著者
駒井 三千夫 井上 貴詞 長田 和実
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.408-416, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

三叉神経は,顔面の主要な感覚神経である.本稿では,この神経を介した刺激性物質の感覚受容について述べる.三叉神経受容といえばトウガラシなどの辛味成分のカプサイシン,冷線維刺激性のメントール,炭酸飲料の炭酸ガスなどがイメージされるが,ここでは3人の筆者がそれぞれ得意とする「三叉神経による溶存炭酸ガスの受容・伝達機構」(見出2 : 駒井),「香辛料・ハーブ類などに含まれる刺激物質の受容に関わるTRP(transient receptor potential)チャネル」(見出3 : 井上),「化学感覚と体性感覚の相互作用」(見出4 : 長田)について順に概説した.すなわち,(1)炭酸飲料中の炭酸ガスがどのようなしくみで受容されてシュワシュワ・チクチク感を感じるのかを解説し,(2)食品にさまざまな風味を付与する香辛料,ハーブ類の外因性化学物質による体性感覚発現への関与が示唆される受容機構のうち,最近解明されてきたTRPスーパーファミリーに属する4種の受容体を活性化する物質群を紹介し,(3)最後に,三叉神経刺激物質と味覚・嗅覚への影響が我々の生活で最も関心がもたれているので,味覚・嗅覚の神経伝達と三叉神経刺激の関連性について解説した.
著者
柏柳 誠 長田 和実 宮園 貞治
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.112-118, 2016-03-25 (Released:2020-09-01)
参考文献数
21

ニホンオオカミが絶滅してから,100年以上が経過している.最後にニホンオオカミが目撃された場所は,紀伊半島であった.その後,福岡で目撃情報があったが,群れをつくるオオカミが単独で行動することが考えられないために野犬ではないかと結論づけられた.本小論は,絶滅以来100年を経過しているためにオオカミに対する怖さを体験していないエゾシカがオオカミ尿由来物質(P-mix)を忌避するとともに恐怖関連行動を示した研究成果を中心に紹介する.
著者
長田 和実 柏柳 誠
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本申請者らは、野生動物の制御と、共存のための有効な手段としてオオカミ尿中のピラジン化合物 (P-mix) に着目し、マウス、ラット、エゾシカなど動物種を超えて恐怖を誘起するカイロモン(天敵由来の恐怖誘起物質)であることを見出した。またピラジン化合物の構造活性相関の解明に取り組み、強い恐怖反応を誘起するピラジンの官能基の特徴を明らかにした。さらに恐怖行動を誘起する神経機構の解明に取り組み、P-mix は、通常のにおい成分とは異なり、主嗅覚系、鋤鼻系の両方を刺激し、恐怖誘発の情報を受容し、扁桃体内側部,同中心核、視床下部などを活性化し、先天的な恐怖行動や皮膚温低下などを引き起こす事を明らかにした。