著者
浦部 美佐子 石川 俊之 片野 泉 石田 裕子 野崎 健太郎 吉冨 友恭
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-18, 2018-01-31 (Released:2019-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1

水質指標生物の教育効果を調べるため,7つの大学で学生アンケートを実施した。高校までに指標生物による水質調査を行ったことのある学生は1~2割程度であった。指標生物は,現行課程では中学理科第二分野,旧課程(~2011)では高校基礎生物の教科書で扱われることが多かったが,調査を行ったことのある学生の7~8割は小学校で履修しており、テキストとしては自治体等が作成した副読本の役割が大きいと考えられた。水質指標生物の学習によって水質に対する正しい科学的理解を得た学生は少なく,その原因として小学校では履修学年が早すぎることと,指標生物に内在する論理的不備の問題が考えられた。「川の水を綺麗にするために有効なこと」を選択する問いでは,美化体験の有無によって選択内容はあまり変化しなかった。指標生物の学習体験の有無では、調査年により「無りん洗剤を使う」「水草を植える」「EM菌を撒く」の項目が増加し,その中には疑似科学であるものも含まれていた。以上の結果から,指標生物の学習は自然に親しみ,環境への興味を喚起するには有効であるが,水質の科学的な理解にはほとんど結びついていないことが明らかになった。以上を踏まえ,学校教育において指標生物を利用する場合に改善すべき点として,(1)水生動物相を水質と関連付ける場合,化学的水質検査も同時に実施する必要がある;(2)水質指標生物は小学校ではなく、中学または高校で教えるべきである;(3)学校教育において指標生物を教える場合、水質以外の環境要因も考慮することが必要である;(4)小学校では、水生生物は生物多様性と地域環境を理解するための教材とするべきである;の4点を挙げた。
著者
野崎 健太郎 松本 嘉孝
出版者
日本湿地学会
雑誌
湿地研究 (ISSN:21854238)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.43-72, 2022 (Released:2022-11-10)
参考文献数
80

名古屋市千種区の近接する3 つの湧水と雨水を対象にして,2015 年から2017 年にかけて水質の季節変化を記載し,それらに及ぼす人間活動の影響を調べた.続いて,この調査結果を教材として用いて,小学校理科の教育実践を行った.湧水の起源となる雨水の水質は,pH 4.4~5.3,電気伝導度2 mS m-1,溶存無機態窒素濃度(DIN:dissolved inorganic nitrogen)470 μgN L-1 であった.湧水の水質は,人間活動の影響が無い金明水では, pH 5.1~5.5,電気伝導度2 mS m-1,DIN 13μgN L-1 であったが,都市部の本山ではpH 5.8~6.5,電気伝導度10 mS m-1,DIN 2000 μgN L-1,椙山小学校ではpH 6.3~9.5,電気伝導度24 mS m-1,DIN 5000 μgN L-1 となり,都市中心部に近い湧水ほど,水質は弱酸性から中性および弱アルカリ性へと変化し,電気伝導度と溶存無機態窒素濃度が高い値を示した.したがって,都市部の人間活動は,湧水の水質を大きく改変していることが明らかになった.教育実践は,小学校第5 学年理科の河川の授業で行った.授業の主題は,「身近にある川のはじまり-椙山小学校から川がはじまる」とし,ねらいは,「1 川は斜面から湧出する湧水からはじまる」,「2 湧水の水質には人間活動が大きな影響を及ぼす」の2 点を設定した.授業には,地理院地図の3D 機能を用いた地形解析と,本格的な手法による亜硝酸態窒素(NO2--N)濃度の比色分析を組み込んだ.この教育実践で,生徒の印象に残った内容は,1 位が亜硝酸態窒素濃度の分析,2 位が湧水は川のはじまり,であった.これらの生徒の評価は,授業のねらい1 と2 に関係することから,湧水は理科教材として有用である可能性が示唆された.教材の質を高める今後の研究課題としては,都市部の湧水で高い濃度を示す溶存無機態窒素の起源解明,教育効果の測定,教科教育への位置付け,災害教育における教材化の4 点を挙げた.
著者
野崎 健太郎 紀平 征希 山田 浩之 岸 大弼 布川 雅典 河口 洋一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.165-172, 2005-01-30 (Released:2009-01-19)
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

