著者
鈴木 秀典 今城 靖明 西田 周泰 舩場 真裕
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.141-147, 2019-02-25

はじめに 非特異的腰痛の頻度については,2001年にThe New England Journal of Medicineに発表されたDeyoらの論文1)では80%程度と報告されており,頻度の非常に高い臨床的概念である.しかし,その概念・病態については,いまだ明確でない点が多いのが現状である.腰痛の症状と単純X線所見が必ずしも相関しないことは,以前から認識されていた事実である.すなわち,単純X線所見やMRIなどの画像所見があまり診断の役に立たないような腰痛症を非特異的腰痛と分類してきた経緯があり,下肢症状を有するような腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症,重篤な脊椎病変の可能性(重度骨粗鬆症,腰椎圧迫骨折,腫瘍,感染,炎症性疾患,先天奇形など)を除外したものを総じて非特異的腰痛としてきたのである.腰痛症診断において,こうした簡単に時間をかけずに診断可能な画像診断などを重視してきたことが,非特異的腰痛をめぐる諸問題を生じさせてきた根底にあるように感じている.しかし,これも「非特異的腰痛:non-specific low back pain」という用語そのものが,欧米のプライマリーケア医により提唱されてきた概念であることを考えると,致し方がないとも考えられる.プライマリーケア医における腰痛症診療では,red flagsを除外することが最優先課題であると考えられるし,それ以外の腰痛に関しては,彼らにとってはある程度似通った運動療法や薬物治療となるため,詳細な確定診断を急ぐ必要性が乏しかったのではないかと思われる. そういった意味では軽視されがちな非特異的腰痛であるが,わが国の腰痛症診療を考えると,多くの腰痛症患者はこの非特異的腰痛にて病院を受診し,適切な治療を希望されているわけである.したがって,こうした腰痛に関してもまた正確な診断を行い,引き続く適切な治療を行う必要があるのである.また,医療保険システムの違いが大きいとはいえ,本邦ではこうした腰痛症患者に対してはじめから専門医である整形外科医院やクリニックで診療を行っているという診療上の大きなメリットがある.本稿では,わが国における腰痛症診断の実態調査として山口県腰痛study3)のデータを示しながら,非特異的腰痛のわが国の現状について報告する.また,丁寧な診察や問診などの重要性について述べるとともに,診断に基づく適切な腰痛症治療の可能性について示していきたいと考えている.
著者
石川 敏三 仲西 修 掛田 崇寛 山本 美佐 古川 昭栄 伊吹 京秀 徳田 信子 石川 浩三 鈴木 秀典
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

慢性疼痛はしばしば不安や鬱を併発し、極めて難治性である。そこで、痛覚ー情動系における分子メカニズムを解明し、また神経栄養因子(BDNF)治療応用について検討した。その結果、前帯状回や脳幹部(網様体)におけるモノアミン変調に随伴したBDNFの機能低下が慢性疼痛や気分障害に関連すること、またカテーコール化合物や磁気治療の有用性が判明した。慢性疼痛の治療法に新たな指針を提唱するものと考えられる。
著者
湯木 正史 鈴木 清美 杉本 典子 樋口 貴志 鈴木 秀典 石川 勝行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.721-724, 2004-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11

免疫介在性溶血性貧血 (Immune-mediated hemolytic anemia: IMHA) と診断した犬2例に対し, プレドニゾロン, シクロスポリン, アザチオプリン, ヒト免疫グロブリン製剤, 輸血などによる治療を行ったが, 貧血の改善が得られなかった. そこでシクロスポリンの10~100倍の免疫抑制作用を持つとされるタクロリムス (FK506) を併用したところ, 1例では貧血の著明な改善が, 他の1例ではPCVの維持が認められた.
著者
鈴木 秀典 岡 勝 山口 浩和 陣川 雅樹
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.153-162, 2010 (Released:2012-12-03)

