著者
藤若 恵美 進藤 貴子 永田 博
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.351-357, 2010

本研究の目的は,祖父母との親密性と介護経験の両面から孫世代である大学生の介護観を検討すること,そして,孫世代が介護を実際にどの程度担うことができると考えているのかを介助に対する自信によって測定し,介護場面での孫世代の役割について検討することであった.その結果,祖父母との親密性が高い孫世代は,親密性の低い孫世代よりも家族介護意識と社会的介護意識の両方が高く,家族介護にとどまらず,介護を支援する社会資源にも目をむけていた.祖父母との親密性と介護経験の交互作用はいずれの介護意識においても認められなかった.また,孫世代は現時点で間接的な介助を行う自信があることが示され,介護場面において孫世代が重要な存在となり得ることが示唆された.
著者
忠津 佐和代 梶原 京子 篠原 ひとみ 長尾 憲樹 進藤 貴子 新山 悦子 高谷 知美
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.313-331, 2008

青年期のヘルスプロモーションの視点から,大学生のピアカウンセリング手法による性教育の必要性と教育内容を検討するため,某大学生858人を対象に自記式質問紙調査を行い,以下の結果を得た.性交経験者は,男性では1年生(62.1%)・2年生(77.1%)・3年生(91.1%),女性では1年生(41.5%)・2年生(62.4%)・3年生(70.1%)と学年を上がるごとに増加していた.性に関わる問題の第1の相談相手の割合が最も高いのは「友人(73.1%)」であり,性に関わる意識や行動に最も影響を与える第1のものも「友人(45.5%)」であった.性の問題の相談場所がない者が24.0%いた.大学生のピアに対する期待は,具体的な知識に加え,交際相手とのトラブルへの対応や避妊法の具体的な技術指導,ピアカウンセリングが包含する相談しやすい人や秘密の守られる場の提供であった.最も知りたい内容は,21項目中,「性感染症の知識(47.0%)」で,以下2割以上は「男性と女性の心理や行動の違い(46.3%)」,「エイズ(44.8%)」,「愛とは何か(40.5%)」,「緊急避妊法(39.6%)」,「避妊の方法(35.8%)」,「異性との交際のしかた(34.8%)」,「セックス(性交)(29.3%)」,「自分の体について(27.2%)」,「性の人生の意味(26.1%)」,「性欲の処理のしかた(24.9%)」,「思春期の心理(23.6%)」,「性に関する相談機関(22.0%)」の12項目であった.以上から,青年期にある大学生にもピアによる性教育の潜在的・顕在的ニーズがあること,その教育内容として心理的・性行為付随側面のニーズが高くなっていることが窺える.この時期のQOLを実現するため,新入生の時期からピアカウンセリング講座やピアカウンセリングが展開できる場やサポート環境を整えていくことが求められる.
著者
荒井 佐和子 進藤 貴子
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.251-257, 2016

アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease : AD)の初期から終末期までの自然経過を理解することは,認知症の人と家族へのよりよいサポートを行うために重要である.しかし,医療福祉職を目指す学生がAD の進行に伴い生じる症状や取り組むべき課題についてどの程度認識しているのかは明らかでない.そこで,本研究では,医療福祉系大学に在籍する学生が,AD の進行についてどのように認識しているのか,探索的に検討した.調査は127名を対象として,認知症の人との接触経験,知識,およびAD の進行期に対する認識を尋ねた.その結果,認知症の人との接触経験や知識は高かったが,AD の進行期に対する認識は軽度から重度の段階で存在する認知機能障害に関する記述が多く,重度の段階で生じる身体機能の障害に関する記述は少なかった.多くの認知症が進行性であることからも,認知症進行期に関する教育の充実が必要であると考えられた. To provide better support to people with dementia and their families, it is important to understand the development of Alzheimer's disease(AD)from the early stage to the end-of-life. However, it is still unclear whether students who are studying to become health care providers understand the difficulties that arise with the progress of AD. The purpose of this study was to examine the extent to which students who enrolled in the Medical Welfare University recognize the progression of AD. Undergraduate students of the Medical Welfare University (n = 127)were asked about their contact experience with people with dementia, knowledge of dementia, and their understanding of the advanced stages of AD. It was investigated that many students had contact experience and knowledge of the people with dementia. During the recognition of the advanced stages of AD, many students described the cognitive dysfunction that people experienced from mild to advanced stages of AD; however, there was little understanding of the decline in physical functions in advanced AD. Because the many types of dementia are characterized by a progressive decline in cognitive and physical functions, it is necessary to educate students about advanced dementia.
著者
"忠津 佐和代 梶原 京子 篠原 ひとみ 長尾 憲樹 進藤 貴子 新山 悦子 高谷 知美"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.313-331, 2008
被引用文献数
3

