著者
浅枝 隆 藤野 毅
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.3-7, 1992-12-01 (Released:2009-07-23)
参考文献数
3
被引用文献数
14 4

夏期においてアスファルトとコンクリート舗装の熱収支を調べるために野外観測を行った。その結果, アスファルトの表面温度は57℃まで達し, 表面から放出される赤外放射量も670W/m2を記録した。これは, その時の下向き大気放射量450W/m2と比較すると実質上向きに220W/m2も放出されることになる。また, 顕熱量も昼間は300W/m2以上になり, これらは都市域の温暖化を考える際に大きな熱源となるものといえる.一方, コンクリートではアルベドが大きいために表面温度は高くならず, 同じ舗装面でもむしろアスファルトよりも土に近い傾向を示した.それぞれの地表面における熱収支では, 日中アルベドがほぼ等しいアスファルトと土についても, 熱伝導率・熱容量などの物性の違いや水分蒸発の有無による影響を受け, 大きく異なった特性を示した.さらに顕熱量の算定に当たっては, アスファルトのように表面が非常に高温になり, 風速が小さいときにはバルク式だけでは十分に見積もることができず, 対流による熱輸送を考慮して見積もる必要があることがわかった。さらに, それぞれの地表面での正味放射フラックスと地中熱フラックスの時間的な関係をループの形, 大きさで表し, それぞれの蓄熱特性の違いを特徴的に表現することができた。このように表すことより, その土地の熱的特性を知ることができる.
著者
藤野 毅 ニン ウィリ 野本 健志 山田 明弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1291-I_1296, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10

This topic presents the effect of radioactive pollution in river on Stenopsyche sp. (Trichoptera: Stenopsychidae) at upstream and immediately downstream of Mano dam in Fukushima Prefecture, Japan. Stenopsyche sp. has high productivity with bivoltine life cycle among all invertebrate species, and can be a good indicator for any kind of environmental pollutions. The total radioactive cesium is always detected from Stenopsyche sp. with the order of 4,000 Bq/kg. A cause of high radiation intensity is due to very high intensity from the fine particulate organic matter (FPOM). However, its biological half-life was only about 6 hours for non-winter generation. Thus, FPOM is mostly excreted without assimilation.
著者
吉田 康太 藤野 毅
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.88-100, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)
参考文献数
68

深層ニューラルネットワーク(DNNs)などの機械学習技術(以降AI技術と呼ぶ)は,画像認識をはじめとする様々なタスクにおいて非常に高い性能を発揮しており,本技術の社会実装が今後更に加速することが予想される.自動運転車や監視カメラなど,安全やセキュリティに関わる分野にAI技術を導入するためには,誤動作の誘発・プライバシー情報の窃取などを目的としたAIに対する攻撃手法に対するセキュリティ対策が重要になる.また,学習済みAIモデルは重要な知的財産であるため,これを保護する手法も実装しなければならない.一方で,監視カメラや自動運転システムのようなプライバシー保護・リアルタイム性が要求されるアプリケーションでは,推論処理を組み込み機器(以降エッジAIと呼ぶ)で実行する必要がある.このようなケースでは攻撃者がエッジAIへ物理的にアクセスできるシナリオも考慮したセキュリティの確保が求められ,エッジAIのハードウェアセキュリティという研究分野が2017年頃から注目されている.本稿では,AI特有のセキュリティ課題及びエッジAIのハードウェアセキュリティについて,脅威を整理し,更に近年の研究動向や対策技術を紹介する.
著者
藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2005年から試験堪水が開始された荒川水系中津川の滝沢ダム上流とダム直下を対象に、流下有機物と底生動物群集の構成調査を行った。試験堪水以降、下流域のほうがタクサ数、バイオマスともに豊かであった。バイオマスの増加は主に大型のヒゲナガカワトビケラが早々に定着したことに起因した。底生動物群集の出水後の回復過程を比較すると、ほぼ同時期に同程度の回復が見られた。統計解析(CCA)によっても出現優占種と環境要因との対応関係が明確に示された.
著者
吉田 康太 藤野 毅
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.4J3GS204, 2020 (Released:2020-06-19)

