著者
森 厚二 日高 勇一 中島 三晴 鬼澤 徹 矢ヶ﨑 裕 鈴木 和夫 五十嵐 俊男 伊藤 充雄
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.185-192, 1999-06-30 (Released:2016-08-20)
参考文献数
15

Three kinds of bone filling materials were prepared by combining powder, including CaO, CaSiO3 and hydroxyapatite (HAP), and chitin and chitosan. The proportion of CaO, CaSiO3 and HAP was 4.5%, 6.0% and 89.5%. This powder 0.54 g (A), 0.67 g (B) and 0.80 g (C) were kneaded with chitin and chitosan sol 2.2 g and hardened, respectively. These materials were evaluated in the experiment animal and osteoblastic cells. The purpose of this study was to discuss which materials were most desirable for the bone filling materials. In an animal experiment, tissue reactions were similar in each material and were characterized by granulation tissue formation with inflammation. In the osseous tissue, repairs at defected sites(B and C) and direct relationship between material A and bone were seen. Cultured cell examination revealed that DNA contents and alkaline phosphatase activity in material A were significantly higher than those in control. Results of this study indicated that material A, 0.54 g mixed in chitin and chitosan sol 2.2 g, was most effective for the bone formation.
著者
鈴木 和夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.90-102, 2005-02-01
被引用文献数
6

生研機構「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」として取り組まれた「森林生態系における共生関係の解明と共生機能の高度利用のための基礎研究」(平成8∿12年度)の概要と, とくに学問的に関心の高い外生菌根菌マツタケに焦点をあてて論述した。まず, マツタケTricholoma matsutakeの識別として, rDNAのITS領域を用いて設計されたマツタケ特異的プライマーによって, マツタケ菌糸の有無を数mg以下の試料から確実に同定する方法を確立した。また, わが国のマツタケの多様性は, rDNAのIGS1領域を用いて8タイプに分けられ, Aタイプが広範囲にわたって優占していた。ヨーロッパおよび北アフリカに分布するマツタケの近縁種T. nauseosumは分子生物学的には同種であることが否定できなかったが, 今後, 生物学的種の観点からの検討が必要である。「マツタケは外生菌根菌であるのか?」についての疑念は, 形態的にも生理的にも典型的な外生菌根菌であることが, ハルティッヒネットの構造やATPaseの分布様式から示された。そして, マツタケ菌根の迅速人工合成法が確立され, マツタケ菌糸の親水性を高めて迅速な菌糸体の大量培養が可能となり, マツタケの人工シロの誘導が可能となった。
著者
福田 健二 鈴木 和夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.625-628, 1988-12-25
被引用文献数
2

材線虫病による年越し枯れのアカマツについて, 病徴の進展に伴う材部の電気抵抗値および葉の水分生理特性の変化について検討を加えた。材部の電気抵抗値は, 秋から冬にかけてはほとんどが正常な値を示したが, 感染翌年の春〜初夏にかけて180kΩ未満の値をとるものが多く, 春季の村内におけるミクロフロラの変化が示唆された。P-V曲線から得られた葉の水分生理特性は, 桔死直前の春〜初夏まで正常な季節変化を示して, 細胞壁弾性率(ε)には変化が認められなかった。
著者
楠本 大 鈴木 和夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.G05, 2004

