著者
細井 昌子 安野 広三 早木 千絵 富岡 光直 木下 貴廣 藤井 悠子 足立 友理 荒木 登茂子 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.445-452, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
4

線維筋痛症は病態が未解明な部分が多いが, 独特な心理特性, 免疫学的異常, 脳機能異常, 自律神経機能異常など多面的な病態が近年の研究で報告されている. 本稿では, 九州大学病院心療内科での治療経験をもとに, ペーシングの異常, 受動的な自己像が構築される背景と過剰適応・過活動, 安静時脳活動の異常について, 線維筋痛症における心身相関と全人的アプローチの理解促進のために, 病態メカニズムの仮説について概説した. 線維筋痛症では, default mode networkと呼ばれる無意識的な脳活動が島皮質と第2次感覚野と強く連結しているといわれており, これが中枢性の痛みとして, 過活動に伴う筋骨格系の痛みや自律神経機能異常といった末梢性の痛みと合併し, 複雑な心身医学的病態を構成していると考えられる. ペーシングを調整し, 意識と前意識や無意識の疎通性を増すための線維筋痛症患者に対する全人的アプローチが多くの心身医療の臨床現場で発展することが望まれる.
著者
須藤 信行
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.23-32, 2017 (Released:2017-01-31)
参考文献数
58
被引用文献数
3

腸内細菌叢は様々な生理機能や病態形成において重要な役割を果たしているが,脳機能に対する影響については明らかではない.近年,いくつかの研究グループより腸内細菌は宿主のストレス応答や行動特性に影響することが示されている.本稿では,筆者らの人工菌叢マウスを用いた実験結果を元に,本研究領域の現状と最近の進展について概説した.
著者
須藤 信行
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.25-29, 2005 (Released:2005-07-05)
参考文献数
24

常在細菌叢は,体表面積の95%以上を占める広大な粘膜面を介して生体と接触しており,その細菌数は成人で10 14,重量にして1 kgにも相当するとされている.これら常在細菌は,生後の消化管免疫組織の分化,発達において重要な役割を演じているが,最近では他の様々な生理機能へも関与していることが明らかにされつつある.ストレスにより腸内細菌叢が変化することは,古くから指摘されてきたことであるが,最近の研究により腸内細菌の違いがストレス曝露時の主要経路のひとつである視床下部-下垂体-副腎軸の反応性を変化させることを明らかにした.このように脳と腸内細菌は神経系,内分泌系,免疫系を介して相互に情報伝達していることが明らかとなった.
著者
西原 智恵 菊地 裕絵 安藤 哲也 岩永 知秋 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.264-271, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
7

食物アレルギーは多様な症状をきたしうるが, 心理的要因や併存しうる身体表現性障害を考慮した診療が行われなければ, 症状が遷延し重篤となりうる. 今回, 食物アレルギーと身体表現性障害を併存し, 身体的介入のみを受けたため多彩な症状が遷延し, 高度な生活障害に至った症例を経験した. 心身医学的介入が症状の改善に有効であったため報告する. 症例 : 40代, 女性. 2年前よりさまざまな食品を摂取した後に発疹, 腹部膨満, 四肢脱力, 情緒不安定などの症状が出現するようになった. 複数の医療機関で食物アレルギーが疑われ, 穀物・果物全般の除去を指導されたが症状は持続. 精査を希望しアレルギー科を受診した際, 四肢脱力をきたし緊急入院となった. 評価では, 食物アレルギー症状以外の症状を説明できる器質的異常を認めず, 身体表現性障害の合併が疑われた. 入院下の行動制限, 外来での情動への対処や自己主張の指導により, 身体表現性障害症状は改善し, 食物アレルギー症状も自制内となった.
著者
千々岩 武陽 伊藤 隆 須藤 信行 金光 芳郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.1056-1062, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
14

