著者
里見 正隆
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.842-852, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

CODEXにおいて魚醤油のヒスタミンの基準値は400ppmに設定される予定であるので,魚醤油のヒスタミンの低減は重要である。著者は魚醤油のヒスタミンがTetragenococcus halophilusのピルボイル型ヒスチジン脱炭酸酵素により,ヒスチジンから生成されるので,ヒスタミン非生成のT. halophilusスターターとショ糖を魚醤油諸味に添加することにより,ヒスタミンを低減できることを明らかにした。さらに,魚醤油にベントナイトを2%添加することにより,ヒスタミンを約20%低減できるが,前者の技術の方が経済的に有効であることを明らかにしたので,解説いただいた。醤油,味噌醸造におけるヒスタミン生成菌は魚醤油と同様であるので,多いに参考にしていただきたい。
著者
原田 恭行 小善 圭一 横井 健二 里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.529-537, 2016-11-15 (Released:2016-12-23)
参考文献数
46
被引用文献数
1

魚味噌仕込み時にクエン酸を添加することにより,魚味噌中のヒスタミン蓄積抑制を試みた.また,クエン酸の添加時期が魚味噌中のヒスタミン蓄積抑制効果に及ぼす影響と,魚味噌の呈味性に及ぼす影響をそれぞれ検討した.その結果,終濃度0.6%のクエン酸添加がヒスタミン生成菌の増殖を顕著に抑制し,ヒスタミンの生成を抑制した.このため,ヒスタミンの蓄積抑制効果は,クエン酸の添加時期が早いほどが大きかった.また,クエン酸の添加は,好塩菌の増殖にも抑制効果を示し,好塩菌の代謝による乳酸や酢酸等の生成を減少させた.このため,呈味性への影響は,クエン酸の添加時期が早いほど酸味を弱め,かつ旨味の変化も小さかった.これらのことから,魚味噌熟成中のヒスタミンの蓄積を抑制するには,仕込み直後にクエン酸を添加することが望ましいと考えられた.
著者
里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.266-269, 2016 (Released:2016-06-07)
参考文献数
23
被引用文献数
2
著者
浜谷 祐司 舊谷 亜由美 福井 洋平 矢野 豊 武輪 俊彦 里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.1007, 2018-09-15 (Released:2018-10-20)

日本水産学会誌80(6), 956-964 (2014)「シメサバ調味液から分離されたヒスタミン生成乳酸菌の分類と増殖特性」 浜谷祐司,舊谷亜由美,福井洋平,矢野 豊,武輪俊彦,里見正隆 https://doi.org/10.2331/suisan.80.956 上記報文について,不適切な研究結果の図を使用し,科学的な事実を正確に記載しなかったことを理由とした著者からの撤回の希望を受け,投稿規程第9条に基づき本論文の掲載を取り下げる。
著者
里見 正隆 山口 敏季 奥積 昌世 藤井 建夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-34_1, 1995-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
7 9

大腸菌の培養条件 (増殖段階, 培養温度, 培地) 及び加圧条件 (温度, pH, 浸透圧) の変化が加圧耐性に及ぼす影響について検討した. 大腸菌に対する圧力の効果は1,500atm 以上でみられ, 特に, 1,800から2,000atmの加圧で生残率が急激に減少した. 生育時の培地及び酸素の有無と耐圧性の間に相関はみられなかったが, 増殖段階が進むにつれ大きく耐圧性を獲得した. また, 44°培養で得られた菌体の耐圧性は低かった. 加圧時のpHは耐圧性に大きな影響を与えなかったが, 加圧時の温度は44°で生残率が減少した. また, 浸透圧が高いほど生残率が高く, 損傷及び細胞内物質の漏えいも少なかった.

1 0 0 0 OA ヒスタミン

著者
里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.366, 2010-08-15 (Released:2010-10-02)
参考文献数
2
被引用文献数
2