はじめに針葉樹の師部は、傷害や菌の感染に対して、防御反応を引き起こす。それにともない師部内では様々な化学変化が起こる。これまで多くの組織化学的研究によって、師部の化学物質の変化が示されているが、それら化学物質の経時的・空間的変化を定量的に明らかにしたものは少ない。本研究では、フェノール系物質を中心に防御反応による化学物質の量的変化を、組織化学的観察と対応させながら、明らかにすることを試みた。材料と方法実験には東京大学演習林田無試験地植栽の5年生ヒノキを用いた。7月にヒノキの主幹に傷を付け、その後継続的に5本ずつ選び、傷の周りの樹皮を採取した。解剖観察:樹皮切片を作成した。ポリフェノールはジアゾ反応法とニトロソフェノール反応法で、リグニンはフロログルシン-HCl法で染色した。スベリンはフロログルシン-HClで染色した切片にUV光を照射して蛍光を観察した。フェノール類の抽出と定量:樹皮を傷害カルス、壊死部(コルク組織を含む)、傷から1mmまでの生きた師部(コルク形成層とコルク皮層を含む)、傷から1_から_2mmまでの生きた師部に分け、凍結乾燥した。10mgの組織片を粉砕し、80%メタノールで2回抽出した。総ポリフェノール量をFolin-Denis法で定量した。タンニン量は、抽出液にゼラチンを加えてタンニンを沈澱させたのち、上澄みに残ったポリフェノール量を総ポリフェノール量から引くことで計算した。壁結合フェニルプロパノイドの抽出と定量:メタノール抽出を行った後の残渣から細胞壁に結合したフェニルプロパノイドを1N NaOHで抽出した。抽出されたフェニルプロパノイドはHPLCで分析した。リグニンの定量:NaOHで抽出した後、残渣のリグニン量をアセチルブロミド法により測定した。結果傷害カルスにおけるポリフェノール量は健全部よりも測定期間を通じて有意に高く、解剖観察においてもポリフェノール粒が多数観察された。一方、壊死部では3日目で既にポリフェノール粒は消失し、量的にも減少した。0-1mm師部では、parenchymatic zoneにおいて多量のポリフェノール粒が観察された。また、師部柔細胞では14日目以降液胞の拡大とポリフェノールの染色性の低下が観察された。0-1mm師部のポリフェノール量は健全部よりも若干増加したがその差は有意ではなかった。1-2mm師部のポリフェノール量は健全部と変わらず、解剖観察によっても変化はみられなかった。タンニン量は、いずれの部位においてもポリフェノール量の20_から_35%を占め、ポリフェノールとほぼ同じ経時変化を示した。傷付け7日目に壊死部の細胞壁にリグニンの蓄積が認められ始め、14日目まで蓄積の範囲が増加した。壊死部のリグニン濃度は14日目から増加し始め、28日目に一定に達した。傷害カルスでは、カルス形成が始まったばかりの14日目に健全部に比べてリグニン濃度が低かったが、28日目以降は健全部と同様の濃度を示した。壁結合フェニルプロパノイドについては、p -クマル酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸のうち、フェルラ酸のみが検出された。フェルラ酸は壊死部と傷害カルスで7日目以降増加した。考察傷害カルスのポリフェノールは、その発達初期から多量に含まれており、傷害カルスの防御に強く関与していると考えられた。一方で、師部柔細胞では、化学性の変化によると思われる染色性の低下が認められた。壊死部ではポリフェノールの減少がみられたが、これは細胞が傷付けられたときに遊離した酸化酵素がポリフェノールを酸化重合させたためと考えられた。壊死部のリグニンは、染色によって7日目に認められたが、実際に細胞壁中の濃度が増加するのは14日以降であった。また、その増加は28日目まで続き、壊死部であっても1ヵ月程度は生理活性を維持している可能性が示唆された。壁結合フェルラ酸はリグニン濃度に変化が認められた壊死部と傷害カルスにおいて有意に増加し、リグニン合成との関連が示唆された。このように、ヒノキ師部の防御反応は部位によって多様であり、その発現のタイミングも異なっていた。病原体に対する抵抗性は、こうした種々の防御反応の総合的な効果によって決定されると考えられた。
著者
鈴木 和夫
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1073-1082, 1981-11-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
65
被引用文献数
6 5