深層学習(DNN)システムにおけるセキュリティ課題として,バックドア攻撃が知られている.画像認識におけるバックドア攻撃では,攻撃者はDNNモデルの学習データセットに,特定位置へのドット付与などの目立たない加工を施し,加工前とは異なるターゲットラベルを設定した少量の異常データ(ポイズンデータ)を混入させる.このデータセットを用いて学習したDNNモデル(バックドアモデル)は,正常な入力に対しては正常に推論を行うが,ポイズンデータと同様の加工が施された入力に対しては,推論結果がターゲットラベルに誘導されてしまう.本稿では,DNNモデルユーザ(防御者)がラベルのないクリーンなデータを収集できるタスクを想定し,蒸留を用いたバックドア攻撃への対策を提案する.バックドアモデルを教師とし,クリーンデータを用いて蒸留することで,ポイズンデータの影響を排除した生徒モデルが得られる.更に,バックドアモデルと生徒モデルそれぞれで学習データセットを分類した時の推論結果の差分から,学習データ5万件の中に100件のみ含まれるポイズンデータの候補を約550件まで絞り込むことができる.
著者
浅枝 隆 藤野 毅
出版者
公益社団法人日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.67-72, 1998-06-30
被引用文献数
1

コンクリートは様々な形で自然環境を変化させる。その中で、周辺の熱環境を悪化させることは都市生活を営む上で大きな問題である。とこでは、舗装を例にして、コンクリート舗装とアスファルト舗装、裸地面について、夏および冬についてそれぞれの面におけるエネルギーの収支特性を比較した。その中で、コンクリートは、夏には日中には日射の反射が大きく、その一方で大量の熱を蓄えてそれを夜間に放熱する。また、冬にはより冷却されるなどの欠点がある。こうした欠点の緩和としては、単に空隙をもった材料では十分でなく、空隙サイズに広範な分布があり、保水力をもった材料でなければならない。また、植物で建材の表面を覆うことは、日射や天空への赤外放射量を制御するために、夏冬ともに建材の温度緩和に有効である。
著者
上岡 泰輔 堀 遼平 北森 達也 吉川 雅弥 藤野 毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.352, pp.93-98, 2011-12-08

宇宙・航空・原子力用LSIでは,放射線が誘起するソフトエラーに対する高い耐性が求められる.一方,携帯電話やデジカメといった民生用機器と比較すると,これら用途のLSIの生涯生産個数は少なく,フォトマスク等の初期開発コストにより,LSI1個当たりの製造コストが非常に大きくなるという問題がある.生涯生産個数の少ない用途に向けては,FPGAを使用することで製造コストを削減することが可能であるが,回路構成素子としてSRAMを用いたFPGAは放射線耐性が弱いのが問題とされている.このような少量生産でありながらFPGAの使用が困難な応用用途に対しては,論理変更をSRAMではなく,2枚程度のビアマスクで行う方式が有効であると考えられる.本論文では,当研究室で開発してきたビアプログラマブルロジックVPEXを,FPGAに代わる低コスト耐放射線LSIとして提案する.回路シミュレーションにより,VPEXのソフトエラー率を見積もった結果を報告する.
著者
中北 英一 田中 賢治 戎 信宏 藤野 毅 開發 一郎 砂田 憲吾 陸 旻皎 立川 康人 深見 和彦 大手 信人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究プロジェクトは「琵琶湖流域の水・熱循環過程解明に向けた総合研究と衛星同期共同観測」を骨子としたオープンなプロジェクトであり,1989年の山梨大学工学部砂田憲吾による提唱をベースに,様々な方々,関係機関のサポートを頂戴しながら,手弁当による参加をベースに継続して続けられてきたものである.フリーな議論をベースにそのあり方を問い続けてきたプロジェクトでもある.その土台をベースに砂田憲吾をプロジェクトリーダーとして進んできた第1ステージが1994年に終了し,1995年からは,1)衛星リモートセンシングデータの地上検証 2)衛星データを用いた水文量抽出アルゴリズム/モデルの開発 3)地表面-大気系の水文循環過程の相互作用の解明 4)水文循環過程の時空間スケール効果の解明 を目的として,本科学研究費補助金をベースとした第2ステージを進めてきた.そこでは,これまでの地上,衛星,航空機による観測に加え,対象領域全体を表現するモデルとのタイアップを新たに目指してきた.その中で,どのスケールをベースに水文過程のアップスケーリングを図って行くべきなのかの議論を深めながら,20km×20kmまでのアップスケーリングをめざし第3ステージに橋渡しをするのが,わが国に根付いてきた琵琶湖プロジェクトのこの第2ステージの果たすべき役割である.'95共同観測では,様々なサポートにより上記第2ステージの目的を追求するのに何よりの航空機,飛行船を導入した大規模な観測態勢を敷くことができた.また,96年度から初の夏期観測をスタートすると共に,モデルとタイアップさせたより深い共同観測のあり方についての議論を行ってきた.成果としては,上記目的それぞれに関する各グループの成果報告,観測・モデルを組み合わせたスケール効果の解明と今後のあるべき共同観測態勢,研究グループ外部をも対象としたデータベースや観測・解析プロダクツを報告書として啓上している.
著者
藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

