著者
井城 泰一 田村 明 西岡 直樹 阿部 正信
出版者
The Japan Wood Research Society
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.344-351, 2006-11-25
被引用文献数
6 9

トドマツ精英樹や育種母材を用いて樹高方向の丸太の動的ヤング率の変動を調べ,樹幹全体の平均値を推定するのに最適な地上高部位を検討した。また,立木の応力波伝播速度と丸太の動的ヤング率の関係を調べ,トドマツにおける応力波伝播速度測定法の有用性を検討した。丸太の動的ヤング率の樹高方向の変動は,各クローンにおける個体間では,ほぼ同様の変動傾向を示した。また地際から地上高 3 mまでの部位において樹幹全体を代表する値として用いることが可能であり,胸高部位を含むこの地上高部位においてクローン間の遺伝的な違いを比較できると考えられた。立木の応力波伝播速度と丸太の動的ヤング率には,個体値,クローン平均値とも有意な正の相関関係が認められた。特にクローンにおいて相関関係が高かった。これより,胸高部位付近でトドマツの立木の応力波伝播速度を測定することにより,非破壊的に動的ヤング率の推定が可能であり,クローン評価に有効な材質指標になることが示唆された。