著者
脇水 健次 西山 浩司 遠峰 菊郎 真木 太一 鈴木 義則 福田 矩彦
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 第21回(2008年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
巻号頁・発行日
pp.9, 2008 (Released:2008-11-28)

地球温暖化の影響下では,極端な多雨か極端な少雨の発生頻度が増加すると言われている. 従来,わが国では,干ばつ(渇水)防止のために,度々,ヨウ化銀(AgI)やドライアイスを用いた人工降雨法が,実施されてきた.しかし,これらの方法では問題点が多く,雲内の多量の過冷却液体雲水を効率良く降水に変換できなかった.そこで,この問題を解決するために,1999年2月2日から「液体炭酸を用いた新人工降雨実験」を実施し,良い結果を得ている.しかし,これらの実験やシミュレーション結果から,どうしても「雲の厚さが2000m以上」必要であった.しかし,2007年と2008年の実験から,雲の厚さが,1000m程度の「非常に薄い冬季過冷却積雲」からも地上に降水をもたらすことにも成功したので,本稿では,最近の2例{実験A(2007年2月4日)と実験B(2008年1月17日)}の実験結果を報告する.
著者
真木 太一 西山 浩司 守田 治 脇水 健次 鈴木 義則
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
11

2013年12月27日に降水量の少ない瀬戸内海気候区の愛媛県西条市北方の,主として瀬戸内海上空で航空機により液体炭酸散布人工降雨実験を行った.雲頂高度2740 m,気温-13℃,風向西北西,雲底高度1070 m,気温-2℃,風向西北西,雲厚1670 mの下層域高度1370 mの積雲(気温-5℃)に液体炭酸を強度5.5 g/sで,11:23~11:48の内の約14分間,総量4.9 kg散布した.液体炭酸の散布によって,西条市役所・中心街で11:50頃にやや強めの降雨強度5 mm/h程度の降雨を5~10分間観測した.また,西条市消防本部では13:00(推測12:00直後)までに0.5 mmの降水を確認した.これらは人工降雨と推測された.液体炭酸散布後,11:30~11:50に積雲が西条市上空で急速に発達し短時間に降水となった後,背の高い積雲は局地的な人工降雨によって急速に衰退し,散布1時間後の12:30には山間域の雲も急激に消失した.西条市南部山間地では散布位置・時刻・風向から人工降雨の影響はなかったが,新居浜市南部山間域では人工降雨が顕著で降雨の終始を目視で確認できた.新居浜市消防本部の大生院,別子山では風向・風速・時刻等からそれぞれ0.5 mm,4.0 mmの人工降雨があったと推定された.四国中央市南部山間域のアメダス富郷では11:50~12:00に0.5 mmの降水を観測している.これは散布時刻・位置,風向西北西,風速15 m/s等を考慮して人工降雨と推測された.西条市・新居浜市・四国中央市付近では液体炭酸散布時の11:30頃にはすでに降水の可能性は減少した状況で,本来降らなくなっていた雲から人工降雨を起こした可能性が高い.徳島県三好市のアメダス池田の降雨0.5 mmとアメダス京上の降雨2.0 mmは,風向・風速,時刻等から人工降雨と判断された.その影響範囲は散布域の風下約80 kmにまで及び,中心線は東西の別子山-京上であった.2013年12月27日の西条市付近での人工降雨実験は成功したと判断される.
著者
西山 浩司 清野 聡子 石原 大樹 森山 聡之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_191-I_198, 2016
被引用文献数
1

2015年9月1日午前3時台,対馬海域で発生した突風の影響で漁船が転覆する死亡事故が起こった.しかし,夜間は目視ができず,突風の予測も難しい現状にある.そこで本研究では,対馬事例を含めて,2007~13年に前線活動に伴って陸上で確認された,西日本・東日本の突風事例(54事例)を対象に,気象レーダーの分析に基づいて,突風を取り巻く降水域の特徴を調べた.その結果,突風発生時間の緯度経度0.2度幅の狭い範囲で,80%以上の事例で強い降水強度の領域(80mm/h以上)を捉えた.また,緯度経度1度幅の範囲に拡大すると,発生1時間前に70%程度の事例で強い降水強度を捉えた.従って,前線活動に起因する突風の場合,発生1時間前までであれば,気象レーダーで強い降水強度の領域の接近を監視することで,夜間の突風被害から身を守ることが可能と考えられる.
著者
脇水 健次 西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

頻繁に干ばつ(渇水)が発生する北部九州に位置する九州大学では,1947年からドライアイスやヨウ化銀を用いた人工降雨実験を行っているが,これらの方法は効率が悪いことが知られている.そこで,1999年2月に新しい液体炭酸人工降雨法の実験が,福田矩彦ユタ大学名誉教授との共同で,北部九州玄界灘の冬季積雲に実施され,世界で初めて成功した.今回,数回の実験から,冬季積雲への液体炭酸撒布による地上への降水効果はかなり鮮明になった.そのうえ,冬季層雲への実験による地上への降水効果も鮮明になった(2013年12月26日).これらのことから,今後の液体炭酸人工降雨法の実用化の可能性がかなり高まったと考えられる.
著者
櫻田 歩夢 西山 浩司 清野 聡子
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-155, 2020 (Released:2021-02-24)
参考文献数
30

