著者
園山 繁樹 趙 成河 倉光 晃子
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.173-182, 2017-03-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
21

現在、小・中学校における不登校児童生徒数は約12万人と多く、スクールカウンセラーの配置等の対策がとられている。一方、特別支援学校における不登校については情報が少なく、実態や支援方法に関する研究も乏しい。本研究では学校基本調査結果に基づいて特別支援学校の不登校児童生徒数と在籍率の年次推移、及び先行研究の動向を明らかにすることを目的とした。その結果、特別支援学校の不登校児童生徒については、在籍率は全体で小・中学校の方が約2.5倍であったが、児童生徒数は小・中学校と同様に近年増加傾向にあった。また、分析した17編の先行研究論文中12編が病弱養護学校に関係する論文であった。一方で、視覚障害や聴覚障害の特別支援学校に関する論文はなかった。今後の課題として、特別支援学校の不登校の理由、具体的な支援方法、支援経過等を明らかにし、不登校児童生徒の支援に役立つ知見を蓄積することが指摘された。
著者
園山 繁樹 下山 真衣 濱口 佳和 松下 浩之 江口 めぐみ 酒井 貴庸 関口 雄一 奥村 真衣子 趙 成河
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究1「幼・小・中学校への質問紙調査」を平成28年度に実施し、結果の概要を平成29年9月開催の日本特殊教育学会第55回大会において発表した。結果の詳細については学術雑誌に投稿中である。選択性緘黙児の在籍率と学校での困難状況を明らかにした。研究2「選択性緘黙児童生徒の事例研究」を平成28年度に引き続き、研究代表者と研究分担者が教育相談室において実施し、2つの事例研究(中学1年、及び幼稚園年少)が「筑波大学発達臨床心理学研究」第29巻に掲載された。他の1事例研究(小学1年)については、日本特殊教育学会第55回大会において発表した。3事例とも刺激フェイディング法を中核としつつ、各事例の状態に応じて支援方法を工夫することで、一定の効果がもたらされた。研究3「選択性緘黙経験者に対する質問紙調査・面接調査」を実施し、データを収集し、現在分析中である。また関係する調査研究の結果をまとめ、「障害科学研究」第42巻に掲載された。研究4「先進的実践・研究の実地調査のまとめ」については、平成28年度に実施したカナダ・McMaster大学への訪問調査の結果をまとめ、「山梨障害児教育学研究紀要」第12号に掲載された。年長者に対する認知行動療法による支援、並びに、広範な地域における専門的支援の在り方をまとめた。その他、有病率に関する内外の先行研究をレビューし、「障害科学研究」第42巻に掲載された。先行研究における有病率は0.02~1.89%の範囲にあった。また、大学生における選択性緘黙への認識に関する調査を行い、「立正大学臨床心理学研究」第16巻に掲載された。
著者
宮本 昌子 飯村 大智 深澤 菜月 趙 成河 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.227-239, 2021-03-31 (Released:2021-09-30)
参考文献数
22

本研究では、場面緘黙の症状を主訴として指導を受け、場面緘黙の改善後、吃音の問題が表面化した小学校2年生の男児を対象に、1年3か月間の吃音症状軽減を目指した指導介入を行った経過を報告する。セラピストとのLidcombe Programにおけるセラピー場面では、重症度評定と非流暢性頻度の明らかな低下はみられなかったが、母親との遊び場面での重症度評定は低下した。また、3文節以上の発話では1~2文節発話と比較して高頻度に非流暢性が生起していた。さらに、3文節以上の発話にのみ、語尾や句末の繰り返しが生起していた。今後は言語的側面を精査するとともに、母親との場面と同等の流暢性を維持できるよう、セラピー場面設定の調整が必要であることが示唆された。
著者
趙 成河 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 = Japanese Journal of Disability Sciences (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.227-236, 2018-03-31

本研究では、選択性緘黙の有病率に関する先行研究を概観し、有病率の推定値とその根拠資料を把握することを目的とした。対象とする先行研究は英文および和文の学術誌に掲載された選択性緘黙の有病率を調査した論文を選定した。選定基準に適合した16編の論文を分析対象とし、12の項目について分析した。調査研究の対象年齢は3.6~17歳で、有病率は0.02~1.89%であった。また幼稚園および学校で調査を実施した論文が12編、クリニックで実施した諭文は4編であった。選択性緘黙の診断基準としてDSM-III-Rを用いた論文は1編、DSM-IVを用いた論文は8編、DSM-5を用いた論文は1編、記載のない論文は6編であった。和文誌は4論文と少なく、最近の日本の選択性緘黙の有病率に関する大規模の調査は見当たらず、今後、日本における選択性緘黙の現状を把握する必要がある。また、今後の研究では選択性緘黙の発症時期について検討する必要がある。
著者
趙 成河 河内山 冴 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.183-192, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
9