ヒスタミンは分子式C5H9N3,分子量111.14の活性アミンで,アミノ酸であるヒスチジンの脱炭酸反応で誘導される.無色,無臭で一般的な加熱調理では分解しない.人体では肥満細胞のほか,好塩基球やECL細胞(enterochromaffin-like cell)がヒスタミン産生細胞として知られている.血圧降下,血管透過性亢進,平滑筋収縮,血管拡張,腺分泌促進などの薬理作用があり,アレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働く.生体内で普段は細胞内の顆粒に貯蔵されており,細胞表面の抗体に抗原が結合するなどの外部刺激により細胞外へ一過的に放出される.また,マクロファージ等の細胞ではヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)により産生されたヒスタミンを顆粒に貯蔵せず,持続的に放出することが知られている.食品中に蓄積されたヒスタミンを摂取すると,アレルギー様症状を呈するためアレルギー様食中毒と呼ばれている.1. アレルギー様食中毒アレルギー様食中毒の原因となるヒスタミンは,食品中のヒスチジンが,微生物により変換されて生じるもので,食品のなかでもサバやマグロなど,ヒスチジンを大量に含む赤身魚は原因食品となることが多い.原因物質を許容量以上食べると症状が出る食物アレルギーと異なり,アレルギー様食中毒は,魚介類が新鮮でヒスタミンが大量に含まれていなければ食中毒は起こらない.水産物のヒスタミン生成の原因となるのは主に腸内細菌,海洋細菌および乳酸菌で,鮮魚の場合は主に腸内細菌および海洋細菌,発酵食品の場合は乳酸菌による蓄積事例が報告されている.水産物のヒスタミン量についてCODEXをはじめ各機関で規制値を設けているが,我国では規制値を設定していない.毎年,学校給食等で20件程度の食中毒事例が報告され,患者数は500名程度,死亡例は報告されていない.原因食品として赤身魚加工品が多いとされている1) .2. ヒスタミン生成菌ヒスタミン生成菌はヒスチジン脱炭酸酵素(EC.4.1.1.22)を有し,低pHストレスに応答してヒスタミンを生成すると考えられている.2種類のアイソザイムが知られており,補酵素にピリドキサル五リン酸(PLP)を要求するPLP依存型酵素と,活性中心がピルボイル基であるピルボイル酵素に分けられる.PLP依存型HDCはグラム陰性菌の他,哺乳類の肝臓等に存在し,ピルボイル型HDCはグラム陽性細菌にのみ存在する.(1) PLP依存型HDC分子量約170kDa,四量体で,補酵素としてPLPを要求する.Morganella morganiiを含む腸内細菌群や海洋性のPhotobacterium damselaeおよびP. phosphoreum等のグラム陰性菌が保有する2) .本酵素を有する細菌は鮮魚や加工水産物のヒスタミン蓄積の原因菌と考えられている.海洋由来のヒスタミン生成菌には好冷性のものも存在するため,冷蔵保存中でもヒスタミンが蓄積することがあり,注意が必要である.酵素および細菌ともに加熱により失活または,死滅する.(2) ピルボイル型HDC分子量約200kDa, α, βサブユニットで構成されるヘテロ六量体で,翻訳後一本のペプチド鎖がα, βサブユニットに切断され,αサブユニットにピルビン酸から誘導されるピルボイル基を修飾後,成熟酵素として機能すると考えられている.本酵素はLactobacillus属やOenococcus oenii等の乳酸菌,Staphylococcus sp., およびClostridium perfringensのようなグラム陽性菌に存在し,チーズ,ワイン等の農産発酵食品の製造において問題となる.水産発酵食品では好塩性乳酸菌Tetragenococcus spp. がヒスタミン生成菌として分離されている.鮮魚では温度管理が悪いと筋肉組織が速やかに崩壊し,体表や腸内の細菌が侵入する.通常は腐敗菌もヒスタミン生成菌とともに侵入して腐敗臭を発するため,ヒスタミンの蓄積が起こるより早く食用に適さないと判断できるが,ヒスタミン生成菌のみが増殖できる特殊な環境が揃うと,官能的に可食と判断できてもヒスタミンを大量に蓄積している状態になり,食中毒を引き起こすと考えられている.ヒスタミン蓄積の予防は通常の食中毒防止の3原則と同様,「つけない」,「増やさない」「やっつける」を実践することが大事である.

