と公共利益増進期待に,そして,手続き的公正感と公共利益増進期待は行政に対する信頼にそれぞれ影響を受けるという仮説を措定した。また,公共事業の趣旨を理解している場合には,そうでない場合よりも,その公共事業の実施者に対する信頼の水準は高くなるという仮説を措定した。以上の仮説を検証するために,都心部の渋滞や大気汚染を緩和する目的で都心部への自動車流入に関する罰金を伴う規制施策を実施するという想定のシナリオ実験(n=800)を行ったところ,以上の仮説を支持する結果が得られたと共に,行政への信頼は受容意識,自由侵害感,公正感,分配的公正のそれぞれに対しても直接的な影響を及ぼしていること,ならびに,公共事業の趣旨の教示の信頼に対する効果は,罰金額が一万円の場合の方が千円の場合よりも小さいという結果が得られた。
著者
遠藤 皓亮 藤井 聡 中野 剛志
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.41-49, 2014 (Released:2014-07-23)

The objective of this study is to investigate how people's attitude toward governmental finance is influenced by information that they obtained. We conducted an experiment in which we provide different types of information to different participant groups. The information themes we provided include public investment and the governmental bonds. In some groups, the information was provided with numerical data and graphs, but in the other groups, the information was without them. The 400 participants were randomly assigned into a control group and 6 experimental groups (3 types of information themes, i.e. public investment, governmental bonds and both multiplied by 2 types of information content, i.e. with and without numerical data and graphs). As a result, we find that: 1) information with numerical data and graphs have stronger effects than that without them on attitude toward governmental finances, 2) information have stronger effects for those with higher concern or higher literacy on the policy, and 3) too much information have lesser effects than that with fewer information.