著者
門田 幸二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

ウェブサイト「(Rで)塩基配列解析」は、主に塩基配列データや遺伝子発現データ解析をフリーソフトウェアRで効率的に行うための包括的な情報サイトである。本研究は、ウェブサイト (Rで)塩基配列解析の安定的な提供を目指し、①情報更新および②情報拡充を行うことを目的としている。今年度も昨年度に引き続き、文言の表記ゆれやリンク切れの修正、新規項目や最新プログラムおよび原著論文の追加といった地味な作業を中心に行った。特にsingle-cell RNA-seq (scRNA-seq)解析関連の項目を重点的に追加したが、この過程でこれまでbulk RNA-seqの論文中で報告済みのいくつかの事柄が無視されていることに気づいた。具体的には、「bulk RNA-seq用に開発された"有名な"データ正規化法」を「発現変動遺伝子数やその群間での偏りが非常に大きいscRNA-seq用に開発されたデータ正規化法」と比較し、後者のほうがよいと結論付ける高インパクト論文を発見した。一見まともそうなロジックに思えるが、実際には「発現変動遺伝子数やその群間での偏りが非常に大きい場合にも対応可能なbulk RNA-seq用の頑健なデータ正規化法」は存在する(がそれとの比較がなされていない)。また、scRNA-seqをbulk RNA-seqと区別する大きな特徴として、ゼロカウントのデータの多さ(ゼロ過剰)もしばしば強調されている。しかしながら、おそらく最初にゼロ過剰の特徴について報告がなされたのは、2013年のbulk RNA-seq用カウントデータモデル論文である可能性が高い。これらの調べた限りの事実関係を論文にまとめた(投稿中)。他には、多群間比較時に発現変動パターンの同定まで行う場合のガイドラインに関する要望が寄せられていたため、推奨解析ガイドライン論文を公開した(Osabeら, 2019)。
著者
門田 幸二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.537-543, 2016-09-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
22

次世代シークエンサ(NGS)は,医療やライフサイエンス分野の諸課題を効率的に解決するための実験機器の一つである.麻酔がもたらす作用メカニズムの解明にも,おそらく利用されているか利用されつつある.例えば,麻酔に伴う重篤な合併症に関連した遺伝子,低酸素や低体温応答関連遺伝子の同定などが考えられる.ほかにも麻酔薬がどの神経細胞中の,どの遺伝子(転写物またはRNA)の発現レベルに,どの程度の投与量で作用するかについても適用可能であろう.本稿では,典型的なビッグデータである大量の塩基配列データ(NGSデータ)を効率的に扱うための取り組みを紹介する.
著者
孫 建強 湯 敏 清水 謙多郎 門田 幸二
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.124-132, 2015-06-29 (Released:2016-07-29)
参考文献数
10

次世代シーケンサー(以下、NGS)データの解析は、大まかに①データ取得、②クオリティコントロール(以下、QC)、③アセンブルやマッピング、④数値解析の4 つのステップに分けられる。連載第4 回は、Bio-Linux にプレインストールされているFastQC(ver. 0.10.1)プログラムを用いたQC の実行および解釈の基本を述べる。また、FASTX-toolkit(ver. 0.0.14)で提供されているアダプター配列除去プログラムであるfastx_clipper の挙動を例に、Linux コマンドを駆使した動作確認の重要性を述べる。多様なインストール手段に対応すべく、apt-get, pip, cpan コマンドを利用したプログラムのインストール(FastQC ver.0.11.3、nkf ver. 2.1.3、cutadapt ver. 1.8.1、HTSeq ver. 0.6.1、FaQCs ver. 1.34)やパスなどの各種設定についても述べる。ウェブサイト(R で)塩基配列解析(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_ seq.html)中に本連載をまとめた項目(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html#about_ book_JSLAB)が存在する。ウェブ資料(以下、W)や関連ウェブサイトなどのリンク先を効率的に活用してほしい。
著者
大田 達郎 寺田 朋子 清水 謙多郎 門田 幸二
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.167-175, 2017-11-10 (Released:2018-12-15)
参考文献数
25

次世代シーケンサー(以下、NGS)データの解析手段は多様である。本連載ではこれまでキーボード入力をベースとしたコマンドライン環境での解析手段を中心に解説してきたが、マウス操作をベースとした GUI 環境での NGS 解析手段の需要も根強い。第 11 回は、GUI 環境でのデータ解析手段として特に海外で広く普及している Galaxy を解説する。Galaxy はウェブブラウザを起動して各種解析を行うため、位置づけとしてはウェブツールである。しかしながら、ワークフローやヒストリー管理といった独特の用語および GUI 画面(見栄え)ゆえ、慣れるまでが大変であることもまた事実である。本稿では、Galaxy の概要、公共サーバの基本的な利用法について述べる。ウェブサイト(R で)塩基配列解析(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html)中に本連載をまとめた項目(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html#about_book_JSLAB)が存在する。ウェブ資料(以下、W)や関連ウェブサイトなどを効率的に活用してほしい。