著者
近藤 雅樹 Masaki Kondo
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.395-407, 2012-02-27

火葬後,近親者が集まり,遺骨を粉にして服用する。あるいはこれに類する行為をおこなう。そのような習俗が日本のいくつかの地域で近年までおこなわれていた。公然とではないが点在していた。 この原稿では,何人かのインフォーマントから聞いた話と,近年の報告を紹介する。そして,こうした習俗が行われていた理由について考えてみる。 主要な事例報告対象とした地域は,以下のとおりである。 兵庫県淡路島南部,愛媛県越智郡大島,愛知県三河地方西部,新潟県糸魚川市。 近親者による食屍は,アブノーマルなことに思われる。しかし,長寿を全うした者,崇敬を集めていた人物が被食対象となっていることからは,死者の卓越した生命力や能力にあやかろうとする素朴な思いが反映していることを認めることができる。最愛の妻などの遺骨をかむことに対しても,哀惜の感情が表明されている。これらの行為は,素朴な人間感情の表出であると考えてよい。
著者
近藤 雅樹
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.395-407, 2012
著者
近藤 雅樹 佐々木 史郎 宇野 文男 宮坂 正英 熊倉 功夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

平成17年度は北欧・東欧・ロシア(サンクトペテルブルグ)に所在する博物館のコレクションを重点的に調査し、近藤・佐々木・水口千里(研究協力者)・宮坂がその中心となり、コペンハーゲンとストックホルムでの調査に伊藤廣之(研究協力者)・藤井裕之(同)が参加した。また宮坂と小林淳一(研究協力者)がライデンとミュンヘンにおいて川原慶賀の作成した動植物の標本画と風俗画の調査をおこなった。ストックホルムでは国立民族学博物館が所蔵するツンベリーの収集資料(100点余)を調査し、金属製ボタン12点などを確認した。彼が持ち帰ることができた資料は小さなものばかりだった。日本資料とされる秤量器具の中には干の中国製品が混在していた。彼以後の収集に係る能面約50点をはじめとする工芸品類、和蝋燭、刻煙草、海藻などの産業資料も確認した。コペンハーゲンでは国立博物館において非公開資料の特別閲覧が許可され、和紙のコレクションや人力車とその乗客の生人形1体などを確認した。同館の常設展示は目本展示が非常に充実している。これは、同館のカイ=ビルケット・スミスと岡正雄の親交が深かったことにもよるが、民族学・考古学資料に限らず美術工芸資料と科学・産業技術資料にも見るべきものが多い。ドレスデンでは民族学博物館と衛生博物館に20世紀初期の衛生博覧会に日本が出品した資料が多数残されていた。明治時代末期に坪井正五郎が三越百貨店と提携して開発した教育玩具もあった。サンクトペテルブルグでは前年度に続きクンストカメラの所蔵資料を調査した。駅舎や鉄橋など近代初期の建造写真を多数収録した大阪製の「のぞきからくり」を発見したほか、江戸時代の望遠鏡などを確認した。ヨーゼフ・クライナー(海外研究協力者)は国際シンポジウムの成果を編集し『ヨーロッパ博物館・美術館収蔵の日本関係コレクション』2巻を刊行した。
著者
中牧 弘允 近藤 雅樹 片倉 もとこ 鵜飼 正樹 岩田 龍子 石井 研士
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本年度は、昨年度に引き続き企業博物館や会社を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は次のとおりである(詳細は報告書参照)。北海道:小樽オルゴール堂アンティークミュージアム、小樽ヴェネチア美術館、旧日本郵船株式会社小樽支店、小樽運河工芸館、雪印乳業史料館、サッポロビール博物館、竹鶴資料館、コニカプラザ・サッポロ、らいらっく、ぎゃらりい(北海道銀行)、石炭の歴史村、男山酒作り史料館、優佳良織工芸館、ふらのワイン工場、池田町ワイン城、馬の資料館、太平洋炭礦炭鉱展示館 関東:資生堂企業資料館、日本銀行貨幣博物館 中部:東海銀行資料館、窯のある広場・資料館(INAX)、日本モンキーセンター(名古屋鉄道) 諏訪北澤美術館、SUWAガラスの里 近畿:ホンダコレクションホール、パルケエスパーニャ、真珠博物館、竹中大工道具館、島津創業記念資料館 九州:西部ガス、ハウステンボス、べっ甲文化資料館このほか住原は原子力発電所PR館のうち昨年度の訪問先以外のすべてを調査するとともに、関電、北電、九電の本社でインタビューをおこない、PR館が原発のしくみや安全性を説明する施設から、リクリエーションや地元文化を紹介する文化観光施設に変わってきたことを明らかにし、記号論者の言う「詩的機能」が付与されヘゲモニ-形成に寄与していることを実証した。会社の求心性や遠心性については、日置が「組織ユニットにおける副の職務」に関して、企業の組織改革の中で自分の役割を主張する機会のないまま、整理対象となっている副の役割について研究をおこなった。会社の記念行事や宗教儀礼にみられるように、経営に宗教的要素が動員されることについては、ダスキンと日立製作所、伏見稲荷神社で調査を実施した。2年度にわたる調査研究の結果、会社文化の研究には「経営人類学」とでも称すべき研究分野が存在することがしだいに明確となり、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的の文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。