Metallothionein is named for its characteristic structure, a low molecular weight metal-binding protein (61 amino acid residues) rich in cysteinyl residues (20 residues) and heavy metals (7 metals for zinc and cadmium). Heavy metals which can induce and can be bound to metallothionein are restricted to seven heavy metals (zinc, copper, cadmium, silver, mercury, gold, and bismuth). Namely, heavy metals with higher affinity than zinc can be bound in vivo to metallothionein.Other heavy metals such as nickel, manganese, chromium, and so on can also induce metallothionein but can not be bound to metallothionein and the induced metallothionein contains only zinc or zinc and a small amount of copper. A great diversity of stresses other than heavy metals such as starvation, operation, administrations of alkylating agents and inflammatory drugs also induces metallothionein. Glucocorticohormone which may be related to the stresses also induces metallothionein and high concentrations of metallothionein are observed in the livers of foetus and neonatus. Biological functions of metallothionein have been postulated to be a protective protein from harmful heavy metals and a regulating protein for the homeostasis of zinc and copper.
著者
柳田 薫 片寄 治男 鈴木 和夫 近内 勝之 菅沼 亮太 佐藤 章
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.93-98, 2001 (Released:2002-05-31)
参考文献数
16
被引用文献数
6

卵細胞質内精子注入法(ICSI)の際の卵細胞膜穿破様式と卵の生存率,受精,分割率,ICSI前の卵の形態学的評価との関連性を検討した.ニードル先端の鋭利性による影響を除外するために,先端が平坦なニードルを使用できるピエゾマイクロマニピュレーターを用いてICSIを行った.ニードルによって卵細胞膜が穿破される様式を細胞膜の伸展性から4タイプに分類した.ICSIを行う成熟卵の約8%は卵細胞膜の伸展性が不良(type A)で,それらの50%はcytolysisを起こした.しかし,生存卵に対しての受精率,受精卵に対しての分割胚率に有意差がなかった.卵内に空胞が認められる不良卵と穿破様式との間にも関連性が認められなかった.
著者
山本 善之 角 洋一 鈴木 和夫 鈴木 政直 鈴木 隆男
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.158, pp.291-300, 1985 (Released:2009-09-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

In 1935 the Forth Fleet of the Imperial Navy encountered a typhoon in the occasion of the naval grand maneuvers in the Pacific Ocean off the northern coast of Honshu Island of Japan, and many naval vessels of the fleet were damaged. Destroyers “HATSUYUKI” and “YUGIRI” lost their fore bodies being splitted in front of bridges with 51 crews on board. They were designed on the basis of the theories and experiments of those days ; they had long forecastles with large flare for high performance in rough seas, and their section moduli were designed to be in proportion to the estimated longitudinal bending moment for the reduction of hull weight.In this paper the authors attempt to analyze the disaster of the two destroyers theoretically with the aid of the knowledge available today. The wave bending moments acting on the destroyers are calculated for several wave conditions by TSLAM based on the nonlinear theory of ship motions, and they are compared with the ultimate moment. It is shown from the calculated results that the sagging moments are increased by slamming to the flare and buoyancy of the long forecastle dipped into a wave. If the longitudinal strength were designed in such a manner that the section modulus had an almost constant value sufficiently far towards the fore body of the vessel, the disaster of the two destroyers could have been avoided.
著者
鈴木 和夫 上原 勇三 渡辺 弘
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.289-292, 1988-02-05 (Released:2009-10-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
鈴木 和夫
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-54, 2008-03-31

