著者
安部 景奈 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.75-81, 2011 (Released:2011-07-02)
参考文献数
24
被引用文献数
8 2

【目的】学校給食の食べ残しに関連する要因を検討すること。【方法】2009年5~6月,都内の小学校に通う5~6年生112名を対象に,自己記入式質問紙調査を行い,その日の給食についてたずねた。調査は2日間,給食の後に行った。調査当日の給食の食べ残しの状況を従属変数とし,食前の空腹感,食後の満腹感,献立の嗜好,喫食時間の過不足,食具,性別,BMIを独立変数として,ロジスティック回帰分析を行い,食べ残しの要因を検討した。同一の対象者に2回ずつ調査を実施したため,一般化推定方程式(generalized estimating equation: GEE)を用いて延べ224名として解析を行った。【結果】有効回答数は延べ222人であった(回収率99%)。多変量ロジスティック回帰分析の結果,喫食時間(オッズ比[OR]=45.31,95%信頼区間[95%CI]=13.46~152.53),嗜好(OR=2.71,95%CI=1.04~7.09),BMI(OR=0.80,95%CI=0.65~0.99)が食べ残しと関連していた。【結論】本研究により,給食の食べ残しに関連する要因には,喫食時間,嗜好,BMIがあることが示唆された。今後は,児童の食べ残しを減らすための栄養教育を行うとともに,学校全体として食べ残しの問題に取り組む対策を考えていく必要がある。
著者
新保 みさ 福岡 景奈 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.12-20, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3

目的:小学校の学級担任を対象に,学級担任が給食指導で参考にしていることを調べ,栄養教諭・学校栄養職員と相談している者の特徴を検討することを目的とした.方法:2014年7月,埼玉県A市の教育委員会を通して,市立小学校全32校の学級担任569名に横断的な質問紙調査を行った.調査項目は,給食指導を行う上で参考にしていること,給食指導で行っている取り組み,給食の喫食時間,学級全体の残菜量,属性であった.結果:解析対象者は456名で,男性143名(31.4%),平均教員経験年数(標準偏差)13.5(12.5)年だった.給食指導を行う上で参考にしていることのうち,選択した者が多かった上位3つの選択肢は「自分自身が家庭で受けた教育」(272名,59.6%),「自分自身が小学校のときに受けた給食指導」(208名,45.6%),「栄養教諭・学校栄養職員と相談」(172名,37.7%)だった.「栄養教諭・学校栄養職員と相談」を選択した者はしなかった者と比較して,女性,給食に関する校務分掌経験がある者,給食が自校式の者が多く,給食指導での取り組み個数が多かった.結論:学級担任は,自分自身が家庭や小学校で受けた教育を参考に給食指導をしている者が多かった.栄養教諭・学校栄養職員と相談している者は4割程度で,給食に関する校務分掌経験がある者や給食が自校式の者などの栄養教諭・学校栄養職員と関わる機会のある者が多かった.
著者
小澤 啓子 鈴木 亜紀子 髙泉 佳苗 岩部 万衣子 松木 宏美 赤松 利恵 岸田 恵津
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.205-216, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

目的:夜遅い食事と肥満との関連を把握すること.方法:PubMedおよびCINAHLデータベースを用いて,検索式には「食事」,「夜・時間」,「食行動」,「肥満・MetS」を示すキーワードを組み合わせ,2005年以降10年間に英語で報告された論文を検索した.596件の表題と抄録を精査し,本研究の採択基準(①原著,資料や短報など,②健常な幼児以上のヒト,③「夜遅い食事」か「夜食」を含む,④「肥満」か「MetS」を含む,⑤基礎研究でない)を満たさない535件を除外した.さらに本文を精読し,最終的に11件の論文を採択した.結果:採択論文は,縦断研究が2件,横断研究が7件,介入研究が2件であった.研究対象者は,成人のみ対象が10件,成人と子ども対象が1件であった.5件で夜遅い食事(夜食含む)を摂取する者は,肥満(body mass index: BMI 30 kg/m2以上)の割合が高い,BMI値が高い,もしくは体重増加量が有意に多い結果であった.その一方,残り6件のうち5件は,夜遅い食事(夜食含む)と肥満(体脂肪率などの体組成を含む)との関連はなく,他の1件は,夜遅い食事を摂取する者は,摂取しない者よりもMetSのリスクが有意に低かった.結論:夜遅い食事と肥満との間に正の関連,負の関連を示すもの,関連を示さないものが混在しており,一貫した結果がみられなかった.その理由として,交絡因子としてエネルギー摂取量調整の有無が関わっている可能性がある.
著者
小島 唯 福岡 景奈 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.216-224, 2014 (Released:2015-01-13)
参考文献数
17

