著者
齊藤 仁弘 大木 裕玄 臼井 伸行 笹尾 道昭 河西 宗一郎 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.38-45, 1999-01-25 (Released:2018-04-06)
参考文献数
30
被引用文献数
1

寒天・アルジネート連合印象法に用いられる寒天印象材およびアルジネート印象材と,歯科用硬質石こうおよび超硬質石こうとの組み合わせから得られたそれぞれの石こう模型の細線再現性および表面粗さを測定し,それらの適合性について検討した.その結果,以下の事柄が明らかとなった. 寒天印象材との組み合わせについては,細線再現性および表面粗さの両者で評価Aとなったのは,硬質石こうでは24組中4組,超硬質石こうでは30組中0組であった.アルジネート印象材との組み合わせについては,20組中10組,超硬質石こうでは25組中2組であった。したがって,両印象材には,硬質石こうのほうが超硬質石こうよりも適合性が良好であった.また,寒天およびアルジネート印象材と石こう模型材とのそれぞれの適合性を比較すると,アルジネート印象材との組み合わせのほうが寒天印象材との組み合わせよりも適合性が良好であった.
著者
安斎 碕 小林 弘毅 吉橋 和江 中島 義雄 西山 實
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.90-100, 1997-03-25
被引用文献数
12

本研究は, フッ素徐放性の歯科材料の開発を目的としたもので, フッ素除放性のモノマー3種を合成し, 合成モノマーを分析した.モノマーの合成は, ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン(P_3N_3F_6)を用い, このフッ素の3〜5個をHEMAで置換して, 3種のP_3N_3(F)_<1-3>(EMA)_<5-3>を得た.IR, NMRおよび元素分析の結果, 目的物であった.3種のモノマーの屈折率は, 1.4662〜1.4718で, 粘度は1.3〜1.8Pa・sを示した.3種の合成モノマーをそれぞれMMAに30wt%配合し, これとPMMAとを混和し, 光重合してレジン重合体を作製した.フッ素徐放量および曲げ強さの測定は, レジンを水中に浸漬したのち, 経日的に測定した.レジン3種のフッ素徐放量は, 経日的に低下し, 水中浸漬1および360日で, それぞれ2.0〜3.3μg/mlおよび0.2〜0.8μg/mlを示した.レジン3種の曲げ強さは, 水中浸漬360日で74.0〜76.0MPaを示した.レジン3種のフッ素徐放量および曲げ強さの経日的変化は, 対照として用いた市販シーラントといずれも同じ傾向を示した.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 友清 直 高野 守 吉橋 和江 安斎 碕 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.477-482, 1991
被引用文献数
11

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 3種の2元系レジンのモノマー組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとして合成したシクロホスファゼン系のP_4N_4(CF_3CH_2O)_2[CH_2=C(CH_3)COOCH_2CH_2O]_6, [4PN-(TF)_2-(EMA)_6]と市販のUDMA, Tri-EDMAおよびBMPEPPとを用い, 4PN-(TF)_2-(EMA)_6に市販メタクリレートモノマーを20〜80wt%配合して調製した.試作したレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれの系の場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, RDBは, 4PN-(TF)_2-(EMA)_6に配合する市販モノマーの配合量の増加にともない単調に減少し, 重合率が増大した.4PN-(TF)_2-(EMA)_6に, UDMAあるいはBMPEPPを配合した場合, 粘度が増大するが, RDBは減少した.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 宮﨑 紀代美 友清 直 高野 守 吉橋 和江 安斎 碕 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.127-135, 1992
被引用文献数
7