1 0 0 0 ヒスタミン

著者
里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, 2010-08-15
参考文献数
2
被引用文献数
2

ヒスタミンは分子式C<SUB>5</SUB>H<SUB>9</SUB>N<SUB>3</SUB>,分子量111.14の活性アミンで,アミノ酸であるヒスチジンの脱炭酸反応で誘導される.無色,無臭で一般的な加熱調理では分解しない.人体では肥満細胞のほか,好塩基球やECL細胞(enterochromaffin-like cell)がヒスタミン産生細胞として知られている.血圧降下,血管透過性亢進,平滑筋収縮,血管拡張,腺分泌促進などの薬理作用があり,アレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働く.生体内で普段は細胞内の顆粒に貯蔵されており,細胞表面の抗体に抗原が結合するなどの外部刺激により細胞外へ一過的に放出される.また,マクロファージ等の細胞ではヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)により産生されたヒスタミンを顆粒に貯蔵せず,持続的に放出することが知られている.食品中に蓄積されたヒスタミンを摂取すると,アレルギー様症状を呈するためアレルギー様食中毒と呼ばれている.<BR><B>1. アレルギー様食中毒</B><BR>アレルギー様食中毒の原因となるヒスタミンは,食品中のヒスチジンが,微生物により変換されて生じるもので,食品のなかでもサバやマグロなど,ヒスチジンを大量に含む赤身魚は原因食品となることが多い.原因物質を許容量以上食べると症状が出る食物アレルギーと異なり,アレルギー様食中毒は,魚介類が新鮮でヒスタミンが大量に含まれていなければ食中毒は起こらない.水産物のヒスタミン生成の原因となるのは主に腸内細菌,海洋細菌および乳酸菌で,鮮魚の場合は主に腸内細菌および海洋細菌,発酵食品の場合は乳酸菌による蓄積事例が報告されている.水産物のヒスタミン量についてCODEXをはじめ各機関で規制値を設けているが,我国では規制値を設定していない.毎年,学校給食等で20件程度の食中毒事例が報告され,患者数は500名程度,死亡例は報告されていない.原因食品として赤身魚加工品が多いとされている<SUP>1) </SUP>.<BR><B>2. ヒスタミン生成菌</B><BR>ヒスタミン生成菌はヒスチジン脱炭酸酵素(EC.4.1.1.22)を有し,低pHストレスに応答してヒスタミンを生成すると考えられている.2種類のアイソザイムが知られており,補酵素にピリドキサル五リン酸(PLP)を要求するPLP依存型酵素と,活性中心がピルボイル基であるピルボイル酵素に分けられる.PLP依存型HDCはグラム陰性菌の他,哺乳類の肝臓等に存在し,ピルボイル型HDCはグラム陽性細菌にのみ存在する.<BR>(1) PLP依存型HDC<BR>分子量約170kDa,四量体で,補酵素としてPLPを要求する.<I>Morganella morganii</I>を含む腸内細菌群や海洋性の<I>Photobacterium damselae</I>および<I>P. phosphoreum</I>等のグラム陰性菌が保有する<SUP>2) </SUP>.本酵素を有する細菌は鮮魚や加工水産物のヒスタミン蓄積の原因菌と考えられている.海洋由来のヒスタミン生成菌には好冷性のものも存在するため,冷蔵保存中でもヒスタミンが蓄積することがあり,注意が必要である.酵素および細菌ともに加熱により失活または,死滅する.<BR>(2) ピルボイル型HDC<BR>分子量約200kDa, &alpha;, &beta;サブユニットで構成されるヘテロ六量体で,翻訳後一本のペプチド鎖が&alpha;, &beta;サブユニットに切断され,&alpha;サブユニットにピルビン酸から誘導されるピルボイル基を修飾後,成熟酵素として機能すると考えられている.本酵素は<I>Lactobacillus</I>属や<I>Oenococcus oenii</I>等の乳酸菌,<I>Staphylococcus</I> sp., および<I>Clostridium perfringens</I>のようなグラム陽性菌に存在し,チーズ,ワイン等の農産発酵食品の製造において問題となる.水産発酵食品では好塩性乳酸菌<I>Tetragenococcus</I> spp. がヒスタミン生成菌として分離されている.<BR>鮮魚では温度管理が悪いと筋肉組織が速やかに崩壊し,体表や腸内の細菌が侵入する.通常は腐敗菌もヒスタミン生成菌とともに侵入して腐敗臭を発するため,ヒスタミンの蓄積が起こるより早く食用に適さないと判断できるが,ヒスタミン生成菌のみが増殖できる特殊な環境が揃うと,官能的に可食と判断できてもヒスタミンを大量に蓄積している状態になり,食中毒を引き起こすと考えられている.ヒスタミン蓄積の予防は通常の食中毒防止の3原則と同様,「つけない」,「増やさない」「やっつける」を実践することが大事である.