著者
鈴木 英之
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.711-733, 2008-12-30

浄土宗や浄土真宗などの浄土系諸派が「専修念仏」「礼拝雑行」という教理上の制約から、神に対して消極的な態度をとらざるをえなかったことは良く知られている、しかし中世浄土宗の礎を築き、後に浄土宗中興の祖と称えられた了誉聖冏(一三四一-一四二〇)は、日本の神々に強い関心を抱き、盛んに研究を行った。聖冏は、中世最重要の両部神道書『麗気記』の註釈書である『麗気記拾遺鈔』を著し、浄土教学上に神々を位置づけていった。まず、仏教教理から法相宗や天台宗など諸宗派の神体を明らかにし、聖冏独自の教相判釈説「二蔵二教二頓判」を応用することで浄土宗の神体の優位性を主張した。また大元尊神という法や理といった性格をもつ中世独特の神観念を導入し、さらに法然の教説を敷衍して用いることで、神の力を念仏の功徳と同一とし、理論的に阿弥陀仏と神との完全な同体を示した。それは、浄土宗における神道論のひとつの完成形として重要な意義をもつと考えられるのである。
著者
宮下 知也 横田 正 木戸 康嗣 岡村 拓哉 飯島 陽子 鈴木 英之 柴田 大輔 衛藤 英男
出版者
Society for Science and Technology
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.95-100, 2015

我々は緑茶を亜臨界水抽出130℃で処理することで高濃度カテキン含有でありながら苦渋味を抑制した緑茶飲料になることを報告した。本報ではこの緑茶抽出物の有用成分や香気成分および水色について検証を行った。その結果、従来の熱水抽出よりも有用成分(アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ケルセチン、サポニン、水溶性食物繊維)が高濃度で抽出され、機能性を有する緑茶飲料であることが分かった。また、テアニンから生成される(S)-3-アミノ-1-エチルグルタルイミド(環状テアニン)はACE阻害活性があり、緑茶の中でも玉露や碾茶に多いことも明らかにした。さらに、緑茶特有の香気成分および水色に関連するクロロフィルの増加も確認した。従って、亜臨界水抽出は従来よりも優れた香気と水色を示し、苦渋味抑制だけでなく新たな機能性を有する緑茶飲料の製造方法としての可能性を示唆した。
著者
飯野 雅子 鈴木 英之
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.440-448, 2015-08-15

診療看護師(NP)としての役割と成果 飯野雅子 はじめに 昨今,わが国では医療の質,医療の安全性を問う国民の声が大きくなってきている。医療の現場に目を向けると,医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大や高齢化による合併症患者の増加などにより,わが国の医療は疲弊してきている。このような現状のなか,「チーム医療」の重要性が謳われている。 そこで2010年3月,厚生労働省はチーム医療の推進を図るための1つとして,看護師の業務拡大の必要性をあげ,特定看護師(仮称)の設置,法制化に向けての素案を示した。このような社会背景を踏まえ,クリティカルケア領域でも対象患者の高齢化,疾病の複雑さにより,医療者の業務は増大している。そのため,周術期の患者管理においても多職種によるチーム医療の必要性が高まっている。 チーム医療の一員にナースプラクティショナー(Nurse Practitioner;NP)が存在できるのであれば,NPの特性である医療的,看護的の両側面からアプローチすることで,タイムリーかつ質の高い医療を患者に提供でき,患者や医療者の満足度も上げることにつながると考える。 今回,所属する消化器外科病棟の看護師に対し,診療看護師(NP)の活動についてのアンケート調査を行なった。その結果から得られたNPの成果について述べる。
著者
中川 聖一 Reyes Allan A. 鈴木 英之 谷口 泰広
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.1649-1658, 1997-08-15
参考文献数
16
被引用文献数
19