心身医学の臨床では, 薬物療法や心理療法を用いても十分な治療効果が得られにくい, 抑うつ状態を呈した症例に遭遇することが少なくない. しかし, これらに対して 「温補」 という漢方医学的アプローチを用いることで, 奏効するケースが存在する. 今回, 抑うつ症状に対して漢方薬による温補療法が奏効した3症例について報告する.症例1は66歳, 女性. ストーマ造設術後から気分が落ち込むようになり, 吐き気, 食欲低下を主訴に外来を受診した. 「全身が冷える」 という訴えを重視して, 真武湯と人参湯エキスの併用を開始した結果, 内服2週間後には全身が温まる感覚とともに, 食欲と気分の著明な改善がみられた. 症例2は33歳, 女性. 微熱, 下痢, 抑うつを主訴に外来を受診した. 電気温鍼の結果を参考に通脈四逆湯 (煎薬) を処方した結果, 手足が温まるとともに, 心理テストのスコアは大きく改善した. 症例3は35歳, 女性. 4年前からうつ病と診断され, 各種抗うつ薬, 漢方薬に効果がみられないため, 筆者の外来を受診した. 通脈四逆湯を処方したところ, 内服2日後から外出が可能となり, 2週後には食欲と冷えが改善, 6週後には睡眠薬を必要とせずに良眠が得られるようになった.現代医学的に治療抵抗性がみられる抑うつや精神不穏を呈するケースの中には, 裏寒すなわち 「臓腑の冷え」 が病態を修飾しているものがある. その場合, 漢方薬による温補療法は心身医学領域においても有効な治療手段であることが示唆された.

4 0 0 0 OA 身体症状症

著者
吉原 一文 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1558-1565, 2018-08-10 (Released:2019-08-10)
参考文献数
10

身体症状症とは,さまざまな苦痛を伴う身体症状が長期に持続する疾患である.身体症状症の要因には,遺伝的要因や環境的要因(ストレス等),患者側の要因(パーソナリティ特性や認知的要因)があり,生物学的要因も示唆されている.診断には,「精神疾患の診断・統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-5)(アメリカ精神医学会,2014年)の診断基準を用いて診断する.身体症状症には不安や抑うつが併存している割合が高い.身体症状症の治療には,医師との信頼関係が重要である.また,病因・病態の推定には心理社会的背景の聴取が必要になる.病因・病態に応じて治療を行うため,治療法は多岐にわたり,効果も一様ではない.身体症状症に効果のある薬物療法には抗うつ薬があり,特に疼痛症状に対する効果が認められる.心理療法に関しては,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT),リラクセーション法,ペーシング,段階的運動療法等の有効性が示されている.その他にも,必要に応じて家族面接や心理教育を行う場合がある.
著者
細井 昌子 安野 広三 早木 千絵 富岡 光直 木下 貴廣 藤井 悠子 足立 友理 荒木 登茂子 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.445-452, 2016

線維筋痛症は病態が未解明な部分が多いが, 独特な心理特性, 免疫学的異常, 脳機能異常, 自律神経機能異常など多面的な病態が近年の研究で報告されている. 本稿では, 九州大学病院心療内科での治療経験をもとに, ペーシングの異常, 受動的な自己像が構築される背景と過剰適応・過活動, 安静時脳活動の異常について, 線維筋痛症における心身相関と全人的アプローチの理解促進のために, 病態メカニズムの仮説について概説した. 線維筋痛症では, default mode networkと呼ばれる無意識的な脳活動が島皮質と第2次感覚野と強く連結しているといわれており, これが中枢性の痛みとして, 過活動に伴う筋骨格系の痛みや自律神経機能異常といった末梢性の痛みと合併し, 複雑な心身医学的病態を構成していると考えられる. ペーシングを調整し, 意識と前意識や無意識の疎通性を増すための線維筋痛症患者に対する全人的アプローチが多くの心身医療の臨床現場で発展することが望まれる.
著者
髙倉 修 鈴山 千恵 山下 真 波夛 伴和 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.797-804, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

摂食障害は発症や経過に心理社会的要因が密接に関わることから, 広義の心身症ととらえることができる. 患者の多くは発症前に何らかの苦痛や孤独を感じている場合が多く, 低い自尊心が内在している. さまざまな心理社会的ストレスに対して, 過食や拒食といった手段で対処しようとしているともとらえることができる. やせることで周囲から賞賛されたり, 努力すれば体重が減少するといった経験を通して一時的な自尊心の高まりを感じていることも多い.また, 慢性的な飢餓状態により強迫性などが強まるなど, 脳機能への影響も生じる. さらに, 神経性やせ症患者において, 遺伝子の後天的な発現変化が生じることも報告されている.摂食障害の治療は難渋することも多いが, 病態に即した心身両面からの統合的治療が重要である.
著者
細井 昌子 久保 千春 柴田 舞欧 安野 広三 澤本 良子 岩城 理恵 牧野 聖子 山城 康嗣 河田 浩 須藤 信行 二宮 利治 清原 裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