この総説では痛みの定義および古代からの痛みの治療について挙げ,レーザー治療に至る経緯,現在のレーザー治療およびその鎮痛機序の解析について紹介している.低出力レーザー(ソフトレーザー)とはどの様なものか述べ,実際の治療について麻酔科領域や整形外科領域の症例の肯定的および否定的両方の報告を示した.次に低出力レーザー照射鎮痛機序の解析的研究について,痛覚誘導をおこす物質や微生物を用いた疼痛モデル動物実験を挙げ,低出力レーザーが鎮痛に確かに効果があることを述べた.また,人為的に発生させた痛覚の活動電位(スパイク)を中枢に伝える感覚神経にレーザー照射したときスパイクは抑制され,レーザーはC 神経線維由来の感覚シグナル,つまり疼痛に特に効果があることを紹介した.そして,ミトコンドリアやATP などの生体活性物質が低出力レーザーにより変化して,それが起因して鎮痛がおこるという説,血流改善による鎮痛作用,中枢の下降性抑制系の賦活化による鎮痛作用,神経細胞膜のチャネルに作用,および発痛物質のシグナル伝達系の蛋白質に作用するという説を紹介した.これらの仮説から鎮痛機序をさらに解明するには中枢神経系の下降性抑制系のレーザーによる賦活化,およびレーザーが細胞レベルの物質に作用して光活性反応による分子構造変化を誘発しシグナル伝達を変調させるという観点から研究を進めることが期待される.
著者
福田 健二 宝月 岱造 鈴木 和夫
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.p289-299, 1992-07
被引用文献数
14

マツ材線虫病における病原性発現のメカニズムを明らかにするため, 病原性の異なる2系統のマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)と, ニセマツノザイセンチュウ(B. mucronatus)をクロマツ苗に接種し, 木部柔細胞の細胞学的変化と通導阻害(キャビテーション)とを時間的, 空間的に比較した。強病原性のS6-1系統を接種した場合, 木部放射組織柔細胞および軸方向柔細胞の脂質の消失, 細胞質の変性, およびそれらに続いて木部通導阻害が広範囲に生じ, 形成層が壊死して苗は枯死した。弱病原性のC14-5系統接種および非病原性のニセマツノザイセンチュウ接種では, 細胞生理の変化と通導阻害は形成層近傍を除く限られた範囲にのみ生じ, 葉の水分生理状態に変化はなかった。一方, キャビテーションを誘導するとされる蓚酸水溶液で処理した苗は, 広範囲に木部柔細胞の変性と通導阻害を生じ, 旧葉の変色, 当年枝の萎凋という, 材線虫病特有の病徴を現した。以上のことから, マツ材線虫病では木部柔細胞の変性, 通導阻害の順に病徴が進展し, 形成層の壊死と通導阻害が広く生じた場合に枯死にいたることが明らかにされた。
著者
榛沢 和彦 林 純一 大橋 さとみ 本多 忠幸 遠藤 祐 坂井 邦彦 井口 清太郎 中山 秀章 田中 純太 成田 一衛 下条 文武 鈴木 和夫 斉藤 六温 土田 桂蔵 北島 勲
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.14-20, 2006-01-10
被引用文献数
4

新潟中越地震の車中泊では地震による心的ストレス,窮屈な下肢屈曲姿勢,そして脱水により下肢深部静脈に血栓が発生しエコノミークラス症候群(肺塞栓症)が多発した.10/31,11/3,11/7には厚生連佐久総合病院の診療チームと計69名(男性4名)にポータブルエコーで,11/15から12/20までは厚生連魚沼病院に通常のエコー装置を設置しマスコミを通じて呼びかけ82名(男性13名)に下肢静脈エコー検査施行した.2005/2/28から3/31まで再度魚沼病院で検査した方を対象に再度下肢静脈エコーを行った.10/31-11/7に検査した69名中車中泊経験者は60名で,8名にヒラメ静脈浮遊血栓(そのうち1名はCTで肺塞栓症を認めた),14名に壁在血栓を認め,血栓陽性例は全員車中3泊以上であった.11/15-12/20の検査では車中泊は66名(6名は30日以上連泊),そのうち60名が下肢の疼痛や腫脹を訴えヒラメ静脈の充満血栓1名,9名で壁在血栓を含めた血栓を認め,血栓陽性例は全員震災直後から車中4泊以上であった.血栓陽性率は震災後からの経過時間とともに低下し12/20では10%であったが2/28から3/31の診療結果では新たな血栓も認め血栓陽性率は21.9%と上昇を認めた.11/7までの下肢静脈エコーにおける車中泊者のヒラメ筋最大静脈径は8.8±2.5mm(車中泊経験の無いヒラメ筋最大静脈径7.1±2.0mm)より有意に大(n=55,p<0.05),また血栓を認めた被災者のヒラメ静脈最大径10.0±2.6mmで血栓の無い被災者(7.5±4.4mm)より有意に大であった(n=67,p<0.0001).本診療調査により大災害時における車中泊は急性期に肺・静脈血栓塞栓症を起こすだけでなく,静脈の損傷により慢性期に反復性の血栓を生じて血栓後症候群になる危険性も大であることが示唆された.
著者
小野寺 有子 坂上 大翼 松下 範久 鈴木 和夫
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-11, 2001-03-31
参考文献数
25
被引用文献数
1