本論文では, 音声認識技術を利用した英会話CAIシステムについて述べる. これは, システムが, 学習者の発話を自動音声認識により理解し, 待ち時間なしで適切な応答を音声で出力し, 対話を進めることにより, スピーキングとヒアリングの能力を高めるものである. まず, 日本人の発声した英語の音声認識を行うためには日本人の英語発音モデルを用いる必要のあることを示す. 次に, 評価実験として4人の日本人男性にこの英会話CAIシステムを使用してもらった評価実験結果について述べる. 使用前と使用後のスピーキングとヒアリングの能力の差を比較したところ, 全員に能力向上がみられた. またアンケートの結果, 本システムを引き続き利用したいとか, システムの応答時間はちょうど良いといった意見が多く得られた.
著者
鈴木 英之
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.106-115, 1988-02-05

1987年2月, 大マゼラン星雲で発見された超新星は, 実に400年ぶりの明るい超新星であり, 多くの天文学者や物理学者が観測や理論的解析に追われている. 様々な観測手段によって様々な情報かえられているが, とりわけ神岡の陽子崩壊実験グループとそれに続くIMBグループによる人類史上初のニュートリノバーストの観測は, 超新星の研究だけにとどまらず, 素粒子・原子核物理に対しても興味深い情報を提供してくれた. しかし会員諸氏の多くはお星様とは縁遠い生活を送っておられ, ニュートリノバーストをはじめ超新星についてはあまり御存知ないことと思われるので, 本稿では超新星のメカニズムとニュートリノ放出の概要を広く知っていただくため, 一般的な解説を行う。
著者
後藤 匡史 長木 悠太 鈴木 英之進
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 = Transactions of the Japanese Society for Artificial Intelligence : AI (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.193-201, 2001-11-01
参考文献数
13

This paper presents a novel decision-tree induction for a multi-objective data set, i.e. a data set with a multi-dimensional class. Inductive decision-tree learning is one of the frequently-used methods for a single-objective data set, i.e. a data set with a single-dimensional class. However, in a real data analysis, we usually have multiple objectives, and a classifier which explains them simultaneously would be useful. A conventional decision-tree inducer requires transformation of a multi-dimensional class into a singledimensional class, but such a transformation can considerably worsen both accuracy and readability. In order to circumvent this problem we propose a bloomy decision tree which deals with a multi-dimensional class without such transformations. A bloomy decision tree consists of a set of decision nodes each of which splits examples according to their attribute values, and a set of .ower nodes each of which decidesa dimension of the class for examples. A flower node appears not only at the fringe of a tree but also inside a tree. Our pruning is executed during tree construction, and evaluates each dimension of the class based on Cramér’s V. The proposed method has been implemented as D3-B (Decision tree in Bloom), and tested with eleven benchmark data sets in the machine learning community. The experiments showed that D3-B has higher accuracies in nine data sets than C4.5 and tied with it in the other two data sets. In terms of readability, D3-B has a smaller number of decision nodes in all data sets, and thus outperforms C4.5. Moreover, experts in agriculture evaluated bloomy decision trees, each of which is induced from an agricultural data set, and found them appropriate and interesting.
著者
秋谷 行宏 恩田 昌彦 古川 清憲 鈴木 英之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1781-1787, 1998 (Released:2011-08-23)
参考文献数
24

血清総コレステロール値を用いて術後感染症の早期診断について検討した. 1995年7月から1997年6月までの胃・大腸切除症例111例を対象に術後10日目までの術後感染の有無により感染群 (13例) と非感染群 (98例) に分けた. 術後3日目の血液生化学検査項目を含む臨床データを両群間で単変量解析で比較したところ, 感染群のリンパ球数, 総コレステロール (TC), 総蛋白は有意に低く, 体温, 脈拍数, CRPは高かった. 多変量解析のロジスティック回帰分析では臓器別で, 胃手術例ではTCを含む8項目, 結腸手術例ではTCを含む3項目の組み合わせが良好であり, overallの正診率はそれぞれ95.1%, 95.4%, sensitivityはともに80.0%であった. なお, 直腸ではoverallの正診率は高かったがsensitivityは低かった. 以上より, 術後感染症は, 術後3日目の総コレステロールを含む臨床データを用いたロジスティック回帰分析から早期診断可能であった.
著者
矢野 耕也 鈴木 英之 竹中 理
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-20, 2008