目的:学校栄養士における,「赤黄緑の3色食品群」を用いた食品分類について,学校栄養士が普段用いている分類と栄養士自身が正しいと考える分類の相違点を特定し,さらに各群に含まれる栄養素の認識の相違点を知ることを目的とした.方法:2012年5~10月,東京都および愛知県の学校栄養士442人を対象に,無記名自記式横断的質問紙調査を実施した.調査内容は,属性の他,赤黄緑の3色食品群を用いた食品の分類,赤黄緑各群の定義,栄養素の赤黄緑3群への分類をたずねた.食品の分類では,21の食品について普段学校給食等で用いる分類と,栄養士自身が正しいと考える分類を,赤黄緑の3群からそれぞれ選択させた.また,両者の回答の一致率を算出した.結果:237人から回答を得た(有効回答率53.6%).栄養士が普段用いている分類と,自身が正しいと考える分類との回答の一致率(%)が高かった食品は,大豆99.5%,きのこ類99.0%,緑豆もやし98.0%であり,一致率が低かった食品は,こんにゃく57.5%,わかめ67.7%,こんぶ69.1%であった.例えばこんにゃくでは,普段用いている分類と,正しいと考える分類の回答が赤群で一致した者(一致率(%))2人(1.0%),黄群で一致した者27人(14.0%),緑群で一致した者82人(42.5%)であり,栄養士間でも回答に違いがみられた.結論:赤黄緑の3色食品群は,栄養士が普段用いる分類と正しいと考える分類に相違がみられ,また栄養士によっても分類の認識が異なる食品があった.赤黄緑の3色食品群には分類の根拠となる,量的指標が求められる.
著者
會退 友美 赤松 利恵 杉本 尚子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.323-329, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】幼児期前期の子どもの嫌いな食べ物は,1歳6ヶ月児から3歳児にかけて変化するかを既存の縦断的データを用いて質的に検討する。【方法】静岡県伊東市保健センターにおいて,平成12年度から15年度に出生した子どもを対象に実施した,10ヶ月児,1歳6ヶ月児,3歳児健康診査の全てを受診した1,313人分の問診票データを利用した。項目は,10ヶ月児の属性,1歳6ヶ月児と3歳児の属性および好き嫌いの有無,各年齢における嫌いな食べ物(自由記述)を用いた。また,1歳6ヶ月児と3歳児の両方で好き嫌いがあった者(以下,あり→あり)の内,嫌いな食べ物の内容を抽出して変化の内容を分類した。【結果】1歳6ヶ月児と3歳児における好き嫌いの有無から4群を作成した結果,“あり→あり”456人(38.7%),“あり→なし”150人(12.7%),“なし→あり”233人(19.8%),“なし→なし”339人(28.8%)であった。“あり→あり”のうち,両年齢で嫌いな食べ物が継続しているかを調べたところ,“嫌いな食べ物継続” 91人(7.7%),嫌いな食べ物が継続しなかった“嫌いな食べ物変化”は154人(13.0%),“判断不能の者”211人(17.9%)の3群に分けられた。【結論】1歳6ヶ月児と3歳児の両年齢で好き嫌いがあると回答している場合でも,その約半数は嫌いな食べ物が変化しており,その嫌いな食べ物の変化は多様であった。
著者
原田 和弘 井澤 修平 中村 菜々子 吉川 徹 赤松 利恵 池田 大樹 久保 智英
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.417-429, 2022-10-01 (Released:2022-09-13)
参考文献数
38