高齢大型となった巨樹・老木が都市域でどのような生理的・外観的特性を示すかを明らかにする目的で、東京都区部に生育するイチョウ、ケヤキ、クスノキ、ユリノキおよびスダジイの胸高周囲長3m以上の巨木と1m以下の中径木を供試木として、水分生理状態、葉の養分濃度、クロロフィル量、クロロフィル蛍光、樹幹表面温度、フェノロジーの計測観察を行った。どの樹種でも、巨木の方が中径木より水分生理状態が悪く、カリウム、マグネシウム濃度が低く、クロロフィル量が少なかった。SPAD値は、スダジイを除く4樹種で巨木の方が中径木より低かった。クロロフィル蛍光には、巨木と中径木で差は認められなかった。巨木と中径木の樹幹表面温度の日変動を比べたところ、巨木の樹幹表面温度が高い傾向が認められた。また、どの樹種でも巨木の黄葉、黄葉終了、落葉が早く、黄葉-落葉期間が長いという傾向が認められた。開芽・展葉の傾向は樹種により異なっていた。巨木は中径木とは明らかに異なる生理状態やフェノロジーを示すといえる。
著者
鈴木 和夫
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.33-38, 2002-03-31
被引用文献数
2
著者
鈴木 和夫 奈良 一秀 山田 利博 宝月 岱造 坂上 大翼 松下 範久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

マツ材線虫病の病徴発現原因物質と宿主細胞との相互関係を明らかにする目的で、材線虫-宿主細胞間で引き起こされる反応について調べた結果、以下の諸点が明らかにされた。(1)感受性の異なる針葉樹5樹種を用いて、宿主の病徴進展とキャビテーション発生との関連についてみると、マツ材線虫病感受性が高い樹種ほど病徴進展にともなって、表面張力が大きく低下することが明らかにされた。このことは、表面張力に関与する物質が病徴進展と密接な関係にあることを示唆している。(2)感染後に産生される異常代謝産物の樹体に及ぼす影響についてみると、材線虫感染によって表面活性物質および蓚酸が産生され、これらの物質によってキャビネテーションの発生が促進されるものと考えられた。(3)表面張力の低下に関与する物質として蓚酸およびエタノール投与では、顕著な影響が認められずエスレル投与によって表面張力は低下した。このことから、病徴進展とエチレン生成が密生な関係にあることが示唆された。(4)キャビテーションの発生は、70%の壁孔閉塞が木部含水率の著しい低下を引き起こすことから、このことが樹体内のランナウェイエンボリズムの発生と密接な関係にあるものと考えられた。(5)光合成阻害処理によって、当年生葉の黄化・萎凋が他処理に比べて促進されたことから、光合成阻害による低糖類の減少が材線虫病の病徴進展と密接な関係にあるものと考えられた。以上の結果から、いままでブラックボックスとされてきた病徴発現原因物質と宿主細胞の相互関係が、病徴進展やキャビテーション発生の観点から明らかにされた。
著者
鈴木 和夫 福田 健二 梶 幹男 紙谷 智彦
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.80, pp.p1-23, 1988-12
被引用文献数
6