近年の林業では、経済性や安全性の観点から機械化やそのための路網整備が必要不可欠となっているが、機械作業や路網整備にはエネルギーの使用が不可欠で、これらの機械からは必ず二酸化炭素が排出される。 よって、森林による二酸化炭素吸収量を適正に評価するためには、また、今後の機械化作業や路網整備の方向性を議論するためにも、林業活動に伴う排出量を明らかにする必要がある。 本研究では日本の森林を対象に路網整備過程に着目して、林道、作業道の開設工事において、建設機械の燃料消費による二酸化炭素排出量を算出した。このために、民有林林道では設計書から土工量および燃料消費量を調べた。国有林林道では民有林林道の値からこれらの値を推定した。作業道では既存の調査による土工量および民有林林道の値から燃料消費量を推定した。これらの値と、各年間開設延長から排出量を算出した結果、2007年度の排出量が、民有林林道から48.09ktCO2/年、国有林林道から11.71ktC02/年、民有林作業道から97.64ktCO2/年と算出された。また、森林・林業基本計画(2006)における林道・作業道の整備目標を達成すると、2007年以降、19.11~20.39MtCO2の二酸化炭素が排出されるとの予測結果を得た。
著者
鈴木 秀典
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.452-453, 2019-10-15

大塚正徳博士は,神経伝達物質研究の進歩に大きく貢献した。特にサブスタンスPに関する研究は,ペプチド性物質が哺乳類の神経伝達物質であることを初めて明らかにした画期的な業績である。この研究はわが国でなされ,国内の神経科学研究の発展につながった。ファミリーペプチドの発見や受容体のクローニングなど,サブスタンスPに関連する世界的な成果がわが国から発信されている。
著者
永野 昌俊 鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 肥後 心平 三ケ原 靖規
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

マウスを用いた行動実験系で、帝王切開によって生まれた仔マウスは自然分娩によって生まれた仔マウスと比較した場合に、社会性を含め様々な違いが確認された。行動実験のほとんどが仔の成長後に実施しているが、一部は、生後8日目という早期から確認されたものもある。つまり、帝王切開出産による生まれた仔への影響は生後の長きにわたる事が示唆された。そして、これらの影響は周産期におけるオキシトシンの単回投与で抑制できることが確認された。また、周産期にオキシトシン受容体のアンタゴニストを投与して自然分娩をさせると、生まれた仔マウスは帝王切開によって生まれた仔マウスに近い行動変化を引き起こすことも確認された。これらの研究の進行の手がかりとして大きく役立ったのは、同時進行している自閉症のモデルマウス(Nakatani et al., Cell, 2009)を用いた研究で、生後3週間に及ぶ選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルオキセチンの処理が、成長後の社会性行動を改善させることを見いだしたこと(Science Advances, e1603001, 2017)、及びその改善効果はセロトニン1A受容体アゴニストの投与によっても再現され、オキシトシン受容体のアンタゴニストとの同時投与でキャンセルされてしまうこと、セロトニン1A受容体アゴニスト投与はモデルマウスの血中オキシトシン濃度を上昇させることを見いだしたこと(Scientific Reports, 8:13675,2018)である。
著者
坂井 敦 丸山 基世 鈴木 秀典
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.219-227, 2019-09-20 (Released:2019-11-08)
参考文献数
51
被引用文献数
1