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, モノマーの種類および触媒組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, 合成したシクロホスファゼン系モノマー3種および市販モノマー8種の計11種に, 6種の触媒組成を配合して調製した.試作したレジンについて, FT-IRを用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれのレジンの場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.重合禁止剤を配合したレジンの場合, 重合率は9G>BPE200≧4G≧3G≧U-2TH>BPE100>EPM800+3G≧2.6E>(EMA)<sub>6</sub>>(EMA)<sub>7</sub>>(EMA)<sub>8</sub>の順となる傾向であった.一方, 重合禁止剤を配合しないレジンの場合, 重合率はBPE200>9G≧4G≧3G≧U-2TH>BPE100>EPM800+3G≧2.6E>(EMA)<sub>6</sub>>(EMA)<sub>7</sub>>(EMA)<sub>8</sub>の順となる傾向であった.シクロホスファゼン系のモノマーを用いたレジンの場合, 重合性官能基の置換数の減少とともに重合率が増大した.EDMA系およびBMPEPP系のモノマーを用いたレジンの場合, エチレングリコール鎖の鎖員数の増加とともに重合率が増大した.11種のモノマーを可視光線重合型アンフィルドレジンとした場合, 重合率は, 触媒組成A(CQ0.50wt%, DMAEM1.00wt%, BHT0.01wt%)およびC(CQ0.30wt%, DB0.15wt%, DMAB-EMA1.40wt%, BHT0.01wt%)を配合した場合が, 比較的高い値を示した.重合禁止剤BHTを配合しない場合, 配合した場合に比較して重合率は高い値を示したが, 保存安定性が低かった.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 吉橋 和江 安斎 碕 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.213-218, 1991
被引用文献数
10

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 光増感触媒の組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとして合成したシクロホスファゼン系のP<sub>4</sub>N<sub>4</sub>(CF<sub>3</sub>CH<sub>2</sub>O)<sub>1</sub>[CH<sub>2</sub>=C(CH<sub>3</sub>)COOCH<sub>2</sub>CH<sub>2</sub>O]<sub>7</sub>[4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>]と市販のTri-EDMAを採用し, これに, 光増感触媒の配合量を種々変化させて配合し調製した.光増感剤は, カンファーキノン(CQ)およびジベンゾイル(DB)を用い, 還元剤は, メタクリロキシエチル-p-ジメチルアミノベンゾエートを用いた.18種のレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いKBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および光照射後の所定時間に経時的に行った.残存二重結合量(RDB)は, 光照射前のレジン中の二重結合量に対する百分率で表示した.4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>の場合, RDBは, 光照射開始5分および1日後でそれぞれ56〜78%および47〜71%を示した.また, Tri-EDMAの場合, RDBは, 光照射開始5分および1日後でそれぞれ27〜63%および15〜47%を示した.RDBは, モノマーとして4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>を用いた場合, CQの配合量の増加にともない有意に減少し, 一方, Tri-EDMAを用いた場合はDBの配合量の増加にともない有意に減少した.
著者
平野 進 齋藤 仁弘 西山 實 平澤 忠
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.759-764, 1993-11-25 (Released:2018-04-05)
被引用文献数
6

市販光重合型コンポジットレジンの乾燥状態と吸水飽和状態における熱的性質について, 室温条件下で測定した.その結果, コンポジットレジンの熱伝導率は0.3〜0.8Wm-1K-1の範囲であった.また, 水分がその熱的性質に影響を及ぼすと示唆された.さらに, 吸水による影響は単純ではなく, フィラーの種類および混入量によって異なることが判明した.シリカが主たるフィラーでは, 吸水飽和状態での熱拡散率および熱伝導率は, 乾燥状態でのそれらに比較して上昇した.しかし, Zrのような元素を含むフィラーでは, 吸水飽和状態での熱拡散率や熱伝導率は, 乾燥状態のそれらに比較して低下した.
著者
林 純子 金子 和幸 井上 豊仁 下村 和則 横瀬 勝美 廣瀬 英晴 西山 實 黒田 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.279-286, 2004-07-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

市販石膏溶解剤12製品を組成分析(IR, WDX, TG-DTA)して主成分を同定するとともに,石膏浸漬前後での溶解剤のpH変化,浸漬時間による溶解量を測定した.石膏溶解剤の主成分はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N, N', N'-三酢酸三ナトリウムである可能性が高かった.溶解剤の固形分含有率は10.4〜31.8%であった.未使用の石膏溶解剤のpHは,10製品で8〜9を,2製品で13以上を示した.普通石膏硬化物の溶解率は,浸漬時間の増加に件い増大し,pH8〜9の10製品では浸漬2〜3時間で100%を示したが,pH13以上の2製品では浸漬3時間で14.3〜37.4%であった.
著者
齊藤 仁弘 升谷 滋行 塩田 陽二 廣瀬 英晴 平野 進 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.216-220, 2005-04-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
10
被引用文献数
3