企業の与信を評価する際に,定性スコアリングシートを使用する場合がある。そのとき,定性的な評価に対して客観性を持たせることと,また与信を正しく評価可能とする尺度を与えることが課題であった。またスコアリングシートは評価項目が多いために,定量的な尺度で総合評価することが望ましいといえる。ここではスコアの配列を一種のパターンとして捉え,スコアから総合パターンの値を求める方法に品質工学のマハラノビスの距離を用いた。またパターンの規則性を可視化するために直交表の適用を図った。その結果,36項目の定性スコアを一元化した数値で求められ,また直交表から得られる要因効果図で,潜在構造を可視化することを達成した。
著者
中本 和岐 山田 悠 鈴木 英之進
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.144-152, 2003 (Released:2003-03-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

This paper proposes a fast clustering method for time-series data based on average time sequence vector. A clustering procedure based on an exhaustive search method is time-consuming although its result typically exhibits high quality. BIRCH, which reduces the number of examples by data squashing based on a data structure CF (Clustering Feature) tree, represents an effective solution for such a method when the data set consists of numerical attributes only. For time-series data, however, a straightforward application of BIRCH based on a Euclidean distance for a pair of sequences, miserably fails since such a distance typically differs from human's perception. A dissimilarity measure based on DTW (Dynamic Time Warping) is desirable, but to the best of our knowledge no methods have been proposed for time-series data in the context of data squashing. In order to circumvent this problem, we propose DTWS (Dynamic Time Warping Squashed) tree, which employs a dissimilarity measure based on DTW, and compresses time sequences to the average time sequence vector. An average time sequence vector is obtained by a novel procedure which estimates correct shrinkage of a result of DTW. Experiments using the Australian sign language data demonstrate the superiority of the proposed method in terms of correctness of clustering, while its degradation of time efficiency is negligible.
著者
佐藤 勝彦 橋本 正章 鈴木 英之 山田 章一 長滝 重博 固武 慶 滝脇 知也 渡辺 元太郎 大西 直文 住吉 光介 藤本 信一郎 木内 健太 岩上 わかな 澤井 秀朋 安武 伸俊 西村 信哉 諏訪 雄大 中里 健一郎 長倉 洋樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では大質量星が進化の最後におこす重力崩壊型超新星及びガンマ線バーストの爆発機構・源エンジンについて世界最先端の研究を行い、多くの成果を挙げた。大規模数値シミュレーションによる研究を豊富に行い、場合によっては京コンピュータを用いた世界最高レベルの数値シミュレーションを実現した。またこれらの現象に付随して起こる重力波・ニュートリノ放射、r-process元素合成を含めた爆発的元素合成、最高エネルギー宇宙線生成、等々について世界が注目する成果を数多く挙げた。以上の様に本研究課題では当初の予想を上回る、世界最先端の成果を修めることが出来た。また同時にこの分野に於ける将来の課題・展望を提示しつつ5年間のプログラムを終了した。
著者
野村 聡 塩谷 猛 渋谷 哲男 内間 久隆 鈴木 英之 内田 英二
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.50-54, 2011 (Released:2012-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は56歳,男性.主訴は気尿,糞尿.腹部CT検査で膀胱内にガス像と膀胱に癒着するS状結腸を認めた.注腸造影検査では上行結腸とS状結腸に多発する憩室,更にS状結腸狭窄と同部位から膀胱内へ造影剤の流出を認めた.S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻と診断し,手術療法をすすめたが,仕事上の都合により保存的治療を希望し,内視鏡的バルーン拡張術を施行した.一時的に症状は改善したが,糞尿が増悪したため,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.病理組織学的にもS状結腸憩室炎に伴う結腸膀胱瘻と診断された.結腸膀胱瘻の根治には手術が必要と考えられた症例を経験した.
著者
鈴木 英之 柴田 創 藤岡 弘幸 平林 紳一郎 石井 希実子 菊池 紘樹
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本船舶海洋工学会論文集 (ISSN:18803717)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.81-90, 2013
被引用文献数
3