心身医学の中心概念である失感情症(自身の感情に気づきにくい傾向)と陽性感情(生活満足度)および慢性疼痛の合併リスク,養育スタイルと慢性疼痛合併率について福岡県久山町の一般住民で調査した.失感情症群では慢性疼痛の罹患リスクが有意に高く(OR : 2. 7),生活満足度が有意に低下していた.さらに,両親の養育スタイルでは,冷淡と過干渉の両親の養育スタイルを受けた住民で慢性疼痛合併率が高く,とくに父親の養育スタイルが冷淡/過干渉群では有意に慢性疼痛合併率が増加していた.
著者
野崎 剛弘 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.20-28, 2013-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

生活習慣病の一つである2型糖尿病では,食事や運動といった薬物以外の自己管理に委ねる割合が高い.自己管理の成否には,患者の心理社会的要因が少なからず影響を及ぼす.したがって,心身両面から患者を理解し治療していくという心身医療(心身医学的アプローチ)は,糖尿病の臨床において大きな効果を発揮する.本稿では,まず2型糖尿病患者に対する心身医療について述べ,次に2型糖尿病患者の血糖コントロールに影響を及ぼす心理・社会的因子を縦断的に調査した自験例を紹介し,最後に通常の内科的治療では血糖コントロールが不良であった患者が心身医療によって良好な血糖コントロールとなり維持している症例を提示する.
著者
須藤 信行
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Suppl.20, pp.37-41, 2013 (Released:2014-12-21)
参考文献数
41

腸内フローラは様々な生理機能の発現に深く関与しているが,中枢神経機能や精神機能にどのような影響を及ぼしているかに関しては十分に検討されていない。近年,腸内フローラは宿主のストレス反応や行動特性に影響することが明らかにされつつある。著者らの人工菌叢マウスを用いた検討では,無菌(germfree:GF)マウスは通常のspecific pathogen free (SPF)環境下で飼育されたマウスと比較し,拘束ストレス負荷によるACTHおよびコルチコステロンの上昇反応が有意に亢進していた。また GFマウスは,通常の腸内フローラを有するEX-GFマウスと比較し,多動で不安レベルが高かった。以上の結果は,腸内フローラは成長後のストレス反応性のみならず行動面にも影響しうることを示している。(皮膚の科学,増20: 37-41, 2013)
著者
野崎 剛弘 小牧 元 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.231-241, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
69

肥満は先進国のみならず, 発展途上国でも爆発的に増加している. 肥満症は多くの医学的合併症や併存疾患が出現する慢性代謝疾患である. 肥満に関連する健康被害と医療コストは莫大なものとなっている. 肥満症対策は各国での喫緊の課題であり, さまざまな取り組みがなされているが, 十分に成功しているとは言い難い. 一方, 肥満症は非常に複雑な多因子疾患でもある. 肥満症は, 遺伝的, 生物学的, 心理的, 行動的, 家族的, 社会的, 文化的, および環境的要因がさまざまな形で影響し合って発症, 進展する. したがって, その治療は, 肥満症が慢性疾患でありかつ多因子疾患であることを考慮に入れて, 総合的に行われる必要がある. 本稿では, 肥満の生物学的, 心理社会的要因および治療について, 最近の知見と問題点を交えて概説する.
著者
古川 智一 中野 博 平山 健司 棚橋 徳成 吉原 一文 須藤 信行 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.790-798, 2011
参考文献数
51
被引用文献数
1

閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は,のちに患者であることが判明した新幹線運転士の居眠り運転にみられるように,その社会的インパクトから最近注目されるようになった.また,OSAと合併症である高血圧,心血管障害,脳卒中との関連についても,多くの研究結果から明らかにされてきている.OSAの主症状であり日常的によくみられるいびきは,いびき症者のみならずベッドパートナーの睡眠も妨げるため重要な問題である.質問紙を用いた主観的ないびきと心血管障害との関連が過去の疫学研究によって報告されているが,そのいびきはOSAの代理指標とされ,OSAのないいびき症の臨床的意義についてはあまり注目されていなかった.しかし,最近の研究でいびきがOSAとは独立して眠気や血圧上昇に関与することが示唆されており,今後その臨床的意義について明らかにされることが望まれる.
著者
古川 智一 須藤 信行
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡医学雑誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.1-11, 2012-01-25

睡眠障害は現代社会において大きな問題となりつつある.例えば,日本人の5人に1人が不眠症など何らかの睡眠に関する問題を抱えているとされる1).我が国では産業の効率化を図るために交代勤務制をとる事業所も多いが,その結果交代勤務者の健康障害も問題となっている.世界に目を向けてみると,チェルノブイリ原発事故やスペースシャトルチャレンジャー号爆発事故などの大参事もその作業員の睡眠不足によるヒューマンエラーが原因であったとされている.睡眠に対する関心が高まるなか2003 年に新幹線運転士による居眠り運転が報道され,その原因とされる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleepapnea syndrome;以下OSAS)が注目を浴びることとなった.OSASは有病率が高く,イビキという容易に観察される現象が発見の手がかりとなる.そのためOSAS を疑い睡眠外来を受診する患者も多く,睡眠障害の中で最も重要な疾患と言える.OSAS による障害は日中の過剰な眠気のみならず,高血圧や心血管障害,脳卒中を含む多くの合併症の発症,悪化因子であるというエビデンスが多くの研究結果から構築されつつある.本稿ではOSASとその主要な合併症との関連について概説し,OSAS の主症状であり日常的によくみられるイビキにも焦点を当てて述べてみたい.
著者
須藤 信行
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.25-29, 2005-01-01
参考文献数
24

常在細菌叢は,体表面積の95%以上を占める広大な粘膜面を介して生体と接触しており,その細菌数は成人で10 <sup>14</sup>,重量にして1 kgにも相当するとされている.これら常在細菌は,生後の消化管免疫組織の分化,発達において重要な役割を演じているが,最近では他の様々な生理機能へも関与していることが明らかにされつつある.ストレスにより腸内細菌叢が変化することは,古くから指摘されてきたことであるが,最近の研究により腸内細菌の違いがストレス曝露時の主要経路のひとつである視床下部-下垂体-副腎軸の反応性を変化させることを明らかにした.このように脳と腸内細菌は神経系,内分泌系,免疫系を介して相互に情報伝達していることが明らかとなった.<br>
著者
波夛 伴和 瀧井 正人 高倉 修 森田 千尋 河合 啓介 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.857-863, 2015-07-01 (Released:2017-08-01)

生活習慣や治療行動(食事や運動など)は糖尿病患者の病状を左右する重要な要素である.患者を適切な治療行動に導くために,従来,糖尿病治療者は教育・指導に注力してきた.近年では,患者の問題解決能力を尊重して,その能力の発揮を援助する考え方(糖尿病エンパワーメントなど)が紹介され,効果も報告されている.しかし,中には自身の能力を発揮するのが難しい患者も存在する.そのような患者を効果的に援助するためには,より深く患者を理解することが必要である.本稿では,糖尿病患者を理解するためのかかわりについて,筆者の学びの過程を示しながら考察した.患者の大きな変化につながるような言葉や,技法が明確な心理療法に注目が集まりやすいが,その前段階の土台作りの重要性についても強調したい.
著者
野崎 剛弘 小牧 元 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.134-141, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
6

日本糖尿病学会は, エビデンスに基づく糖尿病診療の推進を目的に, 『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』を発行している (初版は2004年, 最新版は2013年版). また, 同学会は上記ガイドラインをベースに, 最新の知見を糖尿病現場に幅広く普及させることを目的に, 『糖尿病治療ガイド』も発行している. 一方, 日本糖尿病療養指導士機構から『糖尿病療養指導ガイドブック』が発行されているが, これは糖尿病患者の心理・行動に関する記述に大きくページを割いている. 本稿では, これら糖尿病の診療ガイドラインの最新の内容を紹介するとともに, 糖尿病の心身医学的側面がガイドラインにおいてどのように位置づけをされているかを概説する.