Previous studies among middle-aged and older adults have shown that engagement in exercise with others is more strongly associated with better mental health than engagement in exercise alone. However, the applicability of such findings to workers remains unclear. This study aimed to examine whether 1) engagement in exercise with others and time spent exercising with others were associated with lower stress response and mental distress among workers, and 2) self-determined motivation toward exercise mediated these associations among workers. This was a cross-sectional study. A web-based questionnaire survey was conducted among 810 workers aged 20 to 59 years. The survey measured respondents’ engagement and time spent exercising alone and with others, self-determined motivation toward exercise, psychological and physical stress responses, mental distress, and basic factors. Basic factors were treated as covariates. The analyses of covariance showed that engagement in exercise with others was significantly associated with lower psychological and physical stress responses and mental distress, while engagement in exercise alone was not. Multiple regression analyses revealed that longer time spent exercising with others was not associated with lower psychological and physical stress responses or mental distress. Path analyses showed that mediation effect of self-determined motivation on these associations was not significant. Although dose-response associations and the mediating role of self-determined motivation were not confirmed, this study found that engagement in exercise with others was associated with lower stress responses and mental distress among workers.
著者
小島 唯 阿部 彩音 安部 景奈 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.86-93, 2013-04-01
参考文献数
13
被引用文献数
4

【目的】学校給食の食べ残しと児童の栄養摂取状況との関連を検討すること。<br>【方法】2009年5~6月,東京都公立小学校に通う5・6年生の児童112名を対象に,給食の食べ残しに関する自記式質問紙調査と残菜調査を実施した。残菜調査は,対象者一人につき2回ずつ行い,延べ人数のデータを用いた。残菜調査の結果から,食べ残しの有無により,残菜率0%の児童を完食群,それ以外の児童を残菜群とした。この2群の栄養摂取量の中央値の差について,一般化推定方程式(generalized estimating equation: GEE)を用いて検討した。解析対象の栄養素等は,エネルギー,たんぱく質,脂質,炭水化物,ミネラル5種,ビタミン4種,食物繊維とした。<br>【結果】延べ人数で,218名分の残菜データを得た。そのうち,男子104名(47.7%),女子114名(52.3%)であった。全体で,残菜群が80名(36.7%),完食群が138名(63.3%)であった。残菜率は0.2%~84.3%の間に分布していた。残菜群と完食群のエネルギーの中央値(25,75パーセンタイル値)は,各々 562(435,658)kcal,715(699,715)kcalであった(<i>p</i><0.001)。また,ビタミンCの中央値(25,75パーセンタイル値)は,残菜群で 26(16,35)mg,完食群で 41(41,47)mgであった。同様に,その他すべての栄養素等で差がみられた(すべて<i>p</i><0.001)。<br>【結論】残菜群のビタミンCを除く栄養摂取量は,完食群に比べて2~3割少なかった。残菜群のビタミンC摂取量は,完食群に対して4割程度少なかった。
著者
堀川 翔 赤松 利恵 堀口 逸子 丸井 英二
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.129-139, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】小学校高学年向けの食の安全教育に用いるカードゲーム教材「食のカルテット」のルールや内容,受け入れやすさについて利用可能性を検討すること。【方法】2011年9月から11月に,A県1市1町の小学校計6校の5年生,6年生,教職員を対象に,「食のカルテット」の施行及び自己記入式質問紙調査を実施した。「食のカルテット」は,食の安全の内容を中心とした,食に関する全般的な知識を習得することを目標としたカードゲーム教材である。ゲームの実施前及び実施後に「食のカルテット」の内容を10問質問し,ゲーム実施前後の回答を,各問題の正答率はMcNemar検定,合計得点はWilcoxonの符号付き順位検定によって比較した。また,児童及び教職員にゲームの内容やルールについての評価を質問した。【結果】児童294人,教職員28人が質問紙に回答した。「食のカルテット」の内容の問題は,実施前より実施後で正答率が上がったものと下がったものがみられたが,10問の合計得点は実施後が有意に高かった(Z=-3.657,p<0.001)。91.8%の児童がゲームを「とても楽しかった」と回答しており,自由記述(84.0%が回答)でも「楽しみながら・遊びながら学べた」という記述が回答者の34.0%にみられた。教職員の自由記述(63.3%が回答)でも「食に関する知識が身につく」,「楽しみながら学べる」などの意見が得られた。【結論】児童の回答から,「食のカルテット」のルールは児童に受け入れられ,楽しく学べる教材であることが示された。今後は,教材としての効果を検討する必要がある。
著者
岩部 万衣子 小澤 啓子 松木 宏美 髙泉 佳苗 鈴木 亜紀子 赤松 利恵 岸田 恵津
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.151-167, 2017-08-31 (Released:2017-09-07)
参考文献数
32