可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料の義歯床用レジンに付着したカレー食品に対する洗浄効果について検討した.試験体は, 可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料を義歯床用レジンにコーティングしたのち, カレー溶液中に8時間浸漬した.浸漬後, 可視光線重合器を用いて試験体に20および60秒間光照射した.試験体の色差は, 光照射前後の色調を測定して算出した.L∗値は, 同様の値であったが, 照射時間の延長にともないa∗値は増加し, b∗値は減少した.また, 光照射前後の色差は, 照射時間の延長にともない増加した.これらのことから, 可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料を用いた義歯洗浄の有用性が示唆された.
著者
中本 宏 杉沢 肇 佐藤 友彦 島田 和基 五十嵐 孝義 深瀬 康公 西山 實
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1084-1089, 1996-12-01
参考文献数
5
被引用文献数
3

歯冠修復物マージンの支台歯フィニッシュラインに対する適合性の良否は,その予後を左右する重要な因子である.本研究は,研究者によりまちまちに分類,表現されているこの適合状態を,その観察および測定するための方法,装置の進歩に伴い,これらを整理,統合し,より合理的に分類,命名することと,修復物の適合状態の観察,測定のために走査型レーザー顕微鏡の有用性を検討することを目的とした. 適合状態は,(1) Ideal,(2) Open-Closed,(3) Extra-Lined-Intra,(4) Overlapped,の4つの評価基準で,(1) Ideal,(2) Open-Extra,(3) Open-Lined,(4) Open-Intra,(5) Open-Extra-Overlapped,(6) Closed-Extra,(7)Closed-Intra,(8) Closed-Extra-Overlappedの8つの適合状態に分類,命名した.また,走査型レーザー顕微鏡はきわめて合目的性の装置であることが実証された.
著者
川本 善和 檜山 礼秀 根本 美佳 島 弘光 河原 一茂 島田 和基 吉成 勝海 浅野 澄明 桟 淑行 五十嵐 孝義 齋藤 仁弘 西山 實
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.632-641, 2001-10-10
被引用文献数
15 3

目的: 本研究の目的は, 高フィラー型硬質レジン修復物の補修時に追加築盛を行う際の表面処理条件が曲げ接着強さに及ぼす影響を明らかにすることである.<BR>方法: 高フィラー型硬質レジンとしてエステニア (エナメル質用レジンEE, 象牙質用レジンED) を用い, 製造者指示に従い重合した被着体 (2×2×12.5mm) に, 処理なし (NT), シラン処理 (S), ボンディング処理 (B), シラン処理とボンディング処理を併用 (SB) の条件で表面処理を行った後に, 直接法 (D) ではクリアフィルAP-Xおよび間接法 (I) ではEEによる追加築盛を行って重合し, 曲げ接着試験用試験体 (2×2×25mm) を作製した. 作製した試験体は, 37℃で24時間水中保管後に3点曲げ試験を行い, 曲げ接着強さとした.<BR>結果: 被着体EEおよびEDの両者で, 直接法はD-S≒D-SB>D-B>D-NTの順に, SとSB間を除き有意 (one-way ANOVA, P<0.05) に大きな値を示し, 間接法はI-SB>I-S>IB>I-NTの順に有意に大きな値を示した. また, 破断面のSEM観察では, D-NTおよび1-NT以外のすべての処理条件で, 被着体および追加築盛体での凝集破壊が認められた.<BR>結論: 直接法および間接法の両者で, SBとSが最も効果的で, 次いでBが有効であった.
著者
齋藤 仁弘 金子 和幸 堀江 康夫 小泉 寛恭 大谷 一紀 五十嵐 孝義 塩田 陽二 吉橋 和江 廣瀬 英晴 西山 實
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.124-130, 2001-03-25
被引用文献数
12

