著者
阿部 康二
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001095, (Released:2018-02-28)
参考文献数
265
被引用文献数
2

日本における進んだamyotrophic lateral sclerosis(ALS)研究の今後のさらなる発展を期するために,日本において初期にALS関連疾患がどのように見出され,その原因や病態がどのように解明され展開して来たかについて今日的視点で纏めておくことは重要である.本稿では認知症を伴うALSや,紀伊半島を中心とした地域で見られるALS/PDC,遺伝性ALS(FALS),球脊髄性筋萎縮症(SBMA),小脳性運動失調など多系統に及ぶALSの5項目に焦点を当てて,それらの初期論文とその今日的展開について海外論文とも比較検証しつつ主要論文を中心に論じた.5項目ともに日本からの論文が極めて重要な貢献を果たし,初期から120年以上に渡って大きな今日的展開を継続していることを示した.
著者
中根 俊成 溝口 功一 阿部 康二 熱田 直樹 井口 保之 池田 佳生 梶 龍兒 亀井 聡 北川 一夫 木村 和美 鈴木 正彦 髙嶋 博 寺山 靖夫 西山 和利 古谷 博和 松原 悦朗 村松 慎一 山村 修 武田 篤 伊東 秀文 日本神経学会災害対策委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.643-652, 2020 (Released:2020-10-24)
参考文献数
57

東日本大震災の甚大な被害を踏まえて日本神経学会の災害対策活動はスタートした.2014年,正式に日本神経学会災害対策委員会が発足し,災害支援ネットワーク構築と指揮発動要件設定を行い,模擬訓練を実施した.2016年の熊本地震で我々は平常時の難病患者リスト作成,個別支援計画策定の重要性を認識し,避難所等における難病患者のサポートのあり方を検討した.2017年,我々は災害対策マニュアルを刊行し,難病患者の災害時調整役として各都道府県に神経難病リエゾンを配置することを定めた.神経難病リエゾンの役割は「被災地の情報収集・発信」,「医療支援調整」,「保健活動」であり,平常時と災害時の活動が期待される.
著者
阿部 康二
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3+4, pp.209-214, 2015 (Released:2017-09-26)
参考文献数
9

【要旨】ライフスタイルの欧米化が進行する中で、高血圧や高脂血症、糖尿病などの血管老化性疾患が増加している。このような疾患は脳梗塞の危険因子であると同時にアルツハイマー病を中心とした認知症の危険因子でもある。日本社会の超高齢化に伴って脳の虚血性変化を伴ったアルツハイマー病も急増している。高血圧や高脂血症、糖尿病などの血管老化性疾患治療によって、脳血管およびその周囲を重層的に構築しているいわゆるneurovascular unit(NVU)を全体として保護するというneurovascular protection (NVP)という新しいパラダイムに基づいて認知症予防に新しい展望が開かれつつある。
著者
阿部 康二 山下 徹 河相 裕美
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1143-1146, 2012

Stroke is a major neurologic disorder. Induced pluripotent stem (iPS) cells can be produced from basically any part of patients, with high reproduction ability and pluripotency to differentiate into various types of cells, suggesting that iPS cells can provide a hopeful therapy for cell transplantation. However, transplantation of iPS cells into ischemic brain has not been reported. In this study, we showed that the iPS cells fate in a mouse model of transient middle cerebral artery occlusion (MCAO). Undifferentiated iPS cells (5&times;10(5)) were transplanted into ipsilateral striatum and cortex at 24 h after 30 mins of transient MCAO. Behavioral and histologic analyses were performed at 28 day after the cell transplantation. To our surprise, the transplanted iPS cells expanded and formed much larger tumors in mice postischemic brain than in sham-operated brain. The clinical recovery of the MCAO+iPS group was delayed as compared with the MCAO+PBS (phosphate-buffered saline) group. iPS cells formed tridermal teratoma, but could supply a great number of Dcx-positive neuroblasts and a few mature neurons in the ischemic lesion. iPS cells have a promising potential to provide neural cells after ischemic brain injury, if tumorigenesis is properly controlled.<br>
著者
倉田 智子 阿部 康二
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.155-157, 2014-08-01 (Released:2014-09-01)
参考文献数
4
著者
阿部 康二
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.380-384, 2018 (Released:2019-04-22)
参考文献数
18

Neuroprotection is essential for potential therapy not only in acute stage of stroke but also in chronic progressive neurodegenerative diseases such as ALS, Parkinson's disease (PD), and Alzheimer's disease (AD). Free radical scavenger can be such a neuroprotective candidate with inhibiting death signals and potentiating survival signals under cerebral ischemia and even neurodegenerative cellular processes. Edaravone is one such free radical scavenger, which is the first clinical drug for neuroprotection in the world and has been used from 2001 in most ischemic stroke patients in Japan.Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) is a progressive and fatal neurodegenerative disease caused by selective death of motor neurons. Among our own 390 ALS patients, 4.1% show familial ALS (FALS), in which 50% is associated with missense mutations of SOD1, 25% were TDP43 and FUS mutations, and 6.3% is an optineurin mutation. Although the underlying mechanism of ALS has not yet been fully clarified, several reports have implicated the involvement of oxidative stress under selective death of motor neurons in both ALS patients and animal models.A recent multicenter prospective double–blind placebo–control clinical trial with edaravone for ALS patients conducted in Japan showed a positive effect for delaying the clinical score (ALSFRS–R) during the course of examination (24 weeks). Serious or critical adverse effect was not noted in this clinical trial. Of particular was that this clinical benefit of edaravone was shown as an add–on therapy after anti–glutamatergic riluzole. These data strongly suggest a potential underlying mechanism of oxidative stress both in acute ischemic stroke and in ALS by a free radical scavenger. Edaravone is approved for ALS on 2015 in Japan, 2016 in Korea, and 2017 in USA.
著者
菱川 望 阿部 康二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1823-1830, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