目的:夜遅い食事及び夜食と肥満との関連を成人と子どもに分けて把握すること.方法:医学中央雑誌及びCiNiiを用いて,2005年以降の10年間に報告された論文を検索した.検索式には「夜遅い食事・夜食」と「肥満・MetS」を示す検索語を用いた.本研究の除外基準に基づき314件の表題と抄録を精査し234件を除外し,次に採択基準に基づき本文を精査して21件の論文を採択した.結果:21件中,縦断研究1件,横断研究18件,両方を含めたもの1件,介入研究1件であった.研究対象者は成人が15件,子どもが6件であった.成人では夜遅い食事を12件が調査し,7件で夜遅い食事の摂取者に肥満が多い等の正の関連があり,2件で性別等により肥満との関連の有無が異なり,3件で関連がなかった.夜食は10件で調査され,4件で夜食の摂取者に肥満が多く,3件で性別等により肥満との関連の有無が異なり,3件で関連がなかった.一方,子どもでは夜遅い食事の調査は1件と限られ,肥満との関連はなかった.夜食は6件で調査され,3件で関連なし,2件でBMIの高い者で夜食の割合が低く,1件で夜食の摂取者に肥満が多かった.結論:成人では夜遅い食事が肥満と正の関連を示し,子どもでは夜食が肥満と関連しないか負の関連を示した報告が多かった.しかし,多くは横断研究であり,交絡因子を調整した報告も少なかった.
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.134-141, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】食費に対する態度の変容による食生活改善の可能性を探ることを目指し,食費に「お金を掛けることは惜しまない」女子大学生の特徴,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度と食費に対する態度を検討した。【方法】2018年11月,女子大学生1,388人を対象に,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,属性,食費に対する態度,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度であった。χ2 検定,Kruskal-Wallis検定,Mann-WhitneyのU検定,ロジスティック回帰分析を用いて,食費に対する態度別に属性,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度を検討した。【結果】541人が回答し(回収率39.0%),対象外であった大学院生や回答不備の者を除き,483人を解析対象とした(解析対象率34.8%)。食費に「お金を掛けることは惜しまない」者は,管理栄養士養成課程の者(p=0.013),暮らし向きにゆとりがある者が多かった(p<0.001)。ロジスティック回帰分析で,これら属性を調整した結果,食費に「お金を掛けることは惜しまない」者より,「お金を掛けたいが,ゆとりがない」者の主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度が低かった(オッズ比[95%信頼区間]=0.46[0.24~0.87])。【結論】食費に「お金を掛けることは惜しまない」女子大学生は,より健康的な食生活を送っていることが示唆された。
著者
赤松 利恵 小澤 啓子 串田 修 小島 唯 阿部 絹子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.355-364, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
13

【目的】管理栄養士・栄養士養成施設における食環境整備に関する教育の推進に向けて,その教育の実態を把握し,関連する要因を検討すること。【方法】厚生労働省委託事業「令和2年度管理栄養士専門分野別人材育成事業」の食環境整備に係る人材育成検討部会が行った教員(管理栄養士養成施設432人,栄養士養成施設224人)を対象としたデータを用いて,養成施設別に,食環境整備に関する教育に関わる個人要因と環境要因,食環境整備に関する教育の実施状況をMann-WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定,ロジスティック回帰分析を用いて調べた。【結果】管理栄養士養成施設(210人,48.6%)では,教育の実施高得点群に,食環境整備に関する研究と社会活動の経験(オッズ比[95%信頼区間]各々2.45[1.09~5.48],3.64[1.59~8.31])等の要因が関係していた一方で,栄養士養成施設(73人,32.6%)では,所属施設内の管理栄養士養成課程の有無(8.74[1.44~53.25])の環境要因が関係していた。栄養学教育モデル・コア・カリキュラム(以下,コアカリ)の活用は,両施設で関係していた(各々2.83[1.22~6.58],11.37[2.28~56.71])。【結論】食環境整備の教育には,教員の専門性と職場環境が関連していた。また,養成施設での教育において,コアカリの活用を推進する必要性が示された。
著者
深澤 向日葵 吉井 瑛美 會退 友美 赤松 利恵 長谷川 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.338-344, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
18