漏脂病はヒノキやヒノキアスナロ(アテ)の生立木樹幹から樹脂が異常に流出する現象であって,大正初期から林業上問題とされてきた。本病の病因については,いままでに雪圧説,害虫説,病原菌説などがあって,充分に納得できる説明が得られていなかった。ヒノキやヒノキアスナロの漏脂病の発生実態について詳細に調査した結果,漏脂病の病徴には,初期病徴として樹脂流出型,初期病徴の癒合・進展した型として漏脂型,さらにこれらの病患部に菌類が関与した溝腐型があり,この3つが漏脂病の典型的な病徴と考えられた。このような病徴を示す病患部は,地上1~2mの高さに最も多くみられた。このような病患部の樹幹上における発生状況は,積雪深と関係が深く,経時的に推移するものと考えられた。漏脂病の発生誘因について検討した結果,漏脂病は雪や寒さといった気象的因子を誘因として,内樹皮に傷害樹脂道を異常形成させて,樹脂流出型の初期病徴が形成されるものと考えられた。ヒノキやヒノキアスナロ生立木が,このような環境ストレスを引き続いて被るか,あるいは初期病徴が癒合・拡大して漏脂型へと進展し,また,凍裂などの物理的損傷部位や漏脂型病徴を呈する部位に菌類が関与すると,溝腐型病徴へ移行するものと考えられた。そして,このようなヒノキやヒノキアスナロ生立木からは,樹脂が異常に流下し続けるものと考えられた。The "Rooshi" pitch canker of Hinoki (Chamaecyparis obtusa) and Ate (Thujopsis dolabrata var. Hondai) is frequently observed in heavy snowfall regions as well as the northern part of Japan. Reforestation with Hinoki has become so widespread that the pitch canker is becoming one of the most serious disease. Empirically, the "Rooshi" pitch canker of Hinoki is supposed to be one of the restriction factors on natural distribution of Hinoki forest in Japan. However, there are few scientific papers on the disease. The cause of the disease has not been explained enough. From our survey, the "Rooshi" pitch canker is considered to be a disease complex rather than a discrete canker disease. The classic symptoms of the disease are classified into three types, that is, a bleeding type, a resinous sink type, and a grooved pitch canker type on the trunk of living tree. In this study, we discussed on the mechanisms of the development of "Rooshi" pitch canker. A bleeding type is supposed to be an incipient stage of "Rooshi" pitch canker and caused by abiotic stress factors such as cold and snowfall. This incipient stage of the disease develops to a resinous sink type on the trunk. And, finally, a grooved pitch canker is formed on the trunk accompanying fungi such as Sarea resinae and Pezicula livida (Cryptosporiopsis abietina).
著者
鈴木 和夫 福田 健二 井出 雄二 宝月 岱造 片桐 一正 佐々木 恵彦 斯波 義宏
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

1.材線虫病感染後の光合成・蒸散などのマツの生理的変化と萎凋・枯死機構との関連について検討を加えた結果、これらの生理的変化はキャビテーションが或る程度以上進行した後に、水ストレスの発現と同時に、あるいは、それ以降に生ずる現象であることが明らかにされた。2.材線虫の病原性と電解質の漏出現象との関連について細胞レベルで検討した結果、病原力の強弱に応じてマツ組織への影響が異なり、その強さに応じて電解質の異常な漏出が生じることが明らかにされた。3.材線虫病感染組織で産生されるセルラーゼについて検討した結果、このセルラーゼは真核生物起源であり、生きた細胞からの電解質の漏出を高めることが明らかにされた一方、抵抗性マツでは、この電解質の漏出は殆ど見られない。4.強・弱病原線虫を用いて、マツ組織細胞の応答について組織化学的に検討を加えた結果、DAPI染色によって組織細胞の生死の判定が容易となり、この方法を用いて病原性の差異を判別することが可能となった。5.誘導抵抗性の発現について検討した結果、誘導抵抗性はマツ樹体にストレスがかからない条件下、すなわち気象環境によるストレスと弱病原線虫によるストレスが、あるバランスを保った時にのみ誘導される現象であると考えられた。