標津川下流域(北海道標津町)に位置する浅い河跡湖(最大水深2m)の水質環境(水温,水中光の消散係数,溶存酸素,窒素,リン,クロロフィルa)を2001年7月21日,11月17日,2002年7月30日に調査した.水温は7月には地点間,水深間で10~24℃の違いが観察された.11月にはほぼ5℃で均一であった.溶存酸素濃度は常に10mg L-1以上を示し,最大値は,25mg L-1,飽和度で250%に達し,2001年7月21日に湖底付近で観察された.高い溶存酸素濃度が得られた地点は,水深が60~100cmで,表層より水温が5~10℃低く(10~15℃),大型糸状緑藻Spirogyra sp.が繁茂していた.湖水中の溶存態窒素濃度は,4~250μg L-1の幅で変動し,7月に大きく低下した.リン酸態リン濃度は,7~14μg L-1の幅で変動したが,溶存態窒素に比べて変動の幅は小さかった.懸濁態のリン量は33~35μg L-1,クロロフィルa量は10~13μg L-1であり,おおよそ一定であった.夏期の湖水中の全リン濃度とクロロフィルa量は,この河跡湖が中栄養と富栄養の中間の水質を持つことを示した.水中光の消散係数は,1~2m-1であり,富栄養湖の最大値に匹敵した.湖水中のクロロフィルa量は富栄養湖ほど多くはないので,水中光を大きく減らしているのは,植物プランクトン以外の懸濁物質や溶存有機物であると考えられる.河跡湖周辺の原風景が低湿地であったことを考えると,この河跡湖は湿地に多く見られる腐植栄養的な性質を持つ水環境である可能性が高い.これらの研究結果から,河跡湖の水質環境は,現在の標津川本川とは大きく異なっており,むしろ,かつての低湿地環境が残存している場であることが推定される.
著者
畑田 彩 平山 大輔 村上 正行 梶川 裕司 谷垣 岳人 中田 兼介 野崎 健太郎
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は研究目的の(2)環境学系科目担当教員が持っている教材、人材情報、授業デザインなどを収集・共有する に関する活動を行った。研究代表者、研究分担者が行った教材開発は以下のとおりである。(畑田)小麦アレルギー者のためのグルテンフリー代替メニューの開発・エコバッグ一体型学生鞄の開発・カフェインレスのコーヒーがコーヒーの代替品となりうるかの実験・アクアポニックスを利用した小学校の総合的な学習の授業デザイン・キャンパスラリーを利用した環境学系授業の授業デザイン (平山)学校の校庭の樹木等を教材とした自然観察授業・森林機能に関する教材(授業プログラム)の実践・三重県内の学校教員を対象とした環境教育の研修講座の実施 (谷垣)京丹後市での保全型農業の実施とゲンゴロウ米の販売 (中田)ぬまがさワタリ著「図解 なんかへんな生き物」の監修 (野崎)大学生を対象にした河川生態系の多様性を理解するための宿泊型自然体験学習の実践・愛知県現任保育士研修会での講演 (村上)没入型授業映像視聴環境のためのハンドジェスチャインタフェース今年度は、研究代表者・研究分担者各自の教材開発にとどまり、共有化のシステムを構築することができなかった。共有できる教材が集まってきたため、早急にHP上で共有できるシステムを構築したい。研究目的の(3)座学の授業で利用可能なハンズオン型教材の開発を行う については、以下の活動を行った。(畑田)ミネラルウォーターと水道水の利き水・紙は何回二つ折りにできるか(ワークショップ)・視覚と臭覚なしでかき氷の味が見分けられるか(ワークショップ)・よく飛ぶ紙飛行機を作ろう(ワークショップ)3Dプリンタを用いた昆虫模型の制作は、ゼロ工房提供の15種類の昆虫のフリーデータを用いて、試作を行った。