【目的】幼児の偏食と健康状態,夕食における食品群別摂取量,栄養素等摂取量との関連を検討することを目的とした。【方法】2018年12月,1次調査として幼児を持つ母親を対象にインターネット調査を実施し,そのうち希望者から抽出された者を対象に2019年3~5月,2次調査として写真法による食事調査を実施した。1次調査より幼児の偏食,健康状態,属性を用い,2次調査より幼児の夕食の食品群別摂取量,栄養素等摂取量を用いた。偏食得点の三分位値で分けた低群,中群,高群の属性,健康状態および食品群別摂取量,栄養素等摂取量の違いを,χ2 検定,Kruskal-Wallisの検定および多重比較で検討した。【結果】1次調査の解析対象者は1,899人,2次調査は118人であった。幼児の偏食得点三分位値は14,17点であり,低群614人(32.3%),中群708人(37.3%),高群577人(30.4%)となった。偏食低群には,発熱しにくい者,風邪をひきにくい者,疲れにくい者が多かった(それぞれp<0.001)。食品群別摂取量では野菜類に有意差がみられ,偏食高群で摂取量が少なかった(p=0.016)。栄養素等摂取量は,偏食3群間で違いはみられなかった。【結論】偏食低群の幼児の健康状態は良好であった。偏食高群の幼児は,夕食で野菜類の摂取量が少なかったが,栄養素等摂取量は偏食の程度による違いはみられなかった。
著者
南 里佳子 玉浦 有紀 赤松 利恵 藤原 恵子 酒井 雅司 西村 一弘 角田 伸代 酒井 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.198-209, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
25

【目的】維持血液透析患者の食事・水分管理アドヒアランス改善に向けて,関連する信念を評価する尺度を作成し,その信頼性と基準関連妥当性を検討する。【方法】3都市4施設で外来維持血液透析を受療中の患者378人を対象に,質問紙調査を実施し,食事・水分管理の信念に関する40項目と,主観的指標による食事・水分管理アドヒアランス状況をたずねた。同時にカルテから,属性とドライウエイト,透析間体重増加率,生化学検査データを収集した。探索的・確証的因子分析により,信念尺度の因子構造を検討した後,抽出された下位尺度の信頼性(クロンバックα)と基準関連妥当性(客観的/主観的指標によるアドヒアランス状況との関連)を確認した。【結果】尺度作成の結果,食事・水分管理の実施に関する信念として「食事管理の障害」「食事に対する懸念」「環境からの影響」「楽観性」の4下位尺度17項目,動機に関する信念として「重要性」の1下位尺度8項目が得られた。クロンバックαは0.531~0.830と概ね良好な値だった。また,各下位尺度の得点は,客観的または主観的指標によるアドヒアランス状況(良好群・不良群)と妥当な結果がみられ,基準関連妥当性が確認された。【結論】維持血液透析患者の食事・水分管理に関する信念尺度として,実施と動機に関する信念の2つの尺度の信頼性と基準関連妥当性を確認した。
著者
吉村 喜代美 赤松 利恵 吉村 悦郎
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.271-281, 2019

