著者
金子 裕憲 中内 浩二 間島 寧興 川上 睦美 熊川 寿郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.819-822, 1994-05-20
被引用文献数
1

内分泌療法に抵抗性となったStage D_2前立腺癌例に対し、diethylstilbestrol diphosphate (DESP)の大量投与療法を行うにあたり、^<31>P magnetic resonance spectroscopy(^<31>P MRS)による治療効果の早期判定の可能性を検討した。症例は83歳男性で1984年3月初診。除睾術を施行後、chlormadinon acetate及びcyclophosphamideを中心とした内服治療で経過観察をしていた。1991年12月頃より腫瘍マーカーの再上昇があり、1992年4月貧血と右胸壁腫瘤が認められ、5月6日当科に入院した。胸壁の腫瘤は生検の結果、前立腺癌の肋骨転移と診断され、6月11日よりDESP500mg/日の点滴静注を開始した。初回投与4時間後の^<31>PMRSで、高周波領域成分の広範囲な増加とともに、phosphodiesters(PDE)、phosphomonoesters (PME)のピークの増高が認められ、すでに治療に反応して腫瘍の細胞に変化が生じていることが示唆された。同様の所見はその後も継続して観察され、細胞の破壊が進んでいるものと思われた。臨床的には10日目頃より腫瘤の縮小が認められ、腫瘍マーカーも低下して治療の効果が確認された。以上の結果から、^<31>PMRSは臨床所見や画像診断に先んじて治療の有効性を早期に判定できる可能性が考えられた。