著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 松田 薫 角前 とも 滝山 桂子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.353, 2008 (Released:2008-11-10)

目的・方法 台湾には,17世紀に中国大陸から移入した本省人とよばれる閩南(みんなん)と客家(はっか),及び第二次世界大戦後に移入した外省人,そして原住民族13族が住んでいる.本研究では,台湾住民の8割を越える閩南と客家の伝統服に着目して,その特徴を明らかにし,大学生の着用経験,イメージ,伝統服継承の意志,それらの維持継承の方途について考察する. 文献研究をもとに,在日台湾留学生へ面接聞取り調査をし,2007年11月に台中の静宜大学学生136名に質問紙調査を実施した.統計分析には統計ソフトSPSSを用いた. 結果・考察 両民族の伝統服の特徴は,右開きの大きな襟のシャツと裾が広がったズボンである.閩南は,紅や黄,緑など明るく華やかな色で高価なものには刺繍がほどこされている一方,客家は,黒,茶,藍など地味な色で作りも簡単なものが多い. 台湾大学生の伝統服着用経験は,「着たことがない」が7割を占め,着用した者でも明・清時代の中国大陸の伝統服であるチャイナドレスも含まれており,自分たちの伝統服は日常生活から遠い存在であることが明かとなった.伝統服に対するイメージは,「着てみたい」と答えた者は「値段が高い」「高級感がある」「かわいい」である.一方「着たくない」と答えた者は「地味・色が暗い」「恥ずかしい」「目立つ・派手」というイメージを持っていた. 着用経験は低いものの伝統服を「継承する意志」は非常に高く,継承のためには「台湾のアイドルがテレビで伝統服を着用」「現代風にアレンジ」などの回答が得られた.また,本研究の分析結果から,「若者が手に入れられる価格」「刺繍を多く取り入れたデザイン」「着用する行事や機会を設ける」が提案された.