<p>目的:高齢男性が講師役を務める同性代の男性を対象とした料理教室を開催した.本稿ではその教室の内容を報告するとともに,受講生の本料理教室に対する評価と,講師役の意識変化を検討した結果を報告する.</p><p>活動内容:2017年1月,H市社会福祉会館にて活動している男性料理倶楽部会員8名(平均年齢72.0歳)が講師役となる料理教室を開催し,男性16名(平均年齢68.1歳)が受講した.受講生に対しては質問紙調査,講師役に対しては質問紙調査および料理教室開催前後のグループインタビュー調査を行った.さらに会食時における双方の自由発言を記録し分析した.</p><p>結果:受講生参加動機では,「今後必要だと思ったから」と「男性による料理教室に興味があったから」が参加者総数16名の内の80%を超えていた.教室の内容や男性講師については90%近くが高評価であり,教室が再開催した場合の参加希望は100%であった.受講生から男性講師役に対しては「同性ならではの共感」,「同じレベルゆえのメリット」などのカテゴリが抽出され,講師役からは「自覚の芽生え」,さらに双方から「今後への意欲」が見られた.</p><p>結論:高齢男性が講師役となって実施した料理教室は,受講生,講師役双方の調理への関心を増加させることが示唆された.また,再開催の要請もあり,今後も継続し発展していく可能性も示唆された.</p>
著者
河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.254-263, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【目的】植物性食品を中心とした食事パターンに関する研究の基礎資料とするために,先行研究で開発された「植物性食品指数」をわが国の女子大学生の食事調査データに適用し,各指数と栄養素等摂取量・Body Mass Index(BMI)との関連を示すことを目的とした。【方法】女子大学生281名を対象に,簡易型自記式食事歴法質問票から得た食物摂取頻度及びエネルギー・栄養素等摂取量のデータを用いて,「総植物性食品指数」「健康な植物性食品指数」「不健康な植物性食品指数」を算出した。これらの指数と,エネルギー及び栄養密度法で示した栄養素等摂取量,BMIとの相関係数を算出した。【結果】対象者のBMIの中央値(四分位範囲)は20.0(18.8,21.2)kg/m2 だった。健康な植物性食品指数と,コレステロールを除く全ての微量栄養素の摂取量との間に正の相関がみられた(ρ=0.147~0.645, p<0.050)。一方,不健康な植物性食品指数と,植物性脂質エネルギー比と飽和脂肪酸エネルギー比を除く全ての微量栄養素の摂取量との間に負の相関がみられた(ρ=-0.718~-0.127, p<0.050)。3指数とBMIとの間に相関関係はみられなかった。【結論】健康な植物性食品指数が高い程,多くの栄養摂取状況が良好だった一方,不健康な植物性食品指数が高い程,エネルギー摂取量や多くの栄養素等摂取量が不足していた。
著者
赤松 利恵 衛藤 久美 稲山 貴代 神戸 美恵子 岸田 恵津 中西 明美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.89-97, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
11

【目的】学校における食育の計画並びに評価の実施状況と関連する知識を把握し,管理栄養士免許の有無と免許取得時期による比較検討を行うこと。【方法】2016年5~12月,栄養教諭・学校栄養職員(1,406人)を対象に,食育計画と評価と関連する知識について,横断的調査を行った。記述統計後,管理栄養士免許の有無,および旧カリキュラムと新カリキュラムでの免許取得で,各項目の回答の違いをχ2 検定およびMann–WhitneyのU検定で検討した。さらに,属性等を調整し,各項目を独立変数,管理栄養士免許または免許取得時期を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】904人(回収率64.3%)が回答した。食育計画の実施状況では,約半数が実態把握の実施や行動目標の設定を行っている一方で(各々45.5%,49.1%),7割以上の者が評価指標や数値目標の設定を計画時に行っていないと回答した(各々70.9%,73.3%)。また,数値を用いた目に見える形での子どもの変化を評価している者は14.1%であった。群間の比較では,管理栄養士免許所有者および新カリキュラムでの取得者で,知識はある者が多かったが,実施状況に違いはなかった。ロジスティック回帰分析でも同様の結果であった。【結論】学校における食育の計画と評価の実施状況を調査した結果,目に見える形での子どもの変化を評価している者は約1割であった。また,新カリキュラムでの管理栄養士免許取得者の知識は高かったが,実践している者は少なかった。
著者
小島 唯 赤松 利恵
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.213-220, 2015
被引用文献数
1