本研究では、場面緘黙を示す幼児1名を対象とし、大学教育相談室での行動的介入の最初の導入期2セッションを含め、その後の心理治療の展開初期までの計10セッションの教育相談場面での手続きを報告し、その結果から刺激フェイディング法及び随伴性マネジメントの効果を検証することを目的とした。介入手続きは、プレイルームで一緒に活動する人と活動時間を刺激フェイディング法に基づいて調整した。従属変数は場面ごとの発話・表情・身体動作レベルであり、5段階のチェックリストを用いてレベルを評定した。発話は副セラピストとの遊び場面で増加し始め、その後、主セラピストとの学校ごっこ場面でも自発的な発話が見られた。表情も発話の変化に伴い、ほほ笑みや笑顔が増加した。身体動作は全セッションで緊張は見られなかった。本研究は主に教育相談場面で介入を実施したが、幼稚園と小学校場面でも緘黙症状がある程度改善した。一方、発話と表情レベルは活動内容によって変動が大きく、より効果的な参加者・活動の調整については今後さらに検討する必要がある。
著者
趙 成河 園山 繁樹
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.37-50, 2018-02-28 (Released:2019-04-25)
参考文献数
26

本研究では、同年齢児に比べ食事摂取量が少なく、摂食可能な食物の種類も限られている知的障害特別支援学校小学部3 年の自閉スペクトラム症女児1 名を対象に、児童デイサービス施設の昼食場面において嫌いな食物と好みの食物を同時に提示する方法を適用し、摂食量の増加、摂食内容とローレル指数の改善への効果、さらに、偏食に対する先行子操作に基づく介入の有効性や介入の留意点を検討することを目的とした。摂食に関する全般的アセスメントおよび偏食に関するアセスメントを実施した後、それらの結果を基に保護者と協議して、標的食物を選定した。介入は原則として対象児が施設を全日利用する日の昼食時間30 ~40 分程度であった。その結果、一部の標的食物の摂食量の増加、副菜の摂取量増加、および摂食内容の変化が見られた。ローレル指数については年齢標準には達しなかったものの、介入後に大幅な改善が見られた。以上の結果から、先行子操作に基づく介入方法である食物同時提示法の有効性が示唆され、介入の際の留意点を検討した。
著者
趙 成河 河内山 冴 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.183-192, 2019

<p>本研究では、場面緘黙を示す幼児1名を対象とし、大学教育相談室での行動的介入の最初の導入期2セッションを含め、その後の心理治療の展開初期までの計10セッションの教育相談場面での手続きを報告し、その結果から刺激フェイディング法及び随伴性マネジメントの効果を検証することを目的とした。介入手続きは、プレイルームで一緒に活動する人と活動時間を刺激フェイディング法に基づいて調整した。従属変数は場面ごとの発話・表情・身体動作レベルであり、5段階のチェックリストを用いてレベルを評定した。発話は副セラピストとの遊び場面で増加し始め、その後、主セラピストとの学校ごっこ場面でも自発的な発話が見られた。表情も発話の変化に伴い、ほほ笑みや笑顔が増加した。身体動作は全セッションで緊張は見られなかった。本研究は主に教育相談場面で介入を実施したが、幼稚園と小学校場面でも緘黙症状がある程度改善した。一方、発話と表情レベルは活動内容によって変動が大きく、より効果的な参加者・活動の調整については今後さらに検討する必要がある。</p>
著者
趙 成河 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.227-236, 2018-03-31 (Released:2018-10-06)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究では、選択性緘黙の有病率に関する先行研究を概観し、有病率の推定値とその根拠資料を把握することを目的とした。対象とする先行研究は英文および和文の学術誌に掲載された選択性緘黙の有病率を調査した論文を選定した。選定基準に適合した16編の論文を分析対象とし、12の項目について分析した。調査研究の対象年齢は3.6~17歳で、有病率は0.02~1.89%であった。また幼稚園および学校で調査を実施した論文が12編、クリニックで実施した論文は4 編であった。選択性緘黙の診断基準としてDSM-III-Rを用いた論文は1 編、DSM-IVを用いた論文は8 編、DSM-5を用いた論文は1 編、記載のない論文は6 編であった。和文誌は4 論文と少なく、最近の日本の選択性緘黙の有病率に関する大規模の調査は見当たらず、今後、日本における選択性緘黙の現状を把握する必要がある。また、今後の研究では選択性緘黙の発症時期について検討する必要がある。