"青年期のヘルスプロモーションの視点から,大学生のピアカウンセリング手法による性教育の必要性と教育内容を検討するため,某大学生858人を対象に自記式質問紙調査を行い,以下の結果を得た.性交経験者は,男性では1年生(62.1%)・2年生(77.1%)・3年生(91.1%),女性では1年生(41.5%)・2年生(62.4%)・3年生(70.1%)と学年を上がるごとに増加していた.性に関わる問題の第1の相談相手の割合が最も高いのは「友人(73.1%)」であり,性に関わる意識や行動に最も影響を与える第1のものも「友人(45.5%)」であった.性の問題の相談場所がない者が24.0%いた.大学生のピアに対する期待は,具体的な知識に加え,交際相手とのトラブルへの対応や避妊法の具体的な技術指導,ピアカウンセリングが包含する相談しやすい人や秘密の守られる場の提供であった.最も知りたい内容は,21項目中,「性感染症の知識(47.0%)」で,以下2割以上は「男性と女性の心理や行動の違い(46.3%)」,「エイズ(44.8%)」,「愛とは何か(40.5%)」,「緊急避妊法(39.6%)」,「避妊の方法(35.8%)」,「異性との交際のしかた(34.8%)」,「セックス(性交)(29.3%)」,「自分の体について(27.2%)」,「性の人生の意味(26.1%)」,「性欲の処理のしかた(24.9%)」,「思春期の心理(23.6%)」,「性に関する相談機関(22.0%)」の12項目であった.以上から,青年期にある大学生にもピアによる性教育の潜在的・顕在的ニーズがあること,その教育内容として心理的・性行為付随側面のニーズが高くなっていることが窺える.この時期のQOLを実現するため,新入生の時期からピアカウンセリング講座やピアカウンセリングが展開できる場やサポート環境を整えていくことが求められる."
著者
進藤 貴子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29-44, 2010

高齢者心理学の発展,とりわけ1980年代以降のそれは,衰退し排除される対象としての高齢者観から,成長と自己実現の可能性をはらんだ高齢者観へのパラダイムシフトを後押しした.あわせて高齢者心理学は,対象者主体の高齢者福祉を営んでいく上で欠かせない知識である.高齢者心理学の基礎的研究は,(1)知能の加齢変化の様相,高齢者の知恵の特徴,加齢とともに適応性を増す人格変化の示唆など,加齢の発展・超越的側面,さらに,(2)感覚機能・身体機能・記憶機能の衰退と補償など,加齢に伴う喪失的側面,そして,(3)「エイジレス」な自己意識にみられる不変的側面と,加齢の3つの側面を浮き彫りにしている.こうした研究成果を現場に生かす高齢者臨床心理学の実践は,まだ十分に普及しているとは言いがたい.その背景には,臨床家の高齢者への偏見,専門的な心理ケアが制度上の位置づけをもたないこと,専門職の役割を分離しにくい高齢者領域の特異性などがある.それでも心理士の専門性には期待がもたれており,高齢者領域に特化した知識・技術,生老病死に向きあう姿勢,個を尊重しながらの集団へのかかわり,高齢者との世代を超えたつながりへの理解,認知症者への共感的な姿勢を備えての高齢者福祉領域への参入がのぞまれる.