本研究では,平成29年 7 月九州北部豪雨の被害を受けた福岡県東峰村とその隣接地域に立地 する水神を対象に,その立地特性を把握し,現地住民に対するヒアリング調査,災害に関する歴史文献調査を通して,水神と災害との関連性を調査した。その結果,約8割の水神が,土石流を含む渓流の氾濫が起こりやすい場所に立地していることがわかった。また,ヒアリングから得られた4つの水神は災害,または,農業に関連して祀られており,桑鶴地区と葛生地区の水神は,台山の土石流と大肥川の氾濫から地域を守るために祀られていることがわかった。急峻な谷筋を持つ台山では,歴史的に何度も土石流災害が発生してきたと推定できるため,災害の危険性を訴える大切なメッセージが,大蛇の言い伝えとなって桑鶴地区に伝わったと考えられる。以上の結果から桑鶴地区の水神が持つ防災上のメッセージの内容について考察すると,大蛇の言い伝えを介して語り継がれた,繰り返し起こる台山の土石流災害の特徴を水神のメッセージに含ませることによって,水神が台山に繋がる地域の災害の危険性を意識付ける役割と その危険性を後世に伝える役割を持つようになり,地域の防災モニュメントとして水神を活用することができるようになると期待される。
著者
西山 浩司 脇水 健次
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2015年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100056, 2015 (Released:2015-12-01)

本研究では,旧自治体が発行した郷土歴史資料に着目して,広島都市圏で起こった過去の土石流記録を掘り起し,その発生地域・時期を明らかにし,山の斜面の宅地開発地域で過去に起こった土石流災害の特徴について考察した.その結果,広島都市圏で過去の土石流災害の記録を多数見つけることができ,気圧の谷,台風に伴った豪雨で土石流が発生し,多くの犠牲者を出していることがわかった.また,広島都市圏の山の斜面で宅地開発地域が進んでいる地域でも,過去の土石流災害の記録を見つけることができた.従って,過去の災害の歴史は,地域住民が共有する災害情報として,そして,地域の災害の危険性を意識付けるために役立つと考えられる.
著者
西山 浩司 広城 吉成 井浦 憲剛
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2019

<p>本研究では,古記録に基づいて,享保5年に筑後国の耳納山麓で起こった土石流災害をもたらした豪雨の特徴を調べた.その結果,その土石流災害は,東西方向に走行を持つ線状降水帯が耳納山地の西側から東側にかけて豪雨をもたらしたことが要因であることが推測できる.その結果は,地域の災害リスクを明確化し,地域住民に危機意識を持たせる意味で極めて重要である.</p>
著者
西山 浩司 広城 吉成 井浦 憲剛
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2019年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.66, 2019 (Released:2019-12-07)

本研究では,古記録に基づいて,享保5年に筑後国の耳納山麓で起こった土石流災害をもたらした豪雨の特徴を調べた.その結果,その土石流災害は,東西方向に走行を持つ線状降水帯が耳納山地の西側から東側にかけて豪雨をもたらしたことが要因であることが推測できる.その結果は,地域の災害リスクを明確化し,地域住民に危機意識を持たせる意味で極めて重要である.
著者
森山 聡之 武藏 泰雄 西山 浩司 渡辺 亮一 和泉 信生 森下 功啓 山口 弘誠 中北 英一 島谷 幸宏 河村 明 牛山 素行 松尾 憲親
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

分散型多目的市民ダムをスマート化し、水資源確保と洪水制御を行う雨水グリッドとするために、(1)降雨量測定装置としての雨水タンクの検証を行い、雨量計としては利用可能なものの、雨水タンクが砕石充填方式の場合は圧力センサーを水位計として使用しない方が良いことを示した。(2)防災クラウドによる雨水の見える化として、センサーノードとゲートウエイの安定化を計った。(3)豪雨発生診断をSOMを用いて行ったが、予測精度はあまり高くないことが判明した。セキュリティー向上として、 OpenVPNを用い暗号化となりすまし防止を行った。(4)無線回線の安定化を図るためにLoRaWANを検証、良好な結果を得た。
著者
脇水 健次 吉越 恆 宇野 正登 渡邉 雅子 西山 浩司 真木 太一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.31-31, 2007

