著者
堀井 満恵 石田 真由美 小橋 由希子 長谷川 ともみ
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-60, 2000

近年, 女性の就業承が高まり, 結婚・出産後も継続して働く,人,が増えている.そのような中で女性が仕事と家庭をうまく両立させていくためには, 夫の協力が不可欠である.最近, 父親研究が脚光を浴びはじめたものの, 母親研究ほど十分には行なわれていない.本研究は, 富山県内3ヶ所の保育施設に子どもを預けている135組の夫婦の日常から両者の育児・家事への関わりと分担の実像を探り, それに対する両者間の認識について調査し, 分析したものである.その結果, 現在子育て中の30代の女性は, 『ジェンダー』(伝統的性別認識による夫中心, 男性上位, 男は仕事・女は家庭)に対する考え方について, 「全然思わない」と答えた人が31.9%, 「いくらかそう思う」人が59.3%, 「かなりそうだと思う」人が7.4%, 「全くそうだと思う」1.5%であった.母親の就業形態は, パート勤務が26.2%, 自営業が11.1%, フルタイム勤務の人が62.2%あり, この人たちは, 保育所終了後は夫の母や実家の母に子どもを見てもらっており, 少数だが延長保育を利用している人もあった.夫の育児・家事に関わる行動では, 子どもの遊びの相手や話し相手, 抱っこ, 保育園の送り迎えと買い物に比較的多く関わりが見られたものの, 妻の期待するレベルまでにはどの項目も到達していない状況にあることが分かった.
著者
齊藤 佳余子 長谷川 ともみ 永山 くに子
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.83-92, 2013-12

本研究は帝王切開を受けた母親が手術直後に体験したカンガルーケアをどのように受けとめたのかを明らかにすることを目的とした.反復帝王切開直後にカンガルーケアを体験した母親5名を対象とし,質的帰納的分析を行った.分析の結果,手術前は【元気な子どもを得る期待感】,帝王切開直後のカンガルーケア体験後には【自分の子どもを得たことの実感の深まり】【子どもへの愛しさの高まり】のカテゴリが抽出された.また3事例ではあるが手術前に<前回の出産に対するひきずり>があった母親はカンガルーケアを体験することにより<前回の出産体験のひきずりの埋め合わせ>が行われ,<出産に対する満足感>へとつながった.このことから帝王切開直後のカンガルーケアを母親は自分の子どもを得たことを実感できる体験と受けとめていた.また前回の出産体験にひきずりをもつ母親にとっては,喪失からの立て直しに関与する可能性が示唆された.Kangaroo care after childbirth is a technique that is widely practiced in many advanced nations. In this research, we aim to clarify the subjective experiences of women practicing kangaroo care after cesarean sections. The subjects in this study comprise five women who underwent repeated cesarean sections. The analysis was conducted using qualitative induction. We found that prior to a cesarean section, the mother hopes to obtain a fine child. It is only after the operation that the mother starts to feel increased love and affection for the child. Three of the five women had previously given birth to children with psychological damage; for these women, the need to participate in kangaroo care could be seen as a kind of compensation for the previous births. Further, these three women all underwent satisfactory deliveries. As mentioned above, it was thought as experience which can realize that the mother got her child for the kangaroo care just behind a cesarean section. Moreover, this study revealed that mothers who experienced psychological damage in previous childbirths participated in kangaroo care as form of recovery therapy brought on by the sense of loss they experienced previously.
著者
堀井 満恵 石田 真由美 長谷川 ともみ 塚田 トキヱ
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.89-96, 1998-03

母乳哺育は児の成長ばかりでなく, 母と子の絆(attachment)の形成に重要な要素であると言われている1).本研究はこの母乳哺育の意義を念頭におきながら, 母乳栄養の確立, その援助・指導のための効果的基礎資料を得たく, 59名の妊婦を対象に妊娠の経過に伴って変化する乳房の形態とその増大状況, 並びに超音波画像による乳房内変化を追跡し, これらのデーターを基に母乳分泌との関連について分析・検討した.その結果, 1.乳房は妊娠12週前後に一度急激に発育し, 中期には殆ど変化が見られず, 妊娠24週を過ぎると著しく増大する.2.乳房の形態のみでは乳汁分泌の良否は判断できない.3.超音波画像は, 乳腺発達の程度が診断でき, 泌乳良否の予測が可能である.などが明らかとなった.このことから妊娠中の母親教育に際して乳房の外計測や超音波画像による乳房内の状況を個別に提示でき, 母乳哺育促進への動機づけに有用である, などが示唆された.
著者
堀井 満恵 笹野 京子 筏井 沙織 石井 仁乃 長谷川 ともみ
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.33-42, 2002-04

本研究は母親がパニックに陥ることなく, 児の泣き方や泣き声からそのニーズや訴えの意味を把握し, 的確なケアができるよう, 現在育児の真っ只中にある母親達に, 児の空腹時, 不快時, 眠い時, 甘えたい時の泣き方や泣き声の判別に, どのような方法や手段を用いているか, また, その断定の根拠などについてアンケート調査し, 一方, 育児経験は無いものの同年代であり且つ近い将来看護支援者になるであろう本学看護学生が児の泣き声にどのような判別の方法や手段が得られるのかを探るため, 調査に協力が得られた4年次生に, 泣き声テープを聴いてもらい聴き分け状況を調査し, 比較検討を行った.その結果, 母親は児の泣き方の判別手段として「時間」が最も多く, 次に「時間と声の調子」を挙げ, 僅かの人が「しぐさ」で判断していた.また, その獲得要因としては「育児の中の気持ちの安定」「時間」「しぐさ」「声の調子」に加え, その泣きの意味を解かろうとして「おっぱいを与える」「おむつを換える」「抱っこする」「声がけをする」など, 児の反応を見ながら, こまめに対応している母親は早期に判別できることがあきらかになった.