2010年の厚労省の報告では,平均寿命と健康寿命の差は男性9.13年,女性12.68年,つまり平均的には亡くなる前の約10年間,何らかの介護を受けている.その主な原因は,脳血管障害,認知症,高齢衰弱の順であり,“健康寿命を延ばす”には,急増し続けている認知症の治療・予防が不可欠である.我が国では2011年から認知症治療薬が4剤使用可能となり,各薬剤の特徴を生かしながら治療にあたることが重要である.
著者
阿部 康二
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.270-277, 2012 (Released:2017-05-11)
参考文献数
22
著者
阿部 康二
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1348-1350, 2012
被引用文献数
1

2011年3月11日金曜日の東日本大震災・東北大津波から1年が経過したが,未だ被災地では復興がほとんど進んでいないのが現状である.被災直後は救命処置が主体のはずであったが,地震のみの被害とことなり津波被害のばあいはほとんどのケースがall or nothingで津波に飲み込まれての溺水死か,走り逃げてまったく身体的障害がなかったかに2極分化したことであった.一方,高齢者や認知症,神経難病など多くの神経内科疾患患者さんは災害弱者でもあって,地震や津波などの災害時における避難にはきわめて不利な立場にある.そこで日本神経学会ではIT化推進委員会が中心になって,2012年1月から今災害時の被災地支援意見交換メーリングリスト登録の先生方と共同で「日本神経学会災害支援プログラム」を策定する作業に入っている.その趣旨は今後予想されうる自然災害や人的災害に際して,日本神経学会として神経内科疾患全般の患者さん方への災害時の緊急受入れ体制ネットワークの整備や災害時医療支援チーム派遣の組織化などについて,IT技術も活用して構築することである.具体的には今後想定される災害やそれによる具体的被害,想定される神経内科疾患患者,災害時患者受入れ施設ネットワークの確立,災害時医療支援チーム派遣組織化,関連団体との折衝他について委員会案を作成中である.5月までに委員会案を神経学会ホームページに公開して,会員の皆様や患者さんからも広くパブリックコメントをいただいた上で,5月の学術大会終了後からプログラムに基づいて実際のネットワーク構築作業に入る予定である.本シンポジウムではこれまでの経過報告をさせていただき,参加者の皆様からご意見をいただきたいと考えている.<br>
著者
佐藤 圭子 阿部 康二
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

近年、神経細胞の新生が成体脳でも確認され、新しい神経回路付加に関与することが示されている。本研究では、てんかんおよび神経可塑性のモデルであるキンドリングで、発作発展および全般発作反復による神経幹細胞の増殖とmigrationおよび神経可塑的変化を検討した。ラット扁桃核にテタヌス刺激を1日1回加え、BrdUを6-8回目の刺激前に投与した。部分発作群(PS群)、全般発作3回群(3GS群)と全般発作30回群(30GS群)を作成し、BrdUとPSA-NCAMの免疫組織染色を行った。BrdU陽性細胞数は、PS群では、側脳室下帯(subventricular zone : SVZ)で増加したが、海馬歯状回(dentate gyrus : DG)では有意な変化はなかった。また、SVZのBrdU陽性細胞数は、3GS群と30GS群では対照レベルより有意に減少していた。PSA-NCAM陽性細胞数の増加は、3GS群と30GS群でDG、SVZ、梨状葉においてみられたが、PS群では有意な増加は認められなかった。DGにおいて3GS群では対照群の約2倍に増加し、30GS群では陽性細胞数はさらに増加したが、3GS群に比べ有意差は認められなかった。陽性細胞は、対照群ではDGの顆粒細胞層深部に限局していた。3GS群で陽性細胞の顆粒細胞層内への移動や陽性神経突起の伸長が若干みられたが、30GS群ではより顕著となった。一方、側脳室下帯(SVZ)のPSA-NCAM陽性細胞数は3GS群で対照群の約4倍に増加し、30GS群では3GS群に比較し有意な増加がみられた。てんかん脳で新生神経細胞の増殖やmigrationおよび神経可塑的変化が発作活動依存性に誘導されることが示された。また、神経可塑的変化に加え、新生細胞が形成する神経回路が、てんかん脳の機能変化や神経再構築に関与する可能性が示唆された。
著者
阿部 康二
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、今日までその原因が充分には明らかにされていない進行性難治性筋疾患ある。ALS発症者の5-10%は遺伝性で(FALS)、1993年には細胞質内の活性酸素消去機構であるCu/ZnSOD(superoxide dismutase)遺伝子に点突然変異が見い出されてきて、これが一部のFALSの原因遺伝子であることが強く推定されるに至った。すでに以前の研究により日本人の家系を用いた予備的な研究によって2家系のCu/ZnSOD遺伝子に、症状の進行が極めて遅いなどの際立った臨床的特徴を持った新しい遺伝子変異(点突然変異)を見い出して報告している(H46R変異)。さらに本年度の研究により、もう5家系においても、白人家系にはまだ報告のないCu/ZnSOD遺伝子の5つの異なった異常を見い出した。異なった遺伝子変異は、それぞれに特徴的な臨床所見を示しており遺伝子変異と臨床的特徴の関連が注目される。さらにCu/ZnSOD遺伝子変異による蛋白チロシン残基のニトロ化が運動ニューロン死のメカニズムに深く関与していることを明らかにし、変異SOD導入マウスにおいて筋肉に大腸菌LacZ遺伝子を発現させることに成功したことは、本病の原因解明と治療法確立の足掛りとなり、本年度の当初目的は達成できたものと考えられる。