フィラー含有量の多い歯冠用硬質レジン(高フィラー型硬質レジン)の4製品, エステニア(EE, ED), アートグラス(AE, AD), ベルグラスHP(BE, BD), グラディア(GE, GD)のそれぞれ2種類(エナメル用, デンチン用)について, それらの曲げ強さ, 曲げ弾性率, ヌープ硬さ, 吸水量および溶解量を測定した. 試験体の作製は, 製造者指示に従い, 測定結果はt-検定(危険率5%)で統計処理を行った. 曲げ強さは96.2〜210.6MPaを示し, エナメル用ではEE>BE>AE>GE, デンチン用では, BD,ED>AD>GDの順に大きな値であった. 曲げ弾性率は6,8〜24.6GPaを示し, エナメル用ではEE>AE, BE>GE, デンチン用ではBD>ED>AD>GDの順に大きな値であった. ヌープ硬さは42.7〜163.8を示し, エナメル用ではEE>BE>AE, GE, デンチン用ではBD>ED>AD, GDの順に大きな値であった. 吸水量は9.7〜28.1μg/mm3を示し, エナメル用ではGE>AE, BE>EE, デンチン用ではGD>AD>BD>EDの順に大きな値であった. 溶解量は0.2〜0.6μg/mm^3を示し, エナメル用およびデンチン用の両者で有意差は認められなかった. 以上の結果から, 高フィラー型硬質レジンは製品ごとの性質を理解した上で, 適切な症例や応用部位に用いるべきであることが示唆された.
著者
塩田 陽二 廣瀬 英晴 林 純子 [サカキ]原 茂弘 石井 語 池谷 正洋 西山 實
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.541-553, 1995-09-25
被引用文献数
10

前報では市販のノンアスベスト鋳造用リングライナーを5群に分類した.そこで, さらに分類別の特性を明らかにすることを目的とし, ライナーテクスチュアのSEM観察, 空隙率および吸水性について検討した.その結果, ライナーの主繊維はA〜D群では, 丸棒状であり, E群では不定形であった.また, 繊維間に繊維化していない球状粒子や微細な粉末状粒子が観察された.ライナーは, アスベストと比較して, A群(ロックウールタイプ)は空隙率が比較的高く吸水量の大きい群と, B〜D群(セラミックファイバー低温用, 同標準用, 同低温用〜標準用タイプ)は空隙率が高く吸水量の小さい群と, E群(カオリンタイプ)は空隙率が低く吸水量の小さい群と分類された.また, D群のNA14(リボンウール)は空隙率が高くかつ特異に吸水量の大きいライナーであった.
著者
菅原 明喜 西山 實 草間 薫 茂呂 周 西村 敏 工藤 逸郎 CHOW Laurence C. 高木 章三
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-16, 111, 1992-06-25
被引用文献数
16 63

Calcium Phosphate Cement(CPC)は,水の介在下において常温で短時間のうちにHydroxyapatite(HAp)に転化することが知られており,臨床的な報告もいくつかなられている。今回は,根管充填用に開発された数種のCPCペーストの生体親和性についてラットを用いた組織反応試験を行い,市販根管充填材料と比較することによって検討を行った。 その結果,CPCをベースとした各種試作根管充填材料は,市販のものと比較して極めて良好な生体親和性を示し,HApそのものと比較しても組織反応における明確な違いはなかった。今回使用した市販の根管充填材料は,既に臨床で広く用いられ充分な評価を得ているものばかりなので,本材料も臨床に応用し得るものであることが示唆された。
著者
安斎 碕 吉橋 和江 成川 雅史 廣瀬 英晴 石川 陽一 赤司 幸勇 西山 實
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.13, no.24, pp.120-121, 1994-09-05

