著者
野田坂 伸也 鈴木 俊二
出版者
日本緑化工学会
雑誌
緑化工技術 (ISSN:03865223)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-14, 1982-03-31 (Released:2011-02-09)
被引用文献数
1

岩手県の中部にある貯水開始後15年たったダム湖の, 定期的に水没と露出をくり返すゾーンの植生調査を行なった。このダム湖は4~5月の雪どけ時に満水位になり, その後9月までは減り続け15~20m, 低下する。10月から再び上昇し満水位より数m低い状態が冬の半ばまで続く。2~3月は流入量が減るため低下し夏の水位に近くなる。この年満水位は約60日続いた。植生調査によって知り得たことを列挙する。(1) 水没深15m水没期間230日のゾーンで生育していた植物は木本11種, 多年草14種1年草11種。水没深10m, 水没期闇190日のゾーンで生育していた植物 (ただし上記の分を含む) は木本23種, 多年草19種, 1年草14種。水没深5m・水没期間60日のゾーンで生育していた植物 (上記の分を含む) は木本67種, 多年草31種, 1年草14種。以上は, たまたま調査区域に出現したものだけであるから, 調査が進めばこれよりはるかに多くの植物が長期の水没という厳しい条件に耐えられるということが見いだされるだろう。(2) 水没深 (当然水没期間と関係がある) と群落の変化の関係を見ると, 浅いところから深い方へむかって, 高木・亜高木林-低木林-多年草群落-1年草群落という変り方をしている。これは生活形で見ると「木本型=地上部・地下部共生き残る-多年草型=地上部は枯れ, 地下部だけが生き残る-1年草型=地上部・地下部共枯れ, タネから再生する」という変化で環境圧の増大に対応していることになる。(3) 水没深の浅い区域では, ダム建設以前にあった植生の影響が強く残っている。はっきりわかるもので水没深7m付近までは, 元の植生が残っている。(4) 長期水没~露出をくり返す区域でもふつうの場所と同じように, 地形や土壌の違いが植生に影響している。(5) 水没深と樹高・草丈とは相関関係がある。しかし, 一部の植物でははっきりしない。(6) サクセッションはふつう地にくらべるとかなり遅く, 深いところではほとんど停滞してしまうと考えられる。(7) 部分的に水没し, 一部が水面上にでている植物は, 春になるとそのままの状態で水面上の部分は開葉し, 花を咲かせる。しかも近くの陸上の同種の個体と同時期にこれを行なう。(8) 水がひいたあとで発芽してくる早さは種によって異なるが, 早いものは1週間後にははなれて見ても一帯が緑になったことがわかるほどすみやかに生長してくる。
著者
北村 文雄 野田坂 伸也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.32-37, 1975-03-20
被引用文献数
2

イ)造園樹木の生長におよぼす土壌硬度の影響を知るために,イチョウおよびオトメツバキを用いて実験を行った。ロ)供試樹木の地上部の生長は,高硬度区は悪く,年代を経るにしたがってその程度がいちじるしくなる。低硬度はむしろ生長がよい。地下部も同様の傾向を示し,高硬度区で生長は悪いが,予想以上に根は伸長し,また,地下部発達度(地下部/全体(花葉を除く))も大きい。低硬度区は根の状態はよいが,地下部発達速度は小さい。低硬度区が生長がよい原因は,土壌が適度に固いために根がよく土壌を把握し,効率よく働いているためであると考えられる。ハ)イチョウにおいては,高硬度区は落葉が早く,低硬度区は逆に遅くなる現象がみられた。また,オトメツバキにおいては,高硬度区は花蕾が年代が新しいうちはよく生じ,また低硬度区では花蕾が非常によく生ずる。これらは植物体内の栄養条件に関係があるとみられる。ニ)土壌水分については,高硬度区は乾燥しやすく,雨後一時間に水分含量が多くなってもその後の乾燥も早い。低硬度区は比較的よく水分を保持している。