著者
豊田 修次 小林 洋子 阿彦 健吉
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.591-598, 1990-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
26

本研究は,国産ゴーダチーズの熟成後期に発生するガス膨張の原因を究明する目的で実施した.バクトヒュージ無処理の冬季乳を用い,硝酸塩無添加で製造したゴーダチーズを13~15°Cで4ヵ月間熟成すると,30試料中,11試料が熟成2カ月以内で膨張し,その大半はガスホール周辺に大きな亀裂を生じた.このガス膨張は酪酸菌によるものであった.DRCM培地中に生育した酪酸菌は,大きな黒色コロニーと小さな褐色コロニーを呈した.膨張チーズ中の黒色コロニー数は,チーズg当り30cfu以下で,正常チーズと差が認められなかった.105株の黒色コロニーは,Cl.sporogenesが86株,Cl. beijerinckiiが11株,Cl. butyricumが8株であった.一方,褐色コロニー数は,チーズg当り膨張チーズで102~104cfu,正常チーズで10cfu以下であった.褐色コロニーは,いずれもCl.tyrobutyricumと同定された.従って,本ゴーダチーズのガス膨張は,Cl. tyrobutyricumによるものと判断した.分離したCl. tyrobutyricum KS-222は,脱脂乳培地中ではほとんど生育しないが,S. lactis subsp. lactisとの混合培養でよく生育して多量のガスを発生した.Cl. tyrobutyricumKS-222は,DRCM培地では胞子をほとんど形成しなかったが,糖密-ソイトン培地の使用で,その胞子形成率は2.1%まで上昇した.Cl. tyrobutyricum KS-222胞子は,生育限界温度およびpHがそれぞれ7~10°C,4.5~5.0付近であった.Cl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育を抑制する食塩濃度は,培地pHに著しく依存し,pH5.0で約2%,pH5.5で約4%,pH6.0~6.5で約6%であった.また,Cl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育抑制に対する硝酸カリウムの効果は,上述の食塩の場合とほぼ同様であったが,亜硝酸カリウムでは0.005%以下の濃度でCl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育を強く抑制した.
著者
豊田 修一 仁木 登 西谷 弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.184, pp.63-66, 2003-07-06
被引用文献数
1

政府のe-Japan計画や厚生労働省の保健医療分野のグランドデザインには,医療情報を社会基盤化する方針が記述されている.医療機関相互間で医療情報を共有化するためには,記述方式の統一,利用方法,個人情報保護などの課題を解決しなければならない.そこで,我々は,客観性の高い指示データや検査結果値がその中心的役割を担っているオーダリングシステムを基盤にして,医療機関連携機能の構築を行った.本報告では医療機関相互間で共有化した医療データを診療の現場で有効に活用する方式を提案する.この方式は,仮想診療科を導入することで,診察室システムにおけるHCIモデルの適用範囲を,他医療機関のデータに拡張したものである.仮想診療科は,システム上にだけ存在する診療科であり,他の医療機関の指示データと自院の指示データをシームレスに取り扱うことを可能にする.さらに,他の医療機関の指示履歴の表示や再利用を容易にする.我々は,1999年9月より,診察室システムに仮想診療科方式を実装したオーダリングシステムを用いて,医療機関連携の実験稼動を継続している.この医療機関連携は,病院と診療所の連携による医療の分業に効果をあげている.