ホスファゼンオリゴマー(ポリホスファゼンリニアーモノマー)の合成と合成したオリゴマーをシクロホスファゼンモノマーに配合し, 光重合した場合の重合体の性質について検討した.合成したオリゴマーの分子量は, 6500および8000であった.オリゴマー2種を10〜30wt%シクロホスファゼンモノマー[4PN(TF)_2(EMA)_6]に配合して, 光重合した場合, 機械的性質が良好であった配合量は, いずれも20wt%であった.
著者
岡田 信夫 片平 太一郎 田中 進一 真尾 達哉 中野 千鶴子 大輪 正昭 大木 一三 西山 實 小山田 勝彦
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.231-238, 1984-04-01

無髄歯に歯冠補綴物を調製する場合には, その残存歯質のみでは支台歯としてその維持形態が十分得られない場合, あるいはそれのみでは従来破折する危険性が伴う場合に, 歯質の変わりに金属で支台を付与する post core の応用が多く行われている. この post core の作製に当っては, 従来石膏による間接作業模型上で, post 部と core 部とを作製しているが, この模型-埋没法によると post 部の蝋形成は省略できる. 本研究は, この単一化した作業による post core の適合性を検討するための第1段階として, 部位と専用液濃度の相違が, 作業模型上の post hole の口径およびその長さにどのように影響するかを検討したものである.
著者
大前 百子 塩野 英昭 澁谷 昌孝 渡邉 真哉 五十嵐 孝義 齋藤 仁弘 西山 實
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.133-140, 1996-02-01
被引用文献数
3

本実験はクラウンの合着時の浮き上がり量を最小限に抑える目的で,市販のグラスアイオノマーセメントの粉末を超微粉砕機によって微細化した微粉末セメントの諸物性を検討したものである.この結果,物理的性質の観点からは微粉末セメントは,被膜厚さの改善が認められたが,圧縮強さは低下し,硬化時間はやや延長した.また金型を用いたクラウンの浮き上がり量は大幅に改善され,保持力は市販品と同程度の値を示した.
著者
菅原 明喜 草間 薫 西村 敏 西山 實 茂呂 周 工藤 逸郎 高木 章三 CHOW Laurence C.
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.691-698, 1993-11-25
被引用文献数
7

Calcium Phosphate Cement(CPC)は, 生体内環境下で短時間のうちに硬化しHydroxyapatite(HPp)に転化することから, 極めて良好な生体親和性を示すことが知られている.このような特性から, CPCは根管充〓, 象牙質知覚過敏症, 歯の再石灰化, 齲蝕抵抗性の向上等様々な分野に応用が可能であり, 臨床にも応用されるようになってきている.本実験はCPCの骨補〓への応用の可能性について動物実験を行い, 特に組織反応と骨伝導性の観点から検討を行った.成犬の下顎骨に形成したポケットにCPCとApaceram(HPp系顆粒)を〓入した際の病理組織変化は以下に示すとおりである.術後2週間では, CPCとApaceramともに隣接組織の炎症の反応は見られなかった.また, 両者とも密な線維性結合組織でポケット上部が覆われていた.術後2ヵ月では, CPCを〓入したポケットは完全に骨膜と骨組織によって覆われており, HApとなっているCPCの〓入物自体が, 部分的に新生骨によって置き換わっている像が認められた.Apaceramのポケットは, 密な線維性結合組織で覆われているものの, 顆粒が〓入時と同じように固定しているものは見られず, 特にポケットが浅い症例では顆粒が移動してしまい結合組織のみが残存しているものも見られた.術後6ヵ月においては, CPCのポケットは骨膜と厚い皮質骨によって完全に覆われ, CPC自体がほとんど骨によって置き換えられているのが認められた.Apaceramにおいては, ポケットが骨膜と骨組織によって被覆されてはいるが, その状態は完全ではなく顆粒の移動により骨組織の見られない所もあった.2ヵ月の所見と同様に, 深いポケットにおいてもApaceramの顆粒の消失および移動が見られ, 新生した組織によってポケット内に十分に固定されているようには見えなかった.以上のことより, CPCは臨床的に種々のタイプの骨補〓に十分に応用し得るものであると判断された.