【目的】学校給食における赤黄緑の3色食品群の群別の食品の出現割合を調査し,3色食品群に掲載する食品の内容を検討すること。<br>【方法】2012年5~7月,東京都の公立小学校19校を対象に,2011年度の学校給食献立予定表を各校12日分ずつ収集した。主食と季節を分け,4区分の季節ごとに,献立の主食が米飯の日の献立,主食がパンの日の献立,主食が麺の日の献立各1日分を,各校の学校栄養職員・栄養教諭の任意で選択させた。献立表より,すべての食品を抽出し,文部科学省の3色食品群に沿って食品を3色または未分類に分類した。各群の食品の出現割合(%)を主食別に算出した(食品の出現回数/解析した主食別の献立の日数×100)。<br>【結果】計16校(回収率84.2%)から主食が米飯の日,パンの日,麺の日各64日分,計192日分の献立を回収した。対象の食品は,210食品,延べ4,813食品となった。赤群の出現割合は,いずれの主食でも牛乳(63回,98.4%)が最も高かった。米飯の日では,次いで,みそ,肉類,大豆製品,魚,わかめ等が上位であり,パンの日では,上位10品目の中に,肉類,乳製品が多く含まれた。麺の日では,肉類,みそ,わかめ,チーズ等が上位に含まれた。<br>【結論】赤黄緑の各群において,出現割合の高い食品が示された。また,出現割合上位の食品の中には,既存の食品群の教材に含まれない食品もみられた。
著者
赤松 利恵 永橋 久文
出版者
JAPANESE SOCIETY OF HEALTH EDUCATION AND PROMOTION
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.31-40, 2008
被引用文献数
3

目的: 行動変容段階モデルを用いて, 小学校における食に関する指導を行い, 介入のプロセス評価および影響評価から, モデルの利用可能性について検討する.<BR>方法: 都内の公立小学校1校において, 2005年6月から2006年12月にかけて食に関する指導を実施した.全教職員が指導にあたり, 関連する授業の他, 給食時間などを利用し, 家庭地域との連携も積極的に行なった.子どもたちを対象としたアンケートから「よく残す食べ物」の変化, またセルフモニタリングシートを続けた子どもから「給食を残さず食べる」行動の変化を影響評価として検討した.さらに, プロセス評価として, 保護者を対象としたアンケートから家庭への普及の程度を, また, 教員が作成した研究紀要から行動変容段階モデルの利用可能性を検討した.<BR>結果: 2005年6月と2006年5月の2回のアンケートに回答した子ども (197人) を対象に, 「よく残す食べ物」について検討した結果, 13個中10個の食べ物で「よく残す」と回答した子どもが減った.特に, 小魚, 果物は統計的有意に減少していた (p<0.05) .キノコを題材として指導を進めた3年生では, キノコを「よく残す食べ物」と回答する子どもが減っていった.また, 給食カードを続けた1年生の目標達成率は, 開始時に比べ半年後で高くなっていた.家庭への普及の程度は保護者を対象としたアンケートの結果からは, 充分普及されたとは言えなかったが, 熱心な家庭を中心に「食育プロジェクト」と呼ばれる自主的な活動が始まった.行動変容段階モデルを使った教員からは, 『行動変容段階モデルに沿って学習計画を立案することにより, 毎時の学習の位置づけと目標を明確にもって授業を進めることができるようになってきた』という意見があがった.<BR>考察: 本研究は, 実践的な研究であったことから, 研究デザインや評価方法など, 研究としての限界はあるが, 行動変容段階モデルの利用可能性を示したと考える.
著者
谷口 貴穂 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.24-33, 2009
被引用文献数
1

目的:「もったいない」と思う気持ち(食べ物を捨てるときに感じる気持ち)を食事摂取に関わる要因として加え,食べ残しの行動の予測要因を検討すること.<BR>方法:都内の公立小学校の5・6年生の児童2,070人を対象に,自記式の質問紙に基づく横断調査を実施した.食べ残しの行動の予測要因として,「もったいない」と思う気持ちと,食べ残しの多い野菜摂取に関わる要因(嗜好,結果期待,学校菜園活動,家庭のしつけ)や,野菜を食べる頻度と食べ残しの行動との関連を調べた.性別で野菜摂取に関わる要因が異なることから,男女別で食べ残しの行動の予測要因を検討した.<BR>結果:1,994人から回答を得た.女子よりも男子の方が食べ残しの行動をしないと回答した.食べ残しの行動の予測要因は男女で異なったが,食べ残しの行動に最も影響を与えていたのは,男女とも野菜の嗜好で,次が「もったいない」と思う気持ちであった.<BR>結論:「もったいない」と思う気持ちは,食べ残しの予測要因となり,2番目に強く食べ残しの行動に影響を与えていた.食べ残しの行動に最も影響を与えていたのは,野菜の嗜好であった,これらのことから,「もったいない」と思う気持ちを育てること,野菜の嗜好を変えることにより,食べ残しが減ると考えられた.