Non–coding RNAs affect various cellular processes through interaction with DNA, RNA and protein. Accordingly, non–coding RNAs, microRNAs and more recently long non–coding RNAs, have been shown to be involved in pain disorders, including neuropathic pain. MicroRNAs inhibit translational step of gene expression and dysregulation of microRNAs underlies the neuropathic pain. On the other hand, lncRNAs regulate diverse steps of gene expression, including epigenetic modulation, transcription, alternative splicing and translation, although a role of lncRNAs in the pain disorders remain poorly understood. Interestingly, a part of non–coding RNAs are released to extracellular space and mediate a cell–cell communication. Extracellular microRNAs are shown to modulate nociceptive transmission. Furthermore, extracellular non–coding RNAs are expected as a specific biomarker for neuronal damage or pain in the blood. In this review, we summarize current insights into non–coding RNA significance in the neuropathic pain.
著者
鈴木 秀典 山口 智 宗岡 寛子 佐々木 達也 田中 良明 中澤 昌彦 陣川 雅樹 図子 光太郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>フォワーダの積載性能が長尺材の集材生産性に与える影響を明らかにするため、大型(最大積載量6,000kg)と中型(同4,800kg)のフォワーダを対象として、材長ごとの生産性を調査した。長尺材として6mと8m材を集材し、比較のために4m材も集材した。集材作業は、13tクラスのグラップルによるフォワーダへの積込み、実走行、グラップルによる荷おろし、空走行の各要素作業に区分した。先山と土場の各グラップル操作も含め、1人作業として生産性を比較した。その結果、大・中型機とも4m材を生産したときに最も生産性が高く、6m、8mと材が長くなるにつれ低下した。しかし、大型機では8m材の生産性が4m材の約7割だったのに対し、中型機では約6割と積載性能によって低下率が異なった。各作業における材長の影響は積込み作業で大きく、長尺材になるほど時間がかかる傾向がみられたが、走行や荷おろし作業への影響はそれほど大きくなかった。長尺材の生産性は大型機の方が高く、また、長尺材になったときの生産性低下率も大型機の方が小さいため、長尺材の集材には大型機の方が適しているといえる。</p>
著者
中澤 昌彦 吉田 智佳史 佐々木 達也 陣川 雅樹 田中 良明 鈴木 秀典 上村 巧 伊藤 崇之 山﨑 敏彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

【目的】本研究では,急峻で複雑な地形と大径材搬出への適用が期待できる欧州製タワーヤーダを用いた作業システムを開発することを目的に,間伐作業の功程調査を行った。前報で架線下の上荷集材作業について報告したので,本報では上荷横取り集材作業を中心に報告する。【方法】搬器にShelpa U-3toを搭載したMM社製WANDERFALKE U-AM-2toを用いて,上荷横取り集材作業を実施し,時間分析を行なった。【結果】魚骨状に4列伐採し,27サイクル,28本,計17.87m3を集材した。平均荷掛量は0.66m3,平均集材距離は156.6m(135.7~194.6m),平均横取り距離は25.7m(5.1~48.1m)で,打ち合わせや遅延時間を除く横取り集材作業時間の合計は10,371秒となった。既存タワーヤーダであるツルムファルケ(平均荷掛量0.37m3)と比較すると,横取り作業時間が約2割短かった。以上から,本調査区における上げ荷横取り集材作業の生産性を求めると6.2m3/時となり,架線下だけでなく横取り集材作業においても既存タワーヤーダより高い生産性が期待できることが示唆された。
著者
鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 永野 昌俊
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自閉症スペクトラム症(ASD)を含む広汎性発達障害の発症機構を研究するため、ASD患者の染色体重複を模倣した病態モデルマウス(patDp/+)を用いて、ミクログリアの役割を検討した。生後7日のpatDp/+マウスの扁桃体基底外側核でミクログリアの活性化マーカーIba1の発現が低下していた。周産期のミノサイクリン投与によってIba1の発現は対照と同程度に回復し、成熟期の不安行動も改善した。ミクログリアへの直接作用が報告されているセロトニン再取り込み阻害薬を新生仔期にpatDp/+マウスに投与すると、成熟期の社会的行動が改善した。以上の結果はミクログリアの発達障害病態への関与を示している。
著者
鈴木 秀典
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Monkeyを用いた脊髄損傷モデル作成のための、全身麻酔や術後管理手法、モデル作成方法など多くの基礎的な知見を得た。またAllodyniaについて、Rat&Mouseを用いて、適切な評価スケールを作成し、客観的なスケールを用いて神経障害性疼痛を示すことに成功した。CFを用いた移植治療では、急性期においてはげっ歯類同様に良好な軸索の再生が確認された。短期評価のため、下肢運動機能の回復については未確認なデータであり、今後の検討課題である。