観測は、研究実施の利便性と自然度の高さを考慮して埼玉県所沢市と入間市の境にある柳瀬川上流で行った。川幅は5〜10m程度であり、平常時の流量は0.02〜0.1m^3/s程度で、丘陵を流下する勾配がなだらかな渓流である。周囲は、主にケヤキやサクラで覆われ、常時日影となるため付着藻類はほとんど見られない。堆積特性を把握するため、瀬、淵、蛇行がある270m区間を対象に、河床形状、川幅等の地形を詳細に調査したのち、落葉分布を作成した。落葉が終了した時期を見て、瀬の礫に引っかかるリター、淵に沈むリター、蛇行する区域の内側に流れの2次流によって集積するリター、遠心によって外側に堆積するリターなど、堆積特性を物理的観点で定義し、それぞれの堆積量を見積もった。さらに、堆積に影響するファクターとして、水深、流速、礫の数、礫間距離など、物理パラメータで整理した結果、水深がもっとも堆積量に影響を及ぼすことを明らかにした。次に、リターの分解の過程を、リターバッグを用いた実験で明らかにした。実験では、サクラとコナラを用いて、瀬、淵、岸などでの分解の速度を求めた。分解速度は淵よりも瀬の方で速く、この理由として、分解に大きく関与するベントスの役割を指摘した。また、実験上の注意点として、ある程度のメッシュサイズのリターバッグを用いると、ベントスの幼生が進入、リターバッグ内でサンプルを餌としながら成長、メッシュサイズより大きくなってリターバッグから出られなくなり、サンプルを食べつくすなど、これまで用いられてきたリターバッグ法の問題点も指摘した。
著者
浅枝 隆 藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

河道内の樹林化の予測を行うために、現地調査より求めた、樹木個体の形態に関するアロメトリー関係より樹木個体の生長モデルを作成し、さらに、自己間引き、枯死率、萌芽率から個体密度の予測モデルを作成した. さらに、それを実際の河川の樹林化予測に適用した.
著者
北脇 秀敏 藤野 毅 押谷 一 藤田 賢二 御船 直人
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.廃棄物の鉄道輸送状況調査国内・国外の廃棄物の鉄道輸送状況調査を行い、鉄道輸送における技術的・制度的問題点を検討した。2.廃棄物の広域輸送の経済学的視点からの検討これまでの廃棄物処理の基本的な考え方は排出者費用負担の原則を踏まえて、排出域内処理を基本とされてきた。本研究では経済学的な視点から広域処理の問題点を示すとともに、地域計画論の視点から広域輸送方法の選択および処理施設の立地についても基本的な考え方を整理した。3.大規模処分場が環境に与える影響の検討廃棄物によって大規模埋め立てが生じた場合、従来の舗装では微気候が変化し、温暖化がもたらされるが、保水性ブロックや舗装を適用すると自然の土壌と同様な熱環境を維持することや、現在の都市表面が修復された場合のエネルギー効果についても明らかにした。この他、様々な利用法の1つとして家屋の屋根材としての適用場合の効果についても示した。4.わが国の廃棄物鉄道広域輸送のあるべき姿の検討鉄道による廃棄物の広域輸送が健康と環境の保全に果たす役割を整理し、鉄道広域輸送のあるべき姿を検討した。
著者
梅本 佳和 藤野 毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.572, pp.49-54, 2007-02-27
被引用文献数
1

インターネットやローカルLAN内においてWWW,FTP,リモートログインなど様々なサービスが提供されているが,それらは個別にアクセス権の認証を行っていることが多く,ユーザ側の認証情報の管理負担が重いことが問題となっている.この問題を解決するために,一度の認証で複数のサービスを利用できるシングルサインオン(SSO)システムが使用されている.しかしながら,従来提案されているSSOの方式では,初期認証時にID/パスワードによるSSOを実現している場合が多く,初期認証用ID/パスワードのクラッキングにより,すべてのサービスが利用可能になる危険性が高い.また,悪意ある第3者によって,認証情報を一元管理するサーバからアクセス権情報が盗難される危険性も存在する.そこで,本研究では,「USBトークンを用いたPKIによる相互認証」と「認証VLAN」を利用したセキュアなSSOシステムを提案する.さらに提案方式の一部を実装・評価した結果について述べる.