九州大学では,1999年から冬季に液体炭酸を用いた人工降雨実験(福田,1999)を行っている.「撒布対象雲」は,これら積雲の中の「ある程度発達した積雲(降りそうで降らない雲;シ-ダビリテイの高い雲)」である.しかし,冬型の気圧配置時でも,「撒布対象雲」が必ず発生するとは限らず,実験が成功しない場合もあった.そこで,本稿では,冬季の人工降雨実験の成功率をあげるため1) 福岡での冬季の降水発生の気象原因,2) 筋状の雲が発生するための気象条件,3)気象衛星画像から「撒布対象雲」の出現頻度を解析した.今回の解析から,次のような事柄が判明した.1) 冬型の日は対象雲の発生が多く,人工降雨に適した気象条件日であると考えられる.2) 冬型の気圧配置で前述のような3つの条件を満足して2日目以降に,筋状の雲が出現する回数が最も多かった.3)気圧配置が冬型の日の発生日数に対して,対象雲の出現日数が平均9.5日(出現頻度30.9%)である.
著者
西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,玄海灘からの海風進入に伴って気温,水蒸気,風向風速の変化と局地雷雲発生との関係を明らかにすることを目的に3年間観測を行ってきた.即ち,水蒸気の観測網を充実させることで,局地雷雲の発生を捉えようという試みを行ってきた.しかし,水蒸気量の変化と雷雲の発生を関連づけることが一部可能であったが,多くが不明瞭であった.このことは,観測期間中に,夏型の典型的な雷雲発生が不活性な気象状態が多かったことにも起因する.よって,統計的に明瞭な結果を導くために,科研研究期間終了後も観測は継続する予定である.今後は,水蒸気観測ネットワークとその他の気象情報を組み合わせた情報に基づいて,雷雲発生との関連性を抽出する.以上不明瞭な観測結果であったが,次に述べる数値実験及び解析を通じて,この研究における課題を認識することができた.最初に,局地気象モデルを用いて地表面状態の違いを考慮した鉛直安定度の時空間推移を計算した.その結果,海風の鉛直循環が水蒸気と熱を再配分し,鉛直安定度に強く影響していた.また,夏季の気象場をパターン認識アルゴリズムを利用して分類した結果,夏季の雷雲発生パターンと関連性する気象場が大まかに認識できた.以上から,大規模な気象場から得られる特徴,局地循環の特徴,地形の影響,時々刻々変化する日射と斜面との関連性をパターン化して,水蒸気ネットワークから得られる情報(気温と水蒸気量によって推定される鉛直安定度の推移)を組み合わせることによって,局地雷雲の発生と捉えることが有効であると考えられる.
著者
西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

夏季に頻繁に現れる気団性積乱雲と大規模場(前線、台風に伴う場)の中で局地的に形成される強雨ゾーンの発生には必ず空気の収束場の存在が指摘されている。さらに、収束場の強度が持続される場合には積乱雲がある特定の領域に次々と形成され豪雨となるような事例が多い。そこで本研究では、様々なパターンの積乱雲を解析し、豪雨災害につながるような積乱雲の発生機構及び勢力維持機構を探求することを目的とした。本研究では観測手段として既存の観測システム(九州大学農学部気象レーダーと福岡都市域に設置した10数台の雨量計による降雨観測)を中心に,気象庁のアメダスシステム等も利用して、狭い領域(20km×20km)で局地風系を観測した。この観測結果から積乱雲発生以前に先行現象としての空気の収束場が実際に存在したかどうかを調べた。総合的に解析した結果、予想されたように積乱雲の発生の1、2時間前から収束場が形成されていたことが明らかになった。さらに,降水システムが既に存在する場でも収束場が長時間持続し、降雨も持続する傾向も明らかになった。このように収束場が降雨の発生、維持に寄与していることは間違いないが,大気の不安定場の存在も無視できない。高層データとアメダスを用いた解析では夏型の雷雲の発生のプロセスは次のようになると考えられる。まず日射の影響で下層の混合層が徐々に発達し、下層から不安定化する。この不安定化した気層に向かって海風が侵入して収束場を形成する。その結果,収束場の領域で雷雨が発生することがわかった。
著者
神野 健二 河村 明 西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

気候変動や異常気象の発生が降水量変動に与える影響が危惧されている.本研究では気候変動と降水量変動との関係について統計的手法による解析を行った.具体的にはまず,大規模の気候場を表す指標として南方振動指数(SOI),太平洋数十年振動指数(PDOI),北太平洋指数(NPI),インド洋ダイポールモード指数(DMI)といった4つの気候指標を用いた.過去約100年間にこれら4つの気候指標が各月および各年単位で示したパターンを,非線形分類手法(自己組織化マップ)を用いて分類した.さらに,これら気候指標のパターンと福岡市の降水量及び気温との対応関係を調べた.その結果,4つの気候指標が特定のパターンを示した月に,対応する福岡市の降水量が通常より少なくなる傾向等がみられた、また,これら指標が年規模で示したパターンを調べた場合,SOI,NPIが通常年より高く,PDOI,DMIが通常年より低い値であった年の翌年は,福岡市の気温が通常年より低くなる傾向がみられた.また,西日本における重要な降雨期である梅雨期を対象にして,日本周辺の気象場の分類も行った,具体的には,日本列島周辺の気象場・成層状態を多次元格子点情報を利用し,非線形分類手法(自己組織化マップ)を適用することでパターン分類した,その結果,気象場・成層状態のパターンと西日本域の降水特性との関係が明らかになった,特に,西日本の豪雨と,湿舌と下層ジェットの水平分布のパターン,梅雨前線帯内の対流活動と関連がある対流不安定成層・中立成層のパターンとの間に明瞭な関係を得ることができた.