Rotor-floater-mooring coupled response analysis is essentially important for design of Rotor Nacelle Assembly (RNA) and floating support structure of Floating Offshore Wind Turbine (FOWT). The authors have developed an analysis code UTWind for the analysis of the coupled response. Blades and floater are modeled as frame structure with beam elements. Lumped mass model is use for mooring. Aerodynamic load on blade is calculated by Blade Element Momentum Theory (BEM), and hydrodynamic load is calculated by Hooft's method, and Morison equation was modified to be applicable to cylindrical element with cross section with two axes of line symmetry. The equations of motion of rotor, floater and mooring are solved in time domain by weak coupling algorithm.The numerical results by the code were compared with experimental results in wave and wind-wave coexisting condition with/without blade pitch control and showed good agreement. Response by negative damping was reproduced by the code and showed good agreement with experiments.
著者
後藤 匡史 長木 悠太 鈴木 英之進
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.193-201, 2001 (Released:2002-02-28)
参考文献数
13

This paper presents a novel decision-tree induction for a multi-objective data set, i.e. a data set with a multi-dimensional class. Inductive decision-tree learning is one of the frequently-used methods for a single-objective data set, i.e. a data set with a single-dimensional class. However, in a real data analysis, we usually have multiple objectives, and a classifier which explains them simultaneously would be useful. A conventional decision-tree inducer requires transformation of a multi-dimensional class into a singledimensional class, but such a transformation can considerably worsen both accuracy and readability. In order to circumvent this problem we propose a bloomy decision tree which deals with a multi-dimensional class without such transformations. A bloomy decision tree consists of a set of decision nodes each of which splits examples according to their attribute values, and a set of .ower nodes each of which decidesa dimension of the class for examples. A flower node appears not only at the fringe of a tree but also inside a tree. Our pruning is executed during tree construction, and evaluates each dimension of the class based on Cramér’s V. The proposed method has been implemented as D3-B (Decision tree in Bloom), and tested with eleven benchmark data sets in the machine learning community. The experiments showed that D3-B has higher accuracies in nine data sets than C4.5 and tied with it in the other two data sets. In terms of readability, D3-B has a smaller number of decision nodes in all data sets, and thus outperforms C4.5. Moreover, experts in agriculture evaluated bloomy decision trees, each of which is induced from an agricultural data set, and found them appropriate and interesting.
著者
羽尾 邦彦 松田 健 宮下 正夫 林 哲弘 中川 義宏 鈴木 英之 恩田 昌彦
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.718-722, 1991-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

Three cases of colorectal foreign bodies are presented and the literature is reviewed. Case 1: A 47-year-old man, who had inserted a seasoning bottle in his rectum on January 3, was admitted to National Yokosuka Hospital on January 5, 1990. A pelvic x-ray film showed the object in the sigmoid colon, and an emergency operation was performed. The bottle (11cm in length) was removed from the sigmoid colon. The patient was discharged 16 days after the operation without complications. Case 2: A 40-year-old man presented with a self-inserted seasoning bottle in his rectum that he was unable to remove and was admitted to the hospital on July 24, 1990. Edema of the rectum precluded manual removal of the object. At laparotomy, the bottle (7.5cm in length) was removed from the rectum. The patient's postoperative course was good and he was discharged on August 26. Case 3: A 62-year-old man was admitted on December 12, 1990 for evaluation of a one-day history of a foreign body in the anorectum following autoerotic transanal manipulation with a vibrator. The 6×3×3cm object was removed manually after a spinal anesthetic. The patient was discharged on the third postoperative day.
著者
鈴木 英之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.106-115, 1988-02-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
30

1987年2月, 大マゼラン星雲で発見された超新星は, 実に400年ぶりの明るい超新星であり, 多くの天文学者や物理学者が観測や理論的解析に追われている. 様々な観測手段によって様々な情報かえられているが, とりわけ神岡の陽子崩壊実験グループとそれに続くIMBグループによる人類史上初のニュートリノバーストの観測は, 超新星の研究だけにとどまらず, 素粒子・原子核物理に対しても興味深い情報を提供してくれた. しかし会員諸氏の多くはお星様とは縁遠い生活を送っておられ, ニュートリノバーストをはじめ超新星についてはあまり御存知ないことと思われるので, 本稿では超新星のメカニズムとニュートリノ放出の概要を広く知っていただくため, 一般的な解説を行う。