著者
長谷川 慎 久保田 敏子 野川 美穂子 芦垣 美穂 浅野 陸夫 今井 伸治 梅辻 理恵 岡村 慎太郎 菊央 雄司 菊聖 公一 菊珠 三奈子 小池 典子 戸波 有香子 飛山 百合子 中澤 眞佐 村澤 丈児
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

京都・柳川流地歌三味線についての研究。京都における地歌箏曲の系統は伝統的に柳川流であり、一部の実演家が使用する三味線は細棹よりも細い棹・小型胴の三味線である「柳川三味線」が用いられる。本研究は、①これまでに行われた柳川三味線について研究の再整理をし、②楽器としてみた柳川三味線、③他の地歌三味線との演奏表現の違いについての基礎研究を行い、④京都上派における地歌伝承の現況調査、⑤「水張り」による三味線の楽器調整(皮張り)の状況、⑥楽譜・音源のアーカイブを行なった。
著者
萩岡 松韻 久保田 敏子 野川 美穂子 長谷川 慎
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

地歌箏曲の楽曲アーカイブを目的とした研究。稀曲等次代への伝承が危ぶまれている楽曲について、音源の収集、楽曲の伝承者に指導を受けることで、楽曲の音源化・楽譜化を試みた。地歌箏曲では口頭伝承が昭和の初めまで行われていた。現在は作品の多くが楽譜化されているが、楽譜化できない口頭伝承の部分を知る実演家の多くは没し、口頭伝承を受けた実演家の存在は貴重である。本研究はそうした実演家より直接指導を受け、楽曲をアーカイブすることを目的とした。地歌箏曲の喫緊の課題といえる現存する古典曲の調査、楽曲の楽譜化、録音等による伝承者の演奏の保存、稀曲等の公開演奏を行うことで無形文化財ともいうべき楽曲の保護保存を進めた。
著者
上参郷 祐康 大貫 紀子 野川 美穂子
出版者
東京芸術大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

名古屋の箏曲地歌演奏家団体のひとつである財団法人国風音楽会は、1893年に全国的組織の国風音楽講習所の名古屋支部として発足した。当初の会員は多くは江戸時代の盲人音楽家の組織である当道に所属していたので、国風音楽講習所では、多くの当道の制度や行事をとりいれた。これらのうちのあるものは、今日でもなお国風音楽会に伝えられ、また当道音楽のレパートリーの中でも、平曲や一部の胡弓曲のように、他には伝わらないものもある。本研究は、この国風音楽会の活動状況や活動内容を調査・記録し、その結果を、江戸時代以降の当道資料や音楽資料などと照らし合わせ、近世音楽史の重要な部分を担ってきた盲人音楽の実態を立体的に解明する事を目的としたものであり、その成果は主に以下の3点にまとめることができる。1.国風音楽会の年中行事について-年間約15種の行事を行うが、このうち室町時代に起源を持つ人康祭を含む重要な7種の行事については録音・撮影等による記録を作成し、調査検討を進めている。2.国風音楽会の教習制度について-盲人男子、盲人女子の場合、晴眼者の場合にわけて、教習上の曲の進度と弟子の側の資格取得(免状、許し等)との対応関係、盲人音楽家の資格の種類、およびその実態について戦前と戦後の変化にも留意しながら調査した。3.国風音楽会独自の伝承レパートリーについて-国風音楽会で伝承する、箏曲・地歌・胡弓曲・平曲について調査記録するとともに、国風音楽会所蔵の曲集の調査や名古屋で出版された曲集の収集も合わせて行った。
著者
野川 美穂子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.189-210,図巻頭1p, 2011-03

本稿は,平成20・21年度に行った紀州徳川家伝来楽器コレクション(国立歴史民俗博物館所蔵)の調査にもとづく報告である。紀州藩10代当主徳川治宝が蒐集した本コレクションの多くは雅楽器であるが,本稿では,楽箏,箏柱,箏爪を中心に述べる。国立歴史民俗博物館には,本コレクションとは別に5面の箏が所蔵され,このうち3面の調査も平成21年度に行った。これも本稿で報告する。したがって,本稿では,コレクションの箏5面([君が千歳][葉菊][武蔵野][紅雨][雲雁]),コレクションに含まれない箏3面([松風][山下水][箏(短胴)])の合計8面を対象とする。箏柱は,コレクションに含まれるもの12組,コレクションに含まれないもの1組(箏[松風]の付属品)の合計13組である。箏爪は7組の調査を行い,このうち6組がコレクションに属している。調査方法は,付属文書や目録類にもとづく伝来や由来の考察と楽器そのものの計測および観察である。楽器史研究の大きな壁の一つに伝来や由来に関する情報の少なさが上げられるが,本コレクションの場合には,楽器蒐集時に添えられた付属文書が豊富にある。加えて今回の調査では,ファイバースコープによる楽器内部の観察も行った。その結果,付属文書では知り得なかった焼印や墨書の存在が明らかになった。また,音響効果のために箏の内部に付けられるノミ目の状況,梁板を用いる内部の補強の方法なども明らかになった。調査した楽器の多くは江戸時代の製作と思われるが,一部は江戸時代をさかのぼる可能性をもつ。コレクション以外の楽器も含めると,俗箏として使われた楽器も含まれる。多くの事例を積み重ねて調査することが楽器史研究の基本であるという観点に立って,箏,箏柱,箏爪といった箏に関連する資料研究の一事例としての報告を行う。This article reports research on the musical instrument collection of the heirloom of the Kishu- Tokugawa Family (owned by the National Museum of Japanese History) conducted in 2008 and 2009. Many instruments of this collection compiled by Tokugawa Harutomi, the 10th feudal lord of the Kishu domain, are Gagaku instruments. In this article, mainly, Gakuso, Kotoji and Kotozume are described. Aside from this collection, five pieces of koto are owned by the National Museum of Japanese History, and research on three pieces of koto was conducted in 2009, which is also reported in this article. Therefore, this article describes a total of eight pieces of koto, that is, five pieces in the collection ([Kimi ga chitose][Hagiku][Musashino][Kouu][Kumokari]) and three pieces that are not included in the collection ([Matsukaze][Yamashitamizu][Koto (tando) ]) and a total of 13 sets of Kotoji, that is, 12 sets included in the collection and one set not included in the collection ( accessories of the koto[Matsukaze]) . For Kotozume, seven sets were researched. Among them, 6 sets are included in the collection. The research was conducted through the study of the tradition and history based on the accompanying documents and the catalogues and the measurement and observation of the instruments themselves. Musical instrument history research faces the obstacle of insufficient information about tradition and history. Concerning this collection, there are plenty of accompanying documents added at the time of collecting the musical instruments. In this research, the insides of the instruments were also observed with a fiberscope. As a result, the existence of burn marks and writing in sumi ink were revealed, which were not mentioned in the accompanying documents. Also, the state of chisel cuts which were made inside the koto for sound effects and the reinforcing method of the inside using a beam plate were clarified. Many of the musical instruments researched seem to have been made in the Edo Period, but there is a possibility that some of them were made before the Edo Period. Among all the musical instruments including the instruments not included in the collection, musical instruments used as Zokuso ( vulgar koto) are included. This example of the study of kotorelated materials about Koto, Kotoji and Kotozume will contribute to musical instrument history research, which requires many case examples.