著者
金田 幸恵
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

雲や降水を直接計算し、より現実的な台風の内部構造を表現する極めて高解像度の雲解像モデルを用いて、極端に強い台風の急激な中心気圧低下メカニズムを調査した。まず最低中心気圧877hPaに達した歴史的顕著台風・1958年9月狩野川台風の24時間当たり90hPaを上回る急激な中心気圧低下の再現に成功した。水平解像度を変えた感度実験から、発達に伴う内部構造やプロセスの解像度依存性と対応する中心気圧低下量(発達率)を明らかにした。さらに温暖化実験を実施し、将来温暖化気候下で極端に強い台風がより急激な中心気圧低下を経て、より強い台風に発達する可能性を示唆した。
著者
金田 幸恵 耿 驃 吉本 直弘 藤吉 康志 武田 喬男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.135-154, 1999-02-25
被引用文献数
1

1993年7月25日未明に台風9304が紀伊半島南端に最接近し、その後四国に上陸したことに伴い、半島南東斜面に多量の降水が観測された。この台風に伴い形成された対流性降水雲の地形による変質過程が、2台のドップラーレーダを用いた観測により調べられた。7月24日1900LSTから25日0000LSTにかけてのドップラーレーダ観測期間中、多くの対流性降水雲が上陸した。それらのレーダエコーは、様々な発達段階で海岸に達したにもかかわらず、海岸の10-20km手前で強まり、海岸線付近でいったん弱まった後、上陸後に再び強化されるか、あるいは広がるという共通の特徴を示した。また、対流性エコーは、海上で強まる前、海岸から30-40km沖付近で後面上部で強まり、その後、海岸に近づくにしたがって、進行方向前面のエコーが強まるという特徴も見出された。2台のドップラーレーダの観測データから導出された海上の水平風を時間平均したところ、平均風速は海岸に近づくにつれ減衰すること、海岸から約10km海上に10^<-4>s^<-1>以上の水平収束域が存在することが見いだされた。以上の観測事実にもとづき、また一般風に対する半島の地形効果に関する数値実験の結果も考慮して、対流性降水雲の地形による変質過程と効率的な降水形成過程が議論された。海上から接近、上陸する対流雲に対するこのような地形効果の総合的な結果として、紀伊半島南東斜面に多量の降水がもたらされたと考えられる。